「今、福島で起きているのは『海殺し』だ」 ~上関原発建設反対集会 鎌田慧氏 アーサー・ビナード氏ほか 2014.3.8

記事公開日:2014.3.8取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

特集 3.11

 「高濃度汚染水が垂れ流されているのに、政府は再稼働を企てる。細川氏、鳩山氏、菅氏、小泉氏、4名の元首相が原発反対を訴えている。こんな国は他にない。再稼働は絶対に止める」──。

 2014年3月8日、山口県山口市の維新百年記念公園にて、「上関原発を建てさせない山口県民大集会」が行われた。集会は午前と午後の2部に分け、1部では、主催者、鎌田慧氏、アーサー・ビナード氏、福島からの被災者の方、連帯する市民運動の人々、祝島で反対運動をする人々からのスピーチと集会宣言採択を行った。2部はライブコンサートで集会を盛り上げた。

■全編動画
・1/5(10:37~ 12分間)

・2/5(10:50~ 13分間)

・3/5(11:08~ 7分間)

・4/5(11:20~ 2時間9分)

・5/5(13:41~ 1時間53分)

  • 10:00~ 第1部(司会 天野いつか氏)
    オープニング音楽 高石ともや/上田達生(敬称略)
    開会あいさつ 那須正幹氏(児童文学作家)/清水敏保氏(上関原発を立てさせない祝島島民の会代表)/田川章次氏(弁護士、県民監査にかかわる「住民訴訟」弁護団長)
    スピーチ 鎌田慧氏(ジャーナリスト、作家)/アーサー・ビナード氏(詩人、絵本作家、随筆家、翻訳家)
    福島からの報告/連帯あいさつ/県民アピール(祝島の方・県民)/集会パフォーマンス/集会宣言採択
  • 12:00~ 第2部(MC・司会 DON弥五郎氏)
    出店・ブース紹介
    ミュージック広場 三宅洋平/Jahmelik & Five Points Star Band/こだままこと/NO∞無/Thought(敬称略)
    トーク広場

賛同者2021名、56団体。寄付は350万円超

 本集会の呼びかけ人で、児童文学作家の那須正幹氏が、「情報公開を徹底的にする。核燃サイクルからの撤退。福島の被災者への支援と対策。原発政策を脱原発に変えること。汚染水やプルトニウム対策は国際的な協力を得て進めること」という、ある市民グループの政府への提言を紹介し、開会の挨拶とした。

 同呼びかけ人で、弁護士の田川章次氏が、上関原発建設を阻止するための住民訴訟の成り行きと、それに対する山口県の対応を話した。続いて、上関原発を建てさせない祝島島民の会代表、清水敏保氏が挨拶を述べた。

 この集会の実行委員会事務局長の草地大作氏が、「昨晩までに、賛同者2021名、56団体。寄付は350万円を超えている。まだ、増え続けている」と報告をした。

廃炉作業を次世代に残すことの悔い

 鎌田慧氏が登壇。「今、福島第一原発は収束どころか、高濃度の汚染水が太平洋に向かって流れているのに、政府は原発再稼働を企てる。新増設や輸出までするという。これは、人類や自然に対する敵意である」と述べ、次のように続けた。

 「細川氏、鳩山氏、菅氏、小泉氏、4名の元首相が原発反対を訴えている。こんな国は他にない。もう一歩、力を出せば原発は止まる。そして、廃炉までの長い歴史も共有しなくてはいけない。私たちは、この先何万年にもわたる間違いを選択してしまったのだ。大地震がいつ起こるかわからない日本には、原発はあり得ない。再稼働は絶対に阻止しよう」。

中国電力は原爆と同じウラン235で原爆ドームを照らす

 次に、詩人・翻訳家のアーサー・ビナード氏が登壇した。「中国電力に一番、貢献しているのは祝島の人たちだ。なぜなら、原発は一度動かしたら止められなくなり、経済的破綻が明らかだからだ」と切り出したビナード氏は、「中国電力は島根原発1、2号機で、広島原爆と同じ材料のウラン235を使って発電し、原爆ドームの照明や資料館の空調を賄っていた。こういうことを、やってはいけない。自分たちがこの犯罪を止めなければ」と訴えた。

 ビナード氏は「このままいけば10年後、原爆ドームの命名権も売買されて、『中国電力原爆ドーム』になるかも。安倍政権は原発推進だが、オバマ大統領は一般教書演説で、シェールガス開発、再生可能エネルギー、太陽光発電の促進を訴え、原発に関してはひと言も言及していない。米国では、儲からない原発には興味がないのだ」と、原発は時代遅れであることを指摘した。

アメリカの奴隷の安倍政権、地獄の底まで服従

 「GEは日立に、ウエスティングハウスは東芝に押し付けられ、日本は、アメリカ原発産業の下請けにすぎない。安倍政権は、地獄の底まで、それに服従する。新設する大間原発は、六ヶ所村再処理工場で生産したMOX燃料が、ちゃんと機能しているという大義名分のためなのだ」。

 「上関原発の建設反対運動は、日本の歴史を変えるための、『上関ヶ原の戦い』だ。福島第一原発の放射性物質は、ほとんどが海に流れている。汚染水問題と言うが、言葉にごまかされると本質が見えなくなる。今、起きていることは『海殺し』。瀬戸内海は殺したくない」。

 「安倍首相は、帝国リベラリストのオバマの奴隷だから『超リベラリスト』。自分は、食糧自給率100%を目指すから『保守派』なのだ」と、ビナード氏の舌鋒は最後まで鋭かった。

四国4県の世論調査は60.7%の住民が反対

 次に、被災地の福島から移住してきた、山口県避難移住者の会代表の浅野ようこ氏とその仲間たちが登壇。「原発事故は終わっていない。小児甲状腺がんも増えている。心筋梗塞、免疫力低下もある。にもかかわらず、福島に子どもたちを引き止めている」と話し、上関原発建設の反対を訴えた。

 連帯あいさつに移り、伊方原発を止める会共同代表の松本修次氏が、原告1002名の伊方原発差し止め行政訴訟の進展具合と活動の要旨を報告。四国4県、4新聞社合同の世論調査で、60.7%の住民が「建設反対」。86.9%が「不安」もしくは「やや不安」と回答した、などと話した。

 平和フォーラム事務局長の松坂氏は、島根原発の再稼働審査の進展具合を話し、「自然エネルギーへシフトできるような条例制定の、直接請求の署名9万筆以上を集めて知事に提出したが、議会は消極的で否決されそうだ」などと報告した。

参加者7000人。村岡知事に建設中止を訴える

 司会の天野いつか氏が「2009年9月、平生町田名埠頭で反対住民の埋め立て工事大阻止行動があり、全国に上関原発の名を知らしめた」と語り、その時に全国から届けられた2000枚あまりのメッセージ布が、この会場に展示してあることを紹介した。

 山口県在住の女性は、子どもたちの将来を憂い、上関原発の反対を訴えた。祝島の住民たちは「32年間、原発阻止運動をしている。皆様の支援に感謝する」と述べて、脱原発をアピールした。

 そして、会場の参加者がシュプレヒコールで気勢を上げたあと、この日の参加者数は7000人と発表された。宇部市実行委員会の木下氏が、まず、福島の被災者の安寧を祈り、「福島の原発事故は、収束にはほど遠いにもかかわらず、上関原発建設計画の白紙撤回はされていない。村岡嗣政山口県知事に、建設中止を訴える」と集会宣言を読み上げ、第1部を終了した。

 第2部は、MC DON弥五郎氏によって始まった。コーラスグループThought、祝島に住むこだままこと氏、Jahmelik & Five Points Star Band、NO∞無、三宅洋平氏など、多彩なミュージシャンがライブで集会を盛り上げた。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です