「中国のミサイル1400発で日本は一度壊滅させられ、中国に花を持たせて戦争を集結させる。それが米国の戦略」〜岩上安身による伊波洋一・元沖縄県宜野湾市長インタビュー 2015.12.21

記事公開日:2016.4.16地域: テキスト 動画 独自
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ 文責・岩上安身)

特集 緊急事態条項|特集 辺野古

菅官房長官は15日の記者会見で、熊本地震に関連し緊急事態条項を「極めて重い課題」と発言。
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 「武器を持たない琉球の最大の手段は、国際的信義だった。これが琉球・沖縄が450年も平和的に統治できた最大の理由です」――。

 元沖縄県宜野湾市長の伊波洋一氏は、2015年12月21日、「饗宴VI」の翌日に岩上安身のインタビューに応じ、米軍の最新戦略と、それがもたらす沖縄への影響について分析。また、今後の日本を考える上で、450年間戦争をしなかった琉球王国のあり方が参考になると紹介した。

 米国は、空軍と海軍を統合した「エア・シー・バトル戦略」で、日本を戦場にして中国軍と全面戦争をするはずだったが、中国周辺諸国に軍事的対応をさせて、米国が漁父の利を狙うオフショア・コントロール戦略に変わったと語る。

 米国が戦略をひっそり転換したのはなぜか。

 伊波氏は、「2030年には、米国の経済力の3倍(内閣府『世界経済の潮流2010』より)に成長する中国を見過ごせなくなり、全面戦争や核戦争を避けて、経済的互恵を図る方向に向かっているのではないか」との見方を示した。

 米国は、中国との正面衝突は避ける。しかし、周辺諸国、とりわけ日本に対してはこっそり背中から押して中国との対決を後押しするというのである。

▲岩上安身のインタビューに答える伊波洋一・元宜野湾市長

 その場合、限定戦争の主たる舞台になるのは沖縄周辺だ。伊波氏は、米国は南西諸島を舞台に自衛隊と中国軍とを戦わせて、日本が敗退するシナリオを描いていると説明する。

 「中国に花を持たせ、台湾は米国が押さえて戦争を終わらせる。すべて米国の国益のため。日本にとって、選択肢は他にもあるのに選べない。もっと中国と仲良くやればいい。それができないのは、とても近視眼的だ」

 伊波氏はインタビューの前半で、琉米修好条約締結160周年で、琉球新報と沖縄タイムスが沖縄の「自己決定権」を歴史的に検証した記事を紹介して、琉球王国の歴史を説明した。

 「琉球国は武器を持たず、他国との信義を重んじることで、450年もの間、平和を保ってきた。1853年には独立国として、米国と琉米修好条約を締結している。その後、明治政府による琉球処分(1872〜79年)があり、明治政府は有利な通商権を得るために、宮古・八重山割譲案で、中国(清)に与えようとした。しかし、亡命琉球人が命懸けで清朝政府に抗議し、調印は撤回されている。このような琉球の歴史は、今まで隠されていたに等しい」

 また、現在の沖縄で、イデオロギーを超えた「オール沖縄」から「島ぐるみ会議」に至った動きには、国際立憲主義と自己決定権という考え方があることを示し、自己決定権について、「ニュージーランド、オーストラリアやハワイで起こっている、先住民の土地の返還と権利の確認だ」と説明。「これに基づき、翁長知事が辺野古の埋め立て承認を取消し、『政治的イデオロギーよりもアイデンティティ』との言葉を生み出した」と述べた。

 インタビューの終盤で伊波氏は、「日本にも、ひとつの指針が芽生えてくれれば」と期待を口にし、辺野古の問題は日本全体を左右するという危機感を、国民が共有できるかが問われていると訴えた。

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■ハイライト

■全編動画

  • 日時 2015年12月21日(月) 13:00〜
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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地方自治は崩壊する! 改憲・緊急事態条項とリンクする辺野古新基地建設

岩上安身(以下、岩上)「今、沖縄の辺野古では、国家が権力をむき出しにして住民を押さえつけています。(権力の横暴は)まだ、沖縄に限っているが、もし、憲法改悪により、緊急事態条項がつけ加えられ、実際に発令されたら、日本各地の住民運動なども根こそぎ弾圧され、地方自治も形骸化し、国会も空洞化することになります。沖縄の人たちは、そのあたりの危機感は持っているのでしょうか」

伊波洋一氏(以下、伊波・敬称略)「沖縄周辺での米軍の演習が増え、安倍政権の右傾化や日米軍事同盟強化の重圧はのしかかっていますが、戦後、沖縄では米軍基地問題がずっと続いていることから、辺野古新基地建設反対で答えをしっかり出せるかに意識が集中しています。なので、緊急事態条項への危機感は浸透していないと思います」

岩上「確かに緊急事態条項の危険性は、沖縄の人以外もピンときていません。緊急事態宣言で戒厳令状態になれば、戦争遂行に深い関わりがあるのではないでしょうか」

伊波「日本、沖縄、南西諸島を戦場にする仕組みが着実に積み上がっていることは、ずっと訴えてきました。米軍に協力する、日米同盟を促進する中で、真っ先にやることが憲法改正や緊急事態条項でしょう。現実に戦争が起こった時に、物事に対処する仕組みを作っているのではないでしょうか」

岩上「その危険が知られないうちに参院選を迎えたい、というのが自民党の本音でしょう。かつて麻生太郎さんが『ナチスの手口を真似たらどうか。静かにやろう』と漏らしたことが現実になっています。反対意見を抹殺し、もう一方で、辺野古新基地から南西諸島全体を軍事基地化し、戦場にしていく。そういった流れも踏まえ、沖縄だけの問題ではないということで、『辺野古埋め立て承認取り消しと沖縄の自己決定権』について、お話をうかがいます」

伊波「毎朝、辺野古の資材ゲートの前で座り込みは続いています。米退役軍人もやってきて反対運動をしたり、水曜日行動など、500日以上も連続しています。

 翁長雄志知事が、10月13日、辺野古埋め立て承認を取り消しました。それに対し、政府が無効にする代執行裁判が進行中ですが、1000名を超える市民が裁判所前に自発的に集まりました。こういう状況を本土の人たちにも知ってもらいたい。

 私も裁判に加わっています。2016年1月末の公判で、出廷の可否がわかるでしょう。それが認められれば、『軍事戦略の中での沖縄』(『世界』2016 年 1 月号掲載)について話すつもりです。米軍が沖縄にいるより、グアムにいた方が抑止力が高まる、と米国は言っています。日本政府もグアム移転協定で7000億円を払って進めているのに、辺野古基地建設では、抑止力を盾に基地が必要だと矛盾を言う。辺野古基地は別の目的だと、私はずっと訴えています。

 ところで、沖縄では観光産業が急に伸びています。2014年は716万人。今年は760万人に達するでしょう。外国人観光客も増え、160万人になりそうです。アジア周辺国の経済力の高まりと、沖縄の魅力が周知され始めているからでしょう。今、沖縄は経済的に発展を続けています」

ナポレオンも驚いた、450年間戦争をやったことのない琉球王国

伊波「かつて琉球王国はアジアとの交易が盛んでした。1368年、明王朝建国の4年後、沖縄の中山王との朝貢貿易が認可され、450年ほど続きました。それが今の沖縄の文化を形成し、アジアを結ぶルートも作りました。1515年頃、書かれた『東方諸国記』にレキオ人として書き残されています」

岩上「『彼らは正直な人間で奴隷を買わないし、たとえ引き換えでも同胞を売るようなことはしなかった。彼らは気位が高く恐れられていた』とありますね」

伊波「1816年、琉球を訪問して著された『バジル・ホール航海記』があり、『琉球には武器がないとナポレオンに話すと、ナポレオンは、どうやって戦争をするのかと驚きました。彼らは戦争をやったことがない。外にも内にも敵がなく平和に暮らしている』と書いてあります。そういう沖縄が、明治維新で併合され、戦争に巻き込まれていくのです」

1853年、独立国として琉球王国が米国と締結した琉米修好条約

▲「琉米修好条約」締結160周年、沖縄の「自己決定権」を振り返る

伊波「2014年、『琉米修好条約』締結160周年で、琉球新報と沖縄タイムスが『自己決定権』を歴史的に検証した記事を連載しました。1872~79年、琉球処分が行われ、琉球王国を廃し沖縄県を設置しました。そこで驚くのは、1880年4月17日、明治政府は有利な通商権を得るため、宮古・八重山割譲案で中国に与えようとしたことです。

 10月20日に合意し、10月30日には調印するはずでした。しかし、(清国への)亡命琉球人が必死に反抗し、調印は延期になり、11月20日、当時38歳だった林世功(リンセイコウ)が清朝政府前で自決した。それに驚いた清政府が調印を撤回したんです。しかし、こういった沖縄の歴史は抹殺されています。

 琉米修好条約締結は1853年。その後、オランダとフランスも結ぼうとしたものの、米議会のみが条約を議決しました。その条約の写しは日米両国に残っていて、琉球が独立国だった証明にもなります」

岩上「1609年、薩摩藩が琉球王国を武力侵攻。徳川幕府と薩摩藩の支配が始まるとあります。それでも、琉米修好条約を結べるような独立国だったのですか?」

伊波「薩摩藩は、奄美諸島は割譲し支配しました。徳川の許可を得て琉球に侵攻、琉球国王を捕虜にして徳川幕府に謁見させ、領属にしました。朝貢関係を日本もできるようにして、それを監督するのが薩摩藩でした」

岩上「それは、今の日本と米国の関係のような状態ですね」

グラント将軍の入れ知恵もあった「琉球処分」

伊波「そんな感じです。面白いのは、琉球処分の時、琉球側は『奄美は返せ』と明治政府に要求したこと。明治政府は琉球の外交権を剥奪したが、当初、清国との朝貢関係は残すことを認めた。しかし、それも潰して沖縄県を作る段階的な支配を進めました。第二次大戦が終るまで、県令(県知事)に、沖縄の人間を任命することはありませんでした」

岩上「その時代の知事は任命制でした。琉米修好条約は全然、知られていないと思います。これは幕末と明治維新のゴタゴタの谷間の時に結ばれたのですか」

伊波「谷間ではなく、薩摩藩は琉球王国の存在は認めていました。領属の関係です。(1867年)パリ万博には琉球王国として参加させています」

岩上「日本は鎖国していたから、薩摩藩は琉球の貿易の上前をはねて蓄財し、明治維新というクーデターの資金にしたのですね」

伊波「薩摩藩は、清国に薩摩藩の支配を隠すため、琉球に対して日本風にしてはいけないとまで言っていました。しかし、清は琉球王国が明治政府の領属だとわかり、琉球処分が国際問題になります。宮古・八重山割譲は、清国のメンツを立てる策でした。

 当時、ユリシーズ・グラント将軍(第18代米国大統領)が清国訪問の際、日本にも立ち寄り、琉球処分の問題にアドバイスというか、入れ知恵をしました。当初、清国は奄美、琉球、宮古・八重山の3分割案を提案するが、明治政府は拒否。また、亡命琉球人の抗議を清国も受け入れて、与那国まである、今の沖縄になったんです」

岩上「この時点で、中国や日本に米国も関わっていたんですね。グラント将軍は何を言ったのですか」

伊波「琉球処分の1872~79年の間、各国領事館に琉球の使節団がロビイングし、在日公使も琉球の立場を理解していました。特に米国は琉米修好条約を締結していたこともあり、グラント将軍は、清国政府の要求と琉球の立場を勘案し、明治政府に清国の内国通商権を手に入れる妥協案を提示。最初の案の宮古・八重山割譲案で妥結するに至りました」

岩上「こういう歴史を、検証することもなく消し去ってしまっては、今の沖縄を語れませんね」

「政治的イデオロギーよりもアイデンティティ」〜先住民の土地を返すべきだという「自己決定権」と沖縄

伊波「自己決定権とは、ニュージーランド、オーストラリアやハワイでも起こっている、先住民の土地を返すべきだという議論です。北部訓練場などは琉球王国の土地でした。沖縄の自己決定権の問題は、その流れの中にあり、辺野古基地問題も包含されています」

岩上「琉球新報や沖縄タイムスが、こういった琉米修好条約や自己決定権の問題を取り上げることは、今までなかったことですか。それはまた、基地問題解決を日本政府に期待して幾度となく請願するが、常に踏みにじられてきた沖縄の、落胆の裏返しなのでしょうか」

伊波「こういう掲載は初めてで、2014年の1年をかけています。そして、落胆の裏返しではなく、自分たちで決めることができるという覚醒です。琉球大学の島袋純教授らが提議していますが、『国際立憲主義』という立場です。地域に住む人たちが、地域のあり方を選ぶ権利は保障されているという考え方で、沖縄も該当するという認識です。翁長知事の埋め立て承認取消しの背景にもそれがあり、島ぐるみ会議で結実したんです」

岩上「政治的イデオロギーよりもアイデンティティだ、と翁長知事は言いました。それは歴史に深く根ざし、琉球、沖縄がたどってきた過去があり、自己決定権は当然つながっているという主張ですね」

伊波「それは国際的に認められています。先住民族に土地を返したり、権利を認めたりすることは、米国、ニュージーランド、オーストラリア、ハワイで実行されています。ただ日本は、琉球併合を先住民の権利侵害とは見ない。だから、こういう流れを皆さんに知ってほしい。

 沖縄の新聞がこういう記事を掲載し、軍国化する日本で、再び沖縄が犠牲を強いられることに対抗する力をつくり出す。それは、島ぐるみ会議や、基地反対運動に多くの人が参加することを見ても明らかです」

「これからの日本は、450年平和を維持した琉球のような仕組みを作るべき」〜武器を持たない琉球国を支えた「国際的信義」

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伊波「1879年3月27日、松田道之処分官は、随行員9人、内務省官僚32人、武装警官160人余、熊本鎮台兵約400人を伴い、31日正午までに首里城の立ち退きを命じました。

 琉球国がもっとも抵抗したのが軍隊の配備です。『兵営を設置すれば、外国から武力で強要される恐れがあるだけでなく、人心も不安に陥り、清の信義も失う』と。武器を持たない琉球の最大の手段は、国際的信義だったのです。これが琉球・沖縄が450年も平和的に統治できた最大の理由です。

 この琉球処分の後、明治政府は、台湾、朝鮮併合を押し進め、列強共々、清国の植民地支配を進めていきました。これからの日本は、450年平和を維持した琉球のような仕組みを作るべきです。軍事力を入れて、自分の存在感をアピールするやり方は間違っています」

岩上「日本の憲法9条の平和主義よりも、ずっと前からの伝統があるのですね」

伊波「450年も平和が続くと文化のあり方が浸透していきます。今でも竹富島などは3日3晩続く祭祀がある。それだけ文化の蓄積ができるということの証しです。これから、日本が平和的にあるべきかを考える時、琉球という国の歴史を知ることはけっして無駄ではないと思います」

岩上「けれども、(今の政府は)歴史をどんどん忘却し、大学からも人文系部をなくす。軍を作るだけではなく、文化も退行させていく方向に進みつつあります」

伊波「1945年4月13日、米軍は第二次大戦史上最大規模のアイスバーグ作戦(総兵力54万8000人)で沖縄上陸を開始しました。やはり沖縄県民は、当時の悲劇が再び繰り返される不安を、辺野古基地建設に重ねています。

 今、沖縄の人たちが一番求めているのは、基地を返還させて跡地を開発することです。本土復帰前は15%くらいの米軍依存の経済体質も、今は5%まで落ちました。米軍住宅があった時には雇用70人だった那覇新都心は、今は2万人を超える。ハンビー飛行場跡利用の北谷、うるま市、読谷村なども開発されました。

 アワセ・ゴルフ場跡地には、2015年4月、イオンリゾートモールがオープンしました。普天間飛行場は那覇新都心の2倍の481ヘクタールあり、返還を待っている状態です。まだ、10市町村で30%が基地利用されていて、県民は基地返還と跡地利用による発展を望んでいます」

戦争の犠牲を強いられた沖縄〜保革を超えた「オール沖縄」の闘い

伊波「第二次大戦で、沖縄本島は6月23日に戦争が終わりましたが、宮古島では通信が途絶えて戦闘停止命令が届かず、8月25日まで戦いが続いていました。宮古島では艦砲射撃と空爆で地上戦はなかったが、中国大陸から3万人の日本兵が移ってきて食料が尽き、餓死と病死が甚大でした。現在、宮古島には地対艦ミサイル部隊の地下司令部が造られています。地対艦ミサイル車両は島内を走り回る。すでに、通信傍受施設はできています。

 保革を超えた『オール沖縄』の運動は、2012年9月9日、オスプレイ配備に反対する県民集会から始まりました。2013年1月、建白書を持って安倍政権に要請。12月、普天間飛行場の県外移設を公約に掲げて当選した自民党の5議員が、辺野古移設容認に寝返りました。

 仲井眞前知事はその年の12月17日、沖縄政策協議会後、東京都内で菅(義偉)官房長官と密会を重ね、25日、安倍首相に辺野古埋立てを承認しました。沖縄に戻ると反対住民であふれた県庁に入れず、26日、知事公邸で幹部に辺野古受け入れを伝えた。27日、辺野古埋め立て承認の発表記者会見を開きました。

 2014年1月、名護市長選で稲嶺進氏が当選。11月16日には、翁長知事が仲井眞前知事を10万票差で破って当選し、辺野古の新基地建設に『No』を突きつけました。元々はヘリポートだけだった辺野古の基地建設計画は、軍港まである大きなものに変貌しています。辺野古基地反対運動は10数年前からありましたが、1000人を超えることはなかった。それが今では現場に3600人も集まるようになったのです。

 当初、辺野古基地建設と海兵隊のグアム移転は別々の議論でした。2006年にグアム移転が合意され、今の計画では、海兵隊9000人とその家族9000人がグアムやハワイなどに移転します。それを無視して、辺野古の基地建設は進められています」

岩上「日本の推進派は、米軍が沖縄にいると抑止力になると言いますが、米軍にとっては(沖縄は)中国に近すぎる。だから、後方に退くと聞きますが」

伊波「嘉手納基地の空軍の方が当てはまりますが、それとは別に、海兵隊には演習場がないのが理由です。普天間では飛行の基礎訓練しかできない。グアムやテニアンでは総合演習場を作って実戦訓練ができるようになる。また、国民感情もあって、日本国内の基地は米軍しか入れないが、グアムなら多国籍軍での訓練もできる。そして、グアム移転の人数が減っても、日本は28億ドルをきっちり払う。そのうちの5億ドルは演習場建設費用です。米国にとっては、辺野古もあって美味しい話です」

辺野古新基地の真の理由は「中国との戦争のために必要な“第3滑走路”」

岩上「では、何のために辺野古基地が必要なんでしょうか」

伊波「中国との戦争のためです。2015年6月23日、元駐日米大使アマコスト氏は朝日新聞のインタビューで、『沖縄の海兵隊は死活的に重要ではない。普天間で事故が起きたら壊滅的な影響を及ぼす。沖縄の基地反対運動に対する政治的コストに比べて、海兵隊の戦略的価値は低い。普天間も含め、海兵隊駐留そのものを減らす必要がある。19年間も解決されなかった問題を解くには、難しい決断も必要だ』と海兵隊の撤退を示唆している。現実に、沖縄周辺には演習空域と海域があるが、すでに同規模の空海域をグアム周辺に移設する作業を始めていて、いずれ嘉手納の空軍も移ります」

岩上「辺野古は(米陸軍)海兵隊が使う前提なのですか。あるいは、米海軍や空軍も使うのですか」

伊波「海兵隊というより、いざという時のためではないでしょうか。日米共同使用で自衛隊に維持させるのでしょう。

 2015年9月、米連邦議会の日米関係報告では、1%に過ぎない国土の沖縄に在日米軍の半分が集中するのは苛重な負担だと指摘しています。現在、日本は世界一の米軍駐留国になり、5万3086人(うち沖縄県2万6450人)。第2位のドイツは1990年に22万7586人いたのが5万2332人に。3位の韓国は2万6339人、4位は同盟国イギリスで9677人。5位はイタリアの9239人です。これは2010年時点の数字で、ドイツは4万人台にさらに減っている。日本は一番お金(毎年約7000億円)を出してくれるので、米軍は居続けたい。日米安保から日米同盟にして、中国に対抗する動きが加速している証しです。

 『辺野古は中国との戦争に必要な第3滑走路だ』とウィキリークスが暴きました。鳩山政権の時、カート・キャンベル国務次官補が日本政府に、空港・港湾23ヵ所の調査、戦争開始の2日目からの利用、台湾有事で与那国諸島の掃海拠点化の調査などを求めています」

沖縄が「200発の弾道ミサイル」で攻撃される想定の「統合エア・シー・バトル」

岩上「『統合エア・シー・バトル構想』は、米海空軍による沖縄と本土を戦場にした対中国戦略です。過去15年間でシミューレションを24回以上も実施しました。兵站を含めた日本の参戦が必須で、集団的自衛権行使が前提です。

 日本国土、沖縄で戦闘を繰り広げ、2週間の戦闘で、自衛隊は航空戦力70%、艦船80%を失うことを想定。GDP比で4%です。在日米軍、自衛隊基地は200発の弾道ミサイルで攻撃される、と。その後、米軍支援を北海道に送り、そこを拠点に領空権を取り戻して反撃する計画です。つまり米軍は一度、撤退する。それから奪還に向かうかもしれない、というストーリーですね」

伊波「キャンベル国務次官補の発言やウィキリークスの内容は、2011年5月4日付朝日新聞で報道しています。不思議なのは、こういう肝心なことが政治の場で議論されないことです」

岩上「なぜ、3つの滑走路が必要なのか。200発のミサイルで粉々になっても、なぜ、辺野古なんですか」

伊波「それは、日本は一度壊滅させられて、米国の援軍が北海道に来てから制空権を奪還し、滑走路も復旧していく。それから中国と本格的に戦争を行う。中国本土の深くまで侵攻する前提なので、滑走路が3つ必要だということです」

「エア・シー・バトルでは中国に勝てない」――米中の全面対決を避け、日本に代理戦争をさせる「オフショア・コントロール戦略」

▲「沖縄の海兵隊は死活的に重要ではない」米国のグアム移転計画を説明する伊波氏

伊波「ところが、エア・シー・バトルでは中国に勝てないということになった。それで、中国周辺諸国に軍事的対応をさせる『オフショア・コントロール戦略』に変わったのです。

 日本は、対中オフショア戦略に呼応して、米国の台湾防衛のため、南西諸島公海上の中国艦船の太平洋通過を阻止する任務を託されました。なぜなら、米中全面戦争にエスカレートさせないため、日本国土に標的の島を作り出し、戦争を日本に限定させるからです。

 2011年5月に創刊した『海幹校戦略研究』に、エア・シー・バトル研究論文が掲載されました。『前方基地は同盟国への保証を提供するものであったが、現在では不安の源泉となり、先制攻撃の誘因になっている』と。横田も横須賀、三沢基地も同様です。それに打ち勝つ戦略がエア・シー・バトルでしたが、この優位性が疑わしくなり、中国の予想外の国力の発展で修正を余儀なくされたのです」

岩上「孫崎享氏は『台湾正面衝突では中国が優勢、米軍は勝てない』という、9月に発表されたランド研究所の最新論文を、IWJのシンポジウム『響宴VI(2015年12月20日開催)』で明かしてくれました」

伊波「2011年12月、米国防委員会の提言では、南方展開基地に対する脅威は確実に増大。新たな技術と軍の運用構想、及び態勢の変革によって優位性を確保しなければならない、と。ゲーツ国防長官は『米国は1000億ドルを使い、中国本土を直撃できるミサイルの開発に着手した』と述べています。

 米軍の狙いは、中国の初期攻撃の被害を局限し、有利な長期戦に持ち込むことです。エア・シー・バトルの作戦は、まず逃げる。それから制空権を奪回し、琉球列島ラインをバリアにする。その時点で3つの滑走路が必要なんです。現在、中国軍は1400発のミサイルで、日本、韓国の軍事基地を射程圏内に収めて狙っています。オスプレイ配備もその一環。2012年の『ヤマサクラ61』演習では、原発銀座がある関西地方を戦場に想定しています。沖縄はすでに破壊地帯にされて、戦場にもなっていない。

 米国非対称戦争の論文では、エア・シー・バトルは対中国戦としながらも正面戦争を避け、封鎖重視に転換。米国と同盟国が、沖縄、ルソン、韓半島で同時に戦端を開くことができれば、中国に対抗できるとした。その一翼に日本がいて、それが辺野古基地、集団的自衛権の目的。すべて米国の国益のためなんです。

 米国非対称戦争は琉球列島の戦闘で、米国は『適度な達成に有効』だと。なぜなら、米中全面戦争(含む核戦争)にならない局地戦で済ますことができるからです。米中がお互いを攻撃しないことが想定されているわけです。米国が、今までベトナムなど、あちこちでやってきたことと同じです。今度は日本の国土でそれをやる。そのための準備が、沖縄や宮古島などで着々と進められているんです」

岩上「日本はわざわざ領土を他国の戦場に提供する馬鹿げたことをやっている。これは米中が最初から手を組まないとできません。代理戦争です。憲法学者の青井未帆氏(学習院大学教授)は、『米軍の司令官が自衛隊の中央指揮所に常駐してコントロールし、戦争を日本で繰り広げる』ことを指摘しています。日本の自衛隊の中枢は乗っ取られたも同然の状態です」

伊波「日本は戦争戦略を立てられないから、米国が作ったものを演ずることしかできません」

「中国のインフラを破壊しないことで紛争後の世界貿易の促進が望める。それがオフショア・コントロールだ」――南西諸島で日本が撃破され、中国に「花」

伊波「22013年9月25日、ハドソン研究所で安倍首相は『集団的自衛権を見直す。日本が米国の安全保障の弱い環であってはならない。右翼の軍国主義者と呼んでいただきたい』と発言しました。それは中国語でも翻訳されています。

 安保法制も可決し、その流れで自衛隊は沖縄で離島奪還訓練を行っている。宮古、石垣、奄美諸島には陸自が配備されている。強襲揚力艦導入も検討し、オスプレイ17機、水陸両用車両52両で南西諸島に逆上陸するといいます。離島奪還とは、すでにそこが占領されているのが前提です。ちなみに、尖閣は最初から入っていません。米国にとっては、最初から戦闘の対象ではない。米国は、中国が日本に勝って満足して終わると想定しているからです。

 奄美大島では基地ができて喜んでいるが、これは『戦場の誘致』です。今の日本は、それを見切れない。マスメディアには、自衛隊が南西諸島に行くという記事が多い。だから、中国も基地を作って対抗しようとする。そうなると中国は、より軍事的に優位になってしまうのです」

岩上「中国軍の分析には、『日本に制空権の確保は不可能だ。作戦の持続能力も給油機も少ない。現実では無理だろう』と」

伊波「エア・シー・バトルに批判的な専門家の論文には『中国のインフラを破壊しないことで紛争後の世界貿易の促進が望める。それがオフショア・コントロールだ』と。その目的は敵対行為を終了させ、戦争開始前の境界線へ回帰すること。つまり、主眼は米中全面戦争の回避。中国に花を持たせるが、台湾は米国が押さえる。中国が『敵に教訓を与えた』と宣言して、戦争を終わらせる戦略です」

岩上「この論文を読んだら、中国にはとても配慮していたが、日本の右翼にはまったく配慮がありませんでした」

伊波「2005年10月『日米同盟:未来のための変革と再編』では、日本は弾道ミサイル、ゲリラ戦、特殊部隊の攻撃、島嶼部への侵略などの脅威や事態の対処を含めて、自らを防衛し周辺事態に対応する、とあります」

岩上「民主党政権時、岡田外務大臣に私が質問すると、第一義的な防衛は日本の自衛隊がやり、米軍はやらないと公式に認めました」

伊波「だから、奄美諸島、宮古島、石垣島に自衛隊基地を作り、2018年までに離島奪還作戦のため、3000人の『水陸機動団』を創設。万が一、日中戦争になっても、米中戦争にはしない準備なのです。それでも日本は、第一列島線を米国に死守してもらいたいから、南西諸島を戦場にしてもよいと合意したのです。

 選択肢は他にもあるのに選べない。日本は、もっと中国と仲良くやればいい。それができない日本は、とても近視眼的です」

エア・シー・バトル構想は「ジャム・ジーシー(JAM-GC)」に改名。〜米国も中国の成長には抗えない!

伊波「最近の動きですが、エア・シー・バトル構想は『ジャム・ジーシー(JAM-GC)』と改名したと『海幹校戦略研究』が掲載しました。どう変わるかは不明だが、限定的な戦争は変わらないようです。注目するのは、対中国などと国家を限定したり、軍事戦略という高次な構想に発展したりすることはない、としていることです。

 陸軍と海兵隊がエア・シー・バトルに疑念を持ったこともあるが、米国も中国の成長には抗えない。新たな友好関係を築くようです。つまり、対中全面戦争の方針は変わりつつあるのではないでしょうか。これでは、日本は米中に取り残されていきます」

岩上「日本は、前の約束に拘束されて、今、言われたことを一生懸命やっている。だが、米国は先を走って、どんどん日本とズレてきている」

伊波「中国の成長に対応できる米国だが、日本はそれができない。日本は、日中共同声明、日中友好条約、戦略的互恵関係の推進など、中国との強固な関係を持っているのに、これを大切にせず、パートーナーシップを築けない。これに対して、韓国、フランス、イギリスなどは中国とうまくやっている。日本だけが歴史認識で立ち止まっていて、とても残念です。

 内閣府『世界経済の潮流2010』によると、中国の経済力は2009年に日本の2倍。2030年はドルベースで中国は世界一、日本の10倍、米国の3倍です。これを見据えた日中関係を築かないといけないのに、安倍政権は精神論だけです」

岩上「かつての暴支膺懲(ぼうしようちょう=大日本帝国陸軍のスローガン)、一発やれば相手は戦意を失うという考えと同じです。でも、中国の内部まで掌握できません。今回の戦略も変わらず、滅びるのは日本。しかし、こういう議論はまったくされず、思考停止状態です」

伊波「今後、日本はどうするのか。先に述べた島ぐるみ会議の思考で、日本にもひとつの指針が芽生えてくれればと願います。日本国民がどう思うのかを無視して、戦争状態を継続できるようにしていることが問われています。辺野古の問題は日本全体を左右するという危機感を、国民が共有できるかにかかっています」

岩上「IWJは、ロビイングで駆け回った島めぐり会議訪米団に密着し、すべて取材しました。近々、連載をするつもりです」

伊波「期待しています。連合沖縄会長も同行し、アジア・太平洋系労働組合連合と親睦を深めるなど、沖縄の運動が、国際的に有機的に広がる流れが起きています」

岩上「米国のバークレー市議会が辺野古移設反対を決議、ハワイも基地建設に反対を表明しました。米国軍部が東アジアを戦場にすること自体、『許されない、やめるべきだ』と発言しています。

 今後の展開を期待したいと思います。どうも、ありがとうございました」

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3件のコメント “「中国のミサイル1400発で日本は一度壊滅させられ、中国に花を持たせて戦争を集結させる。それが米国の戦略」〜岩上安身による伊波洋一・元沖縄県宜野湾市長インタビュー

  1.  辺野古新基地建設に反対していた人が亡くなった事件がある。「なずき丸」染谷船長の溺死事件なんだが、ヨットのスクリューが何者かに壊され、Youtubeの説明欄によると《当時から、プロペラの破損だけではなく、係留ロープ­が外されていたり、染谷さんの航海日誌が破り捨てられているなど、不審な点が多かった》そうで、《当時の関係者らが、今日(15日)、那覇地検に「刑法第261条」(器物損­壊罪)違反容疑で告訴した》そうだ。
     若い頃からのヨットマンが何故か水死で発見されたり、《係留ロープ­が外されていたり、染谷さんの航海日誌が破り捨てられているなど、不審な点が多》いなど殺人を視野に事件として捜査するべき事態だ。海事鑑定協会の調査によると、スクリューは係留中に人為的に破壊されたと云う鑑定結果が出てる。
     事件が起きたのは去年だが、本来捜査をすべき海上保安庁は、国に逆らったから事件が起きたのだと言って捜査をせず、仕方なく今年検察に捜査依頼するに至ったそうだ。
     詳しくはYoutubeの『【辺野古】 「なずき丸」染谷船長の溺死事件【1】 12/26』という動画と『【辺野古】「なずき丸」 染谷船長の溺死事件【2】 船の管理人さんの話 12/26』という動画を観てください。

     

  2. 自民党と安倍晋三が馬脚を表したな。緊急事態条項とは戒厳令そのもの。
    政府・国家の無謬性を無批判に受け入れるものだ。国家権力は絶対に暴走しないという前提に立った草案である

    最近はTVのバラエティでも反中・反韓一色だし、それと比例して「世界で認められる日本の技術」だとか
    「世界が憧れる日本」だとか日本バンザイ番組ばかりが垂れ流されている。これは諸外国が強くなり、
    反比例して日本が弱くなり、日本人に自身が無くなっている証拠だ。
    しかしながら、
    そもそも、日本の外交安保に信念やプライドなど最初から必要無い。日本は2千年前から
    「長いものに巻かれる」というのが唯一の国家戦略だ。アメリカが強いうちはアメリカに巻かれる。
    中国が強くなれば中国にぐるぐる巻かれる。それでいいのだ。
    日本という国家にも日本人にも信念やプライドなど無いし持つ必要もない。

  3. 伊波洋一・元沖縄県宜野湾市長の御主張にはほとんど首肯しますし、米軍基地の集中する沖縄と、沖縄以外から日本の今後を考えることには違いがあると思います。
    伊波さんの「中国に花を持たせる」日中戦争の立論について、多少違和感があります。
    1.中国はいよいよ戦争となれば背後に米国が「オフショア戦略」があることを見透かして世界に向かって米国を非難し、資本を「引き上げる」のではないでしょうか。米中関係はかなり悪化するでしょう。
    2.戦争があって中国が勝ったとしますと、「花を持たせる」米国が相対的にGDP世界一を保ち、戦争でいたんだ中国の復興に手を貸すことになる見込みなのでしょうか。本気でしたら米国にとって危ないギャンブルと思います。
    3.仮にそのような展開が事前に予想されると、今の中国は戦争するでしょうか。日本が中国を武力攻撃で激しく挑発し戦争に巻き込めば、確かに「第二次日中戦争」になるかもしれません。そうなれば国連安保理自国のうちロシアは中国につくでしょう。
    4.米国は、かつてベトナムで傀儡政権を立てて戦争して敗北しています。優秀で輝かしい戦略家がいまもそろっているのでしょう。戦略は異なるとはいえ、アジアで戦争することで米国の地位を揚げようとするでしょうか。
    5.アメリカの中東戦略を見ていますと、「立派な戦略思想」が実際は通用しない世界になりつつあり、どこもかしこも「花を持たせる」ことで終息する事態ではないと思います。
    6.伊波さんの御主張と異なりますが、戦後、尊い命を戦争で犠牲にしないことを保ち、たとえ日本が「米国の属国」で弱々しくエコノミックアニマルであるとしても、平和主義を貫いてきたことは貴重なことであると思います。

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