【IWJ号外】「ナワリヌイの正体」(その2)元国連主任査察官スコット・リッターによるナワリヌイ論「裏切り者の悲劇的な死」~2008年ロシア大統領選で完全敗北! 経歴を偽りイェール大学へ! 2024.3.1

記事公開日:2024.3.1 テキスト
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(文・IWJ編集部)

 IWJ代表の岩上安身です。

 元国連大量破壊兵器廃棄特別委員会の主任査察官であったスコット・リッター氏が、2024年2月16日にロシアで獄中死した、ロシアの反体制政治家アレクセイ・ナワリヌイ氏についての論考を、21日、自身の『サブスタック』で公開しました。

 21日公開された記事は、「裏切り者の悲劇的な死――パート1:起源」となっています。英文で単語数5000字を超える長大な論考で、注もなく、一気に読み通すのは難しい論考ですが、ナワリヌイ氏の政治活動の背景を深く掘り下げる内容となっています。

 IWJは29日にその記事の前半部分を翻訳し、「号外」として出しました。

 本日3月1日、ナワリヌイ氏の葬儀がモスクワで行われる予定です。

 28日付『ロイター』によると、ナワリヌイ氏の葬儀は、マリイノ地区の教会でモスクワ時間午後2時(日本時間午後8時)に告別式が行われ、ナワリヌイ氏はボリソフスコエ墓地に埋葬されるというこうとです。

 ナワリヌイ氏の広報チームは、28日、当局がナワリヌイ氏の葬儀を妨げていると訴え、「別れを告げたい人は誰でも別れを告げることができる」が、何らかの問題が起きる可能性はある、と『X』に投稿しました。

 「当局は、私を夜に墓地に呼び、親戚に圧力をかけ続けている。イワン・ジダノフ氏はインタビューで、当局がアレクセイ・ナワリヌイ氏の埋葬をどのように妨げているかについて語った。

 『(モスクワ)市長室は、(アレクセイ)ヴェネディクトフの手を通じて、再び脅迫を行った。彼らは、別れの場所をボリソフスキーからホバンスコエ墓地に移すよう強制しようとしている。

 そして、当局は別の手で「家族葬は静かに執り行うこと」と言っている。(中略)

 マリイノの教会は、まだキャンセルされていないので、私たちは、そこに人々を招待し、公開で葬儀を執り行う。(アレクセイ・ナワリヌイに)別れを告げたい人は皆、別れを告げ流ことができるだろう』。

 もちろん、理論的には、妨害が起こる可能性もある。FSB職員が、教会に圧力をかける可能性がある。

 その場合は、墓地か別の教会でお別れをする。いずれにせよ、どこかでお別れをする。

 人々には、間違いなく、アレクセイに別れを告げる権利がある――そしていずれにせよ、それはどこかで起こるだろう」。

 ナワリヌイ氏の葬儀が、抗議集会の様相を呈し、混乱を引き起こすのかどうかは、当日にならないとわかりません。

 一方で、「ナワリヌイ氏とは何者か」、という問いは、西側各国の政府も各国のマスメディアも、放置しっぱなしの状態です。

 今、日本でも欧米でも、この問いに正確に答えられる人は非常に少ないと思われます。スコット・リッター氏は、その問いに答えられる、きわめて例外的な人物です。

 ナワリヌイ氏は、若い頃から名をはせてきた知的エリートではありません。彼は無名の人物でした。

 何よりもまず、彼は2007年、極右の超国家主義運動を引き寄せ統括する組織として、民主的国家主義組織「全国ロシア解放運動」を共同設立したとき、イスラム教徒を害虫に例えて殺害を示唆するような、レイシズムむきだしのキャンペーン動画を撮影しています。

 そうしたナワリヌイ氏が、どのような形で、誰からどんな支援を受けて、ロシアで反体制運動のリーダー格とみられるまでに成り上がっていったのか、という彼の軌跡を理解することは、ソ連崩壊後のロシアに、外国の勢力がどのように侵入してきたか、反体制運動がどのようにして編成されていったのか、という歴史・背景を理解することと不可分です。

 ナワリヌイ氏の死の背景を考えることは、ウクライナ紛争の本質にもつながっていきます。IWJでは、「ナワリヌイの正体」に迫る、スコット・リッター氏による「裏切り者の悲劇的な死」の全文の仮訳・粗訳を進めていきます。

 「裏切り者の悲劇的な死――パート1:起源」の後半で、スコット・リッター氏は、2008年のロシア大統領選挙と2007年の議会選挙で、反体制派が惨敗した後、資金不足に悩みながら、ナワリヌイ氏が「株主活動家」や、詐欺まがいのコンサルティングに手を染めた挙句、経歴を偽って、イェール大学に向かうまでを描いています。

 21日に発表された「裏切り者の悲劇的な死――パート1:起源」の後半を「ナワリヌイの正体」(その2)としてお届けします。どうぞ、会員登録の上、お読みください。


裏切り者の悲劇的な死――パート1:起源(仮訳その2)
スコット・リッター
2024年2月21日
https://www.scottritterextra.com/p/the-tragic-death-of-a-traitor

 アルバッツが、ロシアにおける政治的反対勢力の組織化に進めるにつれて、ロシアの政治的反対勢力を構築してきた西側の支援の基盤、すなわちNED(全米民主主義基金)のような非政府組織(NGO)による資金提供は、外国情報機関による違法なチャネリング(情報操作)の手段に過ぎないことが露呈した。

 2005年から2006年にかけての冬、ロシア連邦保安局(FSB)は、英国大使館から流出されていた高度な諜報リングを破壊した。そこでは、いわゆる「スパイ・ロック」(岩に見せかけた高度なデジタル通信プラットフォーム)も使われていた(※IWJ注1)。

 ロシアの諜報員がその岩の近くを通りかかると、ブラックベリーのような携帯型通信機器を使って、岩の中にあるサーバーに電子メッセージをダウンロードする。次に、英国の諜報員が岩に近づき、同じような装置を使って自分たちの装置にメッセージをアップロードする。

 この計画は、メッセージを取り出せなかったイギリスのスパイが、岩に近づき、システムが機能するかどうか確かめるために、何度か蹴りを入れたときに発覚した。

 この振る舞いは、彼を尾行していたロシア連邦保安庁(FSB)職員の注意を引き、岩は押収され、精査されることになった。機密性の高い軍事産業施設に雇用されていたとされる、ロシア国民1名が逮捕された。

 しかし、「スパイ・ロック」から取り出されたデータのうち、最も驚くべき側面は、英国の諜報員の少なくとも一人が、この装置を使用して、さまざまなNGOが英国政府から提供されている秘密資金にアクセスする方法についての情報を送信していた、という事実である。

 当該NGOの関係者は、英国の支配者が使っていたものと同様の装置を支給されており、これらの指示を「岩」からダウンロードしていた。

 捕獲されたサーバーから収集された情報にもとづいて、FSBは、これらの違法取引に関与している特定のNGOについて、ロシア指導部に報告することができた。

 拷問禁止委員会、民主主義開発センター、ユーラシア財団、モスクワ・ヘルシンキ・グループなどを含む、全部で12のロシアのNGO団体(※IWJ注2)が、英国外務省のグローバル・チャンス・ファウンデーション(※IWJ注3)が管理していた資金から、不正資金を受け取っていたことが特定された。

 「スパイ・ロック」スキャンダルの余波で、ロシア政府は、NGOの登録と運営に厳しい条件を課すNGO新法の制定に動き、政治に関わるNGOが、海外からの資金を受け取ることを事実上禁止した。

 2006年4月に施行されたこの新法のもとで、NGOは、いかなる不正行為も否定したが、2007年の下院選挙と2008年の大統領選挙を前にして、この新法の影響力が、政府に対する反対意見を抑圧することになるであろうことは認めていた。

 英国の資金に依存していたNGOに対する厳格な取り締まりにもかかわらず、アルバッツが運営する「政治パーラー」は、ロシアで実行可能な反対勢力の結集する試みを積極的に進めた。

 アルバッツと、民族ナショナリズムの政治的可能性に関する彼女の理論に啓発されたナワリヌイは、2007年、極右の超国家主義運動を引き寄せ統括する組織として、民主的国家主義組織「全国ロシア解放運動」(※IWJ注4)を共同設立した。

 これらのグループのイデオロギーは、おそらくナワリヌイが、彼らを自分の大義に引き込もうとした取り組みによって最もよく説明されるだろう。ナワリヌイはこの時期、新党をより多くのロシア国民に紹介する手段として、2本のビデオを制作した。

 最初のビデオ(2007年)では、ナワリヌイがロシアのイスラム教徒を害虫に例え、最後にナワリヌイが拳銃でイスラム教徒を撃ち、イスラム教徒に対するピストルは、ハエやゴキブリに対するハエたたきやスリッパのようなものだと宣言している(※IWJ注5)。

 2番目のビデオでは、ナワリヌイは民族間の対立を虫歯に例え、唯一の解決策は抜歯だとほのめかしている。

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