「昔は戦争で国益を奪ったが、今はTPPが経済的植民地化の最後の仕上げだ」――AIIBの衝撃、TPP医療崩壊、辺野古移設と安保法制を徹底解説~第41回ロックの会 2015.5.9

記事公開日:2015.5.19取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

特集 TPP問題
※5月19日テキストを追加しました!

 IWJのコーディネートによる「第41回ロックの会 ~IWJ NIGHT~」が2015年5月9日、東京都内で行なわれた。

 全体を3つのパートに分け、Part1「覇権拡大する中国」では経済評論家の宋文洲氏を、Part2「TPP~医療保険制度の崩壊」では北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏と元農林水産大臣の山田正彦氏を、また、Part3「辺野古基地建設と安保法制」では衆議院議員の玉城デニー氏をゲストに迎えて、ホスト役の岩上安身が話を聞いた。

 また、会の冒頭と各パートの間には、「明日戦争がはじまる」で注目された詩人、宮尾節子氏による詩の朗読が、田中一夫氏の民族楽器の伴奏で行われた。

 「中国人は存在しない」──。

 はじめに意表を突く発言をした宋氏は、「中国では長い歴史の中で、いろいろな国(民族)が入れ替わってきたから、中国人同士は海外で会っても親近感はない。ただ、日本による侵略の話題の時だけ連帯感を持つ」と述べた。

 そして、AIIB(アジアインフラ投資銀行)について、「今、中国の対外貿易額はアメリカを抜いて世界一。それなら、アジア経済圏くらいはドル基軸をやめようとして始まったのがAIIBだ。ところが、麻生財務大臣などは、AIIBを(日本への)対決だと受け取ってしまう」と話す。

 宋氏は、「中国人は単純に好きで日本製品を買うのだから、日本もそれを利用すればいいだけ。しかし、最近の日本の政策は、良い悪いは関係なく、対決姿勢ばかりが先に立つ」と疑問を呈した。

 西尾氏と山田氏は、大詰めを迎えつつあるTPP交渉について、医療に及ぼす影響の深刻さを語った。西尾氏からは、TPPで個人医療費が今の7倍ほどになる、というショッキングな指摘があり、岩上安身は、「私は心臓発作で救急搬送され、各種検査を受けてICUにひと晩入院したが、費用は10万円もかかっていない。これがアメリカで保険に加入していない場合なら?」と尋ねた。西尾氏は、「3000万円から4000万円かかる。だから、人々はアフラックなどの保険会社に入るようになる」と述べて、こう続けた。

 「昔は戦争で国益を奪ったが、今はTPPで、経済的植民地化の最後の仕上げをする。その最大のターゲットが医療だ」

 TPP交渉差止・違憲確認の集団訴訟を起こす山田氏は、最初にTPPに参加する姿勢を示した民主党政権について、「実は、菅首相はTPPをよく知らなかった。仙石官房長官が『TPPは第3の開国だ。開国なくして、座して死を待つつもりか』と言ったのだ」と明かした。

 そして、「私は、TPPは農業や経済の話ではない、と大げんかして農水大臣を辞任した。その後、超党派の国会議員270名が集まり、TPP阻止活動に邁進した。当時は自民党も、3分の2以上の議員がTPPに反対していた」と振り返った。

 Part3では、米軍普天間基地の辺野古移設に反対する沖縄県民の声を、米国の議員らにアピールしに行き、帰国したばかりの玉城氏に話を聞いた。

 玉城氏は、現在、基地建設への反対運動が展開される辺野古で、海上保安庁職員が市民に暴力を振るったことや、海上での抗議行動つぶしの手荒さを糾弾。その上で、「絶対に戦争はいけない。(沖縄には)その経験があるから、基地は作らせたくない。本当に子どもたちの将来のことを真剣に考えないといけない」と強く訴えた。

記事目次

■イントロ

  • 出演者 宋文洲氏(経済評論家)/西尾正道氏(北海道がんセンター名誉院長)/山田正彦氏(元農林水産大臣)/玉城デニー氏(衆議院議員)
  • 日時 2015年5月9日(土)20:00〜22:30
  • 場所 東京都内
  • 主催 IWJ

「いよいよ明日戦争がはじまる」

 はじめに、詩人の宮尾節子氏が自作の「明日戦争がはじまる」を、田中一夫氏が演奏するアフガニスタンの民族楽器ラバーブの調べに乗せて朗読した。

 まいにち
 満員電車に乗って
 人を人とも
 思わなくなった

 インターネットの
 掲示板のカキコミで
 心を心とも
 思わなくなった

 虐待死や
 自殺のひんぱつに
 命を命と
 思わなくなった

 じゅんび
 は
 ばっちりだ

 戦争を戦争と
 思わなくなるために
 いよいよ
 明日戦争がはじまる

 2014年1月22日に、宮尾氏がツイッターで公開したこの詩は大きな反響を呼び、現在まで数万件もリツイートが繰り返されている。また、この日、田中氏が伴奏に使用したラバーブは、25年前、アフガニスタンの戦火を逃れてパキスタンにたどり着いたものだという。

「中国は日本を攻撃する原爆を作った」と信じた故中川昭一氏

 Part1「覇権拡大する中国」がスタート。岩上安身がゲストの宋文洲氏を紹介し、「中国はGDPで日本を抜き、軍拡も激しい。日本人はとても中国を怖がり、一方で、集団的自衛権で地球の裏側まで行かなくてはならなくなった。この状況は、中国人から見てどうなのか」と尋ねた。

 宋氏は、自分が1985年に来日した時には日本人は思想的に中道だったが、今は大多数の国民が右寄りになったと述べ、「しかし、中国と戦いたい人は、安倍さんも含めて、いないと思う」と続けた。岩上安身が、「石原慎太郎氏は、中国と戦争だと叫ぶが……」と言うと、宋氏は、「彼は右翼でなく卑怯者。本当の右翼はアジア主義のはずだ」と一刀両断にした。

 そして、宋氏は仲の良かった故中川昭一氏のことに触れ、「中川さんは『中国が日本に落とすために原爆を作った』と本気で思っていた。当時は中ソが対立しており、中国の核保有は対ソ連のためだったのだが。本気で対日本だと思い込んだ人たちは、もう説得できない」と話した。

13億人の中国人に連帯感なし

 宋氏からは「中国人は存在しない」という突飛な発言もあった。「なぜなら、長い歴史の中でいろいろな国(民族)が入れ替わってきたからだ。中華人民共和国を『中国』と言うなら、その歴史は100年もない。中国人にとって、日本と戦ったのは中国国民党や中華民国なのだ。中国人同士は海外で会っても親近感はない。ただ、日本による侵略の話の時だけ連帯感を持つ」と語った。

 岩上安身は、「中国の歴史が60年から70年しかないとしたら、抗日が中国のアイデンティティではないだろうか。そして、中川さんのような右翼的な人たちの意識は、日本の戦前も戦後もひとつながりで、中国はいつか仕返しをする、と怯えているのではないか」と応じた。

 宋氏は、岩上安身の意見に同意しつつ、「だが、中国は単一民族ではない」とし、山東省系の自分と、内モンゴルと満州系で激しい性格の前妻を例に挙げて、民族性の違いを語った。また、中国では自分がどの民族かを自己申告できるので、清国を作った満州族は、今では100万人もいないという。「チベット族やウイグル族は別にして、13億人の漢民族に連帯感は希薄だ。同様に、過去の歴史に、むきになってこだわる人はそういない」

「ドルが基軸、もうやめよう」で始まったAIIB

 岩上安身はAIIBに話題を移し、「真っ先にイギリスが加盟すると、他の主要国も雪崩を打って同調、イスラエルすら参加表明してしまった。米国の元財務長官サマーズは、『アメリカの地位が、中国にとって変わった歴史的出来事だ』と発言した。今後、中国は新たな国際経済秩序を作るのでしょうか」と訊いた。

 宋氏は、「全世界との貿易額を比べると、中国がアメリカより多い。つまり、通貨の使用量も一番多く、現状、ドル基軸では損をする。実は、安倍政権の前までは、日本も、円と中国元の取引を水面下で進めていて、アメリカからかなり怒られていた。世界各国は、それを変えるようIMFなどに訴えていたが、アメリカは基軸通貨の座を手放さない」と答えて、このように続けた。

 「それでアジア経済圏くらいは、ドル基軸をやめようとして始まったのがAIIBだ。中国はADB(アジア開発銀行)でもよかったが、ADBはIMFの小会社だから、日本が仕切れない。ところが、麻生財務大臣などは、AIIBを(日本への)対決だと受け取ってしまう。中国は、日本と対抗するために作ったのではない」

 中国人は単純に好きで日本製品を買うのだから、日本もそれを利用すればいいだけだ、と宋氏は語り、「しかし、最近の日本の政策は、良い悪いは関係なく、対決姿勢ばかりが先に立つ」とした。

米韓FTA締結後、たった2年で医療費が倍になった韓国

 Part1の終了後に、再び、宮尾氏が3.11の津波を描いた詩の朗読を行なった。次に、西尾正道氏と山田正彦氏が登場し、Part2「TPP~医療保険制度の崩壊」が始まった。

 岩上安身が、「訪米した安倍首相は連邦議会で演説し、日米ガイドライン、集団的自衛権の行使、TPPについて、日本の国会で議論をしていないにもかかわらず、『実行する』と約束した。私は2011年、テレビでTPPへの懸念を30秒だけ話したら、すぐに番組から降板させられた。原発よりタブーなのがTPPだ」と語り、ゲストの意見を求めた。

 山田氏は、「(TPPの縮小版といわれる)米韓FTA批准前、李明博前大統領が、安倍首相と同じようにアメリカ連邦議会で演説した」と口火を切り、その後、韓国の個人医療費は倍近くなったとして、このように話した。

 「日本では1兆5000億円の国の補助があるため、私たちは安く医療を受けられる。韓国では薬事審議会を独立機関にし、アメリカの医薬品会社も加わって薬価を決めることになった。アメリカのロビー活動の1位は医薬品業界で、年間4000億円も使っている。農業業界のロビー活動費は500億~600億円しかない。TPPで一番メリットがあるのが医薬業界だ」

 「FTA締結後、2年で医療費が倍。それはなぜか?」と岩上安身が重ねて訊くと、山田氏は、「韓国では、5年ほど前から医療特区で混合診療を全面解禁したが、がんなどへの新医療技術や薬の使用を、自由診療の解禁まで引き延ばしていた。そこにアフラックなどが参入したのだ」と説明した。

 また、今回、TPPでアメリカは、手術方法や薬の処方でも特許を取ることにして、日本はそれに同意したという。

 「これからは、民間の医療保険と国の皆保険制度を競合させる。TPPは貿易協定ではなく、投資協定だ。日本の皆保険制度は、国が補助しているから自由競争ではない、という理屈をつけられている」と山田氏は案じた。

タミフル1錠7万円──TPPで日本の個人医療費は7倍に

 岩上安身が、「ISD条項で、アメリカの医療業界が相手国を訴え、それをアメリカの世界銀行の配下で仲裁をする」と言うと、山田氏も、「ステークホルダー600社から選んだ3人の弁護士の仲裁委員が、非公開で裁き、不服申し立てもできない」と、非中立性を指摘した。

 「その賠償金は、われわれの税金で払うようになる。これから日本は、どんな医療体制になるのだろうか」と岩上安身は西尾氏に尋ねた。

 西尾氏は、個人の医療費は7倍ぐらいになると答え、「昔は戦争で国益を奪ったが、今はTPPで、経済的植民地化の最後の仕上げをする。その最大のターゲットが医療だ」と指摘した。2013年3月号の米タイムズ誌によれば、ロビー活動費の1位が医療医薬品業界で5300億円、2位が軍事産業1500億円。現在、がん治療の80%が抗がん剤治療であり、それは薬の大きな市場なのだ、と話した。

 西尾氏は、「今までは薬価は厚労省が決め、高価な薬には補助も出て誰でも使えたが、TPPではISD条項もあり、国が価格を決めることができなくなる。抗がん剤は90万円、タミフル1錠7万円。糖尿病、高血圧などの生活習慣病の薬も同様だ。1年間、健康で過ごすのに5000万円かかる、という世界だ」と口調を強めた。

農薬を作り、遺伝子組み換え作物を作り、人間にがんを作る

 岩上安身が、「医療が営利になってしまう。(副反応が問題視されている)子宮頸がんワクチンは遺伝子組み換え技術でできた。ほかにも影響がわからないまま、新薬がどんどん生まれている」と危惧すると、西尾氏は、「ネオニコチノイド系農薬は、自閉症、アスペルガー症候群、精神発達障害の原因になると判明している。しかし、農薬メーカーの圧力で、まったく報道されない」と応じた。

 岩上安身が、食べると下痢が多発したフィリピンの遺伝子組み換えトウモロコシについて話すと、西尾氏も、「フランスでは、遺伝子組み換えトウモロコシの検証実験で、がん発症の若年化、臓器障害や寿命短縮が明らかに証明された。(遺伝子組み換え作物を開発した)モンサント社の社員食堂では、遺伝子組み換え食材は使っていない」と述べて、このような悲観的な未来を予想した。

 「TPPになったら、遺伝子組み換え作物の表示もできず、地産地消もできなくなり、地域の農産物を売る『道の駅』などは消えてしまう。農薬を作って、遺伝子組み換え作物を作って、(それを食べた人間に)がんを作って、その治療に莫大な医療費を使わせるのだ」

アメリカの自己破産の6割は医療費がらみ、出産で1億円請求されたケースも

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