放射能汚染土再利用で、セシウム以外の核種の測定も求める住民側に対し、環境省は「科学的知見」を盾に合理的な回答を拒否!~2.24新宿御苑における放射能汚染土再生利用の「実証事業」に関する環境省申し入れ行動 2023.2.24

記事公開日:2023.3.2取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2023年2月24日午前10時より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会(「新宿」)」、「所沢への福島原発汚染土持ち込みを考える市民の会(「所沢」)」、「埼玉西部・土と水と空気を守る会(「埼玉西部」)」の共催により、「新宿御苑における放射能汚染土再生利用の『実証事業』に関する環境省申し入れ行動」が行われた。

 このたびの申し入れ行動に先立ち、1月24日、東京都新宿区の四谷地域センターにおいて、「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」の発足集会が行われ、国際環境NGO、FoE Japan事務局長の満田夏花氏らによる講演が行われた。IWJはその模様も録画取材している。詳しくは以下の動画を御覧いただきたい。

 申し入れ行動は、文筆家の平井玄氏の司会で進められた。まず、西村明宏環境大臣あての申し入れ書2通(新宿1通、所沢と埼玉西部で1通)が環境省の藤井進太郎・担当官に手交され、その後、質疑応答が行われた。

 環境省の中間貯蔵施設情報サイトを見ると、2011年の福島第一原発事故により、環境中に放出された放射性物質を取り除く除染によって発生した汚染土壌の取り扱いについて、以下のような説明がある。

 「これまで、福島県内において除去土壌の再生利用の安全性等を確認するための実証事業を実施しています。この取組を更に拡大するため、福島県外においても実証事業を行う予定です。

 具体的には、芝生広場や花壇、駐車場で再生利用を行い、運搬時、施工時及び供用時の安全性等の確認を行うとともに、理解醸成のツールとしても活用する予定です」

 そして、「近隣にお住まいの方々を対象とした実証事業に関する説明会」を、新宿御苑については、令和4年(2022年)12月21日に新宿御苑管理事務所(東京都新宿区)にて、埼玉・所沢については、令和4年12月16日に環境調査研修所(埼玉県所沢市)にて実施する旨が記されている。

 上記の説明会は、実施されはしたが、新宿および所沢ともに、説明会の対象は50人に限定されたものであった。

 環境省は、事業の実施は「住民の理解が前提であり、丁寧な説明をする」としているが、この説明会一度きりでは十分とは言えず、到底住民の理解など得られるわけがないだろう。申し入れ書では、誰でも参加できる公開説明会の開催と、その参加者すべての質問への回答が求められた。

 また、上述の説明会の実施に先立ち、環境省は、東京都と直接連絡を取っており、また、所沢市とは、6月から11月の間に5回の協議を行ったとしている。申し入れ書では、その内容の公表が求められた。

 さらに新宿・所沢ともに、実証事業実施予定地の近隣には、学校や病院、公園等がある市民の生活圏であり、雨や風等による汚染土の流出が懸念されている。特に、子どもたちへの影響が強く心配されている。

 また、新宿は、近年、特に海外からの旅行者が足を運ぶ国際的な観光拠点となっており、問題は事業実施予定地の近隣に限られたものではなく、国際的なレベルで考えられなければならないと思われる。

 申し入れ書では、汚染土に含まれる放射性物質の濃度について、セシウム137以外のすべての核種の量を測定し、その情報を開示することも求められた。

 この問題については以下のように、主催・参加者から環境省側への、厳しい追及があった。

平井氏「セシウム137以外の、もう一つ核種があるわけですけども。このことについては、文科省の見解に沿って、それについて発表しない、と。調べているのかどうかさえわからないんですけども。そこら辺はどうですか? もっと合理的な科学的な説明をされるべきだと思いますけれども」

藤井担当官「文部科学省さんにおきまして、2012年に福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の分布状況等について、調査研究が行われました。そこで科学的な知見が得られています。

 その結果が公表されておりまして、ストロンチウムやプルトニウムを含めた主要な放射性物質につきましては、土壌への沈着量を調査した上で、その調査研究で調査が行われておるわけでございますが、その結果をもとに今後の被曝線量評価や除染対策においては、セシウム134、セシウム137の沈着量に着目していくことが適切と評価されてございます。

 環境省といたしましては、この科学的な知見にもとづいて、除去土壌に含まれるセシウム134と137の放射能濃度を測定していくこととしております」

FoE Japan満田氏「おっしゃった文部科学省の調査結果は、私も穴があくほど見ているんですが、例えば、ストロンチウム90については、1F(福島第一原発)の周りで、最高値として5700ベクレル/平方メートルの測定値であるんですね。

 で、1Fの周りに結構高くて、数千ベクレル/平方メートルの箇所がたくさんあるんです。しかも、文部科学省のこの土壌の調査というのは非常に粗いんです。5キロメートルメッシュ、つまり、5キロ四方に1か所しかポイントをとっていないんですよ。

 もう十年以上経った今、いわき市のたらちね(認定NPO法人 いわき放射能市民測定室たらちね)さんがやはり調査されているんですよ。やっぱり、ストロンチウム結構出ているんです。

 ちなみに関東でも文部科学省は測っていて、関東では高いところでも数十ベクレル/平方メートルなんです。

 文部科学省のこの調査というのは、その時点、例えば、空間線量率だけで避難地域とか、あるいは除染の地域を決めていいのか否かということに関して、恐らくセシウムとストロンチウム90、高いところは大体一致しているので、セシウムが出す放射線を測って、空間線量率で除染の場所を指定する。恐らく、そういう意図で書かれているんじゃないかと私は思いました。先はわかりませんが。

 で、今論じられている話は、土壌自体を移す話じゃないですか。それでなぜ、ストロンチウム90も実際に測定…あるんですよ、含まれているんです。なぜ測らないんでしょうか? それが本当に理解できませんね。

 ストロンチウム90だけではなくて、恐らく他の放射性物質も含まれています。プルトニウムだって含まれていると思います。それ本当に全部測ったほうがいいと思います。

 いや、私、そもそも反対ですが、環境省さんが実証事業と言いながら、これらの放射性物質を測らないと強硬に言っている理由がまったくわかりません」

 これに対する環境省・藤井担当官の答弁は、平井氏への答弁をそのまま繰り返すだけのものであり、答弁と呼ぶにはあまりにも不誠実なものであった。

 申し入れ書では、新宿も所沢も、実証事業の「撤回」、「中止」を要求している。また、質疑応答の中で、五野井郁夫・高千穂大学教授により、「除染土壌を再利用」には法的根拠がないという可能性も指摘された。

 平井氏は、2023年2月20日に、以下のように連投ツイートしている。

 「都市開発が錯乱した究極の姿が御苑への放射能汚染土持ち込みだ。駅や周辺の各区も含めて確実に人が逃げるだろう」

 「だが第一の被曝者は野宿する人たちや除染する労働者だ。地域住民だけじゃない。そういう運動をつくるのがテーマ」

 平井氏の言う通り、この汚染土再利用「実証事業」の問題は、その近隣住民や反対運動に携わる一部の識者だけの問題ではなく、社会全体、日本に暮らす私たちすべての国民、そして、日本を訪れる世界中の人々の問題であると強く思う。

 今後の事態の動静に注視していく必要がある。

 詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2023年2月24日(金)10:00~11:15
  • 場所 参議院議員会館 102会議室(東京都千代田区)
  • 詳細 Twitter告知
  • 共催 新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会、所沢への福島原発汚染土持ち込みを考える市民の会、
  •    埼玉西部・土と水と空気を守る会

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