「参院選(7月10日投開票)」で一大争点に急浮上したのが物価高だ。「物価高と戦う」を掲げる立憲民主党は「岸田インフレ」と命名してアベノミクス(異次元金融緩和が柱)見直しを求め、5%への消費減税でも四野党(立民・共産・れいわ・社民)で足並みをそろえている。
これに対して岸田文雄総理は、「世界規模の物価高はウクライナ侵攻が原因」「有事における物価高」と強調するばかりで、アベノミクス見直しを進めようとしない。
アベノミクスの最大の売り物だった日銀黒田総裁のもとでの低金利と金融緩和は今も継続中で、そのために猛スピードで円安が進行しつつある。円が安くなれば、あらゆる資源、エネルギー、食糧を輸入に頼らざるをえない日本で輸入インフレが進むのは当然である。岸田内閣が安倍内閣のアベノミクスを継承しているからこそ、このインフレは起きているのであり、「岸田インフレ」の命名は決して間違っていない!
また、早期停戦に無関心な米国に追随(忖度)するだけで、ロシア制裁によるエネルギー資源高とも重なり「ロシア制裁インフレ」の様相も呈しており、しかもバイデン大統領に防衛費倍増の方針も伝えたことから、今後は「軍事インフレ」となる恐れも出てきた。
先の太平洋戦争では「欲しがりません、勝つまでは」という標語が国民に押し付けられるほど、国民の大半は貧窮に耐えなければならなかった。
その一方で、軍拡は巨大戦艦大和など、実戦で何も役に立たないシロモノを建造するなど、軍事費が急増して対戦末期には、インフレが国民生活を襲うことになったが、今、似たような状況が戦争の前からすでに起こりつつある。これで、戦艦大和の代わりに敵基地攻撃用の中距離ミサイルを導入し、実際の戦争に突入したら、日本へ向かう資源や食糧を載せる商船は沈没させられ、インフレは激化し、石油のない日本は社会活動が停止し、飢餓が押しよせることだろう。実際、太平洋戦争には、日本の商船はことごとく沈められてモノ不足が決定的となっていたのだ。
「有事(戦争)」を振りかざすことで、国民を黙らせる手法は、岸田総理の街宣にはっきりと盛り込まれていた。「有事の物価高に国民は耐えて当然」と言わんばかりの上から目線の姿勢も見て取れた。
6月18日の山形駅前の街宣で岸田総理は、エネルギーと食料に特化した物価高対策をして効果を上げていると自信たっぷりに語った後、こう続けたのだ。
「例えばアフリカにおいては、食料の不足にも耐えながら、平和を守るためにしっかりと(ロシアへの経済制裁に)協力をしている。
ヨーロッパではエネルギーのとんでもない価格高騰の中でも平和を守るために多くの国民が協力をしている」
「何でこんな物価高騰が起こっているのかに思いを巡らせていただき、平和を守るために日本も力を合わせていかないといけない」。
有事(戦争)を理由に、国民に我慢を強いて事足れりと考えている問題発言といえる。
「世界規模の有事の物価高騰」に、海外の国々も経済制裁で足並みをそろえているのだから、日本国民も我慢しようと呼びかけているに等しい。
実際には、ロシア制裁に参加しているのは世界の約3分の1の国々に過ぎない。3分の2は制裁に参加せず、禁輸していないのである。インドのように、安全保障で米豪とクアッドを築きながら、ロシア制裁には加わらず、逆にロシアから3割引きという格安の値段で昨年以上に石油を輸入し、ロシア製の武器も輸入し、国内で精製して余ったディーゼルオイルをロシア制裁で、エネルギー不足に陥り、日本と同様自分の首を苦しめている欧州のNATO諸国に売りつけて儲けている国もあるのである。そのインドのような国は、何の制裁も受けていない。
日本も自国の国益を考えたら、インドのように制裁に参加しない道もあるはずだ。
岸田外交が安倍外交以上の対米追随外交になってしまっていることのマイナスが我が国の国民生活を直撃していると言っていい。
外的要因を強調することで、アベノミクス見直しをしない自らの職務怠慢から目をそらそうとする魂胆が見え見えなのである。