<スクープ!>グルメサイトから飲食店の感染対策「密告」の仕組み! 批判を受けて西村康稔コロナ担当大臣は引っ込めたかのような報道が! しかしIWJ記者が内閣官房を直撃取材すると、「撤回したわけではない」「『密告』はあると思います」と驚きの回答! 2021.7.23

記事公開日:2021.7.23 テキスト
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(取材、文・木原匡康 文責・岩上安身)

 西村康稔新型コロナ担当大臣は、2021年7月2日に、飲食店の新型コロナ対策の実施状況に関して、グルメサイトを通じた、一般市民からの情報提供制度を導入すると発表した。

 飲食店の対策実施状況を確認する「第三者認証」のためだという。しかし、これに対して、「『密告』で飲食店を取り締まるのか」「ライバル店や悪意のある書き込みがされるのではないか」等の批判が噴出し、国会でも野党から追及された。

 その結果、7月16日に西村大臣は「今の段階ではこのシステムはなじまない」と説明して、制度導入を見送ったと各紙が報じた。

 この制度を容認した菅義偉総理を、「密告」制度によって78万人を粛清した旧ソビエト連邦の独裁者・スターリンになぞらえ、「スガーリン」と痛烈に批判する記事もネット上に出た。また、この「密告」制度の導入の見送りは、西村大臣が提案して撤回した、金融機関・酒販業者への取引停止要請の撤回に続く3つ目の「失政」であることは明らかだった。

 しかし、西村大臣と政府は、本当にこの「密告」制度導入をあきらめたのか? この疑問をもったIWJは、内閣官房コロナ室に直撃取材した。

 その結果、内閣官房の担当者は、制度を「撤回まではしていない」と回答。メディアで流布されたイメージとはまるで異なる答えである。

 制度の目的が、飲食店の「第三者認証」を担保するためで、お酒の提供を許すなど「第三者認証のインセンティブ」が、緊急事態宣言期間に「なじまない」ため、導入を見送ったが、蔓延防止期間には改めて導入を検討するという。

 さらに担当者は「『密告』はあると思います」「(制度を)構築させていただきたい」との、驚くべき発言まで行った。

記事目次

▲西村康稔コロナ担当大臣(画像:Wikipedia、内閣官房内閣広報室)

西村康稔コロナ担当大臣が発表した、グルメサイト通じた「密告」制度に批判噴出! 西村大臣は「導入見送り」と報道!

 インターネットのグルメサイトを通じて、利用者から、飲食店の新型コロナ対策の情報を収集する制度の導入を、西村康稔コロナ担当大臣が2021年7月2日の会見で明らかにしたことを、産経新聞他が報じた。

 制度の内容は、「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパー」のサイトから、国が設けるページにリンクを張り、利用者が「手指消毒するよう声をかけられたか▽座席は1メートル以上離れていたか▽食事中以外のマスク着用を勧められたか▽換気は十分だったか」等の設問に回答するというものである。「都道府県が実施している第三者認証制度の質の担保に役立てる」として、7月中のスタートを目指していた。

 「第三者認証制度」とは、2021年4月30日付けで、国が各都道府県知事あてに導入を依頼した、飲食店のコロナ対策を認証する制度である。

▲福島県と愛知県の第三者認証の認定店に配布されるステッカー。県の担当者が現地調査をして認証を与える。(福島県庁と愛知県のHPより)

 しかし、このグルメサイトを通じた飲食店情報の収集制度導入に対して、利用客からの「密告」をうながすものであり、ライバル店や悪意のある書き込みがなされるのではないか等の批判が起こった。

 7月15日の参院内閣委員会では、日本共産党の田村智子議員が「一般市民からの“密告”で飲食店を取り締まろうというのか」と批判、撤回を求めた。

 その結果、西村大臣は7月15日には「都道府県と連携して進めていきたい」と撤回は否定したものの、7月16日の記者会見で「今の段階ではこのシステムはなじまない」と説明して、現状での制度導入を見送ったと、しんぶん赤旗や東京新聞等で報じられた。

「密告」で78万人粛清のスターリンにならう「スガーリン」菅政権!! 「密告」制度見送りは、金融機関・酒販業者への取引停止要請撤回に続く3つ目の「失政」!

 こうした「密告」を国が推奨するかのような制度に対して、批判や反発の声が次々と噴出している。ビジネスコンサルタントの今市太郎氏は以下の記事内で、西村大臣の上司である菅総理をソ連の独裁者スターリンになぞらえて痛烈に批判している。

かつてソ連のスターリンは「密告」を利用して、自らの意見に反対する者を粛清し、約78万もの人を殺害した。今市氏は、この「密告」制度を容認する菅総理を「スガ―リン」と呼び批判している。

▲29年間に渡ってソビエト連邦の最高指導者の座にあったヨシフ・スターリン(画像:Wikipedia、U.S. Signal Corps photo.)

▲菅義偉内閣総理大臣(画像:Wikipedia、内閣官房内閣広報室)

 このグルメサイト「密告」の制度の見送りは、飲食店をターゲットに、西村大臣が提案して撤回した、金融機関および酒販業者への取引停止要請の撤回に続いて3つ目の「失政」である。

西村大臣と政府は本当にこの「密告」制度導入をあきらめたのか? IWJは内閣官房コロナ室に直撃!

 しかし、マスコミが報じたように西村大臣および政府は本当にこの「密告」制度の導入をあきらめたのだろうか? IWJでは「今の段階では」という西村大臣の言葉に、引っかかりを覚えたため、内閣官房に直接取材することにし、内閣官房コロナ室の川崎雅浩主査にお話をうかがった。

▲内閣官房が所在する内閣府庁舎と中央合同庁舎第8号館(右奥)(画像:Wikipedia、Yuukokusya)

IWJ記者「西村(康稔)大臣が提案された、グルメサイトを通じて飲食店のコロナ対策の状況をアンケートを取るという件に関して、7月2日の会見で発表後、批判を受けて撤回されたと聞いていますが、現状ではやめることになっているんですか?」

川崎雅浩主査「整理させていただきますと、7月2日に(西村)大臣が申し上げたのが、飲食店の第三者認証制度を各都道府県で導入いただいているところですが、それの質の担保のために、グルメサイトを通じたフィードバックシステムです。

 これはグルメサイトを通じた、とあるものの、結局アンケートについては、国の統一したサーバーのシステムの中で運用していくもので、グルメサイトさんの、たとえばアンケート(ぐるなび版)とか、アンケート(食べログ版)とか、そういうものが存在するわけではなくて、1個しかアンケートとしてはシステムがない。

 それについて、グルメサイトさんを通じて、飲食店を予約等利用をされる方が多いので、善意の範囲で、グルメサイトさんに、アンケートフォームのURLを貼っていただくとか、要は間をつないでもらう、みたいなところだけ、グルメサイトさんにご協力いただくというところで、グルメサイトを通じたフィードバックシステムっていうところを、発言させていただいたというものです」

 このシステムの詳細については、7月2日付けで国が各都道府県知事あてに送付した、下記の事務連絡によって、しくみとアンケート内容案が示されています。川崎主査の説明はこれに沿って補足する内容となっています。

お酒の提供を許すなどの「第三者認証のインセンティブ」が、緊急事態宣言期間に「なじまない」と西村大臣は発言した!?

IWJ記者「つまり、グルメサイトを見ていると、こういうことを国がやっているので、リンクを飛ぶとアンケートがあるとの紹介があり、国のサイトに飛ぶというものですか?」

川崎主査「おっしゃる通りです。この点については、『やらない』ということは申し上げていなくて、これは7月16日の大臣の記者会見で申し上げました」

 「『やらない』ということは申し上げていない」!? 川崎主査の言葉に耳を疑いました。

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