2025年1月21日、日本学術会議の法人化に反対する研究者や弁護士が、「学術会議法人化の法制化のための協議を中止するよう求める要請書」を、石破茂総理、坂井学内閣府特命担当大臣、光石衛日本学術会議会長あてに送付し、東京都内で記者会見を行った。
会見で、呼びかけ人の野田隆三郎・岡山大学名誉教授(数学)は、「学問は政府の間違った方向を抑止するのが使命で、国民も期待」するにもかかわらず、学術会議が政府による法人化を容認するのは、「国民に対する背信行為だ」と、厳しく批判した。
要請書の呼びかけ人は、野田名誉教授と、清水雅彦・日本体育大学教授(憲法学)、澤藤統一郎弁護士。会見には、賛同者の隠岐さや香・東京大学教授(科学史)が加わり、4名が登壇した。要請書には、学者や弁護士ら140人が賛同している。
日本学術会議の問題は、2020年に菅義偉総理による学術会議会員候補6人の任命拒否が発覚したことに始まる。拒否理由は示されていないが、6人が安保法制等の政策に異論を示してきたからではないか、とされた。
この問題は激しい批判を浴びたが、政府は任命拒否を撤回せず、理由も示していない。
要請書は、「このような暴挙がまかり通るのであれば、日本は民主主義国家とは到底言えない」と糾弾している。
政府は任命拒否に対する批判をかわすために、任命拒否を学術会議改革問題にすり替え、学術会議の法人化に向けた検討を進めた。そして2024年12月20日、「日本学術会議のあり方に関する有識者懇談会最終報告書」を公表。学術会議に、「首相任命の監事」「大臣任命の評価委員会」「外部者らで構成される『(会員)選考助言委員会』の設置」など、5項目の法定化を求めた。
これに対して、要請書は、「法人化は学術会議を政府の従属化におくもの」と批判している。
さらに要請書は、上記5項目に強く反対していた学術会議自身が、2024年12月22日の臨時総会で、一転して容認に転じたことを、「権力からの独立を定めた学術会議法第3条を学術会議が自らの手で放棄するもの」と断じた。
質疑応答で「カネを出しているから、口を出すのは当然、という批判にどう答えるか?」との質問に、各登壇者が、学問の独立性等の各観点から回答した。
この中で澤藤弁護士は、「国を相手の裁判では、国からカネをもらっている裁判所は、国を勝たせるのか? 国に厳しい判決をするところに、裁判所の存在意義がある。学術会議も同じ」だと答えた。
会見について、詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。
IWJでは、学術会議の問題を、任命拒否された研究者への岩上安身によるインタビューを含めて、繰り返し取り上げている。ぜひ御覧いただきたい。