10月20日午前11時5分から、梶山弘志経済産業大臣の定例会見が開かれた。IWJ記者が中継するとともに、質問を行った。
IWJ記者「東京電力福島第1原発事故をめぐる生業訴訟で、仙台高裁は、国が規制権限を行使しなかったのは違法として、国と東京電力に約10億円余の支払いを命じましたが、国と東電は13日、上告しました。
上告した国は、高裁判決で大津波を予見できた根拠にした、国の地震予測『長期評価』に対し『十分な科学的根拠を伴う知見ではない』『信頼性は低く津波を予見できなかった』などとして、大津波の予見可能性と事故の結果回避可能性を否定していると報じられています。
『十分な科学的根拠を伴う知見ではない』『信頼性の低い』予測を立て、それをもとに判断し、事業を推進したのはいずれも国ですから、責任は当然国にあると考えられます。しかも二重に責任があります。さらに責任回避のために、上告すること自体、国は三重に国民を苦しめる罪を犯しているのではないかとすら思われますが、梶山大臣ご自身のご見解をお聞かせください」
梶山大臣「これは係争中ですので、私からのコメントは差し控えさせていただきます。私は経済産業大臣としてのコメントを差し控えさせていただくということであります」
地震予測の信頼性を国が否定しても、予測を行った国は責任を逃れられないはずである。また仮に国が言うように信頼性が低ければ、なおさら事業推進に慎重になる必要があったはずだが、逆に国は視界が不良なのでブレーキを踏まなかったというのだ。「係争中」だからというより、説明不能だったのではないだろうか。
IWJでは、仙台高裁判決への国と東電の上告に対する生業訴訟原告団の声や、原子力規制委員会の見解等を報じている。ぜひ御覧いただきたい。
- 仙台高裁勝訴の生業訴訟原告団が東電、原子力規制委員会、国に上告断念を要請! しかし原子力規制庁は原告団庁内立ち入りを拒む非礼!~10.7 #生業訴訟 #国と東電は上告するな 生業訴訟原告団・弁護団 による申し入れ・座り込み 2020.10.7
- 「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟 福島県との交渉報告と上告対応について記者会見―登壇:中島孝氏(生業訴訟原告団長)、馬奈木厳太郎氏(生業訴訟弁護団事務局長) 2020.10.13
- 地震調査研究推進本部の見解は十分な科学的根拠をともなう知見ではない!? 国の責任を認めた福島第一原発仙台高裁判決に対し、上告理由として述べた規制庁会見に質問集中!~10.14原子力規制委員会 更田豊志委員長 定例会見 2020.10.14
大臣会見のその他の質疑応答でも、原発関連の質問が目立った。
福島第一原発から出る処理水(汚染水)の処分方針が、早ければ10月27日にも関係閣僚会議で最終判断されると報道されていることから、その検討状況と最終判断までの日程が、幹事社の朝日新聞から質問された。
しかし梶山大臣は「政府方針や決定時期は決めていない」と回答。「処理水を置く敷地の逼迫から方針の先送りはできない」と認めつつ、「意見を整理して検討を深め、適切なタイミングで結論を出す」と、具体性のない説明に終始した。
岩上安身は、汚染水の処理方針決定の限界が迫った今夏、福島原発事故を追及するジャーナリストの青木美希氏に、汚染水海洋放出問題に関してインタビューを行なっている。
また、六ケ所再処理工場が立地する青森県と関係閣僚の意見交換の場として、10月21日に10年ぶりに開催される「核燃料サイクル協議会」の議論内容を問う質問があった。
大臣は「7月の六ケ所再処理工場の事業変更許可を受けて、青森県知事から要請があった」「協議会を通じて、青森県をはじめ地元のご理解を得つつ、核燃料サイクル政策を推進をしていきたい」と語った。
六ケ所再処理工場の事業変更許可とは、原子力規制委員会が同工場の安全対策方針が新規制基準に適合すると認めて7月29日に行った許可をさす。当時記者会見を行った原子力規制委員会の更田豊志委員長は、許可の審査基準について、「文書化し難い審査チームの受け止めみたいなものはある」と不透明さを残した。またその後、安全確保のため冷却塔の新設工事などの必要が生じ、工場の完成時期が21年度から22年度に延期されている。大臣の回答はこうした経緯の詳細にはまったく触れていない。
さらに、再生エネルギーも長期スパンで計画するため、専門家やガス業界等から、国は原発の新増設の方針を早く示すべきとの声がある、どう考えるかとの質問が北海道新聞からあった。
大臣は「現時点においては、原発の新増設、リプレースは想定していない」としながら、「設備投資には中長期の視点が必要で、まずは再稼働がどうできるか。60基のうち24基が廃炉になった。残りのうち建設中のものも安全審査未申請のものもある。何基再稼働でき、どういう稼働率で運転できるか考えなければならない。今の時点から新増設、リプレースを言える時期ではない」「(新増設の方針を示すべきという)識者の声も含めて、エネルギー基本計画の中で考えて対応したい」と述べた。
IWJは、原発再稼働等の問題も追及し続けている。
- 「原子力政策がどちらに振れていようが規制は変わらない」!? 規制庁発足当時の「脱原発」から「再稼働」に変わったのは旧組織の表れではとの指摘に答えて~10.7原子力規制委員会 更田豊志委員長 定例会見 2020.10.7
- 高浜原発バックフィット・停止義務付け訴訟 記者会見 2020.10.5
- 老朽原発うごかすな!大集会 in おおさか 2020.9.6
- デンジャラス原発にレッドカード!老朽原発40年廃炉・名古屋訴訟 記者会見+報告集会 2020.7.27
その他、Go To 商店街、中国の輸出規制法、東京五輪へのサイバー攻撃の対処について質疑が行われた。