【岩上安身のツイ録】繰り返される土砂災害「朝からの対策では手遅れ」なのに「7時に安倍総理は何をしていたのか」 「モーニングバード!」で岩上安身がコメント 2014.8.29

記事公開日:2014.8.29
このエントリーをはてなブックマークに追加

 8月26日(火)朝8時から、テレビ朝日「モーニングバード!」に出演しました。

 北海道の宗谷岬の先に浮かぶ礼文島で、土砂崩れによって、高齢の母と、介護をしていた娘が亡くなるという、痛ましい出来事がありました。避難勧告が出されたのは、その4時間後のことでした。広島での大惨事といい、土砂災害が繰り返されるのには、何か理由があるように思えてなりません。

 この他、少子化を背景に代々木ゼミナールが予備校事業の縮小を決定したニュース、広島市の土砂災害避難所で「壁新聞」が被災者の方々を勇気づけているというニュース、そして住基ネットの情報が閲覧権限をもつ公務員によって目的外の「のぞき見」をされたというニュースにもコメントをしました。

礼文島の土砂災害

 北海道では24日、道北を中心に大雨が降り続きました。この影響で同日午後1時ごろ、宗谷管内の礼文(れぶん)島では石戸谷(いしとや)勉さん(85)宅の裏山で土砂崩れが発生し、木造2階建ての家屋は倒壊。石戸谷さんの妻・妙子さん(81)と長女の富士代さん(55)が亡くなる惨事となりました。石戸谷さんは胸に怪我を負いました。

 土砂崩れが相次いでいる礼文島では、東西を走る車道の通行止めが続き、復旧のめどが立っていません。このため、26日午後4時時点でも、西海岸に位置する元地(もとち)地区の全ての46世帯88人が孤立状態に置かれています。25日には、町職員が漁船で孤立地域に入り、高齢者らに薬を届けました。26日午後にも、漁船による生活物資の輸送が計画されました。

 24日午前10時20分には、礼文町に土砂災害警戒情報が出され、北海道の危機管理対策課は、礼文町の担当者に対して、避難勧告を出すよう、数度の電話で促していたといいます。

 しかし、町役場では浸水被害への対応で手がいっぱいで、職員派遣の見通しが立たなかったことから、発令を見送っていました。この間、午後1時ごろには、石戸谷さん宅裏で土砂崩れが発生します。結局、避難勧告が出されたのは、午後4時50分ごろでした。

岩上「各地方自治体は、避難のためのマニュアルを作らなければなりませんね。ところが小さい自治体だと、そこまで手が回らないといいます。だから、まだ作成が遅れている所もある。今回の場合は町の職員が見に行き、大丈夫だろうと判断したそうですね。

 しかし、このような事態を招いてしまった。『もっと早めに手を打てば』という気持ちがおありでしょう。ただ、マニュアルが準備できていなかったという点が、対策が後手に回った原因になったのかなと思いますね。

 夜半に大雨が降り、それが朝方の土砂崩れの原因となる。そして初動が遅れてしまう。広島の場合と同様のパターンが続いています。気象的にこのパターンがあるとすれば、市、県、国も、夜中に対策本部を立ち上げる必要があることを自覚しなければなりません。

 つまり、朝から対策を打ち始めるのでは手遅れになるということですね。広島の場合では、朝8時から10時のラッシュに自衛隊が巻き込まれ、駐屯地から被災地までわずか15kmの距離を移動するのに数時間を要しました。

 仮にあと1時間だけでも初動が早ければ、助かる命があったのではないかと思われます。広島では夜中の1時すぎに土砂災害警戒情報が出され、4時すぎには官邸の危機管理センターに情報連絡室が設置された。そして7時に安倍総理は何をしていたのか。ゴルフですよ。

 たとえば、4時なら4時に官邸に連絡をとるなり、あるいは早く官邸に戻るなりして、総理が陣頭指揮をとり、1時間でも早く自衛隊を動かす決断をしていれば、救える命はあったのではないか。

 朝のラッシュも、どこの都市でもありますから、セットで考える必要がありますね。夜中に雨が降るならば、自衛隊は朝早くから被災地に到着していなければならない。ということは、動き出しは真夜中だということですね。これは教訓にしていただきたいことですね」

 今回の土砂災害発生の原因には、さまざまな要因が考えられます。ここでその全てを考察するわけにはいきませんが、二つだけ思い当たるものを紹介しておきます。

 まず、山崩れ発生研究の専門家は、砂防ダムの不足を挙げます。砂防ダムとは、土石流などの土砂災害の防止を目的とする設備の一つです。実は、国土交通省は、今回の土砂災害で甚大な被害を受けた、広島市北部の安佐南区八木地区で、少なくとも9基の砂防ダムの建設する計画を立てていました。ところが、現在のところ、そのうちの1つも完成していません。計画では、2014年度中に2基が完成する予定だったといいます。

  • 2014/8/21 東京新聞「広島土砂災害31カ所確認 積乱雲続発で豪雨か」(記事削除)
  • 2014/8/25 共同通信「砂防ダム計画は9基、完成ゼロ 被害集中の八木地区」(記事削除)

 仮に砂防ダムが建設されていたとしても、その運用管理が適切になされなければ、防災機能を果たすことができません。砂防ダムには土砂が堆積していきます。その土砂を取りのぞく浚渫(しゅんせつ)作業が欠かせないはずです。ところが、この作業が行なわれていない、というのです。

 元長野県知事の田中康夫氏は、「竣工後に溜まった土砂の浚渫(しゅんせつ)・除去は全国津々浦々、未だ嘗て実施された事例が存在しません」と指摘しています。

 田中氏は、知事就任当初に旧建設省より、7000カ所の砂防ダム建設の提案を受けたことを、明らかにしています。既存の砂防ダムの掃除をしないで、新しいものをどんどん建造して、公共事業を永続させようとする役所と業者の思惑があったわけです。広島の未曾有の土砂災害につけ込むようにして、「だからアベノミクスの国土強靭化計画が必要だ」と、公共事業の予算拡大をここぞとばかりに唱える声が一部から上がっています。

 しかし、こうした声には警戒を要します。砂防ダムを次々と造り続けるのは巨額の予算がかかり、現実味がありません。公共事業は必要ですし、治水・防災事業はもちろん急務です。問題はその中身であり、質です。

 田中氏の「堆積の浚渫・護岸の補修・森林の整備。これらを常日頃から怠らぬことこそ、地元雇用を生み出す地域密着型公共事業」という提言は、派手さはありませんが、堅実で、うなずける部分があります。

 この他、宅地造成計画の甘さを指摘する声もあります。

 京都大学の専門家らによれば、被災地は「まさ土」という、花崗岩が風化した砂が広く堆積する地域だったということです。「まさ土」は水の浸透により脆弱になりやすい性質があります。1999年に広島で起きた豪雨による土砂災害は、この「まさ土」という地質が要因となって発生したものです。

 さらに、別の専門家による現地調査によると、地質が「まさ土」ではない場合でも、土石流が発生していたことが明らかとなりました。この専門家は土石流が発生した3つの谷を調査しましたが、そのうちの1つは、「変成岩」による地盤だったということです。これまで「変成岩」の地盤は、水の浸透による崩壊の危険性が少ないと理解されてきましたが、この常識はこれから通用しなくなるかもしれません。

 いずれにしても、広島の被災地では、「谷筋の奥まで宅地化されている」という点が、今回の大きな被害につながった可能性があります。災害時に土石流に襲われる可能性のある地域に宅地造成した不動産会社、その許可を出した役所の責任が問われる必要があります。同時に、住宅を購入する消費者にも、水害や土砂災害にあいやすい地形や地盤についての知識がいっそう求められます。

 「まさ土」は関西より西に多く分布しています。また、最新の追跡調査では、「まさ土」以外の土質でも土砂崩れが起きたことも明らかになりました。さらに、「変成岩」が重なった地盤は、西日本から東日本にかけて広く見られるということです。

 つまり、集中豪雨が降った場合には、日本のどこにいても、地形次第では、土砂災害は起こりうるとのだ、と考えておくべきでしょう。

  • 「広島土砂災害、宅地開発が一因 京都・滋賀でも可能性」(2014/8/21 京都新聞 記事削除)
  • 「広島の土砂災害 まさ土以外でも土石流発生」(2014/8/26 NHK 記事削除)

代々木ゼミナールの事業転換

 大手予備校の「代々木ゼミナール」が全国の27校舎のうち22カ所の閉鎖を決めました。また、9月からは40歳以上の職員に対し早期希望退職者を募り、さらに来年1月からは、「国公立2次・私大全国総合模試」や「センター試験プレテスト」などの全国模試も廃止するといいます。

 代ゼミが得意としてきたのは、私大受験を目指す浪人生向けの授業。何百人も収容が可能な大教室が、その代名詞でした。授業に立ち見が出るほどの盛況ぶりだったという著名講師を思い出される方も多いかもしれません。

 しかし、少子化の影響による18歳人口の縮小は、予備校にとっては、顧客が消えていくことを意味します。また、ここ数年は受験生の現役志向の高まりもあり、浪人生の数も減少傾向にありました。さらに、数が増加した私立大学の間では、少ない学生の奪い合いが起こり、入学試験の多様化などが進んだ結果、ますます大学入学の敷居は低くなることになりました。

岩上「学生が多い世代、団塊ジュニアの世代が受験生だった時代は熱気がありましたよね。その後急速に少子化が進みます。

 子供の数が少なくなり、その世代向けのビジネスが、保育園児、小学生向けなどから順々にさびれていき、とうとう、20歳前後を対象とするビジネスが枯れてくるところにさしかかっているのだと思います。

 もう少し時間が経てば、自動車だとか不動産購入にも、どんどん影響していくと思われますね」

 栄光盛衰を感じさせるニュースですが、代ゼミはすでに次の手を打っていたようです。

 番組で紹介された、名物英語講師「金ピカ先生」こと、佐藤忠志さんには、私もかつて、インタビュー取材をしたことがあります。佐藤さんの証言によれば、巨大な校舎建物は結婚式場に転用するという話もあったとのこと。また、多くの代ゼミの校舎は駅のすぐ近くに立地しますが、これはオフィスビルや社員寮として売却する可能性を見越して入手したものだったといいます。

 実際、すでに2011年には、取り壊された代々木本校JEC2号館の跡地に「代々木ヴィレッジ」という複合商業施設をオープンさせています。また、建て替え中の名古屋校では、23階建ての建物のうち、19フロアはホテルとなる予定だといいます。この他にも、貸会議室会社に貸し出されている校舎もあるなど、事業の転換は、予想よりはるかに進んでいるようです。

岩上「人口動態の変化を完全に把握していたとしたら、経営者は大変な慧眼の持ち主だということになりますね。若者人口が一時的に膨らみ、その後急速に減っていく。その流れの中で、最初はマンモス的に予備校経営を進め大成功する。ここで資本形成をし、不動産を入手する。

 その後、予備校の顧客が少なくなってきたところで、今度は全く別の事業を始める……。ここまで見据えていたとしたら、経営者として、相当の『切れ者』だったということになりますね。

 対照的なのが大学ですね。文部科学省が新規大学の設置を片っ端から認可してきたこともあり過剰供給です。誰でも入学できるどころか、私立大学の4割以上で定員割れの状態。中には国の補助金を受けられる留学生を受け入れ、なんとか経営を成り立たせている大学もあるそうです。

 このような日本の大学に、業態を転換したときのヴィジョンがあるのかといったら、ないでしょうね」

 「予備校」という本業の生き残り競争では、ライバルの河合塾や東進ハイスクールなどに水をあけられ、敗退した、というイメージの強い代ゼミですが、冷徹なソロバン勘定だけでいえば、代ゼミは「負け組」ではなく、「勝ち組」かもしれないのです。

 このドラスティックな事業転換の「絵」を描き、実行に移したのは誰なのでしょうか。

 脇道にそれますが、興味深いのは、代々木ゼミナールの創設者の一人に勝俣久作氏がいて、その息子に当たるのが勝俣恒久氏である、という点です。

 勝俣恒久氏は、福島第一原発事故当時の東京電力取締役会長。「カミソリ勝俣」という異名をとった経営者でした。座右の銘が「ケ・セラ・セラ」。「なるようになる」という意味です。

避難所の壁新聞:「メディアの原点」

 20日未明に広島市北部で発生した土砂災害事故ですが、いまだ行方不明者の捜索活動が続いています。一方、避難所での生活を余儀なくされている被災者の方々は1600人を越えています。避難所として使われているのは、市内の小中学校です。夏休終了とともに授業が再開されるはずでしたが、延期を決める学校も出ているといいます。

 そんな中、被災者およそ600人が避難している梅林(ばいりん)小学校では、一つの「壁新聞」が人びとに元気を与えています。「ファイト! 梅林しんぶん」を発行したのは、中学1年生の宮本博代さん(12)と小学5年生の道上ゆなさん(11)。二人とも避難勧告を受け、梅林小学校での生活を続けています。

 二人は、スリッパの置き方を巡り口論している大人たちの姿を目撃し、「スリッパをそろえよう!」と見出しをつけた一面の壁新聞の制作に取り組むことになりました。宮本さんは、「子供なので力仕事は手伝えないので、何か役立てるかなと思って……」と動機を語りました。

 しっかりした2人の口調にスタジオの出演者たちは全員、感心しきり。

岩上「このように、本当に『届けなきゃ』と思うことを届けるのがメディアの原点ですよね」

 初心忘るべからず。自戒の念を込めてのコメントでした。

「のぞき見」される住基ネット

 奈良県生駒市で21日、市役所市民課主査の女性職員(59)が戒告の懲戒処分となりました。業務外で住民基本台帳ネットを検索し、市外在住の男性タレントの個人情報を閲覧したことがその理由です。職員は、「ファンで、興味本位だった」と動機を話しています。

 この職員は、住基ネットにアクセスするための専用端末を使用する権限を持っており、8月11日3時半ごろ、男性タレントの情報を住基ネットで検索しました。同日5時30分ころ、住基ネットの全国センターは市に対して、この男性タレントの検索履歴があることを指摘し、業務上のものであるかどうかの確認を求めます。市が調査したところ、この職員が業務外で行ったことが判明したということです。

 この「のぞき見」を発見できたことにより、住基ネットだけを管理する全国センターの監視機能が充分に機能しているのかと、思い込んでしまいがちです。しかし、実態は、全国各地の検索履歴を目視で監視しているという話です。今回は検索された人物がたまたま有名人だったので、不正なアクセスであることが明らかになりました。言いかえると、検索の対象が一般人であれば、アクセスが不正であると、容易には見抜けない場合も考えられるわけです。

岩上「チェックシステムが、あるようでない、ということですね。住基ネットの全国センターも、有名人の検索履歴だったから気づいたということですからね。

 有名ではなくても、重要な人物に対する検索履歴があったとしても、これは発見されない。つまり、この制度はチェックができないものなのです。制度的に、どかっと大きな穴が空いている。閲覧権限者が不正にアクセスしようとする意図を持ったときには、何もできないんです。

 これは制度の開始時点から指摘されてきたことです。ただ、当初の批判は、お金、利権、あるいは権力闘争に用いられるのではないかという懸念からくるものでした。

 ところが今回の事件から分かるように、興味本位であったり、ファン心理であったり、たんなる好奇心であったり、不定形でとらえどころのないことを理由に、人が不正をすることが明らかとなりました。仮に不正防止のための制度設計があったとしても、見る人は見る、悪用する人は悪用する。こう言わざるを得ません。

 何かいい方法があるのか、と問われても、私にはとても思いつきません。言っておかなければならないのは、住基ネットは根本的に穴の空いた制度だということです。今回の事件をきっかけに、住基ネットに関して、本気の議論がなされることを強く望みます」

 住基ネットの導入時には、利便性や効率ばかりが強調されてきました。しかし目先の効率の追求ばかりに目を奪われ、安全性をおろそかにした巨大システムは、事故を引き起こした時にはとてつもない災厄をもたらします。これは、原発事故をみていれば明らかです。

 住基ネットは、国民の個人情報を電子データの形で一元化してしまった巨大システムです。ファイアウォールで外部からの不正アクセスを防ぐといっても、原子炉の多重防護の論理と同じことで、内部から揺さぶられ、食い破られれば、防ぎようがありません。

 データの不正アクセスが可能であるなら、不正な取得や漏出も可能です。作意ではなくとも、事故も起きえます。事件も事故も起こらない、という想定自体が、誤っているといわざるをえません。

 情報はいったん流出したら、原状回復は不可能です。取り返しがつきません。なぜ一元化する必要があるのか。事故が起きた時のダメージを最小化するためにも、せめてデータの保存は区分すべきではないか。国民の個人情報が漏洩リスクにさらされないように、制度の抜本的な見直しの議論を急ぐべきです。

★岩上安身がレギュラーコメンテーターとして出演中のテレビ朝日「情報ライブショー モーニングバード!」は、毎週火曜日午前8時から放送中! ぜひ、ごらんください。

【過去のモーニングバード!ツイ録記事】

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です