【号外】国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが「ウクライナの戦闘戦術は市民を危険にさらす」との報告書を公表! ゼレンスキー大統領は「加害者と被害者を同じレベルに置く報告は容認できない」と猛反発! アムネスティのウクライナ支部トップは抗議の辞任! アムネスティ事務総長は「防衛する側にいるからといって、ウクライナ軍は国際人道法の尊重を免除されるわけではない」と言明! アムネスティが公開した報告書をIWJが全文仮訳! 2022.8.10

記事公開日:2022.8.10 テキスト
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(IWJ編集部)

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが8月4日に公表した報告書が起きな波紋を広げています。

 ウクライナ紛争では、これまでロシア軍が一方的にウクライナの民間人を攻撃している、とする見方が、特に西側メディアでは主流でした。日本のメディアも足並みをそろえてロシアだけを非難するプロパガンダに徹しました。

 IWJはこうした一方に極端に偏る偏向報道や、事実をウクライナ寄りに歪めて伝える情報操作は、米国主導のプロパガンダであり、日本のメディアもそれに染まっていると批判し続け、「中立」の立ち位置を維持しながら、報道・論評を続けてきました。

 しかし、こうした約半年間におよぶ情報操作(マニピュレーション)とプロパガンダにメスが入るときが来たようです。

 アムネスティ・インターナショナルは、8月4日、ウクライナ軍が、民間人居住地域に軍事拠点を設け、市民の命を危険にさらしていると批判する報告書「ウクライナの戦闘戦術は市民を危険にさらす」を公表しました。

 アムネスティ・インターナショナル日本のサイトによると、アムネスティ・インターナショナルは、1961年に発足した世界最大の国際人権NGOです。世界200カ国で1000万人以上がアムネスティの運動に参加しています。1977年にはノーベル平和賞を受賞、翌年には国連人権賞を受賞しています。

 アムネスティの報告書に、ゼレンスキー大統領は「アムネスティ・インターナショナルがテロを支援している」と猛反発しました。ロシアメディア『RT』も、ゼレンスキー大統領の言葉を紹介しています。ゼレンスキー大統領は「ウクライナは被害者だ」と3回繰り返した、とのことです。

 「今日、アムネスティ・インターナショナルの報告書を見た。アムネスティは残念ながら、テロ国家に恩赦を与え、加害者から被害者に責任を転嫁しようとしている」、「誰かが加害者と被害者を同じレベルに置く報告をするなら、これは容認できない」(RT、4日)

 『RT』は、アムネスティの報告書が、「ウクライナ軍が学校から攻撃を発した22件の事例と、ウクライナ軍が病院を基地として使用した5件の事例を詳述している」と短く紹介し、ウクライナ軍が市民に避難するように警告した形跡は見られなかったとしている、と報じています。

 『ウクルインフォルム』(5日)も、ゼレンスキー大統領の強い非難の言葉を紹介しています。

 「誰かが、犠牲者と侵略者が何らかの点であたかも同じであるかのような報告書を作ったり、犠牲者についての何らかの情報は分析され、侵略者のしていることについては無視されているような報告書を作っている場合には、それは受け入れられるものではない」(ウクルインフォルム、5日)

 『ウクルインフォルム』は、ゼレンスキー大統領だけではなく、クレーバ外相、レズニコウ国防相、ヴェレシチューク副首相兼一時的被占領地再統合相らが、一斉に類似の批判を行ったと報じています。

 アムネスティ・インターナショナルのウクライナ事務所のミチェヴァ報道担当は、ウクライナの報道機関「フロマツィケ」に対し、「ウクライナ事務所は、(同報告書の)準備にも、その情報拡散にも加わっていない。団体のルールにより、武力紛争や戦争の際は、危機対応局のみが違反や犯罪の記録を行うことになっている」と述べたということです。

 ウクライナ軍の戦略が市民を危険にさらしていると警鐘を鳴らした、アムネスティの報告書には抗議の声も多く上がっていますが、アムネスティ・インターナショナル事務総長であるアニエス・カラマール氏は、ツイッターで「私たちの仕事を精査してください」と訴えました。

 「アムネスティは、ロシアの侵略とウクライナの戦争犯罪を精力的に記録してきた。今日、民間人を危険にさらすウクライナの戦術について報告した。ウクライナに対する偏見を主張し、私たちを攻撃する人たちに言いたい。『私たちの仕事を精査してください。私たちはすべての犠牲者の味方です』。公平に」

 「今、(アムネスティの調査を)攻撃しているすべてのウクライナとロシアのソーシャルメディアの人々と荒らしへ。これは戦争プロパガンダ、偽情報、誤報と呼ばれるものである。これによって我々の公平性が損なわれることはなく、事実が変わることもない」

 『CNN』は6日、 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのウクライナ支部トップを務めるオクサナ・ポカルチュク氏が辞任を表明した、と報じました。ポカルチュク氏は、アムネスティに現行の内容での報告書公表を思いとどまらせよう努力していた、ということです。

ポカルチュク氏「国を引き裂く侵略者に占領された国に住んでいなければ、防衛する側の軍隊を非難するのがどういうことか、おそらく理解できないだろう」。

 ポカルチュク氏は、アムネスティの報告書に対し「戦争の相手側、戦争を始めた側に関する情報を盛り込まないことは許されない」「アムネスティはロシアの言い分を支持するかのような資料を作成した。民間人を守ろうとしつつ、この調査はかえってロシアのプロパガンダの道具になってしまった」と抗議しています。

 アムネスティのカラマール事務総長は「防衛する側にいるからといって、ウクライナ軍は国際人道法の尊重を免除されるわけではない」と述べています。

 アムネスティ・インターナショナルは7日、「ウクライナ軍の戦闘戦術に関する私たちのプレスリリースによって引き起こされた『苦痛と怒り』を深く遺憾に思う」とする一方、「この調査結果を全面的に支持する」との声明を出しました。

 「アムネスティ・インターナショナルは、ウクライナ軍の戦闘戦術に関する私たちのプレスリリースが、苦痛と怒りを引き起こしたことを深く遺憾に思っています。

 2022年2月にロシアの侵略が始まって以来、アムネスティ・インターナショナルは、ウクライナで行われた戦争犯罪と侵害について厳格に記録し、報道し、何百人もの犠牲者と生存者に話を聞き、その話からロシアの侵略戦争の残酷な現実を照らし出してきました。私たちは、具体的な行動を通じてウクライナの人々との連帯を示すよう世界に呼びかけており、今後もそうしていくつもりです。

 アムネスティ・インターナショナルの優先事項は、この紛争、そしてあらゆる紛争において、民間人が確実に保護されることです。

 実際、この最新の調査結果を発表するにあたり、これが唯一の目的でした。私たちはこの調査結果を全面的に支持していますが、不快な思いをさせたことを遺憾に思い、いくつかの重要な点を明らかにしたいと思います。

 プレスリリースでは、私たちが訪問した19の町や村のすべてで、ウクライナ軍が民間人の住む場所のすぐそばに位置し、それによってロシア軍の攻撃から民間人を危険にさらす可能性がある事例を発見したと記録しています。この評価は、国際人道法(IHL)のルールにもとづいて行われました。

 IHLは、すべての紛争当事者に、人口密集地内またはその近くに軍事目標を置くことを、可能な限り避けるよう求めています。戦争法は民間人を保護するために存在するものであり、アムネスティ・インターナショナルが各国政府にその遵守を強く求めるのはこのためです。

 これは、アムネスティ・インターナショナルがロシア軍による違反行為についてウクライナ軍に責任を負わせるということでも、ウクライナ軍が国内の他の場所で十分な予防措置をとっていないということでもありません。

 私たちが記録したウクライナ軍の行為は、ロシアの侵害を正当化するものではありません。ウクライナの市民に対して行った侵害の責任は、ロシアだけにあります。アムネスティの過去6ヶ月間の活動や、ロシアの違反行為や戦争犯罪に関する複数の報告書やブリーフィングは、その規模や市民への影響の重大さを反映しています。

 アムネスティ・インターナショナルは、7月29日、ウクライナ政府に対し、我々の調査結果の詳細を記した書簡を送付しました。書簡には、ウクライナ軍が民間人に混じって基地を置いていることを記録した学校や病院などの場所について、GPS座標やその他の機密情報が含まれていました。この情報をプレスリリースで公開しなかったのは、ウクライナ軍と私たちがインタビューした民間人の双方に安全上のリスクをもたらすからです。

 アムネスティ・インターナショナルは、ウクライナ軍がどのように行動すべきかについて詳細な指示を与えるつもりはありませんが、関係当局が国際人道義務を完全に遵守することを求めます。

 アムネスティ・インターナショナルは、紛争中に市民の生命と人権が確実に守られることを常に最優先しています」

 ロシアメディア『TASS』は、7日、「国連事務総長の報道官であるステファン・ドゥジャリク氏が、キエフの戦争法違反に関するアムネスティ・インターナショナルの報告を称賛した」と短く報じました。

ドゥジャリク氏「この(紛争)を通じて、国連事務総長の呼びかけは明確であった。私たちは常に民間人の保護を求めてきたし、これからも求め続ける」

 問題となった、アムネスティ・インターナショナルが8月4日に公表した報告書について、アムネスティのホームページで公開されている全文を、IWJが仮訳しました。その内容は、ウクライナ軍が「人間の盾」として利用しており、ロシア軍の民間施設への攻撃を招いていると指摘する一方で、ロシア軍にも無差別攻撃をしないように求めるものでした。

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