菅総理の政治資金規正法違反疑惑について、聞いているのは法制度の解釈! 前夜に質問取りまでしておいて、「個別の調査権がない」と繰り返す武田大臣の顔には薄笑いが!〜12.4 武田良太 総務大臣 定例会見 2020.12.4

記事公開日:2020.12.4取材地: テキスト動画
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(取材・文:城石裕幸)

 前日の夜に質問取りまでしておいて、総務省の官僚は、あえてこちらの質問意図とは異なる答弁を用意したのか? IWJ記者の質問に薄笑いを浮かべ、手元の資料に目を落としながら答弁する武田良太総務大臣の姿からは、省をあげての意図的な「はぐらかし」が感じられた。

 週刊ポスト12月11日号(11月27日発売)が、菅義偉総理が2014年と2015年に横浜市内のホテルで開いたパーティー「春の集い」について、政治資金収支報告書に記載がないことを報じた。

 後追い報道をしたのは、しんぶん赤旗と週刊朝日、朝日新聞、AERA dot.の朝日新聞グループ。

 これらの報道によれば、パーティーの会費はわずか1500円。集まった支持者は2000人から2500人ほど。会場は普通に借りれば1日700万円であり、2500人から1500円ずつ集めても半額程度にしかならない。

 パーティーの問い合わせ先は菅総理の事務所になっているものの、菅総理の事務所は朝日の問い合わせに「開催費用を補填したことはありません。また、有志の方々が主催する事業について、連絡先の提供など事務作業をお手伝いすることはあります」と、書面で回答している。

 つまり、現在東京地検特捜部が捜査中の、安倍晋三前総理の「桜を見る会」前夜祭での政治資金規正法違反疑惑と全く同じ構図なのである。

 さらに、菅事務所は毎年同じパーティーを開いているが、2017年以降は政治資金収支報告書にきちんと記載している(2016年は中止)。

 また、菅事務所はこの「春の集い」以外にも「成田山初詣バスツアー」なども行っているが、主催者は「成田山初詣実行委員会」だとのこと。しかし問い合わせ先は菅事務所になっている。

 これについて、神戸学院大学の上脇博之教授は、「有志がやっている会と見せかけて、実質的に菅事務所が主催していた疑念が強い」と答えている。

 2020年12月4日、政治資金規正法を所管する総務省で、武田良太総務大臣の定例会見が行われた。

 会見への参加を申し込んだIWJ記者の携帯電話に、前日の3日夕方、総務省大臣官房政策評価広報課広報室担当者から、会見時間と場所の連絡とあわせて、「あらかじめ質問内容を教えて欲しい」との電話があった。

 IWJ記者が「質問の内容によっては当たらないということですか?」とたずねると、担当者は「そういうことはありませんが、現時点ですでに質問が多く、時間が限られているため…」と言葉を濁した。そこでIWJ記者が、「それは、同じような質問であれば、当てないということですか?」と聞くと、担当者は「整理して同じ質問が重ならないようにします」と、質問内容によって質問者を選別することを、悪びれもせず明らかにした。

 IWJ記者は「週刊誌等で報じられている、菅総理の2014年、15年のホテルでのパーティーについて、政治資金規正法を所管する総務省の、一般的、原則的な法律の適用の基準について」と伝えた。

 4日の会見では主に携帯電話料金値下げについての質問が続く中、会見の終盤で指名されたIWJ記者は次のように質問した。

IWJ記者「週刊誌等で報道のあった菅総理の2014年、15年の横浜市のホテルでのパーティーについておうかがいします。

 報道によると、菅氏の政党支部や資金管理団体の収支報告書に記載がないとのことですが、パーティーの問い合わせ先となっている菅氏の事務所は、『主催は有志による実行委員会で、事務所は連絡先を提供して事務作業をお手伝いしただけ』と回答しているとのことです。

 これについて、政治資金規正法を所管する総務省の長である武田大臣にお聞きします。

 『有志がやっていると見せかけて、実質的な主催をしながら政治資金収支報告書に不記載であれば、政治資金規正法違反になる』という学者の指摘がありますが、パーティーの案内の問い合わせ先となっていても、事務作業の手伝いをしていても、その後別の年には同じパーティーの収支を報告書に記載していても、当事者が『主催者ではない』と言えば、それだけで政治資金規正法には抵触しないという立て付けになっているのでしょうか?

 また、実質的な主催者であったかどうかは、何をもって判断されるのでしょうか?」

 これに対して武田大臣は以下のように答え、続くIWJ記者とのやりとりの中では、薄笑いさえ浮かべていた。

武田大臣「総務省としてはですね、個別の調査権というのは持っていません。具体的な事実関係を承知する立場でないので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います」

IWJ記者「いえ、法律のことをお聞きしたいんです」

武田大臣「個別の、事案についての調査権は…」

IWJ記者「いや、個別のことを聞いているんじゃないんです。法律が、どういうふうになっているかを…」

武田大臣「うん。個別の、調査権は、持っておりませんので、お答えについては差し控えさせていただきたいと思います」

 なお、会見終了後、IWJ記者のもとにひとりの記者クラブメディアの若い記者がやってきて、嬉しそうにこう言った。

記者クラブメディア記者「横で聞いていたんですが、『菅総理の』とか『菅氏の』とは言わず、『ある政治家の事務所でこんな事例があったんですが』って聞けば良かったんじゃないですかね?」

 その記者の首からは朝日新聞の記者証がぶら下がっていた。この日、この記者を含めて他メディアの記者が、政権の疑惑について何らかの質問をした記憶は、一切ない。

■全編動画

  • 日時 2020年12月4日(金)10:55~
  • 場所 総務省・8F会見室(東京都千代田区)

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