「暫定的なありようがいつ終わるか見通しのつかない人間は、目的をもって生きることができない。ふつうのありようの人間のように、未来を見すえて存在することができないのだ。そのため…..精神の崩壊現象が始まるのだ」
これは、ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」からの引用だが、ある一人の原発避難者が、「私はまさにこれだ」と、将来の見通しが立たない自身の生活と、この一節を重ね合わせたという。
(IWJ・ぎぎまき)
「暫定的なありようがいつ終わるか見通しのつかない人間は、目的をもって生きることができない。ふつうのありようの人間のように、未来を見すえて存在することができないのだ。そのため…..精神の崩壊現象が始まるのだ」
これは、ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」からの引用だが、ある一人の原発避難者が、「私はまさにこれだ」と、将来の見通しが立たない自身の生活と、この一節を重ね合わせたという。
記事目次
■ハイライト
原発事故の影響で、福島県から全国に避難している被災者らが5月14日、参議院議員会館で、住宅支援の継続を求める集会を開いた。
その中の一人、2011年5月に福島県田村郡三春町から母子避難したましこりかさんが登壇し、避難生活の心労を語った。
「私の娘は小学校を3回転校しました。今、ようやく友だちができ、遊ぶようになりましたが、母親としてこれほど嬉しいことはありません。もし、住宅支援が打ち切られたら、娘をまた転校させなければいけないのでしょうか」
震災前、三春町で黒毛和牛を飼育しながら、有機農業を営んでいたというましこさんの生活は、原発事故によって一変した。
「牛舎が娘の遊び場でした。もぎたてのトマトを取って食べるような生活でしたが、今、私も働いているため、娘は鍵っ子になり、暗い道を一人で帰ってくる生活です。娘は、小さい体の中で苦悩を抱えています」
三春町のホームページで発表されている数値を見る限り、現在の空間線量は高くない。三春町は、避難指示区域外でもある。しかし、今年3月に福島に戻った際、毎時約0.4μSvを計測したスポットもあったといい、ましこさんは、まだ福島県には戻ることはできないと話す。
現在、福島県内外に避難している被災者の数は、12万人を超える。
今年、福島県は事故後初めて、避難者意向調査を実施。4月末、福島民友が調査結果を報じた。それによると、現在の生活で最も不安なこととして、63%以上の避難者が「住居」をあげ、仮設住宅の入居期間の延長や、住み替えの柔軟な対応を要望している。
避難先の自治体によって、支援の内容や期限は異なるというが、福島県内の仮設住宅については、期限が来年3月までになっていると言われている。県外の自治体については、未だ明確な方針を示しておらず、避難者の間では、支援が3月で打ち切られてしまうのではないかと、大きな不安がうずまいている。中には、すでに住宅支援を打ち切った自治体もある。
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