2021年10月13日、赤木俊夫氏の妻・雅子さんが国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の第5回口頭弁論のあと、雅子さんの代理人による記者会見が開かれた。
2018年3月7日、近畿財務局の元職員赤木俊夫氏は、森友学園問題で、財務省の決裁文書改ざんを命じられたことを苦として自殺した。
赤木俊夫氏の妻・雅子さんは、「夫の死の真実が知りたい」として、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こした。2020年7月15日、大阪地方裁判所で、第1回口頭弁論が行われた。
1年1ヶ月後の2021年6月23日、赤木俊夫氏が生前、改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」を国側は開示し、大阪地裁が「赤木ファイル」を証拠採用するとこころまで事態は進展した。
しかし、改ざんに関与した職員名の多くが黒塗りにされ、具体的な指示系統などは不明のままであった。雅子さんは、「改ざんの指示者が黒塗りになっている」とし、さらなる情報の開示を国側に求めてきた。
- 改ざん解明に黒塗りの壁 開示と尋問がカギ、森友訴訟(日本経済新聞、2021年67月23日)
この訴訟の第5回口頭弁論が10月13日、大阪地裁(中尾彰裁判長)で開かれ、国側は、「赤木ファイル」の背表紙の画像を大阪地裁に提出した。
しかし、財務省は、11日付の決定で「当該文書を一部でも公にすれば、今後同種の任意調査などに必要な協力が得られなくなる」などとして、内部調査の不開示を決定した。
- 赤木雅子さん請求の改ざん関連文書、財務省が不開示を決定 森友問題(朝日新聞、2021年10月13日)
- 赤木ファイル背表紙、国側が提出 財務省文書改ざん、大阪地裁(東京新聞、2021年10月13日)
第5回口頭弁論の後、雅子さんの代理人である、生越照幸弁護士、松丸正弁護士による記者会見が開かれた。
松丸弁護士は、公務員の個人責任の問題について言及。
「次回は佐川(宣寿)の個人責任の問題を問うということで。今回の改ざん指示は、単なる違法な職務権限を濫用した指示が行われただけではなくて、国会の審議権、立法の審議権を蔑ろにした(という問題がある)。
これ(公文書)が改竄されてしまったら、国会の審議はまったく成り立たないわけです。行政に対する監視という意味で。
そういう重大な行為がされたということについて。ようするに(これまでの判例では)、個人責任を問わない理由は、行政の適正な執行を妨げるというわけです。個人責任を問うと、萎縮してしまうと。公務員個人が。そこが最終的には判例の1番のキモになってくる。
果たしてそういうような違法行為、職務権限を濫用して(公文書を)改ざんさせるなんていうのは、職務権限にないわけですよ。
そういう違法行為が『行政を萎縮させるから個人責任を問うのをやめよう』という話になるのか、逆に、そんな重大な違法行為を放置してはまずいから、それをちゃんと抑制させるために『個人責任はそういう場合は問えるんだよね』という論理でいけるのかどうか。
そこが大きな論点になってくるわけですよね。
確かに、最高裁の判例は個人責任は問わない、基本的にはそういう基調に乗っていますけれども。やはり、この事件の場合には、そういう判例の通りにはのらない事件、というところだと思います。そういうところを強調して、こちらとしての次回の主張を構成することになると思います」。
生越弁護士「補足すると、そんなことをする、ということを前提としていないんです、法律が。なので、違法だと評価する枠組みもないわけです。
まさか、国会に提出される決裁文書が改ざん、すり替えられるなんていうことは、憲法も想定していないわけです。
その違法性、議会制民主主義に対する悪影響ということが、従前の判決であるような、盗聴であるとか、介護施設で何か問題があったときに、その公務員が責任を負うのか、というレベルの話とはちょっと違う。ということを、こちらとしては強調していきたいと思います」
会見の全編は以下で御覧ください。