ゴミと資源の境界線も変えて、創造的に生きていく方法 ~第36回69(ロック)の会「日本の現状 パーマカルチャーの視点から」 2014.10.9

記事公開日:2014.10.13取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・藤澤要)

 代官山UNICEで2014年10月9日、第36回69(ロック)の会が開催された。ゲストスピーカーは、「共生革命家」のソーヤー海氏と、建築家でビオフォルム環境デザイン室代表の山田貴宏氏。テーマは、ゲスト2人がそれぞれ実践を続けている「パーマカルチャー」だった。

 パーマカルチャー(Permaculture)とは、「Permanent(永続的な)」と「Culture/ Agriculture(農的な暮らしを背景とした文化、暮らし)」とからなる造語。

 ソーヤー氏は、東京アーバンパーマカルチャー(TUP)を主催。山田氏は、NPO法人パーマカルチャーセンタージャパンで活動する。

 司会の松田美由紀氏は、ソーヤー氏の主催する「TUPツアー第一回」に参加した経験を持つ。「本当に面白かった」と話し、「いろいろなことを学んで、実際に経験すると、自分の体に強く根づく」と語った。

■ハイライト

  • ゲスト ソーヤー海氏、山田貴宏氏
  • 場所 代官山カフェラウンジ UNICE(東京都渋谷区)

移動式トイレにみる、「豊かさを生み出すデザイン」

 参加したパーマカルチャーのツアーで一番印象に残っていることは何か、と問われた松田氏は、「トイレですね」と即答。「穴を堀り、おがくずを入れて、『大』をする。満タンになったら、トイレごと移動させていく」と回想する。

 「トイレのあるところに、自然に人が集まる」とソーヤー氏。この人間の習性を利用し、痩せた土地に移動式のトイレを作る。排泄物が溜まったら土をかぶせて、その横に果樹を植える。すると、「すごい栄養価の高い土地で、果樹がぐんぐん育つ」。ソーヤー氏はこう語る。

 人間の習性と生態系を上手く組みあわせ、肥沃な土地を生み出す。「資源が循環するが、エネルギーがほとんどかからない」。トイレを媒介項にして人と自然環境との関係をデザインする。パーマカルチャーの豊かな実践の一つだ。

ゴミと資源の境目は変わる

 「活かしあう関係性を育むデザイン」とパーマカルチャーを一言で表現するソーヤー氏。「これは、要素はなんでもいい」と続ける。「ニワトリと畑でもいいし、人間と人間でも。その要素の可能性を一番引き出すような、そういう工夫をデザインしていくことが大事だと思う」。

 一方、現代日本に暮らす人々は、それぞれの「可能性」を活かすような関係性にあるのか。ソーヤー氏は疑問だとする。

 「シュウカツしている学生は、たぶん活かされない。みんなに同じバーコードがついていて、ちょっとよさそうな人たちが、いい企業に入って、でも結局ゼロからやり直しというような感じで。その人の素質を活かす世界ではない」。

 地球の資源も同じだとソーヤー氏。「いかに資源が活かされるか。トイレの話で言えば、うんちが活かされているのか、うちらの都会では」と語る。昔の江戸では、大便が取引の対象になったり、野菜と交換されたりしていたという。ならば、見方を変えれば「なんでも資源」。視点の持ち方により、ゴミと資源の境目も変わってくる。

都会では、お金がないと生きていけないのか?

 「お金がなければ死んでしまう、という脅迫観念」。松田氏は、パーマカルチャーのツアーに参加したことで、いかに現代人がこの「強迫観念」「危機感」に苛まれながら生活しているかを自覚するようになったという。

 「中央公園でも、どこの公園でも、果樹をわんさと植えて、木々を実らせ、りんごやら、柿やら、なにやらたくさん、バナナでも作れば、私たち、飢えることないじゃないの」。

 ソーヤー氏は、「消費者として育てられているから、買わないと、自分の生活が回っていかないし、そもそも、存在の目的が消えてしまう」と消費文明が社会のすみみずみまで浸透している問題点を指摘。それでも、このような「強迫観念」を払拭することは可能なようだ。ソーヤー氏の実践がそれを裏づけている。

 ソーヤー氏は、かつて東京で「ゲリラ種蒔き」と名づけ、都会のいろいろな場所に、ゲリラ的に食物の種を蒔く活動をしていた。この活動を通じ、いかに東京に緑が多く、食物が育っていることに気づいたというソーヤー氏。「ふきのとうを見つけた」。このほか、柿、いちじく、びわが育つ様子にも出会ったという。

 「消費者」から「創造者」へと語るソーヤー氏。「いかに創造して、もっとすごい、もっと豊富な世界を作れるか。もうすでにある豊富さを見つけることのできる、そういう視点を持つこと」が重要だと話す。

「下降」する時代の中で

 石油資源の枯渇や、気候変動など、「難しい環境の時代を迎えている」ことが明らかな今日の世界。「資源もなくなる、人口も減っていく、経済もどうにかなってしまう」と山田貴宏氏は語る。

 山田氏は、「むしろ、こういう『下降』していく時代の中にこそ、皆さんがクリエイティビティを発揮する素地があるのではないか」と話す。

 「地球上で唯一エネルギーを固定化してくれるのが植物」。これからの時代は、いやおうなく植物に依存することにならざるをえないのだという。

 ここでパーマカルチャーが果たす役割とは何か。山田氏によれば、パーマカルチャーは、農法の一種や農的な暮らしをデザインすることだと理解するのは間違いではない。ただし、文明史的に考えた場合に、より大きな文脈の中で果たす役割があるのではないかと示唆する。

 「もっと大きな捉えかたをすれば、耕して生きていかざるをえない文明にこれから移行せざるをえない、ということです。それを実現するのがパーマカルチャーデザインだと思います」。

パーマカルチャー=関係性のデザイン

 「パーマカルチャーは関係性のデザイン」。ソーヤー氏も言及する「関係性」というキーワード。建築家の視点から山田氏は、「ハコを作るのではなくて、ハコの周りの状況と、どういう関係性を結んでいくか」と表現する。

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「ゴミと資源の境界線も変えて、創造的に生きていく方法 ~第36回69(ロック)の会「日本の現状 パーマカルチャーの視点から」」への1件のフィードバック

  1. うみぼたる より:

    ☆与えあいのデザイン☆というフレーズも出ました。 それまでは、奪い合いのデザインだったのだと、はっ!としました。

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