感染爆発を引き起こすデルタ株のメカニズムが判明し始めた。
岐阜大学大学院医学系研究科の下畑享良(たかよし)教授が、海外の注目すべき論文を、ご自身のブログで2021年7月31日に複数紹介している。
雑誌『Nature』も取り上げた査読前論文によれば、デルタ株の潜伏期間はオリジナル株の3分の2の短さだという。これは複製の速度の違いによる。しかも感染者の体内のウイルス量はなんと最大「1260倍」にもなるとされる。
この論文から、下畑教授は、デルタ株では「感染後のより早い段階から、絶対量の多いウイルスが超拡散現象により多くの人に感染する」と、強い感染力の理由を説明している。
さらに、潜伏期間が短いため、「中国のように感染接触者を組織的に追跡し、隔離を行う国ですら濃厚接触者の追跡が難しい」と、その脅威を強調した。
しかし、中国は第1波の時から続けている徹底した検査・隔離の繰り返しと厳格なロックダウンで、アジアをのみ込むかにみえたデルタ株を克服しつつあることも報じられている。
また、別のイスラエルの論文によれば、ワクチンを2回接種し、2週間経過した後でも感染が起きる「ブレイクスルー感染」をした人は、感染を防ぐ「中和抗体価」が低い傾向があるという。この論文での検査対象は85%がアルファ株だったが、デルタ株も同じ原理であれば、やはり中和抗体の量が焦点になる。
ただし下畑教授は、「ブレイクスルー感染者のほとんどは軽症ないし無症状」で、「ブレイクスルー感染者からの二次感染は認められなかった」として、ワクチンの効果を認め、「科学的に判断すればワクチンを接種しないことがいかに危険なことか」と警鐘を鳴らす。
とはいえ、ワクチンの効力が永続的でない点も留意する必要がある。イスラエルでは、ワクチンの2回目接種完了者における感染予防効果と発症抑制効果が、約半年で84%下がったという調査結果をもとに、40歳以上に3回目接種を始めた。
ただし入院と重症化の抑制効果は、82%、86%と依然高いとのことである。また、フランスも9月から3回目接種を開始予定である。
なお、「ブレイクスルー感染」については、大阪大学の荒瀬尚教授らが、新型コロナに感染すると「悪玉」である感染増強抗体が産生されることを発見し、「ブレイクスルー感染」の謎に迫っている。下記記事をご覧いただきたい。