2015年の世界基督教統一神霊協会(統一教会)から世界平和統一家庭連合への名称変更を文化庁が認証した際に、文科大臣だった下村博文氏が関わったとの疑惑が深まっている。
2022年7月21日、『週刊文春』が下村氏の関与を報じたが、下村氏は「全く関わっていない」と全否定した。
ところが、文化庁が2015年当時、ジャーナリストで前参議院議員の有田芳生氏の取材に「大臣に事前説明しました」と回答していたことを、有田氏が文化庁の回答文書を示して明らかにしたのである。さらに、文化庁は下村文科相に、申請書受理前と認証決定前の計2回報告していたことが、文化庁担当者の証言や、末松信介文科大臣の会見で明らかにされた。
これに対して、下村氏は「責任を感じる」と言いながら、名称変更の指示自体はあくまで否定している。しかし、前川喜平元文科事務次官は、自らの経験を踏まえて、「下村大臣の意志が働いたのは100%間違いない」と証言した。
こうした統一教会と政治家のつながりについては、鳩山友紀夫(由紀夫)元総理のように、統一教会イベントへの出席や祝電を率直に認めた上で反省を表明する例もある。
しかし、日本維新の会の足立康史衆議院議員は関りを認めながら、「何が問題なのか承知していない」と、「おトボケ」の上で「開き直り」のような発言を行っている。政治家の態度次第で、より強く批判されるべき者と、そうでない者とに分かれることは避けられない。
一方、有田芳生氏が、「政治の力」のために統一教会を摘発できなかったと警察幹部が語ったという「爆弾発言」を、7月18日、『羽鳥慎一モーニングショー』で行った。この発言に関して、IWJ記者が「事実関係の調査・解明」をしないのか、古川禎久法務大臣に質問した。しかし大臣は「法と証拠にもとづき適切に対処している」と答えるのみだった。
詳しくは、記事本文を御覧いただきたい!
下村博文氏が、統一教会の名称変更には「全く関わっていない」と全否定!
統一教会が2015年に文化庁によって「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に名称変更を許可された際、文部科学大臣だった自民党の下村博文前政調会長が、2022年7月21日、『週刊文春』が報じた統一教会との関与を否定した。
7月21日付け時事通信は「下村氏は『(15年より)前から名称変更については相談があったが、(教会が)正式に申請を出したのは私が大臣の時が初めてだ』と強調。認証についても事務的に進められた結果だと説明した上で、『(私は)全く関わっていない』と反論した」と報じた。
- 旧統一教会改称への関与否定 自民・下村氏(時事ドットコム、2022年7月21日)
下村氏はツイッターでも、7月13日に「統一教会の名称変更について、SNSやネット上で私が文科大臣時代に関与し行ったとの書き込みが多くあり、また先日週刊誌からも同様の質問状を受け取りましたので、正確に回答申し上げます」とツイートし、週刊誌あてと思われる書面での回答の画像をツイートしている。
回答書面の画像には、7月11日付けで、次のように書かれている。
「文化庁に確認をしたところ、貴誌のご質問は全く事実に反することを確認しました。
文化庁によれば、『通常、名称変更については、書類が揃い、内容の確認が出来れば、事務的に承認を出す仕組みであり、大臣に伺いを立てることはしていない。今回の事例も最終決裁は、当時の文化部長であり、これは通常通りの手続きをしていた』とのことです。
余人をもって代えがたい元総理を失った事件報道において、万が一にも間違った報道によって新たな被害が拡大することがないよう、事実に反する記事を掲載することがないよう、慎重な取材をお願いします」
ところが文化庁は2015年有田氏の取材に「大臣に事前説明しました」と回答していた!
ところが前参議院議員の有田芳生氏は、この下村氏のツイートに対し「下村博文コメントと私が2015年に公表した文書を比較してください。おかしいですねえ」とツイートして、有田氏が2015年9月30日に文化庁に取材した際の、文化庁の回答の文書を公表した。
有田氏が公表した文書には、「なぜ過去に名称変更申請が却下されたのですか」という質問に対して、文化庁が「当時、名称変更とは別に、運営上の問題や裁判の問題などを懸念して統一教会にお話ししたことはありましたが、結果として統一教会側からの名称変更の申請はありませんでした。よって文化庁として却下した事実がありません」と答えている。
つまり、2015年以前に出された名称変更の申請を文化庁が許可しなかったのではなく、社会的問題があるという文化庁の認識を知った統一教会側が、下村氏が文科大臣になるまで申請を出していなかったということになる。
また、「実際の事務上の流れはどのようになっていますか」という質問に対して、文化庁は「名称変更等の宗教法人の規則変更の認証については、法律上の要件を備えていれば認証しなければならないものなので、文化部長が『専決者』となっていますが、本件については大臣に事前に説明いたしました」と回答している。
さらに「名称変更が書類審査的な側面があるとしても、大臣に対して統一教会の過去や現状を説明することはありますか」という質問に対し、文化庁は「今回の認証・不認証の判断とは別に『周辺情報』という意味で大臣にお話はしました」と回答している。
下村氏の言い分と、名称変更が行われた2015年時点での有田氏の取材に対する文化庁の回答が、まったく正反対である。文化庁の解答によると、通常は文化部長が決裁するが、問題ある組織だから下村大臣に事前報告したということになる。しかも、それまで名称変更を正式に申請していなかった統一教会が、下村氏が大臣になったから申請したとも受け取れる内容だ。
下村文科相に2回報告したと判明! 下村氏は指示を否定するも、前川喜平元文科事務次官は「下村大臣の意志が働いたのは100%間違いない」!
2015年名称変更時の下村文科相(当時)に報告したかどうかに関しては、申請書の受理前、および認証の決定前に文化庁の担当者が報告したことを、8月4日に立憲民主党が国会内で開催した旧統一教会被害対策本部の会合で、文化庁の担当者が報告した。
さらに8月5日に末松信介文科相も会見で、下村大臣に2回の報告がされたと明言した。ただし、末松文科相は「文部科学大臣が政治的な判断を行ったものでない」「下村大臣から何らの指示とか、そういうものはありません」と、下村大臣による指示を否定した。
▲末松信介文部科学大臣(IWJ撮影)
8月4日に下村博文氏は、「直接指示したわけではないが、今となったら責任は感じる」と「責任」には言及しつつ、名称変更の指示は改めて否定した。また、関連団体を含め「一切の関係を断つ」とも表明した。
しかし、元文部科学事務次官の前川喜平氏は、8月5日の立憲民主党(野党合同)国対ヒアリングで、名称変更に「下村大臣の意志が働いたのは100%間違いない」と述べた。
前川氏は、自分が文化庁宗務課長だった1997年に、統一教会が名称変更の相談に来たが、「実態が変わっていないのに、名前だけ変えることはできない」と、申請をさせずに門前払いした。
その後18年間、申請を受理しない状態が続いたにもかかわらず、2015年になって急に、当時の宗務課長が「名称変更の認証を行うことになりました」と、当時文部科学審議官の前川氏に報告。前川氏は「『認証すべきではない』と意見を述べたが、結局認証された」という。
前川氏は「ノーと言った(審議官の)私を上回る、イエスの判断ができるのは、事務次官と大臣しかいない」として、「下村(博文)大臣(当時)の意志が働いたことは100%間違いないと考える」と断言したのである。
▲前川喜平 元文部科学事務次官(IWJ撮影)
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