2021年2月24日、田村憲久厚生労働大臣の定例会見が行われ、IWJは生中継するとともに、記者が質問を行った。
IWJ記者「政府が『首都圏の1都3県を除く6府県で期限を前倒しして、今月末に解除する方向で調整に入った』と報じられました。
しかし、緊急事態宣言発令対象の、愛知県と岐阜県以外の8都府県を含め全国で、2月18日までの1週間は前の1週間と比べて、人口10万人あたりの新規陽性者数の減少ペースが鈍化しています。さらに、1人が周りに感染させる人数を示す実効再生産数は減少どころか増加傾向にあります。
にもかかわらず、なぜこのタイミングで、政府は早期の宣言解除を認めるのでしょうか。安全性は確認されたのでしょうか。
地域経済へのダメージを軽減するのが理由であれば、解除後、再度の感染拡大が起こらないような手段が必要なはずではないですが、そのような手立ては用意されているのでしょうか。
また、今から規制をゆるめて、結果、これまでと同様に、再度、感染拡大すれば、ちょうど夏頃に第4波が来る可能性が高いと考えられます。
夏に五輪を開催できますか? 五輪組織委の森前会長と加藤官房長官が無観客も視野に入れる発言をされましたが、五輪の観客を入れてのフル開催を諦めたからですか?
現在、ワクチンが万能の切り札のように喧伝されています。しかし、ワクチンは発症や重症化を食い止めるためのもので、感染予防効果は実証が難しいと、昨年10月の厚労省のワクチン分科会でも報告されています。しかし、政府から発信されるメッセージでは、あたかもワクチンが感染拡大防止とパンデミック鎮圧の唯一万能の手段であるかのように受けとめられます。
しかも、丸川五輪大臣は22日の衆院予算委で、ワクチン供給の遅れの五輪への影響を問われて、『ワクチン接種を前提としなくても安全安心な大会を開催できるよう、総合的な感染症対策の検討を進めている』とも発言されており、切り札ともされるワクチンの用意さえ困難な状況がうかがえます。丸川大臣の言う、総合的な感染症対策の中身とは何なのでしょうか?
再び新規感染者数を増加に転じさせないためには、ワクチンだけではなく、公費による徹底した住民への検査の実施と、無症状陽性者の選別と隔離が、より一層必要ではないでしょうか。
ところが、PCR検査件数は、1月19日の10万3133人以降、2月22日の5万4180人まで減少の一途にあります。
厚労大臣として、解除のタイミングの是非、および五輪開催についての見解と、PCR検査の検査の拡充に対する計画をお聞かせください」
田村厚労大臣「(緊急事態宣言の)解除を決めたわけではありませんので。これから、専門家からもご意見をいただいて、判断していくということであります。
オリンピックは、オリンピック担当大臣にお聞きをいただければと、どういう解釈をするかですね。それに関しては、厚生労働省としてですね、今、それを決める権限はありませんので。
それから、PCRは、これは、感染者が減ってきてますから、当然、PCR検査自体が減ると。これは今までもそうでございましたので。感染者が多い時には、検査される方が多いということだというふうに思います」
いずれの問いにも、実質的な中身のない回答と言わざるを得ない。IWJ記者は、切り札ともされる新型コロナのワクチンの効果について、再度質問した。
IWJ記者「昨年10月2日の第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の『ワクチンの有効性・安全性と副反応のとらえ方について』という資料の中で、『ワクチンの効果について』というページがございまして、『感染予防 接種した人が感染しない』という、効果については『実証が難しい』というふうに書かれているんですけれども、これはたいへんある意味で心配な記述なんですけれど、その後、これについての見解の変化というようなことはございますでしょうか?」
田村厚労大臣「感染予防効果があるかということですね?」
IWJ記者「そうですね」
田村厚労大臣「これは、今のところ、世界中で感染予防効果があるということ自体が、認められているということではないんだというふうに、我々理解しております。
実際そのファイザーのワクチンに関しても、わが国においては、これは発症予防に関しては確認できていると。重症化予防に関しては、重症者の事例が少ないために確認はできていないんですが、ただ、重症化予防というよりは、重症者が減るかということから考えると、これは発症者が減れば、重症化しないわけですから、発症者が減った分は、重症者は減るんだろうというふうには思っております。
ただ、感染予防という意味からすると、これは十分にエビデンスがまだないので、そういう意味では、我々これを確認できておりません。あるかないかが分からない、つまり、もしかしたら感染予防効果もあるかもわかりませんけれど、エビデンスがないということなので、それが確認できていないというふうに、我々理解をいたします」
IWJ記者「それは、接種した人が、自分がかからない、人にうつさない、両方とも…」
田村厚労大臣「実証されていない。まあ自分がかからなかったら、人にうつすことはないんですけれど。かかった、感染はしているけれども、人に対してうつす(ことを防ぐ)能力があるかどうかも、これもまだ確認されていません。
ただ、これも、一般論として申し上げれば、発症しなければ、咳やくしゃみは出にくくなりますので、その分は、飛沫でうつす場合ですね、うつす能力は軽減されるんだろうというふうには、推測はできますけれども、新型コロナウィルスの場合は、ふつうに大きな声でしゃべるだけでも感染リスクがあると言われておりますから、そういう意味では、そこはまったくもってまだエビデンスがないということであります」
IWJ記者「(感染予防効果が)確認できる見通しというのは、どういう形になりますか?」
田村厚労大臣「それは、基本的にメーカー等々で、確認をいただくという形になると思います。もちろんそれぞれの研究者が確認をするっていうことは、あるかもしれませんが、そういうデータ、情報があれば、我々も収集して、またお伝えっせていただきたいというふうに思います」
田村大臣の回答は重要である。
国が喧伝し、国民が期待を寄せる新型コロナのワクチンには、自分がかからない、感染者が他の人にうつさないという両方の面で、感染予防効果が実証されていないことを改めて認めたわけである。
もちろん、感染しても症状が出るのを食い止める発症予防も重要な効果ではあるが、根本的なことに感染予防ができないのであれば、無症状の患者がうつしあう状態が続くことになる。
つまり、無症状の陽性者を増やす可能性がある、ということになる。
ということは、ワクチンの接種を推進していくには、同時に無症状者へのPCR検査体制の強化を平行して行っていく必要がある、とうことになる。しかし、田村大臣の回答を御覧になれば、おわかりの通り、検査が減少している現実に、疑問や懸念を抱く様子がまったくない。この点が大いに気がかりである。
ワクチンのみに頼る対策では、緊急事態宣言の解除によって引き起こされる可能性のある感染再拡大は防止できず、五輪開催への抜本的対策の役割も果たせないということを、政府内部でコンセンサスが形成されていない点も、非常に不安を覚える。
なお、IWJ記者が言及した資料は下記である。ワクチンに感染予防効果がないと政府が認めている事実を、ぜひ、皆さま、ご自身の目でご確認いただきたい。