「今度は、日本がガザを殺す立場になる」日本とイスラエルの協調姿勢を糾弾、「暴力の根源」を探り解決を見出す必要性 ~京都大学教授・岡真理氏に岩上安身が聞く 2015.2.26

記事公開日:2015.2.11取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ、IWJ・平山茂樹)

特集 中東

※2月11日テキスト追加しました!

 政府は2月10日、事件の一連の対応を検証する委員会の初会合を首相官邸で開き、4月に報告書をまとめる見通しだが、会のメンバーは政府関係者で構成されるため、検証における客観性の確保や、検証結果の情報公開が充分になされるのかが懸念される。中東、危機管理等の専門家や有識者の意見を聞く予定だというが、首相や閣僚への聴取は予定されていない。

 イスラム国による映像の公開は、安倍総理がイスラエルを訪問中に行われた。そのため安倍総理は、日本国旗とイスラエル国旗に挟まれるかたちで、記者会見に臨むことになった。京都大学教授で、パレスチナ情勢に詳しい岡真理氏は、安倍総理がイスラエルを訪問することで、「中東諸国に、日本とイスラエルが同盟関係にあることを印象づけてしまった」と語る。

 イスラム国がイラク、シリア一帯に勢力を拡大した背景には、2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件に対する報復である、米国の「対テロ戦争」がある。アフガニスタンのタリバン政権への攻撃、そしてイラク戦争を通じて、米国は中東のイスラム圏に対して攻撃を仕掛けてきた。イスラム国は、米国の「対テロ戦争」で混乱の極地に陥った中東に生まれた、鬼子なのである。

 日本がイスラエルと協力関係を結ぶことは、イスラム国だけでなく、中東全体と敵対関係に入ることを意味すると、岡氏は語る。最近のパレスチナ情勢から、シャルリー・エブド事件、さらには日本国内で法整備が進む集団的自衛権行使容認などの安全保障法制まで、1月26日、岩上安身が詳しく話を聞いた。

■ハイライト

  • 日時 2015年1月26日(月) 16:30~
  • 場所 京都大学(京都市左京区)

「イスラム国」との間にネットワークがない現状

岩上安身(以下、岩上)「昨年(2014年)、岡先生にはイスラエルによるガザ空爆などについてお話をうかがいました。その延長上で、今とんでもないことが次々に起きています。ガザの問題も、イラクやシリアで起きていたことなども、世界規模でつながりあっています。

 2人の日本人がイスラム国に拘束され、湯川遥菜さんは惨殺されたという画像が流れ、後藤健二さんは助けを求めている状況(1月26日現在)です。その少し前には、パリでシャルリー・エブド襲撃事件が起こっている。どちらにもイスラエルが絡んでいます。

 岡先生の専門はアラブ文学とパレスチナ問題。パレスチナ、イスラエル、アラブのことにお詳しい。安倍首相は中東歴訪でイスラエルとの関係をアピールし、その仕上げの時、日本人人質の殺害予告が表沙汰になった。まず、今回の人質事件からお聞きしたいと思います」

岡真理氏(以下、岡・敬称略)「一刻も早い2人の解放を願います。湯川さんが処刑されたという画像は出たが、まだわからない。そのために、私たちにできることがあれば何でもしたい。今もいろいろな団体が解放のために尽力し、自分も海外へ彼らの声が届くように努力しています。

 高遠さんたち3人がイラクで人質になった時には、(犯人側には)『憲法9条を持ち、広島・長崎で原爆を受け、侵略戦争に反対する立場の日本が、なぜ自衛隊を派兵するのか』という抗議で日本人を誘拐した、という明白な理由がありました。

 高遠さんたちは、そういう日本政府の方針には反対で、草の根でイラク市民を支援する人たちでした。それが相手に通じた。まだ、道理が通る(交渉の)ネットワークもあった。今回の相手がそういう道理が通じる人たちかどうか。ネットワークもない現状です」

岩上「イスラム国という集団は国際社会から孤立し、周囲からも隔絶し、コンタクトも難しい。日本政府は人質をとられた時点から何をしてきたのか。解放交渉をアクティブにしてきたのだろうか。外交面でも、政府は人質がいることを前提に活動しなくてはなりません」

 後藤さんについては水面下で身代金要求があり、家族は外務省に相談していた。外務省は知っていたにもかかわらず、安倍総理は『空爆でイスラム国の壊滅を』などと繰り返し発言しています。これは当然、相手にも伝わっているはずです。

 今回もイスラエルやイスラエルと親しい国々へ行き、『対イスラム国、対テロのために支援する』と言い、最後の記者会見の前に、人質ビデオが公開された。あまりにもうかつすぎないでしょうか。それとも、(人質には)関知せず中東歴訪の日程を組んだのでしょうか」

岡「まず、私は『イスラム国』とは言いたくないんです。ISISは、アラビア語ではダーシュといい、『イラクとシャーム(歴史的シリア)におけるイスラム国』という意味。アラブの国は、西洋のメディアにISISを『ダーシュ』と表記するよう求めています。

 ISISもISILも『イスラーム』で始まる言葉なので抵抗があります。ただ、今回、イスラム国を自称する者たちがイスラームを代表しているとは、誰も思っていないと信じたい」

「イスラム国」の行いは、「イスラーム」の名において許されない

岩上「日本にはムスリムは少ないが、彼らはモスクで人質解放を祈ってくれています。しかし、誤解も広がっている。すでにモスクに脅迫があったりします」

岡「排外主義的な感情を持っている人たちには格好のネタなんですね。

 ヨルダン王族のザイド・フセイン国連人権高等弁務官は、昨年(2014年)、イスラームにおいて許されざることを列挙しました。イスラームを偽証する者たちが異教徒を奴隷としたり、勝手にカリフ国を名乗ったり、女性や子どもの人権を蔑ろにすることなどです。

 かつて1000年も昔に行なわれたことを、(ISISは)イスラームの名のもとに正当化する。イスラームも現代の倫理に従わなければならず、彼らの行ないはイスラームにおいてはあり得ないと、フセイン国連人権高等弁務官は語っています」

岩上「こういった知識人の発言が日本では紹介されないが、イスラームの大勢の人たちが『ISISを受け入れられない』と発言しています。イランの最高指導者ハメネイ師が、西洋の若者たちに直接語りかけたメッセージもあります。

 ハメネイ師は『イスラームを冒涜する、悪魔に見立てるプロパガンダがなされているが、真に受けないで、自らの姿、真実を見極めてほしい』と語った。こういうことが、公平に伝わらないといけません」

「ISISが日本を有志連合と同一視しているのは間違っている」というのはおかしい

岡「日本人人質事件に戻りますが、日本政府の見解は『避難民にお金を出すと言っているのに人質をとるのは筋違いだ』というもの。それを主要メディアも繰り返す。でも、安倍首相自身がエジプトやイスラエルで『ISISと闘う国への支援』と言っているのです。

 私たちは今、人質解放という非常に近視眼的なものの見方をしている。もっと歴史的視野で考えなければいけない。1991年、湾岸戦争で日本はイラク空爆を経済的に支援し、『それなのに感謝されなかった』とトラウマのように言われました。

 その時から『日本は金は出すが血を流さない』という負い目を持たされてしまった。その後、PKO自衛隊派遣、アフガニスタン戦争では海上給油、そしてイラクへの自衛隊派遣、集団的自衛権と、道はならされてきました。

 日本政府は、当時、経済支援が正当に評価されなかったと怒っていた。だとしたら、『今回は避難民への経済支援だから、(ISISが日本を)有志連合と同一視するのは間違っている』と言うのはおかしいです。むしろ、今回は正当に評価されたのです」

岩上「つまり、敵と見なす側にとっては、経済支援は脅威だということですね。ISISの反応を見ると、日本の経済支援は彼らにとってダメージになるから、今回のような反応をしているのではないでしょうか」

岡「ブッシュ大統領は、9.11同時多発テロとは関係のないタリバン政権を、『アルカイダをかくまっていた』としてアフガニスタン空爆を行って攻撃しました。それを正当化する根拠として、『テロリストを支援する者もテロリストだ』と言いました。

 日本はそれを支持しました。だとすると同じ論理で、ISISを空爆し攻撃する有志連合を支援することは、有志連合と同じです。また、有志連合の攻撃で、一般市民がどれだけ殺されているのかは報道されないですよね。

 自分たちは『テロリストを支援する者もテロリスト』のロジックでアフガン空爆を良しとしたのに、相手が同じロジックで攻撃して来たら『間違っている』とするのはフェアではありません。

 自分たちのやってきたロジックを使う相手に『筋違い』だと批判すること自体が、筋違いです。もちろん大前提として、ISISの行為は正当化できない。彼らのやっていることはテロリズムですが。

 そして、日本政府は昨年(2014年)から後藤さんたちが人質になっていると知っていた。人質の命運は政府の手にかかっていて細心の注意が必要なのに、まったく安倍さんの発言には配慮がない。眼中になかったのか、本当にうかつだったのかはわかりません」

イスラエルに協力することは、日本が中東を敵に回したとみられることにつながる

岩上「人質がどうなっても構わないのか、うかつなのか。または政治的に嵌められたのか。嵌められること自体が織り込み済みだった、という意見もあります。なぜなら、集団的自衛権行使の関連法が準備されていたからです。

 そして、さっそく邦人救護のために自衛隊の出動を書き込もうということになった。いわば、この人質事件を奇貨として、海外派兵をスムーズにできるようにしようと考えている人たちが、いないわけではない。

 読売新聞は『テロに屈するな。こういう時、米英では軍事作戦で人質を奪還するのが筋だ』などと書く。完全にでたらめ。そうならば、あのジム・フォーリー記者がISISに捕まった時、すぐに米特殊部隊が救出したはず。しかし、世界最強の米軍でも無理なんです。

 こんな没論理的な記事が、平然と大手新聞に載る。読売新聞は政府の御用紙です。日本政府の動きと、それに追従するマスメディアを見ると、この事件を政治利用する意図が明白なように思えてくるのですが、先生はどう思いますか?」

岡「まず、いつから日本は米英になったのでしょうね? つまり、日本を米英のような国にしたいという目標があるんですね。今回、嵌められたかどうかは別にしても、そこを最終ゴールにして着実に進められてきたのは明らかです。

 そして、日本が直接的、間接的に軍事攻撃へ加担すると、日本人がどういうことになるのか、はっきりした。『人質は自らISISの領土に入った。自己責任だ』と言う人もいる。しかし、日本はイスラエルとともに対テロ戦争に積極的に協力すると宣言したのです。

 イスラエルは約70年間、パレスチナ人の民族浄化を押し進めている。ジェノサイドが裁かれない法外な国です。侵略や戦争犯罪を非難されるべきイスラエルに協力することは、ISIS以外の中東の人々からも、日本が侵略者の側に立ったと見られます。

 それは(ISISに)格好の口実を与えることになる。もう、ISISの領土に入らなくても、ブッシュの言うように『テロリストに賛同する者はテロリスト』になる。総理はそういう状態を自分で作っておきながら、邦人救護のために集団的自衛権の必要性を説く。本末転倒です。

 そういう方向を目指すなら、なまじ『中東の安定』とか言わずに、『戦争のできる国を目指す』と言ってほしい。戦争をしている国に入って行き、軍事以外の活路を見つけるのが(本来の)積極的平和主義です。安倍総理には『積極的戦争主義』と言ってほしい」

岩上「捕われている邦人を安全に救出できる軍事的手段などありません。結局は空爆など、戦争するに等しい。そこで思い浮かぶのが北朝鮮拉致被害者です。日本は拉致被害者救出のために、北朝鮮へ特殊部隊を送り込むのだろうか」

岡「それは、自国民の救出でなくても、アメリカが世界各地でずっとやってきたことです。それに対するしっぺ返しが9.11だった。あのテロ攻撃はいささかも正当化できないが、どういう暴力が、今の暴力を生んでいるのか、根本をしっかり考えなければいけない。

 それを日本は70年前に学んだはず。ですから、ISISやアルカイダの暴力を生む土壌はどこにあるか見極めることです。イスラームがテロを賞讃する宗教だと思い込ませるプロパガンダがあるが、まったく違う。歴史的な流れを振り返って検証しなければいけません」

ユダヤ人はイスラエル建国のためにホロコーストを利用した

岩上「イスラエルはパレスチナを侵略し、民族浄化を今も続けている国家だが、彼らがホロコースト(ユダヤ人虐殺)の犠牲者だということが批判を躊躇させる。大変難しい問題だが、それを論じなければイスラエル批判は成り立たない。これについて、ご意見をお聞きしたいのですが」

岡「イスラエルがホロコースト犠牲者の国、というのはプロパガンダです。イスラエル建国後、それがパレスチナ攻撃の言い訳になると気づいたので、今日まで利用し続けている。実際のホロコースト犠牲者や子孫らには、イスラエルを許さない人がたくさんいます。

 ナチスドイツが台頭し、ヨーロッパではパレスチナにユダヤ国家を作るプロジェクト(シオニズム)があった。当時、そのエージェントがイスラエルにユダヤ人を送り込んだが、貧乏人か病人ばかり。もっとユダヤ建国に利する金持ちを選べ、と咎められたといいます。

 イスラエルのベン=グリオン初代首相は『ユダヤ人迫害とイスラエルの存在を知りながら、なおヨーロッパに留まるユダヤ人はホロコーストの犠牲になっても自業自得』とし、建国の際、『われわれは新しいユダヤ人。国を守るためには銃を持って戦う』と言いました。

 新しいユダヤ人像を作るために、ヨーロッパに散ったユダヤ人を踏み台にしたのです。ところが、建国が成ると求心力が弱まった。そこで数の優位を保つため、中東、エチオピア、インドなどから大量にユダヤ人を呼び寄せました。

 多文化の国民を統一するために利用されたのが、ホロコーストです。『シリアもエジプトも隙あらば第2のホロコーストを狙っているから避難所としてイスラエルを作った』と説いた。ホロコーストの犠牲者イメージを前面に出して、パレスチナ攻撃に利用しています。

 ヨーロッパで迫害されていたとはいえ、イスラエルは英国軍の侵略によってムスリムの地にできたレイシズムの国家です。戦後の日本は、そういう歴史的経緯を踏まえて、イスラエルと距離をとってきたはずです」

イスラエルと接近する安倍総理

岩上「安倍総理はホロコースト記念館を訪れ、『二度とあってはならない』とコメントした。するとアジア諸国から、『日本は自国の歴史を振り返らなければいけない』という批判が出ました。

 安倍総理は加害者だった日本の立場や、パレスチナ問題を都合よく忘れて、イスラエルにシンパシーを示しました。そういう歴史認識の修正の仕方が気になりますが、どう思われますか」

岡「安倍首相はネタニヤフ首相と満面の笑みを浮かべて握手をしていますが、国民を危険にさらす行為で理解できない。イスラエルと日本は『歴史的否認の同盟』を結んだと思います。ともに、アジアでの植民地的侵略を目指した、シオニズム国家同志です。

 それでも1990年代、日本は慰安婦問題で過去の過ちの記憶を呼び戻した。教科書にも掲載され、反省の色はあった。しかし、吉田(清治氏)証言の確認がとれないだけで、旧日本軍の性奴隷制をなかったことにしようとするのも、おかしな話です。

 日本では、膨大な証言や資料、河野談話まで全否定する反知性主義が横行しています。イスラエルも長く続いている民族浄化を否認し、ナショナルヒストリーを打ち立てようとする。安倍総理とネタニヤフ首相の並ぶ図はきわめて象徴的です」

岩上「ナショナルヒストリーをうまく打ち立てたネタニヤフ首相を見習いたい、と言いたげに握手する安倍総理。元朝日新聞記者の植村隆氏は吉田証言に関する記事を1本も書いていないのに(慰安婦問題で)売国奴と叩かれている。『歴史の否認同盟』とは的を得ています」

岡「自分たちに都合の悪い者をすべてテロリストと決めつけ、殺戮していくイスラエル。ネタニヤフ首相は『ハマースはISISだ』と発言したが、ハマースは、イスラエルが占領している故郷に帰りたいパレスチナの人たちの基本的人権を主張しているのです。

 占領下の住民には、民族自決のため抵抗する権利がある。イスラエルが占領する以上、占領軍に対し武装闘争をする権利は国際法で認められています。だから、地下トンネルからイスラエル兵を捕虜にしますが、イスラエルの市民を攻撃したりはしません。

 また、どこへ落ちるかわからないロケット弾を撃つんですが、それを『テロだ』と言う。皮肉なことに、パレスチナが正確に狙えるミサイルを持ってイスラエル国防省を撃てば、正当な抵抗権の行使となり、テロにはならないのです。

 自分たち(イスラエルやアメリカ)がやっていることがテロなのに、都合が悪い相手は全部テロリストと名指して攻撃する。日本は、そんな同盟に入ろうとしているのです。

 たとえばアルカイダたちは、ガザが攻撃されても、自分たちのイスラム世界が侵略されていると考える。ISISもアルカイダ系ですから、(日本とイスラエルの接近は)日本人もテロの対象になる端緒を切り開いてしまったのです」

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「イスラエル・ロビーを敵に回すと政治家になれない」という政治力学

岩上「大英帝国を背景にしてできたイスラエルが、なぜ、ここまで強力なのか。なぜ、イギリスとアメリカは、そこまでシオニストをバックアップするのか。ユダヤ人は特殊な存在だというユダヤ陰謀論などを言う人もいるが、それを除いても納得できない人は多いと思いますが」

岡「イギリスは第一次世界大戦後に、オスマン帝国をフランスと分けあい、イラク、ヨルダン、パレスチナを得ました。そこでパレスチナを委任統治にして、イスラエルへ植民を始めたが、現地住民の反対運動が激しかったので、国連に丸投げして撤退してしまいました。

 むしろ、戦後はアメリカです。陰謀論とは別に、早い時期からシオニズム・グループが、アメリカの司法など国の中枢に食い込んでいたようです。最初、米国務省はイスラエル建国には反対だったが、トルーマン大統領が介入して、それをひっくり返しました。

 ある時期からユダヤ人ではなく、プロ・イスラエルという多国籍企業のようなグループが、イスラエルを支援します。彼らの経済力を背景に、『親イスラエルロビーを敵に回すと政治家になれない』という政治力学が、アメリカにできてしまったのです。

 彼らはエイパック(AIPAC=アメリカ・イスラエル公共問題委員会)といいます。昨年(2014年)、アメリカ議会は、ガザ攻撃への軍事支援と、国連人権理事会の決議への批判決議も、全会一致で可決しました。オバマ大統領もヒラリー・クリントンも抵抗できないのです。

 彼らは主要メディアも押さえているので、個々人がイスラエルをどう思っても、それはもう表には出ない。おかしいのは、お金を出しているのはアメリカなのに、イスラエルがノーと言えば、何もできないことです。イギリスもフランスも同じです」

岩上「パワーエリートになるなら、そこに入らねばならない。だが、一般大衆は利権にあずかることもないので思ったことを言う。そんな個人を訴えたり、脅し続けていくには金がかかる。それでプロパガンダを使う。そういう時、一番有効な手段が宗教ではないでしょうか。

 アメリカにはプロ・シオニズム、プロ・イスラエルのキリスト教の福音主義者が5000万人もいる。彼らは親イスラエルで終末論などが共通し、イスラエルの地にイエスの再臨を望んでいるといいます。それについては、どうなんでしょうか?」

岡「シオニスト・クリスチャンと言って、日本にもいます。彼らはブッシュ大統領の支持基盤でした。オバマ大統領はそうでもないが、シオニスト・ロビーを敵に回したら大統領にはなれないと言われています。そこを考えると、彼らには政治・経済力はあります」

岩上「なぜ、プロ・シオニストに経済力があるのでしょうか。世界の経済格差は広がる一方で、イスラエルの社会的影響力が増すことはリンクしているように思えますが、どういう関係になっているのでしょうか」

岡「経済力があるとシオニストになるのか、シオニストだから経済力ができるのか。これについてはアメリカの歴史を調べないとわからないが、イスラエル建国に先立ち、アメリカの政治、司法、経済界に、うまくくさびを打ち込んだ者がいたのではないでしょうか」

シャルリー・エブド事件、「表現の自由を全面に出すことに違和感」

岩上「虐げられた者には抵抗権がある、と言われてきた。それはフランス革命と無関係ではないと思うが、そんなフランスで、シャルリー・エブド襲撃事件が起こり、370万人もの市民が、表現の自由の側に一方的にくみした。少しバランスを欠いてはいないでしょうか」

岡「あの事件はまぎれもないテロだが、それにしても、表現の自由を前面に出すことには違和感がある。日本の報道ではわからないが、デモに参加した日本人によると、『私はシャルリー』のプラカードを持った人ばかりではなかったといいます。

 『私はシャルリーではない』というプラカードも多く、『私はシャルリー』に批判的な人も大勢いた。こういうことは報道されていません。イスラムvsアラブという二項対立ではないのです。そして、そもそも風刺は権力を批判するためにあります。

 権力が弾圧を加えてきて、その中で抑圧された者の権利として認められるのが、表現の自由だと思います。テロは許されないことだが、今回のシャルリー・エブドの風刺画は15億人いるムスリムの大切なものを貶める表現です。

 イスラームでは預言者を偶像にすることすら許されないのに、あの風刺画は度を超している。フランスではムスリムはマイノリティ。なぜ、フランスにアラブ人がいるのか。それは植民地主義のせいです。

 戦後、フランスは彼らを労働力にするために招き入れたが、決して対等の立場ではなく、ムスリムは貧困状況におかれている。そういう者たちの信仰を冒涜することを『表現の自由だ』と言い、表現の自由を楯に批判者を糾弾しています。

 フランスのエスプリは弱者まで笑いの対象にする。それがフランス文化だというが、理解できません。完全に弱い者いじめです。それのどこに、友愛があるのでしょう。共生社会のはずがマジョリティの文化を押しつける。すさまじい暴力だと思います。

 フランスでは宗教でも風刺対象になるというが、それはカトリックという権力に対してのこと。イスラームに権力はない。また、フランスは世界大戦中、ホロコーストに加担する歴史も持ち、レイシズムの表章は禁じている。しかし、これはレイシズムそのものです。

 なぜ、ユダヤ批判がダメで、イスラームだったらかまわないのでしょうか。完全なダブルスタンダードです。表現の自由は100%認められていない。名誉毀損もあり、レイシズム、暴力は批判される。ムハンマド批判も同じことです」

岩上「パリの事件の影響はヨーロッパ全体に広がり、ドイツでも新聞社が放火された。反ムスリムの政党がデモをし、反・反イスラムも抗議して、それにはメルケルも賛同した。今、危ないところで拮抗しています」

岡「シャルリー事件は確かにテロ。ISISがテロを起こす口実にされたのかもしれないが、世論がイスラエル側に偏っていて危険です。イスラエルのネタニヤフ首相も、シャルリー事件の犠牲者追悼デモに駆けつけていますね」

岩上「それでオランド大統領が、すぐにパレスチナのアッバス議長も呼んだ。イスラームに反感が増す一方、それを懸念する人も大勢いて、政治的に非常に緊張している。そういう状況で安倍首相は中東を歴訪し、イスラエルと連帯を表明した。むちゃくちゃな話です」

中東諸国に「日本はイスラエルの同盟国だ」と思われた

岩上「週刊ポストは、安倍総理が『みんなが注目しているタイミングで、中東に行ける俺はなんてツイているんだ。世界が安倍を頼りにしていることではないか』と言ったと報じました。人質のことは頭にはない。世界の目には、どう映ったのでしょうか」

岡「バラまき外交が、どう世界の目に映ったのかはわからないが、中東に限って言えば、『日本はイスラエルの同盟国だ』と思われた以外はない。日本政府と日本国民は違うと信じてくれればいいが、選挙の結果でもあるのだから、国民も同じです。

 ネタニヤフ首相は『イスラエルは世界一、ユダヤ人が安心して暮らせる国』と喧伝した。事実はわからないが、イスラエルに移住するフランス人も大勢いるという。しかし、モスクへの攻撃があり、ムスリムが排外主義のターゲットになっていることは事実です。

 9.11以降、アラブ人たちはターゲットにされてきました。そんな彼らがISISに流れても不思議はない。対テロ戦争では、テロがテロを呼ぶだけで決して解決しない。この暴力を生みだした根源を探って、解決方法を考えていかなければなりません」

岩上「2014年12月30日、国連安全保障理事会の15ヵ国で、イスラエルとパレスチナによる和平交渉の1年以内の合意を目指していたが、否決されました。米英は反対し、5ヵ国が棄権。フランスは賛成した。その1週間後のシャルリー・エブド襲撃事件でした。
 さらに、パレスチナのICC(国際刑事裁判所)加盟も進んでいた。これらの背景も、今回の襲撃事件と決して無関係ではないでしょう。それについては、どう考えていらっしゃいますか」

岡「イスラエルの占領地からの撤退は、1967年の第三次中東戦争のあと、国連安保理決議で決まっていたが履行されません。なぜ、再確認することを否決しなければいけないのか。フランスが賛成したからといって、そんなに偉いとも思いません。

 かつてパレスチナとの停戦合意の際、イスラエルは、ICCに提訴しないことや、パレスチナへの援助停止を条件に挙げたり、ICCの主席検事を抱き込んだり、いろいろしていた。アッバス議長が提訴して正当に裁かれればいいが…。オスロ合意の『二国家共存』も形式的です。

 パレスチナ自治区といっても、ヨルダン川西岸地区はイスラエルの占領状態。さらに入植地を作り、過去のいかなる合意にも従わないイスラエルは、まったく和平を考えていません。

 今回、安倍総理はガザへの支援も打ち出していますが、封鎖や占領など、根本的なことへの批判はしていません。そして、イスラエルに軍事協力する。今度は、日本がガザを殺す立場になるのです。

 そういうイスラエルを批判しない国々が、二国家共存とか撤退とか言っても、イスラエルは実行しない。それを続けて既成事実を引き延ばすだけです。昨年(2014年)のガザ攻撃では10万人が家を失いました。残りの人々もシェルターや友人宅で暮らしています。

 ガザ復興支援とは何なのか。単に攻撃の前の状況に戻すだけなら、『生きながら死ねということに等しい』と住民は言います。封鎖は、もう7年間も続いているのです。それが復興と言えるのでしょうか。

 占領も封鎖も違法で、それがあるからハマースは武装闘争をする。そのイスラエルの違法性を非難せず、ハマースをテロと言うイスラエルに協力しながらの、日本のガザ復興支援。これはマッチポンプ状態。再びイスラエルがガザを破壊したら、また復興支援です。

 費用は全部私たちの血税です。国民はもっと怒らなければいけない。さらに、日本国民がテロの標的にもなる。唯一の解決策は暴力が償われて尊厳を回復すること。ハマースはオスロ合意に基づき、ガザと西岸の主権国家の独立を求めているが、イスラエルはそれを認めない。

 ハマースは、その地域の独立と入植地からのイスラエル撤退があれば、長期にわたる休戦条約の準備があると言っています。しかしイスラエルは、軍事産業的に見れば紛争を終わらせたくない。そういう国と日本は包括的パートナーシップを結ぶ。絶句です」

侵略という暴力があることを棚上げして、テロだけを非難することはできない

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“「今度は、日本がガザを殺す立場になる」日本とイスラエルの協調姿勢を糾弾、「暴力の根源」を探り解決を見出す必要性 ~京都大学教授・岡真理氏に岩上安身が聞く” への 2 件のフィードバック

  1. @kase_jinさん(ツイッターのご意見) より:

    2015/01/26 イスラム国とイスラエル、その知られざる関係とは? 岩上安身が京都大学教授・岡真理氏に聞く(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/227872

    イスラムに関する歴史についても、今回の事件の経過についても、視野が広く偏りがない話でした。
    https://twitter.com/kase_jin/status/563357513387495425

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「今度は、日本がガザを殺す立場になる」日本とイスラエルの協調姿勢を糾弾、「暴力の根源」を探り解決を見出す必要性 ~京都大学教授・岡真理氏に岩上安身が聞く http://iwj.co.jp/wj/open/archives/227872 … @iwakamiyasumi
    中東全体を敵に回しかねないが、誰も責任はとらない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/584642940468768768

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