日本学術会議を「法人化」する法案が、2025年6月11日の参議院本会議で、可決、成立した。
この法案をめぐり、参院内閣委員会で審議中だった6月9日には、上野千鶴子氏(東京大学名誉教授)ら、法案に反対する学者・文化人約40名が、国会真向いの参議院議員会館前で座り込みを行った。市民など、あわせて合計350人が集まった。
上野氏は、「取り返しのつかないことが起きようとしている。いったん壊れたものは元に戻らない」「(法案の立憲民主党による)修正案では十分ではない、廃案にするしかない」「アメリカではトランプという独裁者が今、学問を痛めつけようとしている。対岸の火事ではない。同じことが今日本でも起きている」「権力者は、よほど異論が嫌いなのか。異論を言い合い、発展する学者の世界は、お互いに実は仲が良くないが、その学者がこれだけ集まり、声を上げて反対している。当事者のいないところで、当事者のほとんどが反対することを決めていいのか? これが民主主義の国か?」「私達はまだこの国を諦めることができない」などと訴えた。
同じく座り込みに参加した前川喜平氏(元文部科学事務次官)は、「元役人の自分から見ても、この法案は学術会議を『亡き者』にするもので、独立性は間違いなく奪われる」「今日ここに来たのは、10年前の9月18日と同じ気持ちだ。当時、現役の文部官僚だったが、安保法制は違憲立法だと思ったので、国会正門前のデモに参加した」「この法案は通ってしまうかもしれないが、戦いはやめるわけにはいかない」と語った。
崎山比早子氏(福島原発事故の元国会事故調委員)は、「福島では小児甲状腺癌になった人が400人以上になっている。しかし事故の影響とは考えられないとの発表が、福島県立医大から出て、政府見解になり、国連も採用した」「この分析には間違いがあり、批判も多い。通った理由は、政府の核エネルギー利用の方針に合う結論を出す専門家が評価委員だから」「今でさえそうなのに、学術会議が、坂井大臣の言うように、政府の思うような学者、研究者が大部分を占めるようになったら、恐ろしいことになる」と訴えた。
崎山氏が言及した坂井学内閣府特命担当相は、5月9日の衆院内閣委員会で、学術会議会員に関して、「特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は、今度の法案で解任できる」と発言し、発言撤回と担当相辞任を求める批判が起こった。
- 日本学術会議法案を問う 坂井学担当相の発言に高まる批判…学者らの訴えは(神奈川新聞、2025年6月1日)
座り込みを行った学者ら全員が次々にマイクを握り、法案反対の思いを強く訴えた。ぜひ、全編動画を御覧いただきたい。
なお、同日、連動する集会が、京都、札幌、仙台、名古屋、新潟で開催された。