“命を懸けてTPPを阻止する” 山田元農水相、魂の叫び ~岩上安身によるインタビュー 第318回 ゲスト みどりの風 比例区候補・山田正彦氏 2013.7.14

記事公開日:2013.7.14 テキスト動画独自
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特集 TPP問題
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※サポート会員向けページに全文文字起こしを掲載しました(2013年7月25日)

 今回の参院選にみどりの風から立候補している山田正彦・元農水相が7月14日、岩上安身のインタビューに応えた。山田氏は、TPPの危険性を改めて訴え、自身が農水相を辞めたときの経緯や、昨年の衆院選時からの水面下の動きなどを赤裸々に語った。

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 TPPの先行モデルと言われる「米韓FTA」について、山田氏は、豚を育てて出荷すると一頭につき日本円にして約一万円の赤字になる、という数値を示し、「(韓国の)畜産は7割が廃業です」と衝撃の数値を語った。さらに、韓国側が唯一勝ち取った聖域である「コメの関税」についても、「2014年から段階的に撤廃していきます」と説明し、「韓国は農業を捨てたのです」と慨嘆した。

 インタビューの最後に、山田氏は「今回、覚悟をして戦います」と今回の選挙に出馬した理由を語った。山田氏は「これから日本がどうなるのかと考えると放っておけない」と述べ、「まだ民主党の中にも自民党の中にも、TPPに反対している人がいる。そういう人たちをまとめて、一本にして、旗を私に振らせていただきたい。命を懸けてこれから戦います」と力強く決意を語った。

<ここから特別公開中>

―― 以下、全文書き起こし ――

岩上安身「皆さんこんばんは。ジャーナリストの岩上安身です。本日、私はこのたびの参院選で、みどりの風から出馬される、山田正彦元農水大臣、山田先生にお話をうかがいたいと思っております。山田先生、よろしくお願いいたします」

山田正彦氏「よろしくお願いします」

岩上「お久しぶりです」

山田「いやあ、そうですね」

岩上「だいぶ、やっぱり遊説されて、日に焼けていらっしゃるんじゃないですか?」

山田「そうですね。まあ、これ」

岩上「ああ、本当だ。すごいですね。やっぱり夏の選挙戦、たいへんですね。民主党で、そして大臣までおやりになって、民主党の中でTPPの問題が出てきた時に、いち早く反応されて、慎重に考える会というのをお作りになって、たいへんな数の議員がそこに参集し、非常に活発な勉強会やシンポジウムを開いて来られた。

 これが、民主党の中でTPPに反対する根拠地になってきたと思うんですけれども、結局、民主党政権のときに、TPP、菅政権で言い出し、野田政権で引き継ぎ、推し進めてきて、今、安倍政権にバトンタッチというところで、政権交代しても、TPPに関してはもうほとんど、なめらかに行ってるような感じがあるんです。

 党内野党の立場にずっといらして、あげく、四分五裂と言いますか、お辞めになって、同士の方もお辞めになったり、落選されたり、いろいろなことがありました。

 山田さんは今度はみどりの風から出るということを、決めたということなんですけれども、この間の経緯をかいつまんでお話願いたいと思います。なぜ、みどりの風なのかということも含めて」

山田「まず、私、TPP阻止を少なくとも2年半、なんとか阻止して来ましたよね。あのときには、私が慎重に考える会で、自民党から共産党まで、最初は維新の会はなかったんですが、みんなの党も推進でしたから、それ以外は、会派もみんなまとまったんですよ。

 訪米のたびに『TPP阻止』、というんで署名をもらって、そして官邸へ持って行ってましたから。なんとか、それで止めてきたんです。交渉参加を。

 それが、最後、あの12月に解散とは思ってなかった。11月か。与党だから、ちゃんと予算を通して、次の4月だと思ってましたからね。あの時に、民主党は、民主党内は交渉参加を慎重にって、11月解散でしたけど、9月に私は党の正式なPTでまとめあげたんですよ。櫻井座長のもとで。

 それなのに執行部が、TPP交渉推進に誓約書を書かなければ、公認しないと。私がこれまで旗振ってきましたからね。TPPはどんなものかっていうことを。できるわけないじゃないですか。それで離党して、たまたま、亀井静香と一緒にTPP反対党をたちあげて、嘉田さんにもお願いに行って、未来の党」

岩上「合流されたわけですよね」

山田「合流した」

岩上「めまぐるしかったですね」

山田「あのときは、嘉田さんに私が一番最初に会って、嘉田さんにお願いしたんですけどね」

岩上「そうなんですか?」

山田「はい。だから、私が副代表を務めるんです。未来の。残念ながら、みどりの風と生活が分かれてしまった。なんとか、参議院選挙が終わるまで一緒になって欲しかった。

 私はそのまま未来に残るんですけど、未来とみどりの風と、できれば生活も一緒の党にと思って、いろいろ緑の党もそうですが」

岩上「みどりの風ですか?緑の党ですか?」

山田「緑の党もそうなんです」

岩上「緑の党のほうですね。風ではなくて」

山田「風ではなく、緑の党も山本太郎くんとか、三宅洋平くんたちも、みんな一本になろうじゃないかと。そう思って一生懸命動くんですけどね」

岩上「なるほど。なるほど。調整をされてたんですね。水面下で」

山田「でも、やっぱりなんというか。やっぱり阿部さんもあれだけの人ですから」

岩上「阿部知子さん。はい、元社民党の」

山田「だから、私がみどりの風に動くと、阿部さんも、じゃあ一緒にやろうっていう形になってくれましたからね。今度は、できれば、緑の党の連中も。山本太郎ともずいぶん僕は話したんだけどね。一緒になろうじゃないかと。生活とも、水面下でいろいろ交渉はしてるんですけど。まあ、小沢先生も一緒になることはやぶさかではなかったと思うんですが、やっぱりそれぞれこの世界っていうのは、いろいろそれぞれの。

 みんな我を通したらダメなんですがね」

岩上「我を張ってるんですか?じゃあ。これはやっぱり、自民、公明が圧勝という予想があります。そういうなか、真の野党と言ったらおかしいですけど、民主党は肝心なところで、現在の民主党、残っている人たちというのは、自民党と平仄が合う人たちが残ってると思うんですよ。

 ほとんどの点で一致しているだろうと。日米同盟堅持、あるいは日米同盟深化。そして、憲法についてはどうか分かりませんけれども、絶対反対というわけでも無さそうだし、TPPは、もうやってきたわけですから、TPPのところでは、まさに一致しちゃう。

 原発のところも、再稼働したのは、野田さんですからね。ですから、手のひらを返して、自民党と、これは手が合うわけですし、原発のところ、TPPのところ、消費税増税のところ、ぜんぶこれが一致しているだろうということを考えますと、自民と、それから公明と、維新は別働隊のようなもので、そして、民主党が大きな政策のところで合うということになったら、ほとんどこれは大政翼賛会」

山田「大政翼賛会ですね。まさに」

岩上「かつてこういう大政翼賛会というような言い方というのは、あくまでものの例えで、なにかたいへんな巨大与党が出現するとき、そのような言い方をしましたけれども、でも、本当に戦前戦中の大政翼賛会って、これ戦時の話ですよ。戦争を行って遂行しているときの時代の、ファシズムの時代の話、仕組みですね。

 ところが、今回ばかりは、まさに戦争を遂行する国造りということが、隠れた争点になっているわけですよね。憲法を改正し、敵基地攻撃論まで出てきて、日米同盟一体化と、自衛隊の各司令部は今、在日米軍の施設内に入っていったり、同居したり始めてるわけです。ほぼ一体化が進んでいってる。

 そんななかで、経済的な一体化でもあるTPPも行われるというような、これ、本当の大政翼賛会になってしまうと思うんですけれども、そんなときに、ほんの少数でも本物の野党と言いますか、本当に慣れ合わない野党というものが存在するか否かというのはたいへんなことですよね」

山田「今度の選挙です。まさに。だからおっしゃったように、本当の少数でもいいから、1つにまとまって戦わなきゃいけないんだけど、まあ、とりあえず、こういう形になりましたので。

 それでも、次に本物の野党が、小さな党が結集すれば、次の、アベノミクスも化けの皮が剥がれますから。今でも、消費は減ってるわけですからね。金持ちのマネーゲームみたいなもんだ、株の。

 もう参議院選挙終わったら暴落。たいへんな目に。非正規雇用だけでいま2000万人」

岩上「そうですね。史上最高をいま記録してますね」

山田「あれもアメリカにやられて、労働者派遣法から始まったでしょ。あの時も必死になって反対して、民主党時代には、製造禁止の法案を出す予定だったんですが、あれも骨抜きにされてしまった。これは、いずれにしたって、TPPの事前協議が始まって、アメリカに昨年私が行って、キャンベルの筆頭代理と、マランティスが当時代表補でしたかね。

 はっきり両方から同じ事を言われましたよ。TPPで、日本にアメリカは何を求めるつもりか?と私が聞いたら、韓国との自由貿易協定、これをよく読んでくれと。それ以上のものを求めると。そう言われましたね。

 実際、いま韓国はどうなったかと言ったら、たった1年しかならないのに。豚が1頭1万円の赤字ですよ」

岩上「豚を1頭育てるのに、1万円赤字?」

山田「豚を1頭育てて出荷すると、出荷するごとに経費がかかって1万円ずつ赤字を出していってる」

岩上「1万円ですか?ウォンですか?」

山田「1万円です」

岩上「円ですね。換算して」

山田「これに載ってるんですよ。朝日新聞の。メディアが本当のことを書かなくなったんですよ」

岩上「珍しい、久しぶりの、ということですか?」

山田「5月22日版(※1)ですよ。これの裏側に、ここ書いてるでしょ。『開かれた農業 韓国は』『欧米との自由貿易協定 先行』『赤字1頭1万円』」

(※1)『開かれた農業、韓国は 欧米との自由貿易協定が先行 安い輸入豚肉が席巻・対策実らず』(朝日新聞DIGITAL 2013年5月22日)

岩上「なるほど。はい、これ。必ずこういうふうに遅れて、もはやTPPは本決まりとなってからこんなこと書き出すんですよね。すべてのメディアが。手遅れになってから。まだ、もし今の段階だったら、TPPを阻止できるかもと、そういう段階の時にはこういうことを書かないんですよ。大手メディアは。

 ほんとうに不思議ですね。死亡宣告書が出されてから、あの人は良かったと言ってるようなもんで。このような形で米韓FTAは、こういう形で畜産は滅びると」

山田「畜産は7割が廃業です。で、コメだけは関税、例外が取れたと言ってたでしょ。しかし、2014年から段階を追って、関税を下げていくんです。コメも。そうすると」

岩上「それも本決まりなんですか?」

山田「本決まりです。韓国も農業を捨てたんですよ」

岩上「捨てたんですね。日本も、いま安倍さんが頑張って聖域6項目と言っていますけれども、その中でもちろん一番重要なのはコメだと思いますが、これさえ勝ち取れば、あとのすべてを譲ってもいいんだ、というぐらいの話になっているんですが、でも仮にTPPで一時的にコメの聖域というのが認められたとしても、認められない可能性が高いと思いますが、それは永久の聖域ではないということですよね。

 米韓FTAを見てくれと。これがモデルだということだと。米韓FTAを締結して、批准した後、じゃあ、はい。コメの交渉をもう一度やろうと。それで、どんどん段階的に下げていくと。撤廃に向かうんですよね」

山田「撤廃に向かいます」

岩上「同じ事が起きるんですね、日本で」

山田「先々月でしたか、4月末に、カトラー代表補とお会いした時に、通商代表部の」

岩上「USTRの」

山田「代表補、カトラーさんに、コメでもというか、聖域6項目、これは認められ得るのかと。安倍オバマ会談を受けて、と言ったら、はっきり言いましたよ。コメでもセーフガードか、長期ステージで関税ゼロにしてもらうと。

 当時、日本は衆議院、参議院で農水委員会が、もし重要農産物の聖域が認められなければ、撤退する用意があると、そういう話をしましたら、アメリカの国会議員でも、驚いて顔がひきつったのがいるぐらいでしたからね。ワシントン・ポストはわれわれの、安倍さんのときのワシントンに行った時の記事より3倍ぐらいの大きさで、一面に大きく載せてくれましたが」

岩上「『Rice Lobby』(※2)というタイトルでしたね」

(※2)『Japan’s rice lobby visits Capitol Hill to fight free trade pact』(The Washington Post with Bllomberg April 24, 2013)

山田「日本の新聞はまさに1行だに書きませんでしたが。まあ、コメでも例外ないと。これは、はっきりしていると思います。そうなると、それはアメリカのカリフォルニア米。これが60キロ2,000円か3,000円で入ってきますね。ベトナムでコシヒカリを作ってますよ。これはおそらく60キロ1,000円で入ってきます。

 そうなると、日本の農家はみんなコメを買って食べるようになります」

岩上「コメは日本ではいくらですか?米価は」

山田「米価は、最低保証価格が1万5,000円なんです」

岩上「1万5,000円。15分の1だったりするわけですね」

山田「戸別所得補償制度で、それに1万5,000円つけて、このあいだの自民党の予算内でやったんですが、ヨーロッパはだいたい農家生産額の8割は所得補償ですからね。アメリカも、コメにもトウモロコシにも約3割所得補償してるんです。

 日本も最低の補償なんですよ。それでなんとかやってきたのに、これが2,000円とか1,000円とかとなったら、誰もコメを作る農家はいません。その前に畜産が影響を受けます。畜産も日本ではおそらく、養豚業者もいまみんな、もうこの際辞めようかと。分かってますからね。韓国の事例が。

 畜産業者も、みんなちょっと足を止めてしまいましたね。せっかく宮崎もあれだけ畜産がなんとか、口蹄疫のあと復帰したのに。まず入ったら畜産が全滅します。コメ農家も全滅します。日本で。

 もっと怖いのは、この前のペルー会談で、遺伝子組み換え食品の表示はしないということを、これはアメリカ側から提案されて、ほぼ決定ですね。もうひとつ、食品の表示で、原産国表示はさせないと。これはロリ・ワラックさんからの話ですが。

 原産国表示をさせないということはどういうことかというと、アメリカの成長ホルモンをふんだんに使って、牛乳とか、あるいは牛肉、豚肉。私はこの目で見て来ましたからね。本当に驚くほど、成長ホルモンを使うんですよ」

岩上「それは量という」

山田「量」

岩上「映画のフード・インク(※3)の世界ですね」

(※3)フード・インク 食の社会見学(FOOD, INC The Study for social problem of foods) 

山田「そうです、そうです。まさにそうなんですね。だから、そういったものを食べて、これから日本人は生きていくのかと」

岩上「成長ホルモンを大量に摂取して、無理やり大きくなった牛肉を食べるということは、人体にどういう影響が出るんですか?」

山田「これは、いろいろ。癌になる説、これが非常に有力ですね。遺伝子組み換え食品もそうですが、すぐに出るわけじゃないんですよ。何年か、何十年か経つと必ずそうなるという。特に3歳ぐらいで初潮が出たり、6歳の男の子がおっぱいが大きくなったり」

岩上「それは人間の?」

山田「人間の」

岩上「はあ。3歳で初潮になっちゃう。女の子が。で、6歳の男の子が、つまりメス化するということですね」

山田「そう。だから、まさに成長ホルモンはメス化なんですよね」

岩上「環境ホルモンと同じような影響が出てくるわけですね」

山田「だから、アメリカの子供が大きいじゃないですか」

岩上「非常に病的に肥満体ですよね」

山田「しかも成長ホルモンを使った肉を食べることによって、平均身長が伸びてるという。だから、これは人体に害がないわけがないですよね。絶対。だから、癌であるという説が一番有力なんですけどね。なかなか、それをメディアとか政府は認めようとしないでしょ。

 そういうものか、国産の表示が、原産国表示だとできなくなるでしょ」

岩上「国産牛肉と言えなくなるんですね」

山田「例えば、アメリカの食品会社にしてみれば、日本で食品が売れないのは、野菜にしてもなんにしても、肉にしても、国産の表示がしてあるから、国産のものをみんな安心して買おうとするからだと。だから、TPP加盟国はみんな国産の表示はやめようと。原産国表示は」

岩上「これは、もうペルー会合でほぼ決まってるんですね」

山田「まだ、各国は納得したわけじゃないようです」

岩上「今度のシンガポール会合でこれもほぼ決まってしまう可能性がある?」

山田「あります。それと、もう一つ。今度のシンガポールの会談で大きなテーマになるのは、これもロリ・ワラックさんの話ですが、インターネットの自由の規制なんです」

岩上「ああ。いよいよ来ましたか。IWJもどうなってしまうか分からない」

山田「これはどうやって規制ができるんですか?と。インターネット。アラブの春でもインターネット規制できなかったですよね。そしたら、著作権法に絡んで規制すると。例えば、この豚1頭1万円のこれ、私がアップして載せますよね。ネットに。これは著作権法違反だと。朝日新聞社に対する。だから、それをシェア、拡散することもみんなできないわけです。

 罰されるわけです。同時に、私の意見を、TPP反対の意見を縷々書く。それをみんながシェアしてくれる。拡散してくれる。これも私の著作権法に違反してできないってことになるわけです」

岩上「これは、ご当人がいいと言ったらどうなんですか?」

山田「だから、本人からいちいち承諾を取らなければできないということになると、ほとんどもう意味を成さないでしょ。著作権料を払えとか」

岩上「でも例えば、山田さんがブログで書いた。で、これは著作権フリーですと。どうぞやってくださいということを書いてあると。それはいいんですか?」

山田「それはいいでしょうね」

岩上「それはまだ可能性が少し残っているということですね。ただ、既存メディアはおそらく自分たちの、これを勝手にシェアするなということになるでしょうから、これは既存メディアは保護されるということですね。既存メディアにとっては、たいへん都合がいいかもしれない。

 そして、情報源はいまでもそうですけれども、記者クラブというような制度があって、自分たちが第一次的なアクセスを確保していますから、だから、そうしたなかで、自分たちの記事を読まなければ何も分からないよ、という状態を作り出すということは、既存メディアにとってたいへん好都合だということになりますね。

 そうすると、今のように朝日から産経までぜんぶ横並び。NHKからどこまでもぜんぶ横並び、という報道な体制がすでにできている。となりますと、国民に対する情報統制が非常に簡単になる。インターネットの一部のメディアが、カウンター情報を出していくと。少数野党のように出していくというような状態がなかなか難しくなっていくかもしれない。

 我々も相当奮起しないとダメだなということですよね」

山田「そうです。今度の一番大きなシンガポール交渉会合でのテーマだと。ロリ・ワラックさんがそうはっきり言ってましたね。

 ただ、韓国とのFTAでも、アメリカは批准するときに、もうギリギリだったんですよ。今回も、結構TPP交渉参加反対、不透明だからというんで、結構、止めないとダメだという形で、これ見てもらえばいいんですが。これ、連ねたほうがいいかもしれないんですが、こう。もう一枚あるんですよね」

岩上「はい。たくさんの方々が署名している」

山田「134名、署名してもらってますし」

岩上「これは、なにの署名ですか?」

山田「これは、民主党の下院議員です」

岩上「米国民主党の下院議員が何を?」

山田「134名、TPPは不透明だと。NAFTAで我々は失敗したと。だから、これを明らかにしろと。そうでないとTPP反対であると。この内容が明らかになってきたら、未だに、自動車工業会は、プレジデントもこの間やってまいりましたが、反対してましたからね。

 だから、カトラー代表補も、日本の交渉参加90日のあいだに、議会を納得させるのも深刻であると言いましたからね。だから、まあ、今回、仮に交渉参加しても、20日に関税の問題は話が終わって、日本は、農産物の関税とか、そういう交渉にいっさい口出しできないわけです。だから、事実上、参加できないのと一緒ですよね」

岩上「交渉すると。そして、交渉しなければ、脱退もありうると。このようなことを公約にも掲げているわけです。自民党も、それから民主党も。とりわけ民主党は聖域が守れないんだったら脱退もありうるというようなことを言っている。

 しかし、現実にそういう今回の選挙直前で、そのような勇ましいことをみんな言ってるけれども、関税の議論は、もうすぐ行われるマレーシアの会合でほぼ決まってしまって、最後の2日ばかりに日本の官僚たちが交渉に加わる。

 だけれども、その時には3,000ページというものを読み込むのが精一杯で。100人からの官僚が行くということですけれども、大慌てで読んで、最後の日に、ほんの何時間か質問ができるかできないかという程度」

山田「その程度でしょうね」

岩上「ということは、まだ中身が分かっていないわけですから、質問もできないし、なによりも、交渉なんていうのはぜんぜんできないということですよね。で、事実上、このマレーシアで関税は決まってしまう。

 そして、あとから来た国はなんの文言も修正することも、交渉することもできないというルールですよね。それを承諾して入るのに、交渉ができると言ってるのは、これは詐欺じゃないですか?政治的な詐欺。

 いま、自民党が言ってること、公明党が言ってること、あるいは民主党が言ってること、その他の党等が言ってること。TPPは入るべきだ。そして、聖域は守るべきなんだと。攻めるべきは攻め、守るべきは守ると言ってること」

山田「そう、かっこいいことを言ってるけど」

岩上「できない」

山田「できない!だから、交渉参加の事前協議の段階で、あれを私も見せてもらった時に、これは、日本がミズーリ号の艦上での降伏文書。これに等しいと」

岩上「はい。第二次大戦の終結時の無条件降伏。そのときの降伏の署名をしたのがミズーリ艦。ミズーリといいう戦艦の上でやった、それと同じだと。無条件降伏。では、なんでそのように、日本は主権を明け渡すような、無条件降伏をしなければいけないのか。普通、無条件降伏なんて、武力で脅されてなければ、ないわけですよ。だけれども、なんでそんなことになっちゃうんですか?」

山田「やっぱり、アメリカの脅しでしょうね」

岩上「なぜ、そこまで脅すんですか?何をもって脅されてるんですか?」

山田「まあ、いわゆる反対する政治家は、簡単に殺すことができますよね。メディアでもって。あるいは特捜でもって」

岩上「ああ、小沢さんの話ですか」

山田「小沢さんもそうです。僕は、鳩山さんもそうだと思いますが。その前は田中角栄。その前は石橋湛山。その前は芦田均。みんなやられてますよね。無罪ですよ。ロッキードだって、あれ最高裁は、コーチャン証言は、証拠能力がないと言っているわけですから、本当は無罪なんですよ。だから」

岩上「アメリカに楯突く政治家は、日本のシステム。司法のシステムやメディアのシステムを使って、徹底的に排除が行われると。そして抹殺されると」

山田「抹殺される」

岩上「孫崎さんが『戦後史の正体』で書かれているとおりだと」

山田「そうです。まさにそのとおりなんですよ」

岩上「でも、アメリカはその日本の司法システムや、あるいはメディアのシステムを動かして、そして政治家を抹殺していくということができるにしても、メディアはなんで動かされるのか。そして、なぜ日本の司法官僚というものが動かされてしまうのか。検察も動かされてしまうのか。彼らは何に脅されて、どうして動いてるんですか?」

山田「もともと、実際に今のメディアというのは、広告料で」

岩上「はい。そうですね。収益の7割が広告ですよね」

山田「だから、例えば、こう言っちゃ悪いけど、電通とか、そういう大手の広告会社が、こういうことを書いたら広告料を絞ると。実際に、アメリカのCIAというのは外交機密上のお金を、それこそ何兆円と使えるわけじゃないですか。だから、私は、電通はまさにアメリカから食べさせてもらってると思ってますよ。

そうなると、電通はメディアを、今、新聞やテレビも見られなくなってきて、締め上げることは簡単じゃないですか。だから、今、日本の報道の自由は、世界の中でも51番目だっていうわけでしょ。

 だから、それでひとつは脅かされてますよね。もう一つは何を聞かれたんだったかな」

岩上「経済界も、それから司法官僚も、なぜ」

山田「司法官僚。これはもともと東京地検特捜部というのは、GHQの隠匿物資の摘発から始まったわけでしょ。だから、芦田均内閣の時の、あの時の重光葵さんでもそうですが、あれも無罪だったわけですよ。芦田内閣。結局、ガサ入れして摘発するのは特捜でしょ。

GHQですよ。中身は。それ以来、法務省というのは、課長以上は全部検事なんですよ。私の同期の特捜検事、特捜部長やりましたけど」

岩上「先生、弁護士ですからね」

山田「特捜部長をやりましたからね。みんなアメリカで研修を受けてくるんです。アメリカと日本の法務省というのは、検察庁というのはぴったりなんですよ。すでに。外務省もそうだし、経済産業省もそうだし、さっき言った国防省もそうでしょ」

岩上「自衛隊と一体化してしまっている。米軍の下請けのようになっていると」

山田「この官僚たちと、多国籍企業の莫大なお金。アメリカの莫大なCIAの機密費。これが、日本の政治を、日本の経済を支配して、アメリカの制度に、すべて、日本をしてしまおうということでしょう」

岩上「どうしたらいいんでしょう。それでも、例えば、戦後60年70年のあいだ、我々はもう少し自由度があったように、少なくとも感じてはきました。実際は違ったのかもしれません。芦田さんが倒れ、田中角栄さんが倒れ、という時も、田中角栄は金脈で倒れたんだと。文藝春秋が立花隆さんのレポートを載せ、その筆一本で倒したんだと。

 あるいは、東京地検特捜部が独自捜査で倒したんだと。こんなふうに思って来ました。社会自体のなかでも、もう少し、個々の人々の自由度というのは高い社会だったような気がしています。好き勝手にもう少し振る舞えた。

 でも、ものすごく今、汲々としてますよね。あらゆる人が、例えばものを言うということに非常に怯えていて、たいへんなことです。脱原発のデモということは。あの原発の事故がなかったら、多くの人、もうデモもすることもなかったわけです。

60年代70年代だったら、しょっちゅうデモはあったわけですよね。そういうことを考えていくと、自己主張というものがどんどんできない社会になってきている」

山田「なってきてる」

岩上「そこまでどんどん追い詰められてきている。だから、戦後直後からそのようにあったんだとしたら、なんで今こんなに急激に息苦しくなって、管理が厳しくなっていって、絞り上げられていて、我々の懐からお金をどんどんむしられて、労働強化がどんどん進んでいってるのか。

 なぜこんなに厳しくなっていってるのかが、少し分からないんですけれども、どうしてなんでしょう?アメリカはどういう意思を持ってるということなんでしょう?」

山田「まあ、アメリカも、まさにそうやって日本を締めあげてきたんだけども、戦後すぐから。ことに急激にこうなって来ましたね。これはやっぱりメディアの変化もあるんでしょうね。ひとつはね。広告料に頼ってきた。それが頼れなくなってきた。

 それと、やっぱり官僚社会。政権交代して、官僚社会を壊そうとした。小沢一郎はじめ我々が。私はかなり農水省でやったんですがね。それに、官僚たちが、この霞ヶ関の勢力が危機感を覚えて、更にアメリカと一体になって加速化して、自分たちのやりやすい、住みやすい元の天下りの、そういう世界に戻そうとする力が大きく動いたと。それが、今度の急激な結果になってきたとしか思えませんね」

岩上「なるほど。公務員はいまだに、じゃあそれほど苦しい思いをしてるわけではない。民間はたいへんですよ。今回の自民党の候補、渡邉美樹さんという方がいらっしゃる。ワタミの前会長。この間、お辞めになって、選挙とかぶってるとまずいからということでしょうけれども、事実上の経営者だと思いますけれども。ブラック企業だというような批判が出ているところですね。

24時間365日、死ぬまで働けと言ったりしてきた。そういう非常に労働強化が強くて、労働基準法を守らないで、若い20代の女性が社員として入って、とてつもない残業をやらされて、鬱になって、あっという間に、過労の果てに自殺した。

 それが労災認定されているわけですね。ところが、その遺族にまだ誤ってもいない。謝罪もしてない、面会もしてない。その遺族の方々が怒って、自民党本部に抗議に行って、そして自民党本部は一蹴して、あしらうということが続いているわけです。

 この渡邉さんという候補は、とても自民党のこれからの経済政策、徹底した民間の、つまり働く人たちからは絞り上げる、ということを進めようと思っている、非常に象徴的な候補だと思うんですけれども。多くの人がこんな目に遭いながら、公務員は天国が続いていると。それはある種の利益供与が」

山田「奥座敷ですき焼きを食べてる」

岩上「まだ続いてるということですか?」

山田「続いています」

岩上「それは、アメリカはいわば日本統治のために」

山田「その利害とアメリカとの利害が一致したわけですよ」

岩上「それは、今後どういうふうに進んでいくんでしょうか?日本社会が。なんで戦争に向かってこんな進んでいく?憲法改正され、戦争に向かって進んでいくような社会、にならなきゃいけないんでしょうか?それとTPPとどんなリンクがあるんでしょうか?」

山田「それには、韓国を見るとよくわかると思います。韓国はどういう社会に、今この1、2年でなってきたか。もうすでに国民皆保険を辞めましたよ。自由診療です。それに入りましたよ。株式会社の医療が出て来ましたよ。だから、韓国はすでにアメリカの属国になったんです。

 一歩、日本の前に。だから、韓国はもうISD条項で訴えられてますよね。と同時に、多国籍企業が国を超えて、自治体を超えて、権力を持つ社会になったわけですから。非常にたいへん、韓国は厳しい立場にあると思いますね。

 日本も、日本もそうなんですよ。そうなってしまいかねないんです。だから、あとは、韓国の裁判官143人が、韓国の主権が損なわれたと言って、大法院。日本で言ったら最高裁判所、ここに不服審査の申し立て、この条約についての。これは違憲であって無効だという」

岩上「これは、米韓FTAそれ自体を違憲であると言ってるわけですね」

山田「大法院は、それを受理したと聞いてます。だから、国家主権が損なわれるんですよ。TPPになると。属国になるんですよ」

岩上「しかし、日本の、韓国でもそうですけれども、権力の主体というのはやはり政府であって、結局、官僚じゃないですか。そして、その官僚たちが、オール霞ヶ関がアメリカと一体化していると。とりわけ、非常に強い権力を持つ外務省であるとか、財務省であるとか、法務省であるとか、こうしたところ。あるいは経産省もそうです。

 こうしたところがアメリカの意を受ける。アメリカの官僚システムおよびアメリカを支配している大企業、資本。

 アメリカは回転ドアのように行ったり来たりですから、ほとんどメンバーがおんなじだったりするわけですけれども、そうしたところからくるオーダーというものを受け入れて、一体化している。その一部と化している、というときには、韓国は、自分たちの主権が損なわれるということに抵抗する姿勢を見せていますけれども」

山田「そうですね。韓国は農民も抵抗したんですよ。2人、デモで殺されてます。1人、焼身自殺しました。日本のJAはどうですか?政権交代した途端に、TPP反対の声をあげなくなった」

岩上「JAも」

山田「JAも」

岩上「もう終わりだと思ってるんですか?」

山田「条件闘争に入ったんじゃないですか」

岩上「条件闘争。ということはもう、農家も農業もJAも辞めるということですか?退職金を貰うということ?」

山田「辞めるっていうことでしょう。まず、農協が一番影響を受けるんですよ。韓国も共済と金融が分離されましたよね。今の韓国の農協は。だから日本のJAもそうなるんですよ。だから、まあ、この国に、本当に国を憂いる政治家、本当は政治家こそがしっかりしなきゃいけないんだけど、その政治家も、まあ小沢一郎、鳩山さんも僕は非常に尊敬してましたから、田中角栄はじめみんな、抹殺されていくんです」

岩上「政治家がしっかりしなきゃと言っても、しっかりできないんで、これはしょうがないと思うんですけど、しかし、なんでまた、官僚たちは抵抗しないんですか?自分たちこそ、この国の最大の権力者ですよ。権力のシステムそのものですよ。

 ところが、一見すると、たいへん日本の国権を強化すると。国内において、国家の権力は国民よりも上位に来て。憲法というのは立憲主義ですね。つまり、弱いひとりひとりの国民が、主人公で、その国民が憲法というものによって、国家権力を縛ることができると。それが立憲主義。下から上を縛ることができる。それを守らなきゃいけないわけですよね。

 それをやめてしまうような憲法を作ると。国家権力がすごく強化される。国内を見ると権力強化なんですけど、他方、こっちを見ると、他国に主権を売り渡して、隷属が強まっている。隷属の強化と、国権の強化が進んでいくんですよ。

 この分離した状態を、どういうふうにご覧になっていらっしゃいますか?これは、植民地における総督府の権力強化ってことですか?」

山田「まあ、一言でいえば、そうでしょうね」

岩上「そうですか」

山田「だから」

岩上「植民地政府であることは変わらない?」

山田「そういう意味では、今、私は本当に戦後最大の、日本史、日本が大和の国家として産声をあげて以来、最大の危機だと思いますよ。戦争によらずして、アメリカにすべてを降伏してしまうことになるんです。これはだまっておれませんね。

 私は、今回の参議院全国比例に出馬しようと思ったのは、決意したのは、誰か1人でも、本当の事を言って戦わなきゃいけないと。そう思いましたね。全国比例です」

岩上「あの、手応えというのはどうですか?日々、いま、回りながら、どんな感じですか?」

山田「最初、本当にさしたる推薦母体があるわけじゃないけど。いくらかありますよ、全国系の組織は。でも、非常に不安でしたが、なんかね感触が違って来ましたね」

岩上「そうですか?」

山田「はい。結構、みんなが活発に動き出してくれ始めましたね」

岩上「みんなというのはどういう層ですか?」

山田「やっぱり、農家の人。例えば畜産関係の連中というのは、非常に危機感を深刻に受け止めてますね。韓国を見て。コメ農家も生き残れないんじゃないかと。大型の法人をやってる農家ほど、危機感を深めてますね。分かってます。

 今度は消費者団体。そういったところも、食の安全が守れなくなる。これに危機感を覚えて来ましたね。そうすると、TPP反対。これを、私が最初にひとりで言い始めたんですが。最初に。大臣の時でしたよ。閣議で大げんかしたんです。

 それからすぐ大臣を辞めるんですけど。それから慎重に考える会で、みんなでまず、TPPを勉強する会から始めたんです」

岩上「大臣をお辞めになるのは、ひとつTPPがきっかけにもなってるんですか?」

山田「まあ、今だから言っていいでしょうがね。岡田が言い出したんですよ。外務大臣」

岩上「岡田克也さんが。いつごろですか?」

山田「で、仙谷官房長官が。私が大臣のときですよ」

岩上「2010年」

山田「はい」

岩上「何月頃だったか」

山田「何月頃だったかな。忘れちゃった。仙谷官房長官が、『開国なくして座して死を待つつもりか』と言うんですよ。君たちはTPPが何たるものか知ってるのか、と。何も分からずしてそんな無責任なこと、馬鹿なこと言うな!と。それが始まりですよ」

岩上「仙谷さん、岡田さんの言い分というのは、開国しないとダメだという話ですか?」

山田「うん。『座して死を待つつもりか』と」

岩上「岡田さんと、つい先日、何人かのジャーナリストが集まっての懇談会があったんです。そこでボロッと、TPPをまだ反対している人がいると。党内でも。そんなこと言ってたら、勝てないと。民主党が勝つ手立てはあると。TPPに早く賛成して、早くやる。そしたら、民主党はもっと有利になったと。

 ちょっと理解できなかったんですね。それを、ご本人がTPPをすごく進めたいからそう思っていたわけですね」

山田「まあ、TPPの論議は、岡田と私の戦いでしたからね。だから、岡田が、『山田さんがTPP反対の大将だからね』と。最後、ギリギリ、野田が交渉参加をやめるでしょ」

岩上「誰ですか?」

山田「野田総理が。あの時も、ギリギリまでやりあったんですよ。岡田と。最後、岡田が折れましたけどね」

岩上「折れた?」

山田「折れた。あの時はね」

岩上「ウィキリークスが明らかにしたことですけれども。カート・キャンベルが小沢さんと面談(※4)をして、まあこれは、首実検でしょうね。どういうことを考えている人物だと。そのあと、翌日ソウルに行って、ソウルの大統領府の安全保障担当筆頭補佐官と話をして、民主党はダメだと。小沢、鳩山政権では、自民党のようにアメリカの言うことを聞かない。なので、次の世代に期待しよう。岡田、菅と、この2人の名前が出る。

(※4)『昨年の小沢キャンベル会談とウィキリークスが暴露した機密文書で見えた米国主導の謀略』(日々坦々 2011年2月4日)

 それが公電として残されていて、ウィキリークスがたくさん暴露したうちの1つに入っていた。これは、たいへん重要な意味を持つと思うんですね。どの時期なのか、このおっしゃった、岡田さんが突然言い出した時期と、このカート・キャンベルの時期が」

山田「私が大臣を辞めるひと月ぐらい前でしたでしょうか」

岩上「いつでしょう?」

山田「辞めたのは、2012年(※5)でしたかね。もうちょっと、よく記憶ないな」

(※5)2010(平成22)年 6月、菅内閣にて農林水産大臣に昇格。9月、農林水産大臣を退任。同9月より農林水産委員会委員長。 (山田正彦HP より)

岩上「なるほど」

山田「それから、私はTPPを勉強する会。それにみんな呼びかけて、それを慎重に考える会にして戦っていくんです。国民会議、宇沢弘文さんに会長(※6)になってもらって、いろんな学者にいろいろ、一人一人お願いに回るんです。国会議員もほとんどのところを回って、TPPのことを話しましたね。で、あれだけまとめることができたんです。

(※6)TPPを考える国民会議記者会見  2011.2.24(IWJ 2010年5月11日)

 そして、前原さんに、外務大臣になったときも、これを確認しました。だから、米軍は動かない」

山田「そうでしょ」

岩上「その時点からはっきりしていると思いますし、これは政府が認めたことだと思います」

山田「で、安全保障のためにTPPをやらざるを得ないというのは、理屈が成り立たないでしょ」

岩上「成り立たない。どういうことですか?」

山田「そうなんだよ」

岩上「じゃあ、どうして、それでやってるんですか?なんでこんな理屈の成り立たないことをやってるのか?」

山田「政府は、今の政府の政治家たちは、日本をアメリカに売ってるんです」

岩上「これは、しかし官僚も一体じゃないですか」

山田「官僚も一体。だから政府」

岩上「彼らには、売ることによって、自分たちのポストを得ることができる。あるいは得たポストを守ってもらえる。そうした保証があるから。そうした私的な利益だけで、利己心だけでそのようなことをやり続けて、これだけ日本の優秀な頭脳である人々が、権力を持っているエリートが、官僚機構も政治家もメディアもみんな揃って、そうなんでしょうか?観察し続けてると、そうとしか言いようがないんですけれども」

山田「そうですね」

岩上「でも、国の安全保障だって、最後言う。最後のどこかで脅しがかかってるんじゃないかな、とは思うんですけれども、どうなんでしょう?」

山田「まあ、脅しはあるでしょうね。しかし、このまま、本当に日本がこれからどうなるのかと思うと、放っておけないですよね。岩上さんね。

 だから、まあ、今回、覚悟して戦いますよ。

 選挙前の岩上さんの番組で私のことをお願いして、申し訳ないけど、ぜひ、山田正彦に、この国の子どもたちや未来のために戦いさせてください。今、私にバッジを付けさせてくれれば、候補者名で、党はみどりの風ですが、投票していただければ、私がバッジをつけたら、まだ民主党のなかにも、自民党のなかにも、本当にTPPを分かって反対している人がいる。

 そういう人たち、それをまとめて、脱原発も消費税もみんな根っこは一緒なんです。まとめて、一本にして、旗を私に振らせていただきたい。

 山田正彦、本当に命をかけて、これから戦います。どうか、みなさん。よろしくお願いいたします。

 すいませんね、こんなこと」

岩上「いえいえ。いいですよ、もちろん。最もおっしゃりたいことだと思うんですけど。昨日、小沢さんにインタビューしたんですよ。私は、別に一部の政党だけに声をかけているわけじゃなくて、自民党にも維新にもみんなにも、もちろん声をかけてるんですけど、そこの3党は時間をくれないんですね。

 各党首レベルの人たちにインタビューさせてくださいとお願いして、いまのところ、社民党、共産党、みどりの風、そして生活というふうに、党首が会ってくれたわけです。共産党は志位さんが時間がないということで小池さんになったわけですけれども、生活のほうは小沢さんが。

 非常に小沢さんのインタビューで面白かったと言ったら失礼ですけど、不謹慎かもしれないですけど、たいへん思い切ったことをおっしゃられたのは、クリングナー論文というものがあるんですね。それは、石原慎太郎さんが、この尖閣問題に火をつけましたよね。

 それはヘリテージ財団というところで言いました。ヘリテージ財団というところで講演して、尖閣を購入すると。そして、中国とのあいだでたいへん緊張を高めました」

山田「あれから始まりましたね」

岩上「はい。ところがそれが4月16日でした。これが11月の段階で、そのヘリテージというところの財団のクリングナーという上席研究員がレポートをネットで堂々と英語で発表してるんですよ。晒してるんです。

 今、日本と中国とのあいだで揉めていると。米国には向かっていない、中国のみに向かっているナショナリズムが高揚していると。この状況というのは、ワシントンが、米国がいくつかの致命的、死活的重要な政治的目的を達成する絶好の機会であると」

山田「まさにその通りですね」

岩上「堂々とズバッと言ってるんですよ。そういうふうなことをどう思いますか?と。これはいいように利用されたんじゃないですか?というふうに小沢さんに言ったら、ほう、と言いながら、そのクリングナーさんとかいう人は、見誤ってるねって言うんですね。

 見誤ってるねって、どういう意味ですか?って言ったら、日本の右翼を、そのまったくアメリカにとってはポチだというふうに思っていて、利用できると。で、実際に利用して、いいように面白いように動いてくれてる。でも、その結果、日本の右傾化というのはすごく進んだあげく、コントロールできないものになるんだということを分かってない。

 アメリカだって本当に分かってない。だから、利用しようと思って、やれやれとけしかけてやってきたけど、今になって、今年になってオバマ政権が非常に安倍さんに冷たかったりとか、あるいは世界中から非難が殺到してたりする。

 アメリカもしまったと思っている人たち、あるいはそういう方向で行くべきじゃなかったと思っている人たちも確実にいるんだと。これは、やりすぎて失敗したと思っていると確実にアメリカも、だから言わんこっちゃないと。

 日本のウルトラナショナリスト、石原さんや安倍さんのような人たちを刺激し、そこに取り巻きがいて、そっちの方向に持っていかせる。で、彼らは、アメリカの言うことを聞いているフリをしながら、行先は何かと。

 核武装独立なんだと。なんで彼らが原発にあんなにしがみついているのか。原発にしがみついて、核技術を温存して、核武装独立しようと思っているからだと。彼らが脱原発をしないのは、発電の意味なんかない。核武装なんだというふうに見抜いたというのか、意図をそのように解説されたんですけど」

山田「なるほど。憲法改正もそこにあるのかもしれませんね」

岩上「というふうにおっしゃったんですね」

山田「まあ、僕はそこまでは思ってなかったな」

岩上「ああ、そうですか」

山田「ただ、アメリカもそうなったらすぐに首をすげ替えるでしょうね」

岩上「だから、そうなったときは、本物の日本の孤立ですよね。イランや北朝鮮の状態になるわけです」

山田「そうだね」

岩上「たいへんクレイジーな話ですよね。アメリカにずっと食い物にされているのも面白くない話ですけれども。奴隷の状態も嫌だけれども、そこから脱するんだと言いながら、やってることが大日本帝国の再来、核プラス。ということになると、たいへんだと思うんですけど、この点は、どのようにご覧になります?」

山田「確かに、今の石原、今の安倍さんを見てると、行き着くところはそういうとこでしょうね。ただ、そこまで僕は行き着けなくて、本当は、小沢さんも言っていたように、アメリカとも中国とも仲良くやっていくような外交をやらなきゃいけないんですよ。

 しかし、小沢さんもメディアからああいう形になってしまいましたね。非常に残念ですが。まあ、これから本物の政治家は消されていくんでしょうね。しかし、これをそのまま、そのまま見捨てるわけにはいきませんよね。

 まあ、国民一人一人が、本気で、本気で戦えば、私はまだこれから、日本は立ち直れると、そう思いますがね」

岩上「これは、入ってから離脱するってことは可能ですか?TPPは」

山田「それはダメです。それは、自民党の幹部もみんな分かってます」

岩上「分かってる?」

山田「分かってる」

岩上「入ったら、入ったままだと」

山田「入ったままです」

岩上「自民党の人たちは、何を考えてるんですか?」

山田「自民党の平沢勝栄さんがテレビで言ったのを聞いたことがあるけど、船に乗り込んだら港に着くまで降りられない。自民党、まあ政治家というのは、つくづく感じたけど、みんな保身ですね」

岩上「自分の保身ですか?とりあえず、目の前。自分のポストだけ」

山田「ポストだけ。そこにしがみついてますね。ましてや、官僚はそうでしょうね」

岩上「なるほど。それだけなんですか?」

山田「だから、小沢さんとか田中角栄とか、石橋湛山とか、本当のことを言ってきた政治家は、ぜんぶ抹殺されてしまうんではないですか。小沢さんはまだ戦ってるから本当に尊敬しますがね」

岩上「小沢一郎さん、15人になってしまいましたけどね。なんか意外に意気軒昂でしたよ。びっくりしましたけど。意気軒昂ですねって言ったら、当たり前だと。3年後があるというふうに言ってるんですけど。3年後、逆転できるかと。ちょっと考えられないなと思いながら、そしたら、小選挙区制にしたのはそのためだと。国民の民意は圧倒的にこっちにあるんだと」

山田「まあ、それは本当でしょうね。私もそう思いますよ。早ければ2年後か3年後に、大きく振り子がもう一回、右から左に揺り戻しますね。振り子ですよ。これが小選挙区制でしょ。だから、その時の核、旗をなんとか」

岩上「しかし、それまでの間に、憲法改正されて、様々なものが、例えば今言ったように、国家の非常事態であると。なので、あらゆる、例えば公民権を停止するとか、国会がさしたる機能をしないものにするとか、いろんなことができるようになってしまった場合は、どうですか?そうしたことができるでしょうか?」

山田「まあ、そうした事態がないとも限りませんね」

岩上「先生は法律家でもある。でもあると言ったら失礼。本当は法律家というのが本職ですけど、その前の本職は酪農家だったんですけど。法律家としてみて、あの自民党の改正案に対して、お読みになられたと思いますけれども、どのように思っていらっしゃるでしょう?危険なとこはどこか?なんなのか、あれは」

山田「いやあ、僕は戦後の憲法のほうが、条文にしたって、もっと非常に深いと思いますよ。思想がありますよ。こんなのは、子供の作文にすぎませんね。自民党の案は。とんでもないことです」

岩上「恐ろしい内容がいっぱい書き込まれてますよね。例えば、基本的人権を制約する。あるいは97条の基本的人権が、現在および将来の国民に付託された永久の権利である、ということを全部削除してある。すごいことだと思います。基本的人権を削除してしまう」

山田「僕は滅多にテレビは見ないんですが、テレビでちょっと。国民に主権があるっていうのは間違いだと。天皇に主権があるんだって、ある憲法学者が言ってましたよ」

岩上「はあ、そんなことをテレビで」

山田「一瞬、テレビがそういうことを流すとは信じられなくてね。一瞬驚きましたね。かつて考えなかったですね。そういうことを、大テレビ局が流すってこと」

岩上「天皇を戴く国家というのは、それこそ本当に天皇に権力があると。大権があると。そして、実際にそれを動かすのは、官僚であり、政府であり、一握りの政治家である。そういう時代がもう一度来ると。国防軍を作り、これまるっきり焼き直しじゃないですか。

 しかも、何の意味もない。敵基地攻撃論でもそうですけども、向こうからやってくるから戦うんだと言うんですけど、かつては確かに戦いに行って、でもその戦争をするってことは良いことではないですけど、帝国主義の戦争の時代というのは、勝ったら賠償金をとるとか、領土をぶんどるとか、経済的利益があるからやったりした部分があるわけです。ビジネスとしてした部分があるわけですね。

 今日の戦争に、何の利益があるんでしょう?」

山田「なにもないでしょうな」

岩上「でも、やろうとしているわけですね。これは、どれだけ戦争が無益か、そのようなファシズムの体制というものが無駄なのか、ということを声を大にして言わないと、多くの若い人たちは、韓国人がおもしろくない程度の話で、中国人が生意気だ程度の感情を煽られて、それで、実際にはよく知らないんですよ。メディアに吹き込まれているわけで。

 で、こんな誤ったことをやろうとしているわけですね。そこをやはり、相当説いて聞かせないと、どれだけ無益で無駄で危険なものかということを伝えないと」

山田「そうですね。いま一生懸命、街頭やってマイクを街宣車から離さずに、よく考えてくれと」

岩上「はい。訴えていらっしゃいますか?」

山田「訴えてます。やっぱり立ち止まって聞いてくれますね。家から出てきてくれますよ。だから、この選挙戦、最後までそうやって訴えを続けます」

岩上「分かりました。ありがとうございます。ということで、お忙しいなか、みどりの風の候補であられる山田正彦元農水大臣ですけれども、山田正彦さんにお話をうかがいました。山田さん、どうも本当にありがとうございました」

山田「いいえ、ありがとうございました。こちらこそ」

岩上「ありがとうございました」

山田「ありがとうございます」

(文字起こし・@sekilalazowie, 校正・柴崎)

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「“命を懸けてTPPを阻止する” 山田元農水相、魂の叫び ~岩上安身によるインタビュー 第318回 ゲスト みどりの風 比例区候補・山田正彦氏」への2件のフィードバック

  1. kurahon より:

    今回の参院選でも、みんなの党、維新、(共産党)以外の党の間では意見の違いもかなり小さい。共同歩調は可能だったのではないかと思えて仕方ない。いまさら言っても仕方ない。、自民党以外に勝利してほしい。TPP参加の大問題以外でも、山田さんが国民の前に明らかにしてださった安倍総理の国民を裏切る行動=原発輸出上の大問題=「輸出先国から日本が核廃棄物の引き取りを約束」を暴露してくださった。山田さん勝利してくださーい。応援しています。

  2. やまとたける より:

    山田さん、
    田舎の農家の地主さんみたいな顔していますので、
    野暮ったい人かと思っていました。
    このインタビューで、すばらしい考え、人間味のあふれる人柄がよくわかりました。

    がんばってください。
    できれば小沢さんと共闘してください。

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