5月21日、大阪大学の荒瀬尚教授らを中心とする研究グループが、新型コロナウイルスに感染した際に、感染を防ぐ「善玉」である「中和抗体」だけでなく、感染を増強させる「悪玉」、「感染増強抗体」も産出されることを世界で初めて発見したと報告した。
これまでにも、「感染増強抗体」の産出はデング熱などで確認されてきたが、新型コロナウイルスでは初めての報告である。
「感染増強抗体」は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の特定の部位に結合すると、抗体が直接スパイクタンパク質の構造変化を引き起こすことが報告されている。その結果、新型コロナウイルスの感染性が高くなる可能性があるという。
新型コロナのワクチン接種についても、ウイルスが持つ遺伝情報と全く同じ遺伝情報を合成し、それを体内に入れることで「善玉」である中和抗体を生じさせる効果はある。しかし、それと同時に「悪玉」である感染増強抗体を生じさせ、中和抗体の効果を減弱するとされている。
つまり、ワクチンの効果を薄めてしまう可能性があるということである。
ただし、論文では「十分量の中和抗体が存在する状況では、感染増強抗体の影響は見られなかった」とも報告している。必ずしも感染増強抗体が体に影響するわけではなく、「悪玉」と「善玉」の産出される数が問題となっている。
また、この研究結果は「悲報」だけでなく、「朗報」でもある。
「悪玉」である感染増強抗体の発見は、これまで原因が分からなかった重症化する人と、極めて軽症ですむ方の違いや、ワクチン接種完了者でも、感染してしまうブレイクスルー感染の原因究明など、明らかになってくる可能性もある。
また、感染増強抗体の産出をしないワクチンを開発することによって、より感染者、重症者の数を減らすことが今後期待されている。