IWJ代表の岩上安身です。
IWJで繰り返しお伝えしてきた米国のレジェンド、調査報道ジャーナリストのシーモア・ハーシュが9月20日に最新記事を発表しました。
タイトルは「ゼレンスキーの最悪の瞬間」です。
副題は、「ウクライナの指導者は反攻に失敗した末、嘘と脅しに頼った」となっています。
ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学名誉教授や、元国連査察官のスコット・リッター氏、ダグラス・マクレガー元米国陸軍大佐など、信頼できる人々が、こぞって、ウクライナは反攻に失敗していると断言しています。
ハーシュ氏の主張の方向性は、無料部分の前段に集約されています。
「来週の火曜日(9月26日)は、バイデン政権がノルト・ストリーム1と2の4つのパイプラインのうち3つを破壊した記念日となる。それについてもっと言いたいことがあるが、それは後回しだ。なぜか? ホワイトハウスが停戦の話を拒否し続けているロシアとウクライナの戦争は、転換期を迎えているからだ」
ところが、日本のメディアは、すべてを横並びで、ウクライナの「反撃攻勢」が成功していると報じているのです。
たとえば、26日付『NHK』は、次のように嬉々として報じています。
「ウクライナ軍の特殊作戦部隊は、南部クリミアの軍港都市セバストポリにあるロシア海軍の黒海艦隊の司令部を狙って今月行った一連の攻撃について、25日、SNSで『黒海艦隊の司令官を含む、34人の幹部が死亡した』と主張しました。
ウクライナの複数のメディアは、この司令官について去年プーチン大統領によって任命された人物だという見方を、伝えています。
このセバストポリへの攻撃の「戦果」について、『NHK』だけでなく、日本の報道がことごとく横並びで、おかしい、という問題について、本日の日刊ガイドの別稿でくわしく検証しています。そちらもあわせてお読みください。
26日付『NHK』自身も伝えていますが、ロシア側は、司令官34人の死亡について「黒海艦隊の司令官は当時、施設にいなかった。偽の情報だ」としています。
また、24日付け『ANNニュース』は、「ウクライナ軍が東部戦線でバフムト南部の重要集落クリシチフカ、アンドリイフカを奪還するなど快進撃の展開を見せている」と、嬉々として報じています。
この『ANNニュース』の記事は、ゼレンスキー大統領が「我々はバフムト占領を解除する。あと2都市の占領を解除する」と語ったとした上で「ウクライナ軍は、精鋭部隊『第72独立自動車部隊』と『第31空挺旅団』、『第83空挺旅団』を壊滅させ、ロシア軍の戦闘能力を低下させた」と報じています。
IWJは、こうした日本の大手メディアや軍事専門家と称するウクライナ・米国の応援団の発信するプロパガンダ情報を、批判的に検証していくため、米国情報機関の高官と直接パイプのあるシーモア・ハーシュ氏の記事を無料部分は全訳し、有料部分は抄訳してお伝えします。
以下から、有料部分の抄訳となります。
「アメリカの情報機関には、現地報告や技術情報を頼りに、戦意を喪失したウクライナ軍が、地雷の多い3層のロシア防衛線を乗り越え、クリミアとロシアが接収・併合した4つの州まで戦争を持ち込む可能性をあきらめたと考えている者がかなりいる。ヴォロディミル・ゼレンスキーのボロボロの軍隊にもはや勝利の可能性はないというのが現実だ。
戦争が続いているのは、ゼレンスキーが戦争を続けなければならないと主張しているからだと、最新の情報にアクセスできる関係者から聞いた。ゼレンスキーの司令部でもバイデンのホワイトハウスでも停戦の議論はなく、虐殺の終結につながる話し合いにも関心がない。
この高官は、ウクライナ軍が週に何メートルという単位で測定しているいくつかの散在した地域で地歩を固めつつも、驚異的な損失を被っている攻勢における漸進的な進展というウクライナ側の主張について、『すべて嘘だ』と語った。
『はっきりさせておこう』とこの情報機関の高官は語った。『プーチンは愚かで自滅的な戦争を始めた。彼は自分には魔法のような力があり、自分の望むことがすべてうまくいくと思ったのだ』。ロシアの最初の攻撃は、計画が甘く、人員不足で、不必要な損失を招いた。『彼は将軍たちに嘘をつかれ、兵站も補給手段もないまま、戦争を始めた』。問題を起こした将兵の多くは、即座に解任された。
『確かに』と、高官は述べた。『プーチンは国連憲章に違反して、愚かなことをした。いくら挑発されたとは言え。だから我々もそう(愚かなことを)した』。これは、バイデン大統領が、ゼレンスキーとウクライナ軍に資金提供して、ロシアと代理戦争を行う意思決定を行ったということだ。
『だから、我々の過ちを正当化するために、メディアの力を借りて、プーチンを真っ黒に塗りつぶさなければならなくなった』。
高官は、CIAが英国諜報機関の一部と連携して行った、プーチンを貶めることを目的とした極秘情報操作について言及していた。この作戦は成功し、こことロンドンの主要メディアは、ロシア大統領が血液疾患や深刻な癌など、さまざまな病気に苦しんでいると報じた。
よく引用される記事のひとつは、プーチンがステロイドの大量投与によって治療を受けているというものだった。
すべての人が騙されたわけではない。『ガーディアン』は2022年5月、『ウラジーミル・プーチンは癌やパーキンソン病に苦しんでいる、という未確認・未検証の噂が飛び交っている』と懐疑的に報じた。
しかし、多くの主要報道機関がこれに乗った。2022年6月、『ニューズウィーク』は大スクープと称して、プーチンが2ヶ月前に進行癌の治療を受けたという無名の情報筋の話を引用して大々的に報じた。
『プーチンの支配力は強いが、もはや絶対的なものではない。クレムリン内部の駆け引きはかつてないほど激しくなっている。終わりが近いことを誰もが感じている』。
『6月攻勢の初期に、ウクライナ軍の侵入があった』とこの高官は述べた。ロシアの3つの強固なコンクリート防壁のうち、重く立ちはだかった最初の防壁の “近く “に侵入したのだ。『そして全員が殺された』。
戦車や装甲車におびただしい損害が発生し、数週間にわたって多くの死傷者が出て、ほとんど進展がなかったため、ウクライナ軍の主要部隊は、そう宣言することなく、事実上、『反転攻勢』を中止したという。
ウクライナ軍が最近占領したと主張した2つの村は、『ビルマ・シェイブの看板から看板へ、その2枚の間の距離に収まらないほど小さな村』だった。それは、第二次世界大戦後、アメリカのハイウェイには必ずあった看板である。
(中略)
※ここから先は【会員版】となります。会員へのご登録はこちらからお願いいたします。ぜひ、新規の会員となって、あるいは休会している方は再開して、御覧になってください!https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php(会員限定・続きを読む https://iwj.co.jp/wj/member/archives/518700)