2022年2月19日午後1時30分より、東京都千代田区のたんぽぽ舎にて、たんぽぽ舎講座会議の主催、人権と報道・連絡会、創出版、同志社大学社会学部浅野ゼミOB・OG会の協賛により、「戦時下の新聞と今のぼくら-アーサー・ビナード&浅野健一による『ペテン学』レッスン!」が開催された。
この講座は、元共同通信社記者であり、同志社大学社会学部で教鞭もとるアカデミックジャーナリスト・浅野健一氏が選ぶ講師による「人権とメディア」連続講座の再開第1回目である。
この日は、詩人のアーサー・ビナード氏をゲストに迎え、浅野氏の著作『天皇の記者たち-大新聞のアジア侵略』(スリーエーネットワーク、1997年)をもとに、第二次世界大戦当時のマスメディアの侵略戦争に対する責任と、現在のメディアの状況、特に「報道」と「プロパガンダ」は何が違うのかについて、両氏が講演・討論するものであった。
まず、浅野氏が「戦時下の大本営発表報道より悪い現在のマスメディア報道」と題した報告を行った。
浅野氏は2020年4月、下咽頭がんのため声を失ったが、今回はパソコンで打った文字をプロジェクターで投影し、スライドとAIによる音声読み上げ機能を駆使した「無声ジャーナリスト」「生涯一記者」として、新たな出発となる記念すべき講演となった。
浅野氏は日本のメディアの現状について、次のように指摘した。
「北京の冬のオリンピックをめぐり、日本のメディアは、中国には、表現の自由、報道の自由がない、と批判しています。たしかに、国境なき記者団の『世界報道自由度ランキング』では、中国は最下位に近い177番目です。
しかし、日本も67位です。これは、G7、主要7カ国の中では最下位にあたります。ほかの国の人権やメディアの問題をいうのと同時に、自分の住む国の状況も忘れないことです。
日本では、憲法で一切の表現の自由が保障されていて、法律では、世界でトップ級の自由度があります。ところが、人民の知る権利を代行する新聞・テレビなどのマスメディアは、ジャーナリズムとして十分には機能していません」。
浅野氏は、その背景を以下のように説明した。