2021年6月29日(火)、午前11時55分より、東京・経済産業省庁舎にて、梶山弘志経済産業大臣の定例会見が開催された。
冒頭、梶山大臣からの報告事項はなく、そのまま、梶山大臣と各社記者との質疑応答となった。
記者からの質問は、昨年7月31日に開かれた東芝の定時株主総会の運営の公正性について、東芝が6月10日に公表した調査報告書に関することと、6月23日午前、関西電力が再稼働させた、運転開始から44年を超える美浜原発3号機に関することの2件に集中した。
IWJ記者は、経済産業省と東芝が一体となって行った、株主の「議決権侵害問題」について、以下のとおり質問をした。
IWJ記者「6月10日に公開された東芝の一部株主の議決権や提案権を侵害した問題では、経産省幹部と東芝が緊密に連携を取りながら、議決権15.46%のエフィッシモ、4.43%のHMD、4.13%の3Dなどの外資系株主に対して圧力をかけていたことが明らかになりました。
※6月10日に東芝が、124ページにも及ぶ第三者委員会の調査報告書による。
https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20210610_1.pdf
東芝は安全保障に関わる原発メーカーであり、いわゆる『国策民営』会社ですが、2006年に買収した米ウェスチングハウスの破産によって、東芝は債務超過を解消するために第三者割当融資を実施し、その結果、東芝の外国人株主比率は今でも6割を超えています。
議決権侵害問題の根本にあるのは、国の原発政策です。すでに採算の合わないことが明らかになっている原発に固執し続ける政府は、日本の経済と産業、そして企業を滅ぼしかねないと考えます。
東芝の経営を窮地に追い込み、経産省と東芝の異常な癒着を生んだのは、日本の原発政策ではないかと思うのですが、大臣のご見解をお聞かせください」
この質問に対し、梶山経産大臣は、以下のとおり回答した。
梶山経産相「これ、これまでも記者会見で説明をしてきています。記者会見の場においでになったかどうか、わかりませんけども。私どもは、違う見解だということです。
原子力の技術に関しては、ALPS(多核種除去設備)を製造して、また廃炉の担当もしているということ。量子技術に関しても、やはりこれも、突出をした技術を持っているということ。さらに、レーダー等の防衛技術についても技術を持っているということ。
まあ、そういった面も含めて、安全保障の観点から、私どもはこの業務を遂行しているということでして、適正に遂行しているものだと思っています。
その調査書は、あくまでも、まあ一方的な、私どものほうでは、ものによっては一方的な推論だけで成り立っているという思いがありますし、まあ、こちらとしては、確認をしながら、ひとつひとつの業務の適正さというものは確保しているということでありますので、まあ、あの、ひとつひとつの調査、向こうの主張に対して、私どもが調査をしたり、異論を唱えたりすることはありません。
以上です」
なぜ、調査書が全体として「一方的な推論だけで成り立っている」と批判しながら、各論レベルでは、「ひとつひとつの調査、向こうの主張に対して、私どもが調査をしたり、異論を唱えることはありません」という結論になってしまうのだろうか? これでは議論が成り立たない。
経産省は、第3者委員会の調査報告書の内容に対して、正面から向きあって、誠実かつ丁寧に回答すべきではないだろうか?
梶山大臣と各社記者との質疑応答は、全編動画にてご確認いただきたい。