一連の森友学園問題で、前理事長の籠池泰典(本名・康博)氏と妻の諄子(本名・真美)氏が、国や大阪府と大阪市から補助金1億7000万円をだまし取ったとする詐欺罪事件は、財務省による国有地の大幅値引きと、その経過に関する公文書改竄・隠蔽に蓋をするため、籠池夫妻の悪質性を強調するべく、夫妻のみに罪を被せた。そのために詐欺事件の真の首謀者であり、実行者であるキアラ建築研究機関と藤原工業は不起訴とされた。
さらに検察は、「主犯である夫妻がキアラに補助金詐取を指示した」というストーリーを捏造し、証拠の改竄も行った。
これが一審大阪地裁の有罪判決に控訴した籠池夫妻側の主な訴えである。
2021年6月7日、大阪高裁で控訴審が始まった。
一審では国のサステナブル建築補助金をめぐり、キアラが夫妻との会議を秘密録音したデータが証拠として提出された。この録音データの中の諄子氏の「ぼったくる」という発言によって夫妻の詐欺罪が認定された。
泰典氏は7日に行われた記者会見で、この「ぼったくる」発言について、「意図的に作為が入ったものが法廷に提出された」と主張している。
「ぼったくる」発言は、証拠として提出された録音データを検察が反訳(文字起こし)したものだが、控訴審にあたって籠池氏の弁護団が録音データと反訳を比較したところ、「ぼったくる」発言が行われた前段の部分が、反訳では削除されていたというのである。
つまり、全く違う場面を想定して発言した「ぼったくる」という言葉を、検察が意図的に、補助金詐取を指示したようにみせかけるために文章を改竄しているというのだ。
会見で泰典氏は「村木厚子郵政事件の冤罪と同じではないかと考えます」と述べ、「高裁で徹底的に反論する」と訴えた。
一審判決は、籠池夫妻が小学校建設で国の補助金約5600万円をだまし取り、泰典氏が幼稚園運営で大阪府と大阪市から補助金計約1億2000万円をだまし取ったと認定した。
その上で、府・市の補助金については、諄子氏の共謀を認めず、泰典氏に懲役5年、諄子氏に懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。
控訴審で籠池氏側は、府・市の補助金については一部が適法だったとし、国の補助金についてはキアラや藤原工業が主導しており、夫妻に違法との認識がなかったとして無罪を主張している。
一方で検察側も控訴している。7日には2人の証人尋問が行われたが、そのうち1人は一審でも証言した大阪府職員で補助金申請の担当者であった松山氏。一審では松山氏の証言が急に法廷証言で詳しくなったことから、不自然だとして信用性が否定された。これによって諄子氏は、府・市の補助金詐取については一部無罪が認められた。
会見で籠池氏の弁護団は「検察官としては、一旦否定された松山証言の信用性を回復するために、今回控訴審でもう一度松山さんを呼びたいということになりました」と説明した。検察側はあらためて、諄子氏の全面的な有罪判決を求めているのである。
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