2021年8月13日、東京・参議院会館で、名古屋入管ウィシュマさん死亡事件の真相究明のためのビデオ開示、再発防止徹底を求めるオンライン署名提出後記者会見が行われた。
2021年3月に名古屋入管収容中に亡くなられたウィシュマ・サンダマリさんの事件について、同日に行われた第28回 難民問題に関する議員懇談会 総会の最後に、7月9日から8月12日までオンラインで集められた5万88人分の署名を、丸山秀治出入国管理部長に手渡した。
冒頭、ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会の支援団体「BOND」事務局長の鎌田和俊氏から今回の再発防止徹底を求めるオンライン署名提出後記者会見についての概要と、今後の動きについて説明があった。
鎌田氏は、「今回、5万88人の署名を第一弾として提出させていただきましたが、改めて、署名活動も継続しますし、真相究明、再発防止の徹底をもとめて、取り組みを継続したいと思っております」と強く訴えた。
その後、ウィシュマさんのご遺族で妹のポールニマさんに対して、代理人弁護士の指宿昭一氏から質問する形で、リレートークが行われた。
指宿弁護士は「(遺族に入管の映像が一部公開された)12日に、法務省から出た後に、『この映像はすべての外国人に見てほしい』と言っていましたが、なぜですか?」と質問した。
これに対してポールニマさんは次のように答えた(通訳による日本語訳)。
「昨日は外国人みんなに見せるべきとは言いましたが、すべての日本人の方にも見てほしいです。
昨日の映像の中のお姉さんは、どこのシーンでも、弱っていて上半身しか動いておらず、ちゃんと歩いていたところも見られなかったです。
映像を見れば、お姉さんは入管ではなく、入院をしなければなかったという事がわかるからです」。
その後、指宿弁護士は、以下のように呼びかけた。
「ビデオの中に真実があるんですよ。報告書を読んだだけでは分からない。ビデオを見ればウィシュマさんは入管に殺されたという事がわかると思います。だから入管は、これを出したくないんです。
入管は『保安上の理由』と言ってますけど、私なりに翻訳しますと、『見せてしまうと入管に対する批判が高まって、入管の言う事を誰も聞かなくなる』という、保安上の理由ではないかと思います。(中略)
そして、昨日遺族に見せた理由は、『法務大臣が人道上の配慮から特別に指示したから見せたんだ。だから弁護士の立ち合いは認められないんだ』と、非常によくわからないことを言っています。
これも私なりに翻訳すると『本来、見せる必要はないけどお情けで見せてやるんだ。四の五の言うな。弁護士まで立ち合わせろ? 冗談じゃない』だと思います。
でも、本来は遺族にも見せたくなかった。なぜ見せたかというと、あまりにもやり方がひどいという事が分かってしまった。そして市民から、強い抗議があった。約5万人も署名が集まっている。そういう中で、ほんの一部だけ、遺族だけですけど、見せざるをえなくなったんです。
さらに強い市民の声が上がれば、ビデオは開示せざるをえなくなるはずです。今日第一次提出です。引き続きみなさんの声を、署名や、いろんな行動を通じて、ぜひ入管にぶつけていきましょう」。
IWJ記者は「最終報告書では、入管がウィシュマさんに強要した処遇と死因との関係を認めていない。この結論をどう考えますか?」と質問した。
これに対してポールニマさんは「入管職員の対応、発言によって、(ウィシュマさんが)精神的に落ちこむこともあるだろうし、ある意味これは、いじめととらえられる。お姉さんは、病気であったのにも関わらず、(入管が)適切な対応をしなかったことは、死に(対して)直接原因がなかったとは言えない」と答えた。
さらにIWJ記者は「2時間の映像を途中まで見て、入管に今後どんな改善を求めますか? その上で、今後アクション等を起こす予定はありますか?」と質問した。
これに対してポールニマさんは次のように答えた。
「ビデオは編集されたものしか見れていないので、全部見せてほしいし、データとして渡してほしい。全ての人に開示してほしい。スリランカにいるお母さんにも見せなければいけない。
あと、次にビデオを見るときには、絶対に弁護士の先生と一緒に見ないといけない。
これからも(ビデオの)開示を求めて最後まで闘っていきたいし、入管も、医療体制(に問題があったこと)は認めているが、(管理)システムが問題になってお姉さんが亡くなったとは認めようとしないので、その分も認めて欲しいので、ちゃんと最後まで入管に開示を求めて、(弁護士の)先生とも話して闘っていきたい」。