2024年4月16日、離婚後も父母双方が子供の親権を持つ「共同親権」を柱とする民法などの改正案が、衆議院を通過し、参議院で審議中である。
しかし、「共同親権」の導入で、DVや虐待が続く懸念が、強く指摘されている。
この法案に反対するオンライン署名は、22万筆を超えた。集まった署名を各政党の国会議員に手渡すとともに、当事者や専門家の声を聞く集会が、2024年4月23日、都内で行われた。主催は、離婚後共同親権から子どもを守る実行委員会である。
- 共同親権とは 離婚後の子どもの親権どうなる 賛成と反対 意見の内容は?(NHK、2024年4月18日)
集会では、署名が国会議員たちに手渡された後、社民党党首の福島瑞穂参議院議員や、立憲民主党の山井和則衆議院議員などがスピーチを行った。
集会の後半では、ビデオメッセージで、立憲民主党の福山哲郎参議院議員や、れいわ新選組代表の山本太郎参議院議員等が参加。全体を通して13名の国会議員が参加した。また、法務省ほか関連省庁の官僚11人が同席した。
集会では、何人もの当事者や専門家が思いを訴えた。
「DVと虐待のサバイバー」と名乗る当事者で、DV防止法の第1回改正から関わった方は、自らの生々しい経験を交えて、法案反対の理由を語った。
この当事者は、「(法案は)本当に子供の利益になるのか? もともと養育費や面会は、親権に関係ない。(養育費が)決まっていても支払わない人が、親権者になったから、子供の幸せを考えてくれるのか?」と指摘した。
さらに、「居所が常に相手に知られることは、当事者には、恐怖以外の何物でもない」と述べ、「DVと虐待を、家庭裁判所が判断するのは、容易でない。加害側は、外面がとても良かったり、自覚がなく、(虐待)される側は、死ぬほどつらい」と語った。
また、「DVされている最中は、『自分が悪い』と信じ込まされ、相談できない」「見抜けない、相談できないDVや虐待には、性的被害もある。家族間、親子間、夫婦間でもある。自分にも体験がある」と明らかにした。
DV被害者の支援団体の方は、「『離婚後共同親権』という言葉を聞いただけで、恐怖感を抱く」という、女性や子供たちの声を紹介した。
「やっと自由になれたのに、またお父さんの言うことを聞かないといけないの? 怖い」「お父さんの言うことを聞かないと、養育費も学費ももらえない」「裁判所がDVのことを理解してくれなかったのに、共同親権になったら、何のために苦労して家を出たかわからない」などである。
その上で、この支援団体のスタッフは、「家族幻想の上で、現場の女性や子供の苦労を何も知らずに(法案を)決めている」と厳しく指摘し、「DV家庭が4人に1人」「ジェンダーギャップ指数125位で、女性が経済的自立ができない日本の地域社会」で、「共同親権はありえない」と断じた。
その他、DV被害者を診療する産婦人科医による「裁判でのDV判断のための医師の証言」が困難である実態の指摘や、子供の医療と親権の問題の弁護士による解説などが行われた。
最後に主催者が特に強調したのは、「『離婚後共同親権法案』が通ったら、子供が死ぬ事案が増えるのは間違いない」という点だった。
発言した主催者は、「住む場所を、同意がないと決められず、子連れ別居が抑制され、DV被害者が子供の虐待を救えず、死ぬケースが増える」と考えを示し、「法律に加担した全議員、全官僚、止められなかった弁護士は、責任をどうとれるのか?」と指弾した。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。