植草氏は、黒田東彦(くろだ はるひこ)元日銀総裁が行なった大規模量的金融緩和について、次のように語った。
「当時、『異次元金融緩和』とか『黒田バズーカ』と言われましたが、それは金融市場にお金を流すということです。
インフレが起こるための条件は、世の中に出回るお金の量が増えることです。これをマネーストックと言います。
『物価は、マネーの量に支配されている』という関係を提唱したのは、ミルトン・フリードマンという学者ですが、その理論は、依然として有効です。
私は2013年の本で、『大規模金融緩和をやっても、うまくいかない』と書いた理由は、短期市場にお金を出しても、銀行がその資金で融資を伸ばしていかないと、世の中のマネーが増えないからです。
日銀が資金を出すことは、マネーが増える必要条件ではあっても、十分条件は満たしていないからです。
実際に、マネーは4%ぐらいまで伸び率を高めてはいますが、4%止まりで、市場にどんどん供給されるということは起きなかった。それで、インフレ率は2%に届かず、インフレは実現しませんでした。
ただ、短期市場にジャブジャブにお金を流し続けていたので、いざ、金融機関の融資が激増すると、いつでもマネーが増える環境は残されていました。
そして、2019年7月から2021年2月にかけて、コロナ対策の無担保融資で、一気に日本のマネーが激増します。ほぼ10%のマネーの伸び率です。
マネーが増えると、インフレが起きます。コロナマネーで、インフレが起きました。消費者物価上昇率が、4%まで上がりました。
2%目標だったのに、4%まで、激しいインフレが起きました」。
さらに植草氏は、「黒田日銀の失敗」を、次のように解説した。
「2020年から2025年までの消費者物価・総合指数の上昇率を見ると、2023年に、総合で3.2%、生鮮食品およびエネルギーを除く総合で4.0%というインフレを引き起こしています。
でも、2023年1月の政策決定会合で出した『展望レポート』で、『23年度のインフレ率は1%台』という見通しを出しました。日銀は、インフレの予測を誤りました。
2%のインフレ目標を掲げながら、4%のインフレを実現してしまった上に、2023年に日銀総裁を辞めるまで、インフレ誘導の旗を振り続けていたんです。
結果として、(2022年から2025年の)4年間で、総合物価は12.1%、生鮮食品に至っては31.2%も上がっています」。
その上で植草氏は、「黒田日銀は、インフレ誘導を意図してやった」と断じ、次のように続けた。
「インフレというのは、プラス・マイナスがあります。誰かにとってプラスであることは、誰かにとってマイナスです。
では、誰が喜んで誰が悲しむかというと、一般庶民には悲しみしかないんです。物価が上がっても賃金が上がらなければ、インフレ分だけ、実質的に目減りするからです。
これは、裏を返すと、企業にとっては、インフレはありがたいんです。インフレ分だけ、実質賃金コストを抑制できる。(中略)
インフレ誘導という政策の元々の根源は、労働コスト削減なんです。
インフレになる分だけ、預金も目減りします。得をするのは、借金をしている人です。債務者は、インフレ分、実質債務が減る。
日本一の借金王は、財務省なんです。財務省は、インフレになればなるほど、政府債務の実質残高が減る。
もうひとつあって、インフレになると、連動して税収が増えるんです。これを『ステルス増税』と言います。
つまり、インフレは、大企業にとって得であると同時に、政府にとっても悲願なんです。
黒田さんは、財務省から日銀に送り込まれた総裁です。ですから黒田さんは、財務省の利益のために、インフレ誘導をやってきた。そして、アメリカの外資のために、円安誘導をやってきた。
それと、円安でメリットを受けたのが、輸出企業です。今、財務省なども、トヨタなどへの天下りが増えています。
こんなこともあって、財務省が円安誘導とインフレ誘導をやってきたのではないでしょうか」。
■【3】エッセンス版


































