「TPPは国のあり方を根幹から変えてしまう」~岩上安身によるインタビュー 第90回 ゲスト 山田正彦前農林水産大臣 2011.2.8

記事公開日:2011.2.8取材地: テキスト動画独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(注釈と文字起こし:ボランティアスタッフ 林)

※公共性に鑑み全公開します。IWJ会員にご登録いただき、安定的な取材をお支えください!→→ご登録はこちらから

 2011年2月8日、岩上安身が、「TPPを慎重に考える会」会長の山田正彦前農林水産大臣にインタビューを行った。TPPは、主に農業の問題としてマスコミで報じられているが、山田前農水相は「TPPは、国民生活のあらゆる分野に関係しており、国のあり方を根幹から変えてしまう恐れのあるものだ」と、警鐘を鳴らした。

<会員向け動画 特別公開中>

■ハイライト

■全編動画1/2

■全編動画2/2

 TPPには24の分野があり、農業はその一つにすぎない。医療の分野では、国民皆保険制度をゆるがす恐れがあり、日本医師会も本腰を入れて反対している。紛争解決の分野では、日本国内のことを日本の法律で解決できなくなるばかりでなく、公用語が英語になるかもしれない。

 政府調達も、地場の中小企業が軒並み倒れることが予想される。雇用関係では、入国管理によって規制することが不可能となり、安い労働力がどっと日本に流入。東南アジアの低い労働賃金に平準化されるまで下がることになる。TPPを推進する財界人には、250円の牛丼が50円になるというが、これは、賃金が極端に低くくなるから可能なのである。

 また、「ネガ方式」という考え方がある。これは、「規定されないものは全くの自由」というもの。これは、全く日本の国のありようを変えてしまう、恐ろしいこと。

 これから最も成長が期待される中国は、日本がTPPに加入するなら、日本との関係を考え直すともいい、中国市場から日本が切り離されてしまう。韓国もまた、TPPに加入しないと表明している。

 前農林水産大臣であった山田氏によると、日本の農業は既に十分に開かれてる。米の高い関税ばかりが報道されているが、農産物全体の平均は、EUなど諸外国と比べても十分に低い。アメリカでさえ、農家の個別保障で農業を支えている。ブッシュ前大統領は、食料を自給できないような馬鹿な国にはならないと、演説もしている。また、農業は、単に食料を生産するだけでなく、国土を保全するという意味もある。農業が破壊されることは、日本の国土を破壊することに繋がる。

 「TPPを慎重に考える会」には現在180名の議員が参加している。これから議連にして本格的に活動を開始。東京だけでなく、地方で市民と直接対話して、運動を広げていこうとしている。

【参考動画】 前原外務大臣会見 2011.2.8
岩上安身がTPPについて質問しています。(18分25秒ころから)

【インタビュー中、紹介された映画 マイケル・ムーアの『シッコ』】

 

全文文字起こし

岩上「こんばんは。ジャーナリストの岩上安身です。本日は、山田正彦(やまだ まさひこ)前農林水産大臣(*)の議員会館の事務所の方にお邪魔しております。山田先生にはTPP(*)の問題について、お語りいただこうと思ってます。山田先生、よろしくお願いいたします」

* 山田正彦氏ブログ

* TPP:環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(Trans Pacific Partnership)の略で、関税を原則撤廃する自由貿易協定のこと。

山田「よろしくお願いいたします」

<ここから特別公開中>

岩上「先生は、『TPPを慎重に考える会』という議員の集まり、これは今、勉強会という形ですけれども、近い内に議員連盟にまでしていこうと。TPPには問題点が随分あり、それについて警鐘を鳴らしていこうということで、この2週間位、非常に精力的に会合を重ねられておられます。我々も、Ustreamでこの中継をさせていただいているんですけれども、勉強させていただいている内に、いろいろな問題点があるということが分かってきました。外務省を始めとする官僚、政府は、十二分な説明をしていなんじゃないかと。

そして、マスコミもほとんど横並びでTPP推進、基本的には、幾つか問題点はあるけれども総論は賛成である、推進すべきである、という論調で足並みを揃えております。影響を受ける分野は農業分野程度で、あとのほとんどの分野には影響がないと。そして、貿易の自由化のためには重要なことである、こういう論調が目立つわけですね。

 ところが実際には、農業分野だけではなく、24の作業部会があり、そして、産業だけではなくて医療や司法の分野、それから通信・電気、テレビの世界も影響を受けるわけですね。国民生活の至る所に影響が出るということが分かってきた。ネガ方式(*)という、キーワードになる問題点もあると。こういったことを全然、未だ知らされてないわけですね。

* ネガ方式:ネガティブコンセンサス方式のこと。WTOが採用している「全加盟国が反対しない限り実施できる」とする採択方式のこと。

この点について、包括的なんですけれども、TPPを分かった気になっている国民が多い中、本当のTPPというものはこういうものであるというところから、先ずお話願えればと思うんですけれども。よろしくお願いします」

山田「私も地元なんか回っていると、皆さん、TPPに関心を持っているんですね。ところがみんな、『国が自由化していかなければ、日本はこれからダメになるんでしょう』と、『農業は所得補償さえすれば、何とかなるんじゃないですか』と、そう皆さん思っているんですね。

 これは、メディアが一斉に、大新聞やテレビがTPP促進ときたもんだから、みんなTPPを農業の問題だと思っているんですね。いわゆる、WTO(*)の延長上の問題だと思っているんですね。とんでもないことなんですよ。

* WTO:世界貿易機関 外務省

TPPってのは、農業の問題ではなく、国の形が変わる、国の根幹がどうなっていくかという問題ですよね。例えば、EUが統合する時に、言ってみれば、国民投票しますよね。だから、TPPに参加するかしないかって言ったら、本当に国民投票しなければならないほど大きな問題だと、私は思ってます。

 段々、それが分かってきましたよね。24の部会で何が話されているのか。政府は情報を掴んでいる筈なんです。オーストラリアもニュージーランドもシンガポールもアメリカにも行って、具体的にTPPの話を聞いてますから。これを国民に開示しなきゃいけないんですよね。いわゆる国民的議論で、『これが本当に国にとって利益だ』となったら、そういう方向に進むだろうし、『これは待った』ということになったら、ちょっと慎重に、という形になるだろうし。だから、そういう情報の開示が必要なんです、今ね。

我々は国会内で、『来た(得た)情報を明らかにしないで、6月までに決めるとかって、とんでもない話だ』と(言っている)。党で決定したのは、情報の収集に留まる協議だけだと。そこまでしか党は決定していないんだと。私に言わせれば、党はピン留めしているんだと、大変な話だから。それなのに、指摘した情報を国民に開示しないとはけしからん、というのが今、我々『(TPPを)慎重に考える会』の立場なんですが」

岩上「今、マスコミは、TPPのことは取り上げてはいます。取り上げてはいますが、今、取り上げられて流されている情報というのは、政府が抱え込んでいる情報の全てではない?本当の情報、あるいは真実の姿というものは、未だ全然開示されてない?」

山田「開示されてませんね。

 ところが、外務省からの説明を聞いている中で、文書にはなってないんですが、雇用調達(について漏らした)。例えば、自治体・市町村辺りが、何らかの物品を購入したり、あるいは道路工事を発注したりする時、WTOルールで言ったら、23億円以上の工事だったら、各国はこれをオープンにすべきであるというふうになってますね。マレーシアが、最後までTPPに参加するかしないかという時、雇用調達で裸にさせられたという話がありましたよね(*)。これは私も大変気になったところなんです。

* 「マレーシアでTPPに反対の声」 レイバーネット

この前、外務省の説明の中で、アメリカとシンガポールとの間での、EPA(*)か何かで決めている雇用調達の方法について、他の国との間で話し合いをしているということを、ちょっと漏らしましたね。ということは、かなり具体的な話が進んでいるんですよ。ということは、結局、これでは雇用調達も、日本の場合には英語と日本語の両方でやらざるを得なくなってくるんではないかと。しかも、今までだったら市町村が、小さな工事は、市町村の土建会社にやってもらってたわけじゃないですか」

* EPA:経済連携協定

岩上「地元で調達していたと」

山田「地元で調達していた。それができなくなる。そうすると、これは大変なことなんですよ」

岩上「地場産業に、本当に影響が出るわけですよね」

山田「うん。地域にとって大変なことで。これは農業の問題じゃないんですよ。地域の小さな土建会社、今、公共事業が減って、困った困ったと言ってますが、さらに大変なことになっていくわけですよね。

それだけじゃないんですね。医療制度問題にしたって。僕が当時、民主党のNEXT厚労大臣(*)やった時に、『シッコ』の映画を」

* NEXT大臣:民主党の野党時代の「次の内閣」における大臣。山田氏は、第3次小沢「次の内閣」の厚生労働大臣。

岩上「はい、マイケル・ムーア監督の『シッコ』(*)ですね」

* シッコ:アメリカ合衆国の医療制度とキューバなどの医療制度との対比をテーマとしたアメリカ映画。監督はマイケル・ムーア。

山田「はい。あれをみんなに観てもらったんです。今の菅総理も前原さんも確か観てくれたと思うんですが、鳩山さんにも観ていただきましたしね。あの中で問題だったのは、アメリカの民間医療保険ですよね、製薬会社等々の。だから、今、アメリカが日本に要求しているのは、正に日本の国民皆保険、これを止めさせて、民間医療保険をできるだけ入れようと。そういう意味で、小泉政権の時から、竹中平蔵氏の下に混合診療とか自由診療(*)とか、いろいろ言ってきたわけじゃないですか。正に今度の構造改革とよく似ていると。そういう方向が一歩進んできてるわけでしょ。

自由診療
保険がきかない。全額自己負担。
混合診療
1つの病気の治療に、保険診療と自由診療の医療サービスを併用するもの。

医師会(*)は、『TPPで医療の分野の何が話されているんですか?』と。私共も気になるから、(政府に)『何を一体話しているのか?』と言ったら、『当事国じゃないと教えてもらえない』と。そうじゃない筈なんです。これは分かっている筈なんです」

* 社団法人 日本医師会

岩上「政府は知っている?」

山田「知っている」

岩上「知っているけれども開示しない?」

山田「開示しない」

岩上「国民にも開示しないし、与党の議員にも開示していない?」

山田「開示していない。ただ、アメリカの対日要望(*)とか構造改革とか、今、さらにアメリカがFTA(*)を結んでいる所とも話等々してみると、米国がTPPでどう考えているかというのは、朧気ながら浮かんできますよね。そうすると、やっぱりこれは、国民皆保険の危機に繋がってくる恐れが十分にあると、私はそう思ってましてね、それだけじゃないですよね」

* 対日要望:年次改革要望書、正式には「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」のこと。

* FTA:自由貿易協定

岩上「医師会の先生方にもお会いされたと。そして、日本医師会が反対を表明しているということですよね?」

山田「そうなんです。去年の早い時期に、日本医師会の原中(勝征、はらなか かつゆき)会長に面会に行きましてね。『TPPについて、私は非常に心配している』って話したら、『早速、私共も調べてみましょう』という形から、医師会ははっきりと『TPPは反対』で動き出してくれましたね(*)、各党の意見についても、と。

* 「日本の医療を守るための国民運動」 日本医師会

歯科医師会(*)にも、先般、会長さんにお会いしました。歯科医師会も理事会を開いて、TPPについては、多分、反対の立場で決めていただけるんじゃないかと思いますが」

* 社団法人 日本歯科医師会

岩上「危機感を持っているわけですね、歯科医師会も」

山田「うん。やっぱり、非常に心配しておりました。それで、弁護士会ですね。日弁連の会長にもお会いしました」

岩上「宇都宮会長ですね」

山田「宇都宮会長です。それで、よく調べてみましたら、私も弁護士だからですが、今、弁護士が多過ぎるんですよね。例えば、五島(列島)とか厳島でも、2人か3人くらい、医者の居ない島でも弁護士は居るような島になってしまいましたね。それでも尚、400人位が登録できていないって言っているんですが、そんな中で、アメリカで弁護士資格を、ペーパー資格を取ったら、日本で開業できると。今まで、アメリカの法人はできませんでしたよね。日本の法人と一緒でなきゃいけないとか、いろんな制約があったんですが、今度はそれが自由にできるように」

岩上「開設できるわけですよね」

山田「そうですね」

岩上「アメリカの弁護士の法人というのは、非常に規模の大きなもので、言ってみれば、個人の自営業の世界に大企業が入ってくるようなスケールで展開される、というふうに聞いてますけれども」

山田「日本人の弁護士を雇って、どんどん法人を(開設できる)。今、日本の場合には、例えば長崎県弁護士会であったり、それぞれの都道府県の弁護士会に登録しないと(いけない)。まあ、個人事業ですよね、一般的にはね」

岩上「逆に言えば、弁護士個々が独立性を保っているということもあるわけですよね」

山田「そうです。それを全部チャラにしてしまう。それで、『そういうことが成されてますよ』と話したら、弁護士会会長はビックリしてましてね」

岩上「宇都宮さんはご存知なかったと?」

山田「知らなかったんです」

岩上「これは、極最近の話だというふうに聞いてますけれども」

山田「はい。『山田さん、農業の問題だとばかり思ってました。これは大変なことです。早速、医師会とも連絡を取らせていただきます』と、そう言ってましたね。

 もっと大変なことは、24の部会の中で、紛争解決の調停っていうんですかね、紛争解決の一分野がありますよね。紛争解決は、今までだったら、日本のことで何かあったら、日本の国内法で紛争処理できたんですが、今度はそうはいかないんです。TPP 9カ国の中で決められた法律に従って解決しなきゃいけないと」

岩上「大変なことですよね。国の中の法律そのものが書き換えられてしまうのと等しいですよね」

山田「そうですね」

岩上「紛争の解決というのは、当然のことながら、法律からやるわけですから、その人達が全く今まで知らなかった新しいルールに、突然、合わせなきゃいけない。それからまた、国内の紛争解決のルールというのは、長い間、いろいろな形で積み上げられてきた。民法や法律の積み重ねがあるわけですが、それが刷新されてしまう、上書きされてしまう可能性があると。えらいことですよね」

山田「えらいことですよ」

岩上「しかも、これが必ずしも日本語で争われるとは限らないわけですよね。英語?」

山田「公用語が英語になる」

岩上「なる。これは、全く植民地化に聞こえるんですよね。アメリカの弁護士が日本で開業することができて、法人を開設することができる。だけど、日本の弁護士は、日本の弁護士資格のみでアメリカで自由に開業することはできないわけですよね。ということは、これは幕末維新の不平等条約に匹敵する、本当に不平等条約そのものではないかと思うんですけれども」

山田「そうですよ。だから、私も『弁護士会がのほほんとしているのは、非常におかしいと思ってるんですが』って言ったらね、『いやぁ、農業の問題だとばかり思ってました』って言ってね、凄いビックリしてましたね」

岩上「宇都宮さんは仙谷さんと仲がいいんですよね(笑)」

山田「(笑)」

岩上「今の内閣に対して信任を置かれていたのか、随分とのんびりされてたんですね」

山田「うーん、日本弁護士会は、少し勉強不足でしたよね」

岩上「そうですね。

 貿易の問題である、そして経済の活性化のための、ある種のエリアを決めた中での自由化の問題であると、こういうふうに思われていた。そういうふうにずっと喧伝されてきたわけです。でも、医療の話だとか弁護士とか司法の世界とか、事実上、アメリカのルールを日本に押し付けてきて、紛争の解決でもアメリカに合わせろということは、日本側は何をやっても、下手をすると敗訴していくことになりかねない。そんな状態を作られると、これは、貿易の自由化と何の関係もない話だと思うんですけれども」

山田「そうなんですよ。もっと怖いのはね、ネガ方式と言っているでしょ。例えば、労働の問題が、24の中の一分野で話されてますね。これは、社会保険とか福祉とか、そういった資格を持った人のことが話されてますと、そういう説明を政府はするんですね。ところが、そういう人達をどうするのかということが決まったとしても、それについて決まってないもの、製造業とかいろんなサービス業とか、一般の労働については、ネガ方式ですと全くの自由になるわけですよ」

岩上「このネガ方式というのは、根本的にどういう意味なんですか?」

山田「いわゆる、規定してないものについては、9カ国間で全くフリーだということです」

岩上「敢えて9カ国間できちんとルールを明文化したものについては、そのルールに従うけれども、そうでない限りは自由だ、フリーだと。この場合の自由という意味は、どういう意味になるのか。例えば、日本にとっての自由なのか、アメリカにとっての自由なのか?」

山田「例えばですよ、ベトナムは年間人件費が1万5千円だと言われてますね」

岩上「安いですねぇ」

山田「雇用機会の均等、これは、TPPで間違いなく、雇用機会とか条件とか全部、均等にしないといけないんです。そうなってきた時に、ベトナムの安い労働力が日本にドッと入ってきますね。今でも、日本の企業が、例えばキャノンさん辺りが、中国人を3割位雇うとか、日本人じゃなくて韓国人・外国人を新入社員の内の3割位雇うとか、あるいは半分以上にするとか、あるいは楽天で公用語を英語にするとか、自由でしょ。だから、言ってみれば、どこの国からどれだけ人を雇うか、TPPの中で安い労働力がドッと入ってくるのを、ネガ方式ですと、全く入国管理等々でのチェックできませんよね」

岩上「そうですね」

山田「どんどん(安い)労働力が入ってきて、日本人が失業していく」

岩上「今、賃金差があります。これが本当に平準化されるまで、日本人の労働者は失業していき、そして、他の周辺諸国の安い労働力が入ってきて、これがほとんど釣り合うところまで、ということになったら、これは大変な大失業時代を、日本国民は覚悟しなきゃいけないことになってしまいますよね」

山田「TPP推進者は、『250円の牛丼が50円で食べれるようになります』と。言ってるのは、そういうことですよ。賃金が下がっていって」

岩上「今でも、ただでさえデフレが大変だと言っているのに、もっとデフレを推進することは、先ず間違いないですよね?」

山田「そうです。いわゆる、人・モノ・金の移動が自由になる。これがTPPだと考えればいいわけですよ。確かに安いモノがドッと入ってくる。安い労働力がドッと入ってくる。確かに安いモノは来る。しかし、私達の人件費もドッと安くなる」

岩上「賃金もドンと安くなってしまう」

山田「安くなる。モノは、今まで1億売上があったものが、2000万くらいの売上になる」

岩上「5分の1、10分の1になっていく可能性がありますよね」

山田「なっていく可能性があります。そりゃ、『牛丼250円が50円になります』と言うんですから」

岩上「既存の債務を抱えている企業・個人、これはデフレになっていくと、債務デフレで債務分が大きくなりますから、たちまち倒産が続出していきますよね。目茶苦茶になりそうな気がするんですけど、普通に考えても」

山田「そうそう。国が大変なことに陥ると考えなきゃいけませんよね。こんなバカなことじゃなくて、本来やらなきゃいけないのは(別にある)。TPPやれば輸出が増えるとか言っているけど、既に製造業は、電機にしたって自動車にしたって、もうアメリカでやっているし、関税も、アメリカとの間では日本はもう無いわけですから、言ってみれば。そういう意味で、何のメリットもないんですよ」

岩上「関税を撤廃すると、いろんな貿易が自由化されて、経済が活性化されるんだというような宣伝の仕方がされるんですけれども、実際、日本とアメリカの間では、もう関税というのは非常に低くなっていて、今さら、その下げ幅といいますか、それによるメリットは生じようがないというのが実は現実なんですね」

山田「そうなんですよ。それなのに、輸出が大きく伸びるんだと」

岩上「そして、経済が成長するって、ずっと言ってますよね」

山田「『経済が成長して豊かになっていくんだ』という言い方をしてますよね。

 今度のTPPの9カ国の内、日本は6カ国とは既にEPAを結んでいるんですから。あとは、ニュージーランド、人口200万でしょ、オーストラリアが2000万(と小さく、TPPは)、アメリカとのFTAと一緒なんですよ。GDPモデルでアメリカのFTA(と同等)、これで本当に経済成長するのか。そうするとね、そうでもないんですよ。

 むしろ日本の国益、日本の経済界・産業界にとっては日中韓。中国とか韓国とFTA、お互いにセンシティブ品目(*)がありますから、そういったものに留意しながら国を開いていった方が、よっぽど経済が伸びるし、且つ、農業分野でもね、僕は農水大臣時代に中国ともEPAの交渉をしてまいりましたし、韓国とも話しましたが、むしろ中国の方に、日本が牛肉とかいろんな果物とか輸出できるんですよ。その方がよっぽど利益になるんですね。工業産品だって、中国はあれだけの市場ですよ、これから先。そうすると、そちらの方を向かなきゃいけないんですよ。

* センシティブ品目:その国にとって重要な品目であり、輸入の増加によって国内経済・社会に悪影響があるおそれがある品目のこと。

この前、中国の大使館の方と話しましたけど、『中国はTPPがどういうものか関心は持っているけど、TPPはダメです』と。『日本がTPPに入るようだったら、我々は日本との付き合い方を考えざるを得ません』というようなスタンスですからね」

岩上「なるほど。日本がこれから成長していくとなれば、日本だけじゃないんですけれども、世界で最大の成長市場である中国市場へのアクセス、これを確保し続けるというのは、もう本当に生命線なんですよね。

 そういうことを考えると、中国市場から切り離されていく、あるいは中国市場に対して積極的に打って出る機会を失っていくような交渉の仕方、そして、アメリカとの間で緊密な関係が結ばれるといっても、非常に不平等な条約でアメリカの支配下に置かれる。アメリカの勝手が日本の国内のあらゆる分野で通じる、押し付けられていくような不平等条約を結ばされる。これは、非常に不可解なんですよね。何故、こんなものを急がなければいけないのか。そして、どうしてこれを一生懸命、外務省や今の前原大臣が懸命に旗を振ってやろうとしているのか。

実は、今日、外務省で前原さんの会見がありまして、私、記者会見に行ってきて、そこで、『TPPについて改めてお聞きしたい』と。先生のお名前も出して、『党内にも、”(TPPを)慎重に考える会”というもの立ち上がって、大変、懸念が広がっている。こういう時に、何故、こんなにも一生懸命、旗振りをして推進されるのか。もう一度、考え方を聞かせて欲しい』と申し上げたら、昨日、アメリカのルース大使と会ったと。妻を連れて、枝野官房長官夫妻とも一緒に6人で会食をしたと。親しいディナーですよね。その席でルース大使の方から、『アメリカの方こそ、いろいろ不利益を被るかもしれない。日本からいろんな要求を突き付けられるかもしれない。アメリカだって慎重になっているんだ』などという話を言われたと。日本に対して、アメリカがゴリ押しの要求をしてくると言われているのは、ちょっと違うというふうにルース大使が言ったという話を、そのまま我々にしているんですね。こういうふうにアメリカは言っていると。それじゃあ、全くのアメリカのメッセンジャーボーイ、アメリカの国益代表、アメリカの国務大臣の代理かという気がして、今日聞いていて、非常に違和感を覚えたんですけれども。

* ルース大使:ジョン・ヴィクター・ルース駐日米国大使。

何でこんな話になるのか。そして、先ほどお話に出た、医療の問題なんて特に深刻だと思いますが、国民皆保険制度の崩壊に繋がるのではないか。みんなの党の川田龍平(かわだ りゅうへい)(*)さんが国会で質問(*)したけれども、『そういう懸念が、実体が無いのに、お化けのように膨らんでいるんだ。だから、そんなものは懸念に及ばず』というふうに仰る(答弁する)んです。しかし一方で、『この情報は収集中だ』と言うんですよ。『じゃあ、結論が出ているのか出ていないのか、判断が下っているのかいないのか、どっちなんですか?』というと『収集中』と。

* 川田龍平参議院議員ホームページ
* 川田龍平氏の質問:2011年1月28日 
第177回国会 参議院本会議(3号)発言者番号005(以下で検索):
国会会議録検索システム

収集中なのに心配するなと言い、収集した情報については開示できない、しないと仰る。聞いていて、全然意味が分からないんですけれども。これは同じ党から出ている大臣ですから、批判するのは非常に難しいかもしれませんけれども、ここはどうにか、我々の懸念とか不安とか不可解だと思う気持ちにお答えいただきたいんですけど、どうでしょうか?どういうふうにお感じになりますか?」

山田「党の決定としては『情報収集に留まる』ということになってますから。前原外務大臣もその後、去年でしたか、一時、『TPPの門が閉じられようとしている』と、そういう発言をしたこともあると思います。ただ、党の決定を尊重してもらわなければ、いくら政府だからといっても、こういう国の形が変わるような大きな問題を、軽々しく、いろいろと発言してもらっては困ると、そう思いますね」

岩上「開示されていない情報がまだまだあると」

山田「政府は、前原大臣も、かなり情報が入ってる、良い情報も入ってるというようなことを言ったと言いますから、それを明らかにしてもらわなきゃ、議論のしようがないですよね。だから、『それを明らかにしろ』と言っても、いざ肝心なところになると『未だ日本が当事国になってないから、肝心なところは相手国の了解を得ない限り、開示できない』とかね、『外交上の問題だから、相手国が不利益なことになっては困る』という言い方をされてますよね」

岩上「正に今日も仰ってました」

山田「うん。ところが、実際に今回、アメリカに行っても、最初に言われたのは、これは新聞にも載ってましたけど、牛肉の問題であり、自動車の安全基準の問題ですよね。そういった問題を先に解決して下さいと。それから、TPP交渉・参加の問題ですよね。

 オーストラリアもニュージーランドも同じようなことを言ってますよね。オーストラリアも『日豪FTAを先に結んで下さい。それだったら、TPPの交渉に日本が参加してもいいですよ』と。いわば、外交渉やる時に、既に日本は、今でも裸になっているんですよ。それが、さらに裸にされてしまうんですね。

 僕は、そういう意味ではね、絶対に許せないと思ってましてね。日本の国益を大きく損なうと思ってますんで。情報収集なんだから、政府も、出てきた情報を早く広く国民に、これは農業の問題じゃないんだという形のものを知らしめないと、一般の国民の人は、本当に間違った解釈をしてますよね。大変心配しております」

岩上「国民を心配させないという言い方なんでしょうけれども、それを配慮しているというよりは、国民にできるだけ影響を小さく伝えて、そして、実際には蓋を開けてみたら、大変、大きな影響が出る。そういう懸念というか可能性があるということですよね」

山田「そうですよね」

岩上「しかも、先ほど、中国の話もありましたが、お隣の韓国もTPPには参加しないというふうに言っていると。TPPは韓国の国益にとって、非常にマイナスであるという判断があるわけですよね。何故、日本が?どうして?と。非常に分からないんですよ」

山田「そうですよ」

岩上「ここの問題は、『日米同盟の深化』と言われているものと、深く関わりがあるんではないかと思うんですけれどもね」

山田「それでね、韓国の問題でもそうなんですが、僕も農水大臣やってたので、農業の問題が正に云々されるんで、ちょっと農業の問題をお話させていただきますね」

岩上「はい」

山田「農産物の平均関税という、WTOが出しているもの(*)があるんですが、これでいきますとね、韓国の農産物の平均関税は62%なんです。

* 「WTO農業交渉とEPA交渉の現状と課題」 東京大学教授 鈴木宣弘氏。資料中に同図あり

EUは所得補償平均を78%やっていながら、ちゃんと19.5%の関税で守ってます。日本は何と11%です」

岩上「関税もこんなに低くなっているということですね」

山田「それで、米だけが788%だとか、コンニャクは1300何%だとか言うでしょ。ところが、米でも実際には300%くらいなんです、重量換算でいきますとね。

 ところが、アメリカもね、米はコシヒカリ・あきたこまちを作ってますよね。トン(t)当たり240ドルで目標価格を設定してるんですよ。国際価格が74ドルですから、その差額166ドル、これを米農家に不足払い(*)してるんです」

* 不足払い:市場価格が生産費を基準に決められる目標価格を下回った場合に、差額分を国費で支払うこと。生産調整を目的とした価格支持制に基づいたもの。農家への直接払いとは区別される。

岩上「実際、補填しているわけですね、(アメリカ)政府が」

山田「はい。米だけじゃない。麦・大豆・とうもろこし、22種類の品目に不足払いしてるんです。ですから、米だけで、アメリカも事実上は300%の関税を取っているのと一緒なんです。そういうことを一切報道しないで、日本の米は788%だと、それだけを言って、いかにも高いように思ってますが、こうして今、(資料を)お見せしたようにね、農産物も、そのものは既に開いているんです。

先般、EPAがインドと締結できましたね(*)。インドとの間で最後まで揉めたのは、農産物じゃないんですよ。あれは、社会保険労働士ですか、厚生労働の分野なんです。

* 「日本とインド、EPAに大筋合意」 朝日新聞 2010年9月10日

それで、EUとのEPAで今、揉めているのは、非関税障壁(*)です。農産物じゃないんですよ。私に言わせると、自動車の安全基準なんです。経済産業省の問題なんです。

* 非関税障壁:関税以外の方法によって貿易を制限すること。または、その制限の解除要件のこと。

それでいていかにも大新聞は、全て農産物がEPA/FTAの足を引っ張っていると、そういう書き方をするじゃないですか。日本の農産物は、むしろ開かれているんですよね。農産物を自由化して開くんだというのは、これは本当に間違いなんです。メディアも正確に報道していただきたい」

岩上「農産物だけ、あるいは農家が甘えているなどという言い方をしてバッシングされて、農家の方々自身も、自分達はもっと奮起しなければいけないんではないかと思い込まされて。菅総理が、記者会見でいみじくも語っておりましたけれども、千葉の農家へ行ったら、『我々はもっともっと厳しい条件でも闘える』と、若い農家が言ってたと。『だから、大丈夫なんだ』というような言い方を拾い上げている。それは、セットされた面会だったと思うんですけど、そういう声の下、農家が悪いんだという、一種のスケープゴートのようになっていって、GDP1%の農業のために、他の90何%の経済分野が全部犠牲になっている、などという表現まで使われたりしますね。酷い話ですね」

山田「しかしね、GDP1.5%も、アメリカだって農業の生産額からいえば、GDP1.5%あるかないかですからね。そんなバカなことを言うこと自体、おかしいんですけども。農業そのものは、いかにも構造改革と言って、農地を集約化して大規模化すれば、儲かって輸出できるんだっていう言い方をしてるでしょ。

 ところがね、ヨーロッパが、いわゆるEUですよ、大体、平均して40ha~60haで、そこで集中して合理化を図ってやっていきながらも、尚、農家所得の78%は所得補償に頼り、しかも日本の倍の20%の関税で守っている。

 これは何故かということなんですよ。日本の農地、今は1haか2haが平均ですけども、それが仮に北海道並みに集約したとしても、(そもそも)北海道の農家もTPPやったら一溜まりもありませんから。オーストラリアは一戸の農家で3000ha耕しているんですから。

 だから、どう考えたって、規模拡大したから輸出できる、競争できるというものではないんです。そりゃ、輸出できるものもありますよ。牛肉とか果物とか、素晴らしい技術の野菜も、高品質な安全な、取り作できたものがある。そういったものを輸出しようと思ったら、お隣の中国とか韓国とか台湾とか、そういった国々の方が、よっぱど良いわけですよ」

岩上「そうですね」

山田「お互いに米とか、センシティブ品目を配慮しながらね。

 もう一つ、大事なことは、大規模化・集約化、先進的な農業近代化経営をやる人達も、いわゆる段々畑とか棚田とか、そういった本当に田舎の狭い山合の農地では採算性が取れませんから、絶対にやりませんよ。しかし、実際にはね、そういう所が正に国土を守ってくれてるんです。国土保全です。

 だから、EUに行くとスイスの山の上に行っても、きれいにハイジの世界、酪農の世界があるじゃないですか。環境保全されてますね。スイスでは、標高3000m以上の農家には530万の所得補償をして、標高3000mより下には330万払っているんですね。それでいて、スイスの関税っていうのは55%くらいで守っているんです。スイスはEUに入ってませんから」

(Part2)

岩上「国内の農家の所得の戸別補償をし、且つ、外国との間では関税で守る。これも、EUでもどこの国でもやっているんですね」

山田「やってるんです」

岩上「国土保全のためにも必要なことですし、食糧の安全保障という面でも必要なことですよね」

山田「先ず、環境保全・国土保全という意味で、それだけのことをしなきゃいけない。環境保全・国土保全を、そういう山合とか離島でできるのは、農業・漁業なんですよ。それも小さな農業・漁業者なんですよ。そういう小さな農家も大事にしていかなきゃいけないんです、EU各国がそうしているようにね。

 それで、且つ、私共にとって大事なことは、食糧自給率。今年、ロシアが干ばつでもって、毎年6000万トン位生産してた小麦が、4000万トン。今度、2000万トン輸出してたのが、輸入国に陥ったわけでしょ。

 それで、チュニジアの暴動、エジプトの問題、あれも発端は全部、食糧問題ですからね」

岩上「食糧高騰ですよねぇ」

山田「食糧高騰です。サウジアラビアが、今まで200万トンしか買ってなかった小麦を、300万トンも買うと言い出したでしょ。

 それで、今のオーストラリアのサイクロン、さらに大洪水、干ばつが今年もやってきますよ。世界の食糧事情は、益々厳しくなっていくわけですから。

 そんな中で、先月の22日ですか、ドイツの農水大臣が、世界30カ国の農水大臣を集めて、日本からは田名部(匡代、たなぶ まさよ)政務官が行ったんですが(*)、こういう決議をしてるんですよ。『先ず、自国の食糧は自国で賄うことにしよう』と。これが本当なんです。だから、日本もこれから先、将来のことを考えると、食料自給率をある一定のところまでは、我々は50%をどうしても10年後に達成したいということを言って、今、がんばっているんですが、そこまでやらなきゃいけないんです」

「田名部農林水産大臣政務官のドイツ出張」 農林水産省

岩上「なるほど。アメリカは、日本の食料自給率を引き下げるような政策を押し付けてきて、そして、自国の農産物を押し付けてくる。あるいは、アメリカにとって有利な政策を押し付けてくる傾向にあるわけです。

 けれども、他方、アメリカ自身は日本に対して、ある意味、最も厳しい態度で臨んだのかもしれないブッシュの時代に、ブッシュ大統領本人が『我が国は、自国で食料自給をできなくなるような、そんなバカな、愚かな国にはならない』と、こういうふうに宣言したことがあったと聞いてます。ということは、自国では絶対に食料自給率は引き下げない、食料安保は守り抜くと言っていながら、日本を裸にして、どんどん食糧自給のできない、安全保障と非常にパラレルなんですが、自国で安全保障できない、軍事的な意味でも食糧面でも自国で安全保障ができない、正に自らの国を自らで守れず、自らの国民を自ら守ることもできない、養うこともできないような、非常に脆弱な状態にしてくる。またそれを受け入れてしまっている。何でこんなことになるのか。植民地化と言って、全然、過言ではないのかなと思うんですけれども」

山田「我々民主党は、政権交代する時に、当時、自民党が大規模化(やる所)だけにお金をやり、散々、自民党は農業の安楽死を図ってきたわけじゃないですか。工業貿易立国だから工業産品を輸出して、その上がりで安い食糧は輸入すれば足りるんだと。それで農業の安楽死を図ってきて、その結果、(従事者の)平均年齢が66歳になったわけでしょ。

 それで、農家は食べれなくなりましたよね。米が60Kg 24,000円くらいしておったのが12,000円まで下がったんですから、やっていけるわけありませんよね。だから、しょうがないから、いわゆる兼業農家、お母ちゃんがスーパーでレジをやりながら、父ちゃんがタクシーの運転手しながら、先祖の田地を守ってきた。それが限界にきてしまったのが今の現状でしょ」

岩上「農家の高齢化というのは、自然現象のように語られるんですが、そうではなくて、政策によって誘導された、その結果なんですね?」

山田「そうそう。安楽死が戦後、図られてきたんですよ、農業、商業、一貫して。工業産品を売らんがために、安い農産物は買えば足りるというふうに。これが、自民党の農業政策だったんです。

 我々は、そうじゃないんだと。先ずは米だけでも安心して作れるようにしようと。米農家が先ず安心して米だけでも作れるようにしよう、これがモデル事業だったんです。そうすれば、子供達にも戻ってきてもらって、日雇い・派遣で東京に居て就職もない連中だって、戻ってくれば農業で食べれるんじゃないかと。そういうところまで持っていこうというのが、今度の本格実施なんです。

我々、野党時代に、1兆4千億で農業・林業・漁業、所得補償、直接支払いを考えたんですが、1年間で、ほぼ自民党時代の農水予算の中で、1兆2千億円まで、私が副大臣・大臣として所得補償の予算を組んだんですよ。新しい農業革命は今年から始まるんです」

岩上「始まる筈だったって感じなんですよね?(笑)」

山田「いや、始まるんです(笑)」

岩上「このままだと継続させられず」

山田「TPPをやられると、折角、これから始まる我々民主党の農業改革がダメになるんです」

岩上「農家の再生?」

山田「農家の再生。我々の農家の再生はどういうことかというとね、何か、バラマキだと言われますけど、そうじゃないんです。数量を上げれば上げるほど、品質(品種)が多ければ多いほど、その人に所得補償がより多く行くように仕組んでいるんです、システム的に。今度の本格実施で。そして、市場原理そのものを先ず取り入れてますから、市場原理を取り入れながら、今言ったように、がんばればがんばるほど利益になるという所得補償制度ですから。

 これを我々は10年間、考えに考えてきて、この1年間で本格実施にまで漸く持ってきて、今年の4月から予算が通れば始まるところなんです。だから、そうなれば、水田、米だけの所得補償じゃなく、麦・大豆・蕎麦・菜種、そういった畑作の所得補償も始まるし、且つ、中山間地域(*)、山合とか離島とか、そういった所にも手厚くしましたんで、環境保全・国土保全という意味でも、これからは随分と違う筈なんです」

* 中山間地域:都市や平地以外の、中間農業地域と山間農業地域の総称

岩上「09年の総選挙によって民主党政権が誕生し、政権交代を成し、その時には『国民の生活が第一である』と。そして、この農家の所得補償も農家の再生ということも、間違いなく謳われていた。みんな、国民は周知しています。そして、それをやりかけたところで、自ら膝を屈するといいますかね、そんな感じに見えるんですね。特に菅政権が誕生してから以降、大きな政策転換が行われている」

山田「折角、これから農業の再生を図って自給率50%にしようと、農業の再生について力強く、我々は所得補償のマニフェスト(を謳った)。農業だけは予算の組替えと501事業の無駄を、僕は3000億円、舟山(康江、ふなやま やすえ)政務官も一緒になって、政務三役みんなでやって省いて、漸くこれからスタートという時に、関税ゼロだということになったら。EUでもどこの国だって米国だって、関税で守っているのに」

岩上「日本だけ裸にさせられるということですね」

山田「日本だけ裸にさせられるって、そんなバカなことがありますかっていうのが、今の私の気持ちですよね。だから、ここはどんなことがあっても慎重にやってもらわないと。日本の農業の再生も、食料自給率も、食の安全も安心も、折角、今、六次産業化(*)とか、米のトレーサビリティ制度(*)がいよいよ施行されますが、他の職員に対しても食の安全・安心を、世界でも確たる国にしようと思って、我々民主党政権はね(進めてきた)。いわゆる、外需に頼った強い経済じゃなくて、我々としては内需を中心とした福祉国家を目指したんですから。強い国を目指しているんじゃないんですよ、民主党は」

* 六次産業:農業や水産業などの第一次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を表す。

* 米トレーサビリティ制度:「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律及び関連政省令等」 農林水産省

岩上「なるほど。菅さんは『強い』って言葉が大好きで、強い経済・強い財政・強い社会保障と。強い社会保障って意味が分かんないですけど、良い社会保障なら分かるんですが。その『強い』ということをやたら乱発して、戦略として非常に使うんですが、結局、やってらっしゃることは、政権交代した時の大きな公約破りであり、その後退というふうにしか見えないんですね。実際問題、今、幾つか仰っていることに符号することがあります。例えば、企業団体献金の禁止というのを謳っていましたが、岡田幹事長が企業団体献金の受け入れを表明したりしている。先ほど話があったように、農業などの犠牲の下、工業製品、輸出産業の保護に努めてきた。そういうところから、少し身を引き剥がすという民主党の政策に対して、日経連(経団連)のような財界が団体献金をすることによって、民主党政権に対する圧力といいますか、影響力を増しているということも言えるんだろうと思うんですけれども」

山田「そうですね。かつて、我々が野党時代に、小泉政権に対して何を言ったか。小泉さんが『強いものを強くすれば、弱いものを引き上げられる』と言いましたよね。実際に引き上げられたか?そうじゃなくて、格差が広がっただけじゃないかと。我々は、その政権を批判して、内需を中心とした医療・介護・福祉、安心して年金で暮らせる社会を作ろうと。そして政権交代したんだから、それに向って邁進しなきゃいけないんです」

岩上「そうですね。これは一言で集約して言うと、『国民の生活が第一』ということになるんでしょうし、その再分配を見直す政策でもあるし、格差をもう一度縮める、開いてしまった格差を再分配政策によって是正することだったんだろうと思うんです。ところが、もう一度、再び、新自由主義的な政策に、菅政権はシフトしてしまったように見える。これはどういうことなんでしょう?

 民主党が今、2つの党に割れているようにも見えるんですね。今の菅政権のトップに居る4、5人の人達、こういう方々は選挙で立て続けに敗北しても、つまり、そこに民意が反映されているわけですけれども、それに対する責任をお取りにならない方が、ずっとトップにいらっしゃいますよね。枝野さん、幹事長時代に(2010年参院選で)大敗を喫した。だけど今、官房長官に、むしろ出世して引き立てられている。民主党党員の方々、議員の方々にとっては、ご自身の寄って立つ基盤を揺るがしかねない重大な問題なんで、本当はもっと大声で『おかしい』というふうに声を挙げるべきではないかと思うんですけれども、そこはどうなんでしょう?あまり拳を突き上げるようでもない?どうなんでしょうか?」

山田「党の中の議員の皆さん方は、私が話している限りでは、結構、TPPに対しては、慎重に考えてる方が多いと思ってますがね。だから、民主党の中でも、もう一度原点に戻って、しっかりとマニフェストをやろうじゃないかと。

 私が農水副大臣・大臣として、これまでの農水予算の枠の中で、所得補償に約8割、1兆4千億の予算の内、1兆2千億まで出動できましたよね。大きく501事業の無駄を削減したこともさることながら、土地改良事業を思い切って減らした。予算の組替えをやったんですよ。

 だから、例えば、厚生労働の予算でもね、かなり組替えれば(できる)。私は農林副大臣・大臣の時に、1年間で7000億円の埋蔵金を返したんですよ、基金の内から。僕は岡田幹事長に言ったんですが、厚生労働予算は今年だけでも29兆で、そこには雇用促進事業だとか一杯、天下りが付いてきますし、僕はNEXT厚労大臣やってたから、大よそ調べたら分かるんだけど、本当にあそこの埋蔵金を国庫に3兆円くらいは返せた筈だと」

岩上「事業仕分けなんて甘いわけですね?」

山田「うん、事業仕分けを、ああいう形でやるんではなくて、政務三役が責任を持ってやっていくんですよ。それが政権交代の我々の主旨だったんですから」

岩上「なるほど。まだまだ本当に無駄を削減する、予算を組替える手があるわけですね?」

山田「予算を組替えて無駄を削減すれば、僕は絶対にマニフェストは実現できると思っています。これはね、我々が政権交代した時、税収が6兆円少なかったから暫定税率も見送ったんですけど、今年の景気を見ていると、かなり税収が増えそうですよね。そして、考えていけば、もうちょっと無駄を無くし、予算の組替えを本気でやれば、農水はできたんですから、マニフェストの実現は、増税しなくても十分にできると、私はそう考えています」

岩上「消費税の増税には、先生は反対?慎重にやるべきだという考えなんですね?」

山田「そうそう。消費税の増税をやるんだったら、政権交代する時に、消費税は次の選挙で(国民に問うと)。社会保障や最低保障年金を税金でやります、そのために税金が必要な場合には国民に訴えて、選挙で皆さんがそれで良いとなったら消費税を上げることにしますと、そういう整理をしたんですよ。だから、そのままで良いんですよ。党としては、そういう整理をして政権交代したんだから。国民と約束したことですから」

岩上「これね、既得利権を持っている官僚、あるいは財界、あるいはマスコミ、あるいはアメリカの圧力、こういったものが一体になって、09年マニフェストを支持するような民主党の党員をパージしたりとか、あるいはその影響力を減じるような、様々な手立てを採っているように見えて仕方がないんですけれども。仮にそうだとして、一つ、非常に皮肉だなと思うのは、この24の分野の内、電気・通信事業も含まれていて、その中にはマスコミにも非常に深く関わる分野がありますよね」

山田「そうです。電波のオークションですね」

岩上「テレビの電波のオークションがあると。これ、マスコミ業界は大反対していることなんじゃないですか?それを今、TPPを促進することによって、テレビは乗っ取られる可能性があるんですよね?」

山田「そうそう」

岩上「外資に。ネガ方式だとフリーなんですよね。(ルールに)書き込まなかったら、全部自由ですから。マードック(*)のような人がやって来たとしたら、あっという間にかっさらわれていく可能性もある」

* マードック:キース・ルパート・マードック。世界的なメディア王。

山田「そうそう。だから、政府は『それは議題になってません』と言うけど、ネガ方式だったら、それは全部オークションに掛けられることになりますからねぇ」

岩上「議題に掛かっていないことは、逆に自由になる。それがネガ方式ですよね。それがネガ方式の本質であると。官僚、あるいは既得利権層、それから資本、あるいはアメリカ、今、いろいろな言い方をしましたが、マスコミは、TPPを推進したくてしょうがない人達の先兵となって、世論操作をしているように見えるんですけれども。そういう、鉄砲玉のようなことをやりながら、その背中を自分達が撃たれるんじゃないですか?これは、非常に皮肉なことになりかねないと思うんですが」

山田「そうですね。今日も『TPPを慎重に考える会』の役員会で随分と出たんですが、TPPをどうして推進しようとしているんだろうかと(*)。何故?分からない(笑)」

* 「TPP推進論の不思議」 岡山信夫氏 金融市場2011年3月号

岩上「根本的に分からない(笑)。ちょっとイカれてるような気がするんですよね」

山田「輸出が本当に伸びると思っているんだろうかと」

岩上「普通に考えたら、伸びるわけがないと思うんですけど」

山田「そりゃねえ、既に生産拠点も(海外に移っている)」

岩上「そうですよね。益々、空洞化が甚だしくなりますよね」

山田「むしろ、輸出を伸ばそうとするならば、為替レートの問題ですよね。韓国のウォンなんてのは、もの凄い下がって、だからこそ韓国は、結構、外資に頼って経済を伸ばしたということがありますよね。

日本は、円がどんどん強くなり過ぎですよ。アメリカはこの前、49兆円かなんか量的緩和したじゃないですか。ドル紙幣を印刷して撒くようなもんですから。当然、株価が高くなったのはいいけど、食料品とか、そういったところに、ドル安にアメリカは誘導したわけでしょ」

岩上「そうですね」

山田「韓国もウォン安を誘導してるわけでしょ。日本も本当だったら、円安を誘導しなきゃ、輸出なんて伸びるわけないじゃないですか、いくらTPPやったって。だから、それには、本当は財政出動なんですよ、こういうデフレの時には。ところが財政出動はしない。緊縮財政だと」

岩上「1930年代に、こういうことがあったわけですよね。戦前の昭和金融恐慌があり、一時、緊縮財政をやって益々、酷いことになって、高橋是清(たかはし これきよ)のような人が出てきて、思い切った財政出動をして、そして、金利政策を先取りするような積極財政をやり、一時的に日本経済は窮地から脱することができた・できかけたわけですね。そうした先行事例があるのに、またあの時代の繰り返しのようなことをしている。何でこんなことをするのか?日本の国民の生活のためにやっている政策とは思えないんですよね」

山田「思えないですね」

岩上「一定の、グローバルな資本にとっては、国民生活なんかどうでもいいと。国境を越えて金儲けができるような大資本、これは日本発であろうと、アメリカ発であろうと、どこ発であろうといいんですけれども、そういう資本にとっては好都合かもしれませんが、それ以外、誰も得をしないと思うんですが」

山田「だからですよ、日本はギリシャみたいになるとか、借金が800兆円あるとか、いろいろ言われているでしょ」

岩上「菅さんも散々、言いましたよね」

山田「うん。日本のどこの会社だって、四半期ごとにバランスシートやって、資産がどれだけあって、預貯金が幾らあって、借金が幾らあります、流動負債がこれだけですと明らかにするじゃないですか。我々、政権交代して、それをやろうと言ったわけですよ。政府も財務省も、これをやらなきゃいけないんですよ。例えば、私がNEXT厚労大臣の時に調べたら、年金の預貯金だけで270兆円あるんですよ」

岩上「凄い額ですよね」

山田「そうすると、僕が農水副大臣・大臣やって調べてみると、結構、いろんな基金が一杯あるんです、ポケットが。農水だけでかなりあるんです。その中で、私は7000億ほど返したんですが。そういう各省庁のいろんな基金が一体、幾らあるのか。預貯金合わせると、僕はざっと700兆円くらいあるんじゃないかと思うんです」

岩上「あるんじゃないかという言い方ということは、未だにそうしたことが開示されていない?」

山田「開示しないんです」

岩上「しないっ。だから、何も分からないまま、日本は危機だ危機だという話を聞いているんですよね、我々は」

山田「不動産とか資産とか、いろんなことを考えて、国民に四半期ごとに、今、預貯金は幾らあって、借金は幾らあって、どういう借金の中身なんだということを明らかにして、国民が本当にここで増税しなければならないということになったら、増税しましょうよ、それは。しかし、未だ増税しなくても、むしろ今は国民の生活、みんなこれだけ苦しんでいるんだから、財政出動して景気を良くするとか、これが先だという判断に立ったら、そうしましょうと。そういう意味ではね、先ず何といっても、TPPをやる前に、政府が四半期ごとに預貯金・資産・バランスシート・借金・負債、そういったものを明らかにしていくということ。これは、できる筈ですから。どこの小さな会社だって、今、やっていることですから」

岩上「そうですね。これができないのは、やっぱり、官僚の抵抗が強いんですか?」

山田「なかなか、やろうとしないですね」

岩上「やろうとしない。記者クラブメディア、大新聞、テレビの報道などもですけれども、こういったマスコミも官僚と利害が一致しているのか何なのか、むしろ反対論陣を張る傾向にありますよね。これは、実際の現場に居られて、官僚と接することも非常に多々あった山田先生としては、肌感・実感として、どうなんですか?」

山田「実感として、僕は農水省に1年間居て、農水官僚は、みんなよくやってくれましたよ。戸別補償政策で、随分、徹夜で議論を何度もやりましたから。実際、埋蔵金も7000億吐き出しましたから。いわゆる政治家、政務三役が方向を示す、政務三役が責任を取る、だったら官僚は従ってくれる筈なんですよ。それだけ政治家が責任を取るという肚を持って、そして、きちんとした正しい方向さえ示せば、さっき言ったように、財務省にしたって、国民にバランスシートを示そうじゃないかと、そういう姿勢をきちんと打ち出せば、そしてそこは政治家が責任を持つ、政権が責任を持つということになれば、官僚は従ってくれる筈なんです」

岩上「民主党はいろいろな公約を掲げて、それが実現できないものが随分あると。例えば、(取調べの全面)可視化もそうですけれども。その可視化を進めようとする議連というものがありますね、可視化議連が。がんばってます。この可視化に関しては、衆参で署名を改めて再度採って、二百何十人かの民主党の議員が賛成していると。未だ可視化は諦めない、これをやろう、実現しようという議員の声が非常に多い。過半数を占めているんだと思うんですけれども。

 このTPPは、慎重に考えるべきだ、反対である、これをやってしまったら民主党の政権交代時の公約が台無しになってしまうと、こういう考えの議員、平たく言えば、『(TPPを)慎重に考える会』に賛同したり、会に入ってらっしゃる議員の数というのは、どの位いらっしゃるんですか?」

山田「今、実際に入っていただいている方は180名ですけど、入れない政務三役の方々、入るわけにはいきませんけど、それは70人は居るわけですから、私は、過半数以上の方は、今回、TPPを慎重に、我々と同じように考えていると思いますがね。それぞれ、ちょっと考え方は違うと思いますよ、同じ慎重に考える立場でもね」

岩上「しかし、これは非常に広範に影響の出る問題ですから、それぞれの力点とかポイントは違ってくるのかもしれませんけれども、この200人を超えるかもしれない沢山の議員の方々が居て、尚、今の菅政権が、私からすれば暴走に見える、このTPPに向って猛烈に突進しているのを、止めることはできないんでしょうか?」

山田「いや、私は止められると思ってます。今、党では情報の収集に留まるということになっているわけですから」

岩上「最近の岡田幹事長の党内部の運営に関して、非常に強権的な手腕が目立つような気がするんです。先日も、両議院議員総会、党大会を挟んで、随分、予算委員会を始めとする各委員会の委員の首のすげ替えをやった。同意がなくてもやってしまった。これはパージのようにも見えるんですね。自分達、党の執行部に従わないような議員はポストから外すと。これ、ちょっと乱暴に見えるんですけれども。(TPPを慎重に考えようと)こういう声があっても、そうした心ある議員の方々の声が、党に反映されなくなるじゃないかという懸念があるんですけど、どうでしょうか?」

山田「TPPの問題は、それこそ国の形が変わる問題ですから、議員の皆さんは慎重に考えている方がほとんどだと、私は思ってますがねぇ」

岩上「『(TPPを)慎重に考える会』というのは、勉強会としてスタートして、これを議連にするというふうに聞いてますが、これはいつ頃で、また、議連になることで、どういうふうに影響力とか会の骨格というのが変わってくるんでしょう?」

山田「近く、議連にして、もう少し地方の声、地方でフォーラムを開いて皆さんの声を聞くとか、いろんな活動をやろうかと。今日も役員会で、そういう話が出ましてね」

岩上「市民との直接対話によって、言うなれば、国民運動のような形で広げていくと。それだけ理解とか啓蒙に努めていく、そういうことなんですかね?」

山田「そうですね。結構、地方ではね、地方紙でもぼつぼつ、『これはおかしいんじゃないか?』という声も上がり始めてますから、地方から世論を盛り上げていこうかと。党内は割合に慎重な人が多いと、私は思ってますが、世論がTPP賛成なので。ネットの社会では、結構、TPP反対論が多いんですってね?」

岩上「そうですね。中野先生(*)のような方々の、TPPに孕む危険性について啓蒙するような言説が、急速にスピーディーに流れていっています。それによって、どんどん、『これは大変なことなんじゃないのか、ひょっとして?』ということが、気付かれ始めていると。

* 一例:「TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる」 中野剛志氏インタビュー THE JOURNAL

ネットの方が、情報を、記者クラブメディアのような形で操作されるということがあまりないので、いろんな言説・論説、いろんな考え方の人達が、いろんな意見を自由に言っている場ですけれども、結局のところ、どういう人達がどう言おうとも、共感を呼ぶと、その共感があっという間に広がっていきます。『TPPは、これは非常に危ないんではないか?』という気配が広まっているような感じがするんですよね」

山田「議員さんの間では、結構、これは農業の問題じゃないんだなという感じになってきたと思うんです。ただ、国民の中では、未だ農業と経済の問題だ、産業界の問題だと思われてますからねぇ」

岩上「マスコミの影響が圧倒的に大きいですよね」

山田「うん」

岩上「本当に、何でここまで、何の意図があるのか分かりませんけれども、国益に反するような方向へ世論を誘導するのかと思いますけれども」

山田「残念ですねぇ」

岩上「残念ですね(苦笑)。というか、残念じゃなくて、これはもう何とかがんばっていただきたいなと。非常に懸念も不安も大きい、重大なテーマだと思いますので」

山田「私も『(TPPを)慎重に考える会』の会長をさせていただいてますから、それこそ、これは慎重にやってもらわないと。もう一度、民主党政権は原点に戻って、マニフェストに忠実にがんばれるところまでがんばろうという姿勢を示していきたいと、そう思ってます」

岩上「分かりました。今日は長時間、お話をうかがわせていただき、本当にありがとうございました。例えば、この間の勉強会に出た時に、議員の先生が私に『これ、いいよ』って推薦して下さった本(*)で、こんなのも読んでたりするんですが、これから連続して、TPPの問題について啓蒙するような本もいろんな所から出るようですし、これからなんでしょうね、本当に議論が深まりを見せるのは」

* 「TPP反対の大義」、農山漁村文化協会(農文協)編、2010.

山田「そうですね、これからですね」

岩上「はい。また、いろんな形でお話をうかがいたいと思います。今日は遅くまでありがとうございました。ということで、山田先生にお話をうかがいました。ありがとうございました」

山田「どうもありがとうございました」

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です