IWJは、ツイッターアカウント「IWJ_Sokuho」で、ウクライナ情勢をツイートしています。テレビでは流れない情報や、石油・天然ガスなどの資源問題、ウクライナの実情もあわせて、多角的にウクライナ情勢をお伝えしています。ぜひ、一度御覧ください。
※IWJ速報@IWJ_Sokuho
国連安全保障理事会は6日、ウクライナ情勢を巡り「ウクライナの平和と安全の維持に関して深い懸念を表明する」との議長声明案を全会一致で採択した。ロシアの侵攻以来、安保理が声明を出すのは初めてである。5月の議長国は米国だ。
※【速報6077】共同、7日:国連安全保障理事会は6日、ウクライナ情勢を巡り「ウクライナの平和と安全の維持に関して深い懸念を表明する」との議長声明案を全会一致で採択した。ロシアの侵攻以来、安保理が声明を出すのは初めて。
声明はノルウェーとメキシコが作成し、ロシアも支持した。議長声明には強制力はないが、米国、中国、英国、フランス、ロシアの5カ国の常任理事国と、2年任期の非常任理事国10カ国(アルバニア、ブラジル、ガボン、ガーナ、インド、アイルランド、ケニア、メキシコ、ノルウェー、アラブ首長国連邦)が、全会一致に至ったという点が評価される。声明には「ロシア」や「侵略」といった語は含まれず、ロシアも賛成しやすかったと見られている。
ロシア国営メディア『TASS通信』も、「国連安全保障理事会は、(ロシアによる)特別作戦の開始以来初めて、金曜日(6日)の会合で米国(議長国)が提出したウクライナに関する声明を採択した」と報じた。
※【速報6079】TASS、6日:国連安全保障理事会は、(ロシアによる)特別作戦の開始以来初めて、金曜日(6日)の会合で米国(議長国)が提出したウクライナに関する声明を採択した。
グテーレス事務総長は声明を歓迎し、「命を救い、苦しみを軽減するため、平和を模索する努力を惜しまない」と述べた。グテーレス氏は以下のような声明を抱いている。
「今日、初めて、安全保障理事会はウクライナの平和のために一つの声で話しました。私がよく言っているように、世界は銃を沈黙させ、国連憲章の価値を支持するために団結しなければなりません。私はこの支援を歓迎し、命を救い、苦しみを減らし、平和の道を見つけるための努力を惜しみません」
グテーレス氏が、4月の26日にプーチン大統領を、続けて28日にゼレンスキー大統領を訪れて会談したことは、現在途切れ途切れにとはいえ動き始めたマリウポリの人道回廊の設置に貢献したと言えそうである。グテーレス氏の貢献に答えるかのように安保理の議長声明が採択された。ただし、「全会一致」が前提とされた声明ともいえ、形式的な印象は残る。
一方、「表」の国連安保理の会合よりも、同じ6日に「裏」で、非公式に行われた国連安全保障理事会の「アリア式」会議、「ウクライナ情勢-ロシア連邦政府代表部主催の国連安保理アリア・フォーミュラ会合」のほうが、注目に値すると思われる。
アリア・フォーミュラ会合とは、国連安全保障理事会の非公式会合のひとつだ。1992年にベネズエラの国連大使で安保理議長だったアリア氏が考案したことで、この名前が冠されている。国連憲章や安保理の公式ルールでは明文化されてはいなくて、決議などはできないが、外部の関係者を招き率直な意見交換を行うために開催される。公式記録には残らない。
今回、ロシアは、ようやく落ち着いた形で、非公式会合とはいえ、国際社会に向けて自らの主張を述べた。
3月の安保理は、16日にマリウポリの劇場爆破事件が起こり、ロシアが提案する人道回廊の設定などの案が審議される予定だった17日、ロシアが「米国が関与したウクライナによる生物兵器の開発計画」を報告した18日は、「子供を含む民間人が避難していた劇場を攻撃したロシア」に対する非難一色で、まともに審議されることはなかった。
ロシアのネベンジャ国連大使は、この会合で、特に民間人の避難を妨げた、ウクライナの軍隊と民族主義者の集団による「犯罪」の膨大な証拠映像を提示した。
※【速報6084】TASS、7日:金曜日(6日)の国連安全保障理事会の非公式の「アリア式」会議で、ロシアの外交官は、特に民間人の避難を妨げた、ウクライナの軍隊と民族主義者グループによって犯された犯罪の膨大な証拠を提示した。
ロシアはこれらの資料を、誰でもダウンロードできるように公開している。動画を多く含むため、全体は3GBを超える。ダウンロードされる場合はお気をつけいただきたい。
※【速報6135】ウクライナ情勢-ロシア連邦政府代表部主催の国連安保理アリア・フォーミュラ会合で、ロシア側が提供した資料が以下よりダウンロードできます。
「ウクライナ情勢-ロシア連邦政府代表部主催の国連安保理アリア・フォーミュラ会合」については、ロシア国営メディア『TASS通信』が7日、詳しく報じている。以下に『TASS通信』の記事の全文仮訳をご紹介する。
「ウクライナでの軍事作戦5月7日、10:54
ロシア、国連でウクライナ軍による犯罪の膨大な証拠を提示―金曜日に行われた国連安全保障理事会の非公式会合『アリア方式』で、ロシアの外交官は、敵対地域から脱出したウクライナ市民のインタビュービデオを上映した。
国連、5月7日、TASS/ 国連安全保障理事会の非公式会合『アリア方式』で、ロシアの外交官は、特に民間人の避難を妨げたウクライナ軍と民族主義者の集団による犯罪の膨大な証拠を提示した。ロシア大使のヴァシリー・ネベンジャ氏は、ウクライナ当局とその西側スポンサーは、この悲しい真実にスポットライトがあてられることを防ぐために最大限の努力を払っていると強調した。
ネベンジャ大使は、ウクライナ軍が繰り返し住宅地に重火器を配備し、民間人を人間の盾として使用したことは、国際人道法違反であるという事実に十分な注意を払うよう、海外の関係者に要請した。
(ネベンジャ大使は)『私たちは、ウクライナ軍と準軍事組織によって、これらの原則(国際人道法)がすべて組織的に侵害されていると信じるに足る十分な理由があります。ウクライナ軍が民間人を人質や人間の盾として利用しているという多くの目撃証言がある』と述べた。
会議の出席者は、アパートや民間施設内に砲台を設置するウクライナ軍の戦術について説明を受けた。1階には戦車などの装甲車、屋上には狙撃手や携帯型ミサイル、重火器が配置され、平和な市民が文字通り挟み撃ちにされている。
ロシア大使は、敵対地域からなんとか脱出したウクライナ市民のインタビュービデオを見せた。多くの人が、人道的回廊を使って避難しようとした人の車に、ウクライナ軍が発砲したと証言した。マリウポリに住む女性は、マリウポリの劇場内で起きた爆発はロシア軍の仕業だという噂をきっぱりと否定した。
ジャーナリストたちの証言
ドネツク、ルガンスク両共和国およびロシア軍が支配する地域で数週間を過ごしたジャーナリストたちが、その生の印象を聴衆に伝えた。
イタリア人のジャーナリストでドキュメンタリー作家のジョルジョ・ビアンキ氏は、偽情報とプロパガンダは紛争解決を遅らせるだけだと述べた。
(ビアンキ氏は)『私はヨーロッパ人だ。ヨーロッパについてフェイクニュースが広まるのを見たくはない』と述べた。そのような虚偽情報の例として、彼はマリウポリの劇場に対するロシアの攻撃疑惑を挙げた。
ブルガリア人ジャーナリスト、アシア・ズアン氏(ニュースフロント社)は、ドネツク、ルガンスク両共和国の人々がウクライナの危機が戦争に発展することを望んでいないことを自分の目で確かめることができたと述べた。自国(ブルガリア)の当局に対し、紛争を拡大させるようなことは一切しないようにと呼びかけた。
レバノンのテレビ局『アル・マヤディーン』のモスクワ支局長サリヤム・アディル氏は、紛争現場から何百キロも離れた安全な場所から見た事象と、現場で実際に起こっている事象とは大きな違いがあると強調した。現実と無関係な疑惑を広めようとする試みは、あまりにも劇的な(too dramatic to tolerate)状況であり、許容できないと述べた。
一部のジャーナリストは、マリウポリ市を含むドネツク、ルガンスク両共和国の人々への取材やレポートを披露した。ウクライナ兵やアゾフ大隊の隊員がどのように家を砲撃し、市民の命を危険にさらし、住宅地に武器を配備したのか、インタビューに応じた人たちがそれぞれ個人的な記憶を語った。
ネベンジャ大使は、『ロシアが偽情報を流している』と主張しようとした西側諸国の代表者たちにこう言った。
『今日、私たちは自分たちのために話しているのではありません。
最前線で何が起きていたかを体験した人々に、彼らがどのように生き延びたか、誰が実際にそこで残虐行為を行ったかを説明させるために、場を提供しているだけです。
あなたが聞いている言葉はすべて彼らのものであり、私たちのものではありません。もし、あなたが彼らの話を聞きたくないのであれば、それは別の問題です。黙っていたほうが気が楽だというのなら、それはあなたの自由です。
しかし、今日のイベントの目的は、証言できる人々に発言権を与えることであり、プロパガンダを広めることではありません』」。
もうひとつのロシアメディア『RIAノーボスチ』も7日、「フランスのジャーナリストが『アゾフ』の犯罪について国連に証言した」という記事を出した。『RIAノーボスチ』は、2015年当時のドンバス地方の状況を伝える貴重なドキュメンタリー映画『ドンバス』のアンヌ=ロール・ボネル監督に焦点を当てている。一部を仮訳する。
「フランス人ジャーナリスト、『アゾフ』の犯罪について国連に証言を提示
―フランス人ジャーナリスト、ボネル氏が国連に『アゾフ』の犯罪についての証言を提出した。
国連、5月7日- RIA Novosti/ フランスの独立ジャーナリスト、アンヌ=ロール・ボネル氏は、国連安全保障理事会の非公式会合で、アゾフ連隊のネオナチ(その戦闘員はロシアで刑事訴訟を受けている)が犯した犯罪の目撃者の証言を提示した。
『アゾフは住宅を占拠し、人々を殴り、家から出そうとしない。彼らは人々をライフルの尻で殴る』ウクライナ東部の住民はインタビューでそう語り、その一部が披露された。このウクライナ人は、マリウポリからアゾフ海の岸辺をこっそり歩いて脱出したのだという。
『家から出してもらえず、バットで殴られ、家にいることを強制されたという事実がある。アゾフ大隊は、一切の通行や移動を許可していない。私自身、外に出られなかった人を知っている』と1人の目撃者は言った。
アンナという名前の別のマリウポリの住民は、人道的回廊について何も聞いていないと述べた。彼女によると、ウクライナ軍は家々の庭に軍用機器を置いたという」
※【速報6107】RIA、7日:国連安全保障会議の非公式会合で、フランスの独立ジャーナリスト、アンヌ=ロール・ボネル氏は、アゾフ連隊からのネオナチ犯罪の目撃証言を引用した。
ボネル氏は6日、「H-1ドンバスの悲劇を目撃した記者として、国連に2度目の報告をする。複雑だが必要な会議だ。このような状況では、平和のために働くこの機関での対話と外交だけが、危機に終止符を打つことができるのだから」とツイートした。
※【速報6114】アンヌ=ロール・ボネル氏「H-1 ドンバスの悲劇を目撃した記者として、国連に2度目の報告をする。複雑だが必要な会議だ。(続く)
ボネル氏のドキュメンタリー映画『ドンバス』(2016)は以下で御覧になることができる。フランス語字幕付きである。
※「ドンバス、忘れられた戦争」(アンヌ-ロール・ボネル監督、2016)
IWJは『ドンバス』(2016)のフランス語字幕の仮和訳をした。どうぞ御覧いただきたい。
※2015年のドンバスで何が起こっていたのか? 貴重な証言の記録、2016年ドキュメンタリー映画「ドンバス」アンヌ-ロール・ボネル監督 仮訳出! 2022.4.15
日本を含む多くの西側のマスメディアは、国連安保理が全会一致で議長声明を採択したことを一斉に報じたが、残念ながら、「ウクライナ情勢-ロシア連邦政府代表部主催の国連安保理アリア・フォーミュラ会合」については、ロシアメディア以外の報道は見当たらなかった。もちろんロシア側が提示した証言の信頼性は、今後さらに吟味されるべきだ。しかし、非公式とはいえ、国連安保理に提出された資料である。まずはメディアが取り上げなければ、議論も始らない。
2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、西欧側と非西欧側に、世界が政治的にも経済的にも分断が進んでいる。
ウクライナ政府はキエフに「メディアセンター」をつくり、そこに参集するジャーナリストのために飲み物などを用意し、毎日会見を開いている。ロシア軍による民間人殺害の現場とされる「ブチャ・ボロディアンカのバスツアー」も開催しているという。西側メディアの報道の多くはウクライナのメディアセンターから始まり、ロシア側から取材しているジャーナリストはほとんどいないか、取り上げられていない。報道の面でも大きく分断が進んでいる。
「ロシアメディア」というとすぐに「フェイクでしょ」という声が上がる。しかし、それでいいのだろうか?
前述した通り、ロシア側は多くの証言動画を公開している。
「ウクライナ情勢-ロシア連邦政府代表部主催の国連安保理アリア・フォーミュラ会合」の様子は国連のサイトで公開されている。「フェイクでしょ」という方もどうぞ、御覧いただきたい。
※【速報6116】国連、7日:会議の様子は、国連の記録動画で見ることができます。ボネル監督は29分ごろから登場します。(ウクライナ情勢-ロシア連邦政府代表部主催の国連安保理アリア・フォーミュラ会合)