【特別寄稿】菅売国政権が臨時国会でスピード成立を目論む種苗法改定に農家の悲鳴! 農水省がデッチ上げた「ペテン法改正」に「菅チルドレン」鈴木直道北海道知事も道内自民党議員も沈黙!? 2020.11.17

記事公開日:2020.11.17 テキスト
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(取材・文:フリージャーナリスト横田一)

特集 種子法廃止!「食料主権」を売り渡す安倍政権
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 GoToキャンペーンのせいで大都市圏だけでなく、日本全国津々浦々までコロナの感染が拡大し、新規感染者が全国的に増え続けている。明らかにコロナの第3波の到来である。

 特にダメージを受けるのは、これから観光のシーズンを迎える北海道である。コロナ禍に加えて、農家に大きなダメージを与える法の改悪案が国会に提出されている。

 種苗法の改悪である。

 実家がイチゴ農家の菅義総理が臨時国会(10月26日~12月5日)で、農家を窮地に立たせかねない種苗法改定をスピード成立させようとしている。

▲菅義偉総理(2019年北海道知事選で、横田一氏提供)

 秋田の雪深き農村から上京した「叩き上げ」「庶民派」「苦労人」のイメージを押し出す菅総理だが、イチゴ農家を含む農家に壊滅的打撃を与え、農薬と肥料と種をセットで販売する米国企業「モンサント」などのグローバル種子企業の利益拡大につながる法改正をゴリ押ししようとしているのだ。

女優柴崎コウさんも警告! 日本の農家が窮地に立たされる種苗法改定! 山田正彦氏プロデュース映画ではイチゴ農家が売り上げに近い苗購入費に「働いている意味がなくなってしまう」と悲鳴!

 そんな「売国奴的素顔」をあわせ持つ菅総理の化けの皮をはぐのが、山田正彦・元農水大臣。上映中のドキュメンタリー映画「タネは誰のもの」(原村政樹監督)の「仕掛け人」で、自らプロデューサーを務め、北は北海道から南は種子島まで飛び歩きながら農家の生の声を紹介している。

▲山田正彦元農水相(2020年10月26日、横田一氏提供)

 映画には、茨城県の若手イチゴ農家の夫妻も登場。まず夫が農園で「勢いがあって形がいいイチゴを『子供』として残し、来年の『親』にする。これを何年か繰り返すことで、いいものでそろうようになる」と説明。

 しかし、この自家採取(増殖)が種苗法改定で禁止されると、毎年苗を購入する必要がある。そこで山田氏が「これ(苗購入)でやっていけますか」と聞くと、夫は「できません」と答えた。

 隣にいた妻も「(苗購入費は)売上に近い。働いている意味がなくなってしまいます」と補足説明をしながら、「自家増殖で作らせていただきたいと思う」と訴えた。

 女優の柴咲コウさんが「このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます」(4月30日のTwitter。現在は削除)と警告し、慎重論が広まって、先の通常国会では継続審議になったが、あの安倍政権ですらためらった法の改悪を、菅政権は十分な審議をしないまま、臨時国会で成立させる構えを見せているのだ。

欧米では当たり前の農家の権利を売り渡す菅総理! 違反すれば3億円の罰金! 共謀罪の対象にも!

 山田氏は改定内容を欧米と比較し、海外では当たり前の農家の権利を手放す菅政権(総理)の「売国奴的姿勢」を浮彫りにもしていた。

 山田氏はこう語る。

 「EUもアメリカも自家増殖一律禁止ではなく、例外がある。主要農産物、コメ・麦・大豆は自家採取している。それなのに(今回の種苗法改定で)日本は一律禁止。そして(違反者には)刑事罰もある。農業生産法人には3億円の罰金で、共謀罪対象にもなる。

 少なくとも主要農産物と営業増殖のものは、EUやアメリカのように例外とし、各地域の特産品、岡山のブドウとか長野県のリンゴとかは地方自治体が条例で定めて例外とする。少なくとも、例外規定を盛り込まないと、大変なことになる。最後まで諦めずに闘う」。

「海外流出防止」はデッチ上げ! 農水省の怠慢を棚にあげた「ペテン法改正」!

 紙智子参院議員(共産党)は10月26日の緊急集会で、必要性をデッチ上げた「ペテン法改正」であることを次のように暴露した。

「(法改正の必要性は)『海外への流出防止』ということだが、『流出防止のためには海外で登録するのが唯一の対策』と農水省自身が言っていた。それを怠ったために海外流出が起きた」。

 農水省の職務怠慢を棚に上げて、自家増殖禁止の法改定をするのは「支離滅裂」「本末転倒」なのだ。

 農学博士で前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員も緊急集会で挨拶。菅政権の不可解さをこう批判した。

 「農というのは、地域の水と土に何百年、何千年、あわせてきたもの。これだけ『地方が大事だ』と言っている時代に、まさに地域の農の足元を壊すようなことを政府がやるのは想像できない」。

▲嘉田由紀子参院議(2020年10月26日、横田一氏提供)

 続いて嘉田氏は「地域から反対の狼煙をあげていくことを目指している」とも宣言し、「国会の力と地域の力を合わせて、あまりに理不尽な、未来の日本の農業、農地を潰すような法案を阻止できるようにしたい」という意気込みも語った。

法改正に地方からも反対の声! 効果のない法改正は、海外流出防止策を怠った農水省による不作為の上塗り!?

 野党国会議員が対決姿勢を強める中、地域から反対の狼煙が上がった。種苗法改正案(改定案)が衆議院農水委員会で審議入りした11月12日、北海道の市民団体「北海道たねの会」(代表は久田徳二北海道大学客員教授)は道庁内で記者会見、「十分な情報を提供した上で、年月をかけて議論すべきだ」と慎重な審議を求めたのだ。

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 久田氏も先述の紙議員と同じ見方を披露。海外への流出防止には外国での品種登録をする以外に方法はないと強調し、国内法の種苗法改定では防げないと指摘したのだ。

▲久田徳二北海道大学客員教授(2020年11月12日、横田一氏提供)

 11月17日の京都新聞も「法律を作っても効果ないと政府自ら認める ではなぜ急ぐ、種苗法改正案の採決」と銘打った記事を出し、こんな疑問を投げかけた。

 「海外での品種登録の必要性は農水省も過去に認めているが、なぜか着手されていない。改正法案は怠慢ともいうべき不作為を糊塗するのが狙いなのか、と邪推してしまう」

「自家増殖禁止となる登録品種は農産物の1割」のウソ! 北海道産作物の登録品種は、コメ82%、小麦99%、大豆86%!

 農水省のウソは他にもある。種苗法改定で自家増殖禁止となる登録品種は「農産物の1割」と農水省は説明しているが、久田氏は過小評価もはなはだしいと、こう批判したのだ。

 「道内で作付けされている作物のうち、登録品種の割合はコメで82%、小麦99%、大豆86%です」

 北海道内の市町村議会の4割が、改正案について「廃案」「慎重審議」「取り下げ」を求める意見書を採択したことも明らかになった。意見書採択という形で、地域から反対の声が上がったのだ。

 このことについて同会のメンバーで北海道農民連の富沢修一書記長は、次のように語った。

 「正直、これだけ多くの議会が採択してくれるとは思わなかった。多くの議会は慎重審議を求めている。『北海道の基幹産業の農業を守るためには、種苗法改定が非常に問題があるのだ』という現れと思っている。

 短い期間で4割の議会が採択することは、関心が高いのだと思うし、農協の中にも改定に危惧を持っていたり、反対している組合長もいる。必要なのは、議論をしながら進めることが大切だと思う。よく知らない人が多いのも事実だ」。

種苗法改定は北海道の基幹産業である農業に大打撃! それでも反対の声をあげない「菅チルドレン」鈴木直道知事と自民党議員!

 しかし鈴木直道知事の動きは鈍い。菅総理とは同じ法政大学卒で、初当選をした北海道知事選の際には、菅総理が応援演説に駆け付けるなど、支援を受けた。

 「菅チルドレン」と呼ばれるのはこのためだが、政権トップと太いパイプを有する鈴木知事が、北海道の基幹産業の農業に大打撃を与えかねない種苗法改定になぜ反対しないのか。パイプがあるからこそ、北海道の農民の反対の意志を直接、菅総理に伝えるべきではないのか。

▲鈴木直道北海道知事(2019年の道知事選で、横田一氏提供)

 「北海道たねの会」の記者会見で、久田氏らが説明を終えた後の質疑応答で聞いてみた。

横田一「鈴木直道知事は、北海道の農業に大打撃を与える種苗法改定について何か言っていないのか?」

久田代表「まだ聞いていない」

横田「(基幹産業が農業の北海道)知事の立場からすると、何らかの反対意見を言わないとおかしいのではないか?」

久田代表「是非、そうしていただきたいと思う。期待はしている」

横田「今まで、『おかしい』と疑問を呈していたり、菅総理とパイプが太いので『菅さんに何か言った』とかいう情報はあるのか?」

久田代表「そういう情報はない。これから道議会でも議論をしていただきたいと思っていて、道議会で何らかの意見書を出してもらえないかと請願をするつもりです。何らかの意見をあげていただきたいと思っている」

横田「自民党議員が『なぜ種子法廃止したのだ』と言って、(廃止された種子法に代わる)条例化に賛成したという話を聞いているが、今回の種苗法改定については、道内の自民党国会議員は疑問呈示とか異論を口にしていないのか?」

久田代表「まだ自民党議員とは議論はしていない。ただ本日(11月12日)の衆院(農水委員会)の様子を見ていますと、おおむね与党国会議員はとにかく『通すのだ』というふうに動いているので、道議会の与党の皆様が『ちょっと待った』と言えるのかどうか。ちょっと難しいところではあるとは思う」

農水省が国会議員にしつこく個別説得工作!? 海外企業に国富を売り渡す新自由主義売国政策を国会でゴリ押しする菅政権!

横田「背景としては、菅総理の新自由主義路線で、とにかく種子法廃止から種苗法改定に無理やり持って行って、海外の(種子)大企業を儲けさせる改定をしようという流れに、道内含めて農業地帯の国会議員が口を挟めない状況なのか?」

久田代表「大きな新自由主義の背景があるは、その通りだと思う」

横田「野党の中には立憲民主党を含めて『今回の改定には賛成』と言っている国会議員もいるが、これはどう解釈したらいいのか?(注 立憲民主党は党内論議を経て反対となったが、国民民主党は基本的に賛成)」

久田代表「もう少し議論をしていただきたいと思っているが、農水省が国会議員に個別に説得工作をこの夏から秋にかけてしたようで、前国会(通常国会)で審議入りができなかったので、農水省としては沽券にかかわると思ったのでしょうが、かなり個別にしつこく(官僚が議員を回って『ご説明』を)やったらしくて、それで『問題ない』と思った人が賛成に回った。よくよく自分の頭で考えて欲しいと思う」

横田「道内の生産者の方で、種苗法改定に反対の声をあげている方は沢山いるのか?」

久田代表「沢山いる。この『北海道たねの会』の世話人の方はもちろんだし、『北海道農民連』(富沢修一書記長が会見に同席)の傘下には沢山の農家の方がいる。私たちが一緒にやっている農民連盟の傘下にも『盟友』の方がいます。(道内の農家の)ほとんどの方が反対の立場だ」

安齋由希子氏(「北海道たねの会」世話人)「種苗法改定を知らない人たちが自家採取をしてしまった場合、どうなるのかと知らない人も多いと思う。現場の農家の方が知らないことが問題だと思います」

 秋田出身で、しかも「イチゴ農家」出身を「売り」にして「地方重視」の姿勢をアピールする菅総理だが、一皮むくと、地方の農家に壊滅的打撃を与える一方、「種を制するものは世界を制する」という企業戦略のグローバル種子企業が儲かる政策を進める「売国奴的政権(総理)」の正体が露呈してくる。

 第二次安倍政権下ではカジノ関連法案が強行採決され、国富が流出する拠点となる賭博場を海外カジノ業者に提供することになったが、アベ政治継承の菅政権もグローバル巨大企業に国富が流れる法改正を強行しようとしているのだ。

 これに対抗するべく北海道だけではなく、全国各地から反対の声が次々と上がる可能性も十分にある。

 日本学術会議の任命拒否問題で「異論排除で国策ゴリ押し」の独裁的姿勢が露わになった「令和ヒトラー」と呼ぶのがぴったりの菅総理が、「日本の農家よりグルーバル種子企業を優先する『売国奴的政権』ではないか」といった批判を受けてもなお、種子法改定を臨時国会でゴリ押しするのか否かが注目される。

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