辺野古での新基地建設に反対するカヌー隊と海上保安庁の攻防が激化していた2014年8月、海上保安官3人に羽交い絞めにされ、全治10日の怪我を負わされたとして、保安官3人を特別公務員暴行陵虐傷害の容疑で告訴した岩田克彦氏に、2015年3月18日、IWJはキャンプ・シュワブゲート前で話を聞いた。
岩田氏は現在32歳。千葉県出身の農業従事者だが、10年前から辺野古の基地建設に反対する海上行動を続けてきた。2014年8月22日、カヌーに乗って、ボーリング調査中の台船に向かって抗議の声をあげている最中、『海保太郎』の名で一躍有名になった海上保安官らにゴムボートに引き上げられ、後頭部を打撲。頸椎捻挫の怪我を負った。
辺野古での基地建設阻止行動は、過去19年、非暴力を貫いてきた。2014年の選挙で示してきた「基地反対」の民意を踏みにじる強行工事に対し、非暴力の抵抗は続いている。
岩田氏は拘束当時の状況を振り返り、告訴に踏み切った思いを語った。
- 日時 2015年3月18日(水)18:00~
- 場所 キャンプ・シュワブゲート前(沖縄県名護市)
10年前、海上保安庁は「仲裁役」だった
IWJ「いつから、カヌー隊として活動しているのですか」
岩田克彦氏(以下、岩田・敬称略)「去年(2014年)の8月初めに来て、間は空いてますけど、それからずっとカヌーに乗っています。僕はもともと、10年前から辺野古には時々来ていて、その頃からカヌーの行動には参加していました。昨年8月には海上保安庁(以下、海保)が出てきたので、練習する暇もなく、即実践という感じでした」
IWJ「2004年から、段階的に海の状況が変化してきたと思うのですが、過去と比べるとどうですか。海上の様子も変化していますか」
岩田「昔と違うのは、海保が全面に出てきているという点。抗議する側と作業する側がぶつかるのを仲裁するのが、海保の役割だった。今回、安倍政権になって、首相官邸から海保に対して、全面的に抗議行動を押さえ込むという方針が出ているので、その点は大きく違う。
昔は調査をするために櫓(やぐら)に座り込んだり、作業船に抗議する状況でしたが、今はカヌー単体でそれぞれ抗議していくという形。大浦湾を5km自走してカヌーで現場まで行って抗議するというのは、昔と全然違います」
IWJ「以前、海上で行われていた工事はどんな内容のものだったのか」
岩田「ボーリング調査です。調査自体、もちろんサンゴを壊すし、調査自体が基地を作るための準備段階ですから、それ自体をなくしていくような闘いでしたね。それは今も変わらない。昔は、ゲート前の資材の搬入はなくて、海が中心の抗議でした」
テレビカメラが向けられると、顔の表情が変わる「海保太郎」
IWJ「今、海保を告訴中ですが、まず、ニュースでも大きく扱われた、『海保太郎』さんから暴力的に確保されたと。その経緯について教えてください」
岩田「昨年(2014年)8月22日に、(沖縄防衛局が)浅瀬でのボーリング調査をやっていた段階で、朝から海に出て抗議行動をしていたんですけど、スパッド台船がちょうど調査を終えて、違う場所に移動中でした。移動してる台船に向かって、僕らは『作業をやめてくれ、海を壊さないでくれ』と、フロートの前で抗議していたら、海保が前面に出てきて、23人の海猿が海に飛び込んだ。彼らは僕らのカヌーをひっぱったり、遠ざけたりを繰り返した。
仲間の一人が『安全確保』の名目で、いきなりゴムボートに乗せられ、拘束されました」
IWJ「フロートを超えてないから、警戒区域に入っているわけではないのでは?」
岩田「彼らの言い分としては、臨時制限区域に入っているという主張です。ですが、海保の職員はその場ではそういう事を一切言わないんです。なぜ確保するのかという理由を示しません。無言で確保して、ゴムボートに乗せる。『近づかないでください、危ないです』という警告はしますが、(確保する前に)一度、二度、三度、警告をするわけではなく、いきなりです」
IWJ「強いて言えば、みなさんは大きい声を出して、抗議しているだけ。それからどうなりましたか?」
岩田「海保のゴムボートが2艇、僕のカヌーを囲むような形で近づいてきました。右側のボートに乗っていた職員が、上から僕のライフジャケットを引っ張って、海の中にいたもう1人の職員は僕の足を持って、2人で僕をゴムボートに押し込むように乗せました。
すごい勢いだったので、仰向けの状態で、ゴムボートに頭を打ち付けた感じでした。後頭部に痛みを感じたので『痛い』と訴えたら、『海保太郎』が上から僕の左足をぐいと押さえ込んで、寝技のような感じでしたね。彼がその時言ったのは、『抵抗するな』と。身動きが取れないから一切抵抗できない状態だったんですよ。ゴムボートというのは一見、柔らかく見えますが、すごい硬いんですよ。強化プラスチックなんで」
IWJ「抵抗していない人をひっくり返して、頭をぶつけて、寝技で押さえ込むという行為は、『安全確保』ではないですね」
岩田「僕の身を守ってくれた、とは一切思わないです。そうこうしてるうちに、ゴムボートが動き出しました。近くに仲間の船が来ていて、そこにカメラマンが乗っていました。この状況を撮影して、海保がやっていることを全国でも放送して欲しいなと、そう思っていました。
しかし、海保太郎は、カメラマンが撮影していることが分かったとたん、僕に向かって、『大丈夫か』と声をかけて来たんです。そのシーンは、森の映画者の『圧殺の海』にも出てきます。僕を押さえ込んだ状態で『抵抗するな』と首もとを押えつけていたのに。
辺野古漁港に着いたときも、沖縄のテレビ局カメラマンが撮影していて、その時も態度が全然変わっていました。『降りてください』と、僕に一切触らないようにして。僕一人だと彼は高圧的だし、カメラの前で名前と役職、拘束の根拠を尋ねましたが、一切答えませんでした」
起訴か? 不起訴か? 7ヶ月後の今も「現在捜査中」
IWJ「その後、すぐに海保を告訴したのですか?」
岩田「解放されて時間が経ってから、休憩中に、首の右側が痛くなってきて、『首は危ないから、病院で診察だけでも受けたほうがいい』と仲間からアドバイスがあり、病院へ行きました。診断としては『頸椎捻挫』、10日間の治療を要すると。次の日の方が痛みはすごくて、首全体に痛みが広がってきました。
カヌー隊のみんなと相談して、『海保太郎』の暴力性と、カヌー隊に対する暴力事件の再発を防ぐために、海保職員3名を特別公務員暴行陵虐傷害の容疑で、検察庁に告訴しました。海の上って本当に危ないんですよ。海保もそれはよく分かっている。カヌー隊は非力なもので、波を受けたらすぐに転覆するし、カヌーを漕いでいるだけで危険な場面がある。暴力事件はなんとか避けたいという思いからです。
8月29日に告訴して、一週間以内に受理されました。起訴にするか、不起訴にするか、今は検察が捜査中という段階です」
延長を繰り返すボーリング調査「非暴力の闘いが工事を遅らせている」
岩田「沖縄の人たちがこれだけ、基地建設に反対しているのに、なぜ暴力的に工事を進めるのか。安倍政権が、力で押さえ込めば沖縄の人は黙ると思っている。力で通せば、基地はできるんだと考えているから、僕はそれは絶対に認めたくないし、許せないというのが告訴した理由です。
公務員という立場を利用して暴力事件を起こす職員に対して、『それは違う』と、告訴が大きな力になるのではないかという気持ちがありました。暴力事件が減る、抑止力にもなると」
【沖縄】海上保安庁を告訴したカヌー隊メンバー・岩田克彦さんインタビュー(柏原資亮記者) (動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/239674 … @iwakamiyasumi
本土のメディアが伝えない辺野古の声。これが、過激な反対運動だって?子供でも分かる嘘・誤魔化しだ。
https://twitter.com/55kurosuke/status/579208402573729792