「31年間、上関原発の建設を止めていることは誇り」 ~ハチの干潟調査隊 秋の学習会&散策会 祝島島民の会・清水敏保氏講演 2013.10.5

記事公開日:2013.10.5取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「ハチの干潟を守っていくことも、上関原発を阻止することも、瀬戸内海の自然を守っていくことでは同じ」──。2013年10月5日、広島県竹原市の人権センターで「第6回 ハチの干潟調査隊 秋の学習会&散策会」が開かれ、ハチの干潟調査隊代表の岡田和樹氏は、このように語った。

 ハチの干潟とは、竹原市賀茂川河口に広がる天然の干潟で、沖合には豊かな藻場が広がり、瀬戸内海でも多種多様な生き物が生息する貴重なエリア。一時、埋め立て計画が持ち上がったが、多くの人が反対の声を上げて計画を撤回させた経緯がある。ハチの干潟調査隊は、この干潟を手つかずのまま後世へ伝えるために、生物や環境の定期調査、干潟の観察会などを行っている。また、同じ瀬戸内海の自然や文化を守るために、山口県の上関原発計画中止も訴えている。この日は、長年、上関原発の反対運動に取り組んできた清水敏保氏が講演を行った。また、干潟散策会では、今年になって初めてカブトガニがみつかったポイントを訪れて、カブトガニの探索を行った。

■全編動画
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  • 第1部 基調講演 清水敏保氏(海運業・町議・島民の会代表)「取り戻そう瀬戸の豊かな海 止めよう上関原発」~上関原発予定地住民30年の想い~/その他 ハチの干潟の活動報告・ハチの干潟写真展示
  • 第2部 ハチの干潟散策会 ~瀬戸の昔を知る証人が見つかった!カブトガニを探そう!~(賀茂川河口)

上関原発に反対する島民は93%に達した

 清水氏は、上関原発の計画が持ち上がった当時の話として、「1982年6月に、議会で当時の加納町長が『企業誘致の一環として、上関町民の理解を得られれば、原発を建設してもいいのではないか』と発言して、計画が表面化した」と述べ、「ところが、その時点ですでに根回しは終わっていて、祝島の3名の議員も推進派、町議会全体では18人中17人が賛成、反対は1人という状態だった」と振り返った。

 祝島の島民たちが原発建設反対に立ち上がった経緯については、次のように説明した。「最初は、原発が良いとも悪いともわからなかった。だが、中国電力から促されて参加した美浜原発と敦賀原発の視察旅行で、現地の人たちの様子を見て、何かおかしいと感じた。その後、原発に反対する学者たちを島に招いて、原発の問題点や危険性を勉強し、原発に出稼ぎに行っていた島民の話を聞いた。釣り客に『原発ができたら、もう祝島には来ない』と言われたこともあり、最終的に原発には反対となった。島全体では、当時の人口1200人のうち原発反対は93%に達した」。

3.11があり、上関原発の建設はなくなったと思った

 最近の動向として、清水氏は「5年くらい前から、インターネットなどで上関原発の情報を知った若い人たちが、島に来るようになった。海上にシーカヤックを浮かべて抗議活動をするので『カヤック隊』と呼んでいるが、彼らが中国電力への阻止行動に加わってくれた。祝島も住民の高齢化が進んで、毎日の抗議行動は難しい。しかし、若い人たちが参加してくれて、交代で活動できるようになった。何度もあきらめそうになったが、これで私たちも続けられるのではないか、阻止できるのではないかと、再び自信を持って阻止行動に取り組んでいる」と述べた。

 そして、大きな転機となった事柄として、2011年3月の福島第一原発事故を挙げた。「これにより、推進派の県知事と上関町長も、中国電力に対して、福島が収束するまでは工事を自粛するよう要請し、計画は中断となった。それから2年半経過したが、今も工事はストップしている。私たちは、これで上関原発の建設はなくなった、と思った」。

 海を埋め立てて建設する上関原発の工事には、公有水面埋立免許が必要である。中国電力が持つ免許の期限は2012年10月まで。山口県の山本知事が免許の延長を認めなければ、工事中止は決定的になるはずだった。しかし、事態は予想外の展開となる。

 清水氏は「山本知事は、昨年7月の知事選で『中国電力から延長申請が出ても、福島の事故を踏まえて、不許可にする』と公約して当選した人だ。しかし、実際には延長申請を不許可にせず、判断を先送りした。そのまま昨年末の衆議院選挙を迎え、さらに来年の3月まで様子を見ようとしている」と憤る。「こうした考えられない公約違反が、まかり通っている。この間に、原発推進派は息を吹きかえす。中国電力もあきらめていない」。

原発推進派は、勝つまでどんな手でも使ってくる

 さらに、現在の大きな問題として、清水氏は漁業補償金を挙げた。「祝島の漁民は、補償金10億8000万円の受け取りを拒否している。しかし、高齢化で漁業組合員が減り、魚介類の水揚げ量も減っている。そのため、組合の維持にかかる費用が賄えず赤字となり、組合員が補填している。こうした状況の中で、今年2月に、山口県漁協で補償金受け取りの賛否を問う無記名投票が行われた。結果は、21対31で反対派が敗れる事態になった」。

 清水氏は「すぐに反対派に集まってもらい、同数の31人が、山口県漁協に対して、改めて補償金を受け取らない旨を書き、署名捺印して提出した」と話した。その上で、「これまでも、補償金については一切協議しないと決議してきたが、それを無視して、賛成派は勝つまで仕掛けてくる。今度は補償金の配分を、配分委員会を通さず、県漁協が決議しようと企んでいる」と危機感を表した。

31年間戦って、原発建設を止めていることを誇りに思う

 最後に、清水氏は「本当に厳しい状況だが、亡くなってしまった多くの先輩たちのためにも、力を合わせて白紙撤回を求めていきたい。原発建設計画を、たった500人足らずの島民と、協力してくれる人たちとで、31年間戦って止めている。このことは誇りに思っている。ただし、これからは祝島だけでは戦っていけない。全国の皆さんと手をつないで、原発計画を潰すためにがんばっていきたい。ぜひ、協力していただきたい」と訴えた。

 岡田氏が再びマイクを握り、「今、再稼働反対の声は大きいが、原発の新規立地がいまだに残っていることが、触れられなくなってきている。3.11以降、なぜ、これが止まらなかったのか。そして、止まらないとどうなるのか。今一度、考えてほしい。このハチの干潟がある竹原から、上関までは120キロ。広島からは80キロ。福島の現状を見れば、万が一の時には、このあたりも住めないような事態になるだろう。結局、原発が稼働することで儲かるのは、アメリカや政府の一部の人たちに過ぎない。そのために、私たちの生活、自然、故郷が奪われようとしているのだ。これら大切なものを、一部の人間から取り戻し、豊かな社会をきちんと残せるように、ハチの干潟での取り組みを続けていく」と話して、学習会を締めくくった。

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