【IWJ号外】パレスチナのマンスール大使が国連安保理で涙の演説!「もう十分です。流血は十分です、戦争は十分です、苦しみは十分です、占領は十分です」「平和を築くこと、それが唯一の別の道です」 2025.8.19

記事公開日:2025.8.19 テキスト
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特集 中東

 イスラエルのネタニヤフ政権は今月8日、パレスチナ自治区ガザの北部に位置するガザ市の完全制圧計画を決定しました。

 約90万人の住民を抱えるガザ地区最大の都市である、ガザ市を完全に占領すれば、イスラエルはガザ地区の約85%を掌握することになります。

 パレスチナ自治政府は、イスラエルの計画を大量虐殺、組織的殺害、飢餓、包囲に相当する「本格的な犯罪」であり、国際法と国連決議の「明白な違反」であると非難しました。

 そして、イスラエルの計画は「前例のない人道的大惨事」を引き起こし、パレスチナの国家機関を弱体化させ、地域の平和を脅かすと警鐘を鳴らしました。

 イスラエルによるガザ市完全制圧計画は、国際社会からも批判を浴びています。

 英国のキア・スターマー首相は「間違っている」、「さらなる流血を招くだけだ」とメッセージを出しました。

 ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、イスラエルの計画が戦争終結と人質返還という目標をいかに達成するのか「ますます不透明になっている」と指摘、ガザで使用される可能性のあるイスラエルへの軍事装備の輸出停止を発表しました。

 欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は「イスラエル政府のガザでの軍事作戦をさらに延長する決定は、再検討されるべき」だと、イスラエルに再考をうながしました。

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、イスラエルの計画について「深く憂慮している」と述べ、「何百万人ものパレスチナ人にとってすでに悲惨な結果をさらに深め」、「残りの人質を含むさらに多くの人命を危険にさらす可能性のある危険なエスカレーション」であると警告しました。

 イスラエルのガザ市制圧計画決定を受けて、国連安全保障理事会は10日朝、ニューヨークで、「パレスチナ問題を含む中東情勢」に関する緊急会合を開催しました。

 緊急会合の開催は、欧州安保理加盟国(デンマーク、フランス、ギリシャ、スロベニア、英国)が要請し、15の理事国のうち、米国以外のすべての国の支持で開催が決まりました。

 マイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使だけは、イスラエルの計画は、ハマス打倒に必要だと、イスラエルを擁護しています。

 国連のミロスラフ・イェンチャ事務次長は、全面的停戦の実現とガザ地区の人道危機の緩和を訴え、「2国家解決案」の実施と、イスラエルによるパレスチナ領土の不法占拠の終結を強く求めました。

 大多数の安保理理事国代表がイスラエルの計画を批判し、国際法および安保理関連決議を順守して、計画を撤回することを求めました。

 これに対し、イスラエルのミラー国連次席大使は、イスラエルはパレスチナ国家との2国家共存を断固として認めていないにもかかわらず、「イスラエルはガザを永久に占領する計画も意図もない。これは残忍なテロ政権からの解放のためだ」などと主張し、目的はハマスからガザを解放することだと計画を正当化しました。

 パレスチナのマンスール国連大使は、国連安保理の会合で、ガザ市の制圧計画を決定したイスラエルを止めるために、今すぐ行動するよう、訴えました。

 マンスール大使の演説の論点は以下のようなものでした。

・ガザでの即時かつ永続的な停戦、飢餓の終結。

・イスラエルは「文明対野蛮」を口実に、パレスチナ人に対する自らの残虐行為を正当化し、自国の犯罪を隠蔽している。

・国際法と国連決議にもとづく平和、独立した主権をもつパレスチナ国家樹立、二国家解決の承認。

・国連安全保障理事会は国連憲章のもと、その任務として即時停戦を決議し、実行すべき。

 マンスール大使は、イスラエル国民へのメッセージで、自国政府のプロパガンダに惑わされず、残虐行為の現実を直視するように、訴えました。

 そして、パレスチナ人・イスラエル人双方に「平和を選び」、占領・流血・苦しみを終わらせ、双方の子供達の未来を守るべきだと呼びかけました。

 マンスール大使は、独立した主権のあるパレスチナ国家の樹立と二国家解決こそ、戦争に代わる平和への道筋だと述べ、サウジアラビアとフランスが主導の国際会議を「平和への不可逆的道筋」だと評価しました。

 今年7月28日から3日間にわたってニューヨークの国連本部で、サウジアラビアとフランスが主導する「パレスチナ問題の平和的解決と二国家解決の実施のためのハイレベル国際会議」が開催され、「ニューヨーク宣言」が発表されました。

 フランスのジャン=ノエル・バロ欧州・外務大臣は、「二国家解決がかつてないほど脅かされている今、フランスはパレスチナ国家を全面的に承認する用意がある」と表明しました。

 マンスール大使の演説は非常に説得力があるものとして、YouTubeなどで広く共有されています。

 IWJは、マンスール大使の演説全文を仮訳・粗訳しました。どうぞ、動画をゆっくりと見ている時間のない方も、ご一読ください。


パレスチナ マンスール国連大使の演説
国連安全保障理事会「パレスチナ問題を含む中東情勢」緊急会合、2025年8月10日

 私達は、すべての人々に対する、特に捕らわれている人々に対する、あらゆる非人道的で屈辱的な扱いを拒否します。

 最初の日から、ガザで停戦を求めるパレスチナの人々と(イスラエルの)人質達の家族の声が、世界中に響き渡ってきました。双方とも、この戦争が愛する人々にさらなる死と苦しみをもたらすことを痛いほど理解しているのです。

 私は、即時かつ継続的な停戦の必要性を強調してきた安全保障理事会の同僚議員の皆さんに、感謝します。停戦は人命を救います。人質と、囚われのパレスチナ人を解放します。人命を救い、人道支援のために扉と国境検問所を開きます。

 私達の民の飢餓を止めてください。それによって、ガザの再建が可能になります。平和の可能性が生まれます。私達全員に希望を与えます。

 こうした基本原則を強調してくださった皆様に、深く感謝しています。そして今、それを実行に移す力は、皆さんの手にあります。皆さんは国連憲章により、国際の平和と安全を維持する任務を託されているのですから。決議の実施、そして何より、即時停戦の実現を成功させてください。

 私達の目標は、ほぼ670日を経た現在も変わっていません。

 私達の民衆に対する、イスラエルの虐殺と飢餓の戦争を終わらせること。

 人質と囚人を解放すること。

 UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)を含む国連人道支援システムによる、ガザへの即時かつ妨げのない人道支援を可能にすること。

 イスラエル軍のガザからの完全撤退を確実にし、パレスチナ政府が地域と国際社会の支援を受けて、単独で統治と安全保障の責任を担えるようにすること。

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