8月25日午後2時より、東京都国分寺市の都立多摩図書館にて、「PFAS汚染を考え安心で住みやすい国分寺を創る市民の会(略称:PFAS国分寺市民の会)」の主催により、「PFAS国分寺市民の会結成1周年記念集会『初めて自治体で血液検査を実施する吉備中央町に学ぶ』」が開催された。
2023年7月2日にPFAS国分寺市民の会が発足し、国分寺市に対して血液検査の実施を求める陳情署名の取り組みを始めて、1年が経過した。
同会事務局長の水谷淳氏によると、国分寺市民の血液検査実施に向け、高額な検査料の低減など、課題は多かったが、中でも、一番大きな壁は「国の姿勢」だったとのこと。
2023年12月の国分寺市議会において「血液検査については、血中濃度と健康影響の関係は明らかでない」という環境部長の答弁があったが、この答弁は環境省の指導に従ったものであった。
「血中濃度と健康影響の関係が明らかではないから、血液検査はする必要がない」という論法だが、その裏には「血液検査によって、PFASの健康への影響が明らかになっては困る」という国の本音が見え、こうした姿勢が、各自治体にも影響を及ぼしているのは明らかだ。
PFASが自国の市民の健康に与える影響を明らかにしない、あるいは危険な基準をそのままにしているという日本の姿というのは、国際的に見ても大変異常である。
水谷氏によると、現在、ヨーロッパでは、「まだ毒性のわかってない1万種類ぐらいのPFASを全部まとめて規制をかける」という法律が準備されているとのことだが、日本では、PFAS関連企業、経済団体、そして、経済産業省が、PFASの規制に反対している。
その反対の理由の一つは、「半導体の問題」であると言われている。
九州経済調査協会は、2023年12月、九州・沖縄・山口への半導体関連の設備投資による経済波及効果が、2021年からの10年間で、合計約20兆円にのぼるとの推計を発表した。
- 九州圏の半導体設備投資、10年で経済効果20兆円 九経調(日本経済新聞、2023年12月25日)
経済界や政府にとっては、半導体製造に使用されるPFASを規制するような研究・報告は、好ましくないのである。
この日の集会には、早ければこの10月に、全国で初めて公費で自治体での血液検査を行う予定の、岡山県吉備中央町から、「円城浄水場PFAS問題有志の会」代表の小倉博司氏を招かれた。
小倉氏は、その取り組みについて、次のように経過を報告した。
「今、吉備中央町では、血液検査の準備が進んでいるのですけれども、そのことをめぐって、我々、血液検査を主張している側と、農業を進める上で、『風評被害対策ということで非常に迷惑をしている』という人達との間で、いろいろな意見が錯綜しております。(中略)
我々の町内には、『オフトーク』という町内放送があるんですね。もう、ほとんど90パーセントぐらいの家庭が、町内放送を受信しています。火事の時とか、あるいはいろいろな役場の宣伝だとか、行政の行事だとか、そういう町由来のいろんなことを、そのオフトークで知らせるんですけれども…。
そのオフトークでですね、昨年10月16日に、突然、『水道の水を飲まないでください』という放送が、しかも午後5時に流れました。
10月16日の午後5時というと、私どもはまだ畑の中です。圧倒的多数の方が、まだいろんな野菜づくりだとか、あるいはお米のこととかで、農作業に従事している方が、家に帰っている時間ではありません。
ところが、『水を飲むな』という代わりに、『それぞれ公民館・公会堂に給水車を用意したので、それを飲み水に代えてほしい』というふうな知らせがありました。
住民はびっくりしますよね。『水を飲むなって、何が入ってるんだ?』って。まさか『毒が入ったから飲むな』っていう話ではないんですけれども、『水を飲むな』という知らせから、約1ヶ月、11月22日までは、給水車の水を毎日汲んで帰るという、被災地の生活を余儀なくされたんですね。
詳しく役場に問い合わせをすると、『有機フッ素化合物が混入している』と。それで、『保健所から給水の制限を指導されているので、飲まないでいただきたい』ということでした。
私も昔、労働組合のことをやっていたこともありますので、それはどういうことかというふうなことで、5時に流れた後、10分ほどして、役場に電話をしました。
ただ、役場はその時は、もう『とにかく住民説明会をするので、それまでとりあえず役場の指示に従ってくれ』ということだったんですね。
住民説明会に行きました。先ほど言ったように、1500世帯の小さなコミュニティーの中で、350人が集まりました。どういうことか、ということで集まったんです。
町長、副町長以下、役場の職員がずらっと並んで状況を説明しました。ただ、状況は、今日先ほど、経過報告の中にもありましたが、環境省のQ&Aをそのまま言っているように、『知見がない。直ちに健康に影響が出るものではない』というふうなことを繰り返すだけで、ほとんど答えにならなかったんですね。(中略)
その後、すぐに、実は、――本当に、このごろSNSって、すごいですね。私は、もうまったくできませんけれども――その説明会の後、すぐ近所の若い、子育て世代の30代・40代のお母さんの方々が、『どうも町長にだまされている。これはもう、とにかくみんなの意見をまとめて、町に突きつけていかなきゃいかん』というふうなことで、3日後に、もう署名が始まっちゃうんですね。
もう、あれよあれよという間に、署名が約10日ぐらいで、1038筆集まりました。
その間、我々は町への不満や不信を言っているという状況ではなくて、できたら、緩やかなネットワークを形成したいなというふうなことを、口々に皆さん、おっしゃっていて、そういう中でできたのが、――今、私が一応歳のせいで、71なのでね、歳の順番で、代表を一番上の人がやれということになってやってますけれども――『円城浄水場PFAS問題有志の会』というのが、10日後にでき上がります。
運動の進め方として、まず、署名はもう『有志の会』ができる前から進めていまして、11月5日には1038筆集まりました。これは、1000筆を集めた段階で、とりあえず町には早く届けようということで、11月10日には届けています。
内容については2点。
一つは、『公費による血液検査の実施』。もう一つが、3年間だまされて飲まされていた『水道料金を返せ』という、ものすごく単純な要求なんです。(中略)
町はですね。付け加えて言うと、10月16日に問題が発覚して、『飲むな』という話をした時に、マスコミにですね、『実は(水道水のPFAS汚染について)3年間黙っていました』ということを言うんですね。
混乱しているんですよ。それは本当に。
そして、『町長が知ったのはいつか?』というふうに言うと、『いつだったか、13日だったか14日だったか』とか言って、そんなぐらいでもう、本当に行政が混乱してましたね。
そして、おまけに3年間、2020年、21年、22年と、800、1200、1400ナノグラムという値のPFASが水に含まれている、それだけの数字が出ているのに、一切黙っていた。
おまけに、800の時に、実は800を1と書きかえて、備前保健所に報告しているという、改竄の報告もなされたということで、これはもう本当にひどい行政というふうに言えると思うんですね」。
小倉氏からの経過報告に続き、国分寺本町クリニック院長の杉井吉彦氏が、「血液検査の実施」について説明した。
その後、質疑応答をはさんで、「小平PFAS汚染問題を考える会」、「PFAS汚染を明らかにする立川市民の会」、「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」の代表者による、意見交流が行われた。
集会の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。