「TPPはグローバル企業による侵略、国家の乗っ取り」〜TPPの違憲性ついて岩月浩二弁護士に岩上安身が聞く 2014.10.23

記事公開日:2014.10.24取材地: テキスト動画独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材:岩上安身、記事構成:藤澤要)

特集 TPP問題

 TPP締結により、日本国憲法の三大原則のうち二つまでが、完全に書き換えられる――。

 弁護士の岩月浩二氏はそう話す。国民主権は「投資家主権」となり、基本的人権の尊重は「企業基本権の尊重」となる。何よりも投資家の意向が尊重される国。人びとの生命や健康よりも、企業の利益追求が優先される世界。

 「TPPはグローバル企業による侵略で、国家の乗っ取り」。岩月氏は静かに憤る。

 TPPは「国家百年の計」であると、安倍晋三総理の言葉にある。それほどまでに政治的に重要な課題であるならば、とことん国会で民主的な議論がつくされるべきはずだ。

 人びとが見ている光景は全く違っている。TPP阻止を掲げて選挙に勝った自民党は、手のひらを返し推進へ。交渉は秘密のベールに包まれたまま。内実を知るのは一握りだけだ。それを望んで自民党に一票を投じた人がいたのだろうか。

 国会から民主主義が失われた今、最後の砦として司法しか残されていない。岩月氏は、元農水大臣の山田正彦氏、前日本医師会会長の原中勝征氏、立教大教授の池住義憲氏らとともに、TPPの違憲性を訴え、交渉差止を求める訴訟の準備を開始。9月24日に「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」設立準備会を発足させた。

 「民主主義に頼ることができないなら、司法に訴えるということは十分に意味のあることだと考えます」。岩月氏が語る声は、悲痛にも聞こえる。それほどまでに、状況は危機的だということだ。

 「侵略」の危機にさらされている現状を伝えない主流メディア。人びとは、実質的に「マインドコントロール」されているのかもしれない。10月23日、岩上安身とのインタビューで岩月氏は、「少しでも気づく人を増やしていくことから始めるしかない」と決意を語った。

■イントロ

  • 日時 2014年10月23日

※以下、実況ツイートをリライトし再構成したものを掲載します

民主主義が機能しない国会:司法が踏み込むべきTPP問題

岩上「岩月弁護士は交渉差止違憲訴訟の準備会の立ち上げにご出席され、私も呼びかけ人に加えさせていただいていますが、あの時は記者として質問させていただきました。

 違憲訴訟を起こしても、『統治行為論』という形で、“高度な政治性”を有する国家の行為に司法が判断しないという壁があります。砂川裁判の伊達判決が覆った出来事がありました」

岩月氏「あの集会ではするどい質問を受けて、私も勉強させていただきました。

 イラク派兵差止裁判については、2008年4月17日の名古屋高裁でイラク戦争へ武器弾薬の輸送は9条1項の『戦争の放棄』に反するという重要な判断が出ました。結論としては棄却されましたが、今度、判断については歴史的な評価が出ると思います」

岩上「TPPという国の形を変える行政行為。これを入口の所で止めなくては。大いにチャレンジするべきなのでは」

岩月氏「弁護士の間でも、裁判という方法については異論が多い。差止に関して現実的だと考える弁護士は、ほとんどいません。

 ただ、せめてここで裁判という形で、何も知らされていない国民に知らせるという意味もあります。山田正彦さんからの『座して死を待つのか』との説得もありました」

岩上「日弁連というのはシンクタンクであり、政治的に具体的な交渉・折衝をしている団体でもありますね。TPP反対を叫べば、その折衝を止めるという圧力があると聞きます」

岩月氏「私のところには、何もないのですが(笑)」

岩上「こういう訳で、弁護士の先生方も熱心ではないと思われますが、岩月先生は声をあげられました」

岩月氏「いったい、私たちに止める力があるのか。そこに立ち返ったときに、少なくとも歴史に照らして恥じない、やるべきことはやるという思いがあります。もう一度、市民を結集し、声を国民に広げることはやるべき、と考えています。

 また、裁判官の中には、少なくとも、誠実に私たちが法律論を訴えていえば、それに応えてくれる良心のある人がいる可能性がゼロではない、と考えています。

 それから、統治行為論について言えば、高度に政治的な問題について、国会が民主主義に基づいて決定されることが担保されているという前提があって、裁判所が判断を留保するという論理です。あえて正当化の根拠を言うならば、そういうことになる。

 自民党を見る限り、断固TPP阻止と言いながら、多数を握ったとたんに、のめり込んでいきました。つまり国会が民主的に機能していない。2012年に農業者が自民党に投票したのは、TPP阻止を公約にしていたからです。このように民主主義に頼ることができないなら、司法に訴えるということは十分に意味のあることだと考えます」

TPP:「グローバル企業の侵略」あるいは「国の乗っ取り」

岩上「訴状の骨格を説明いただけますか」

岩月氏「『TPP交渉の差し止め』『TPP交渉ないしTPPの違憲確認』『国家賠償請求』の3つの柱からなります。ただ、差止や違憲確認は行政訴訟という性格が強まり、門前払いされる可能性が出ます。

 そこで、国家賠償を求める中で、裁判所に対してTPPの違憲性の判断を求めていきます。明らかにTPPはグローバル企業による侵略で、国家の乗っ取りです。そのことの違憲性を確認するための裁判で、裁判所が踏み込んだ判断をしてほしいと考えます」

岩上「何からの侵略ですか」

岩月氏「グローバル企業です。生命や健康、著作権も侵害される。しかも国民には知らされないままです。これが何代も続く、ということを考えれば、これは侵略、戦争であると考えます」

岩上「TPPで明らかに格差が広がります。『アベノミクス』によりその先取りがされています。2012年から2013年にかけて日本では急激に富裕層が増えています。一方で年収200万以下の人が増加しています。労働者の4人に1人がワーキングプアです。

 『アベノミクス』は大失敗ですね。経済指標は軒並み最悪です。こんな中、労働力の流動化をはかろうとしている。この先、身分制が生まれつつあるのではないかと思っています。グローバル資本による国の簒奪とともに、前近代社会に戻るのではないか」

岩月氏「その通りだと思います。ただ日本の場合、失業率は5%という数字で高いと言われる。欧米ならば10%くらいで高いという。相対的にはグローバル化の洗礼を受けていないため、この先まだ“のびしろ”があるとグローバル資本は見ているのでしょう。

 明日は我が身だということに、日本は気づいていないのです」

岩上「そう感じさせない情報操作があるのだと思います。国家は人間と領土が揃って国家ですね。ところが外国人移民が労働者として入ってきますね。

 主権というのは実力と結びつきますが、日本は米軍が押さえています。先住民の駆逐など、アングロサクソンがやってきたことを考えれば、日本の未来も同じようなものではないでしょうか」

岩月氏「グローバル資本は国境がありません。米国民を絞り尽くした次に、中国はまだなので、さしあたり日本という考えなのでしょう。富裕クラブの間では、国同士の対立がないのだと思います」

世界の富裕層クラブに入れてもらっている安倍総理

岩上「訴訟の会の規模はどのくらいのものですか」

岩月氏「弁護団は現在13人です。TPP交渉の『大筋合意』というタイミングで訴訟に踏み切る考えです」

岩上「9月30日付けのワシントン・ポスト社説は露骨に『TPPは中国包囲網』という論調です。なぜ日本人は、唯々諾々と従っているのでしょうか」

岩月氏「少なくとも冷戦の時は、米国に保護されていました。対照的に韓国は朝鮮戦争で最前線になりました。

 米国が日本を兵站基地にするために工業化を進め、その体制が続きました。1985年から収奪の過程に入り、その最終局面が集団的自衛権だし、TPPだということだと思います。その最終局面にかかっていることに日本人は気づいていないのです。

 安倍さんも富裕層クラブに入れてもらっているという認識ですね。一緒に収奪するという発想です。ワシントン・ポスト社説の9月30日という日付は重要です。甘利大臣が席を立って、年内合意はないという報道がなされました。このままずるずるいくと。
 米国側の主張は自動車部品の関税撤廃は20年30年しないというもの。自由貿易の前提が崩れますね。甘利氏が席を立つのはあたりまえです。そういう不当な要求でも、のめということですね」

岩上「ワシントン・ポストの社説にある、安倍さんの『大胆な行動とか日本の特殊利益と対決するなどと発言』というのは、海外向けだけになされたものですね」

岩月氏「まさに富裕層クラブへ向けられたものです」

岩上「米国はTPPでアジア、TTIPでは欧州まで一つの経済ブロックを作ろうとします。そうするとロシアと中国が挟まれますね。そして、ロシアと欧州を分断するためにウクライナ危機を煽ります。

 購買力平価を基準にしたGDPで、中国は米国を抜きました。またブラジル、ロシア、インド、中国、メキシコ、インドネシア、トルコからなる“新しいG7”が、これまでのG7のそれを抜きました。

 1986年に労働者派遣法が施行。1990年には大店法が改正され大規模店舗の出店規制が緩和されます。95年から一般労働者の流動化を経済界が提言。この流れで、1985年には16%だった非正規労働者の割合が、現在は40%に近づいています。

 輸出を高めるという建て前でTPP推進が叫ばれますが、世界銀行の統計によれば、日本のGDPに占める貿易依存度は206ヵ国中で196位です。日本が強いのは、実は、内需なのですね」

TPPが憲法を書き換える:国民主権は「投資家主権」へ、基本的人権の尊重は「企業基本権の尊重」に

岩月氏「憲法問題としてTPPを考えたいと思います。日本国憲法の3原則は『平和主義』『国民主権』『基本的人権の尊重』です。TPPにより、国民主権が『投資家主権・企業主権』となり、投資家による投資家のための政治となるでしょう。

 また、基本的人権の尊重は『企業基本権の尊重』へ。もう少し言えば、『企業利益の最大化』という原理に、基本的人権の尊重が書き換えられる。

 国際経済法の教科書には、国際経済活動というのは、『グローバルな資源配分の最適化、費用の最小化と利潤の最大化を目的』とすると書かれています。『グローバルな市場が形成されたとき、そこで全世界の人々の得る福利の最大化が達成される』という思想です」

岩上「私企業の利益を最大にするために、これまで国家が担ってきた活動も民営化されていくでしょう。たとえばPMC(民間軍事会社)がありますね。東インド会社が思い出されますが、民間企業が戦争を行うという世界に戻ろうとしていますね」

岩月氏「企業利益最大化が主で、人権がたんなる修正原理という考え方がもっとも反映されているのが、WTOの『衛生及び植物検疫に関する措置(SPS)』です。輸入制限は有害性の十分な科学的証拠がなければできません。さらに挙証責任は輸入制限をする側に生じます。国際基準を策定するコーデックス委員会では、アグリビジネスが発言権を持つ。

 TPPで米国が主張するのが『確固とした強制可能なSPSを求める』というものです。その結果、日本国民の健康・生命が脅かされるでしょう」

岩上「何日が経っても腐らず、カビない食べ物。添加物が何か分からなくても、有害性を証明しない限り輸入制限がされないということですね。

 食の安全に関して予防原則が認められない。これは放射線被曝の問題と同じですね」

岩月氏「まさに、その通りです。

 TPPには規制のコヒーランスという考え方があります。科学的な証拠がない限り、先ほどのSPSの考え方を、規制全般について適用しようとするものです。

 原発をたとえにすると、再稼働されると言われる川内原発では、火山噴火がいつ起きるかについても科学的証拠が必要だということになる」

映画のような現実:帝国主義的企業がISDという武器で世界支配

岩月氏「TPPをいったん締結してしまうと、国会で決めるということができなくなってしまう。人権の尊重を蹴飛ばしながら、企業の利益を最大化するという国際経済法の考え方を国内へ当てはめていくことが、今まさに行なわれています」

岩上「自分たちを支配するのは帝国的企業である、という視点が米国の大衆を満足させるハリウッド映画で顕著です」

岩月氏「米国ではそれだけ日常で肌身に感じているということですね」

岩上「現実とシナリオが同時進行なのかと感じます」

岩月氏「ISDというのは、外国企業が『合理的な期待利益』を損ねられたと考えたときに、『国際裁判』と呼ばれるものに訴えることができるものです」

岩上「世界各国の投資家を保護するものですね。

 国際慣習法というものがTPPで時々出てきます。恣意的なものだと聞きますが」

岩月氏「国際的な慣行が重なり、明文化され、条約となるのにはかなり時間を要します。しかしISDの裁判というものは、たかが1994年にNAFTAが発効してからのことです。

 ISDに基づくものが、国際慣習法として成立するのか、という疑問があります。最終的にどうなるかと言うと、米国の州は独立性が高いですね。州どうしの間の州際法理が、国際慣習法だということになってしまうのです。

 2002年大統領貿易促進権限法には『米国の法理および慣行に一致した公正かつ衡平な取り扱いに対する基準の設定を求める』とあります。米国の州と州との間の話が、国際慣習法だということになる」

岩上「日本人は合衆国大統領や連邦議員を選ぶ権利がないのにもかかわらずですね」

岩月氏「日本だけでなく11ヵ国すべて。途上国や新興国との格差を固定化していくという性格が強い。自由貿易と言いながら、貿易の強制性があります。

 また、公正な競争市場と言いながら、米国中心主義という側面は極めて強いですね。米国企業にとって有利なルールを作るということですね。その側面は否定できないですね。

 グローバル法の支配で何が起きているのでしょうか。国民主権が、グローバル企業の利益を最大にする形で、グローバル法に奪われます。ISDの私設法廷、つまりビジネスロイヤーがほとんどを占める場に、国家が従わなくてはならなくなります」

岩上「外国の帝国主義の一従属勢力になるということですね」

岩月氏「茶番のような私設法廷が開かれてですね」

岩上「国民が裁判当事者になれない。国内の法廷が二級法廷のようなものになってしまうということですね。

 グローバル企業が国家を平伏させ、各国の国民は権利を剥奪された事実上の奴隷になるということですね。帝国主義のシステム以外のなにものでもない。これを分析し、抵抗の運動を形成するということはありますか?」

岩月氏「まだまだ、メディアによってまかれているだけのイメージですね。新聞を読めば読むほど、本質がどんどん見えなくなっていく」

岩上「世界が一級市民と二級市民とに分かれていくことは間違いないと思います。ドイツで聞きましたが、ドイツは日本よりずっと規制社会。労働者の権利保護も手厚い。TTIPを締結すれば、これがすべて吹っ飛ぶということで懸念されています」

「少しでも気づく人を増やしていくことから始めるしかない」

岩上「見通しとして、今後はどうなりますか」

岩月氏「訴訟を説得的なものとして組み立てることに傾注していきます」

岩上「TPPはすべての隣接領域に影響を与えます。そこで疑問を持ち、頑張っている人たちに呼びかけるということはできないのでしょうか」

岩月氏「反貧困、労働者保護、反環境汚染、反原発デモということですね」

岩上「ローカルな日本政府は、グローバル資本に追随し、その御用政府になっていきそうです。そこを食い止めようとしている人はまだまだいるのではないでしょうか。

 米国がやっていることにおかしいと言っている人は、南米にもいますし、マレーシアでは戦争犯罪法廷を開いて、チェイニーなどイラク戦争の指導者を裁いています」

岩月氏「今の状態は完全に隠蔽され、マインドコントロールされているので、少しでも気づく人を増やしていくことから始めるしかないですね。政治家が一人でも二人でも自覚してもらえるなら、変えていく方向へ力を尽くしていきたいです」

岩上「岩月さんには、ぜひIWJに寄稿していただきたいと思います」

岩月氏「私たちは歴史的な時代に生きています。その中で私たちはどう生きたのか、ということです」

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入よりご覧になれます。

サポート会員 新規会員登録単品購入 500円 (会員以外)単品購入 50円 (一般会員) (一般会員の方は、ページ内「単品購入 50円」をもう一度クリック)

関連記事


“「TPPはグローバル企業による侵略、国家の乗っ取り」〜TPPの違憲性ついて岩月浩二弁護士に岩上安身が聞く” への 2 件のフィードバック

  1. 松野 仁英 より:

    TPPが書かれている様なものだろうとは思っているのですが、果して、日本にTPPに加盟しないで、経済活動を続けて行く選択肢があるのか、と言うことも疑問に思っています。可能性は薄いのですが、TPPの内容をそれぞれの国の一般市民にとって、富ではなく、幸福の追求を目指すものに近付けるものすることができないものかなぁ。等と妄想したりするのですが。現実は厳しい様に思います。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「TPPはグローバル企業による侵略、国家の乗っ取り」〜TPPの違憲性ついて岩月浩二弁護士に岩上安身が聞く http://iwj.co.jp/wj/open/archives/189222 … @iwakamiyasumi
    「侵略」の危機にさらされている現状を伝えない主流メディア。だから、IWJが伝えているのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/530225777787158528

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です