2021年4月30日(金)午前9時50分頃より、厚生労働省会見室にて、田村憲久厚生労働大臣による定例会見が開かれた。
冒頭、田村大臣より、有効求人倍率(令和三年三月)についての公表、緊急事態宣言を受けた雇用調整助成金の特例措置等の対応について、そして、5月5日「こどもの日」から「こいのぼり掲揚動画」を公開すること、という三つの報告がなされた。
その後質疑応答が行われ、そのなかで読売新聞記者が、「東京五輪組織委員会が日本看護協会に対し看護師500人の確保を依頼した件について、これは医療体制の逼迫をもたらすのではないか。大臣のお考えをおうかがいしたい」と質問した。
この質問に田村厚労大臣は、次のように回答した。
「オリンピックまであと残すところ二か月くらいということになっていますが、そういう意味からしますと、まず感染の状況をしっかりとコントロールしていかなくてはならないと思っております。
もちろんコロナの病床でですね、活躍いただいている方々は、コロナに対する知識やスキルをお持ちいただいている方でございます。一方、オリンピックでいろいろお助けいただく方々はですね、アスリートでありますとか、そういう方々の健康管理等々をしていただくという役割なので、直接役割がかぶっているわけではありません。
看護師、今稼働されている看護師、と言ったほうがいいかもしれません。70万人以上おられる看護師の方々ですから、稼働されている方々は限られているのでありまして、そういう意味ではそこで、やはり、看護師、医療人材を引合いになると困るわけで、そうならないような体制を組んでいく必要があると思います。
少なくとも厚生労働省としては、いまコロナの対応でご活躍をいただいている方々、そしてオリンピックが開催される時点でのコロナの状況、感染状況で当然必要な医療人材というのは、これはまあ、顕在化というのか、わかっているので、その方々は何としても確保してゆかなければならない。コロナに対する国民の健康と命が守れないということになりますから。そこは我々厚生労働省としてはですね、各自治体に確保をお願いし、ご協力をさせていただきたいと思います。そのうえで安心安全なオリンピックの開催をお願いしたいと思っております」。
IWJ記者は、次のように質問した。
「現在、政府提出の医療法等改正案が審議されていますが、この法案には病院統廃合や病床の削減への財政支援、病床機能再編を行う医療機関に対する税制優遇が盛り込まれています。
これは、新型コロナウイルスの感染拡大がやまず、その影響がいつまで続くかわからない現状、大阪をはじめ各地で医療逼迫、病床不足が懸念される今、推進すべきでしょうか? 厚労省は病床機能のダウンサイジングに舵を切るべきではないと思われますが、大臣はどうお考えでしょうか?」。
これに対して、田村大臣は以下のように答えた。
「今、ダウンサイジングするわけではありませんよね。2025年に向けて計画を持ってやっていくだけの話で。コロナのときに病床を減らすという、ちょっとそういうような話にはならないというふうに思います。
まあ、いずれにしても人口は減りますから、その中で病床は余っていきます。余ってくると医療機関が経営できなくなります。経営ができないと、これは大変なことになるので、そういうデータをお示しさせていただいて、2025年に向かって、またそのあとの2040年、高齢化のピークが来ますので、それに向かって、必要な病床数を、医療機関の採算が合うようにしていただきたいという思いの中で、今、計画を作ってますから、今日、明日減らす、という話ではございませんから。
そのような意味では、今回のコロナのこともございますので、それも含めてどのような地域医療構想をお作りをいただくのがいいか、今、再度お諮りをさせていただいてますので、それぞれのところで必要な病床をそれぞれのエリア、そこでお考えをいただきたい。
ただあんまり増やしすぎますと将来経営ができなくなりますから、そこに医療人材をつけて病床を確保しなくてはならないということになりますから、そこはやはりそれぞれ人口の丈にあった病床というものをしっかり将来に向かってお作りいただきたいところです。
コロナに対してはしっかりと病床を確保していく必要があると現在は思っております」。
IWJ記者はそれに対し、「ありがとうございます。長期の計画、平時での病院の採算や維持について計画が行われていることがわかりました。これが、でも、現在の病床数が足りないということにつながっている、以前からのこの流れがつながっているということはないでしょうか?」と質問を重ねた。
これについて田村大臣は、次のように答えた。
「ていうか、その、病床が足りるとか足らないとかではなく、今の感染状況で、病床はこのような状況で、ご協力いただいてます。
よく言われる議論で、欧米では日本の10倍以上も感染者がいて対応できるのに、なぜ日本では人口あたりの病床も海外よりあって、看護師は欧米と変わらないくらい、10万人あたりの数があって、医師は若干少ないですが、そんなに極端に少ないわけではありません。それでなぜ診られないんだ、ということをおっしゃる方がおられますが、実際ヨーロッパで感染がほんとに爆発したところは医療が崩壊に近いことになってます。言うなれば一般医療を止めてしまうとか、患者の方々を十分に診れていないという状況にあって、多くの方々が命を落とされるということになってます。
ほんとに国民の皆さまの協力があって、感染が増えたといっても、感染が爆発しているところに比べれば数十分の一という状況で、抑え込んでいる、いや、抑え込んでいる、という言い方でいいのかわかりませんが、感染をある程度のところで止めているという国民の皆さまのご協力がありますから、今も一般医療とそれからコロナの医療、若干一般の医療が厳しくはなりつつはありますけれども、それでもちゃんと動いているというのは国民の皆さんのご協力と、医療機関の皆さんの絶え間ないお力添えがあるからと感謝しております。
そういうことです」。
会見の詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。