【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート第3弾! ロックダウン緩和期の英国の実像!! 第2波への懸念!!~(その4)国境開いて旅行再開するも、隔離対象国が二転三転で大混乱編 2020.11.6

記事公開日:2020.11.6 テキスト
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(藤田早苗)

 ロックダウン中と、ロックダウン緩和が始まった時期の英国から、第1弾と第2弾のレポートを寄稿していただいた、エセックス大学人権センター・フェローの藤田早苗氏から、第3弾となる、ロックダウン緩和時期以降のレポートが届いた。

 長文の寄稿なので、6回に分けて、ロックダウン緩和時期の英国の状況を連日お伝えしている。今回は短期集中連載第3弾の4回目である。

 1回目は、教会や衣料品店、飲食店の再開、「英国版Go To Eat」政策等。2回目は芸術文化と若者への支援、コロナと肥満で「死にそうになった」ジョンソン首相が主導する、コロナ対策としての肥満対策等をお伝えした。

 3回目では、ロックダウン時期に急増した自転車利用やガーデニングが英国人を癒したことなどをお伝えした。

▲「イギリス人観光客がフランスから逃げる」と報じる新聞。(藤田早苗氏提供)

 4回目の今回のテーマは、ロックダウンが緩和されて欧州各国との往来が再開し、夏のバカンスで英国人がギリシャやフランスなど各国に旅行を始めた際の混乱である。「英国に帰国したら2週間隔離」が課される国と、免除される国の指定が頻繁に変わったことから、旅行先のフランスから「集団脱出」するため、英仏トンネルに長蛇の列ができたりなどの状況が詳しくレポートされている。

 日本政府は、10月から国内旅行支援の「Go To Travel」を東京に拡大するとともに、(その1)でもお伝えしたように、海外からの入国制限も順次緩和し始めている。アジア太平洋諸国16ヵ国・地域を対象に、海外と日本双方のビジネスパーソン等の日本への入国・帰国時の14日間待機を順次緩和、11月1日時点で10ヵ国で緩和した。11月1日からは日本居住のビジネスパーソンを対象に、原則として全世界の国・地域の短期出張からの帰国・再入国時の14日間待機を緩和している。欧米の感染爆発の現状を理解しているとは言いがたい鈍感さである。

 以下は藤田氏の5月の第1弾と6月の第2弾レポートである。こちらもぜひ御覧いただきたい。

(前文・IWJ編集部)

英国人は8割がパスポート保有、毎夏海外へ!日本人は25%以下

 もう1つ話題によく出るのが「ホリデー(休暇)」だ(編集部注:前回は英国で春になると人々の会話によく出る話題としてガーデニングが取り上げられた)。イギリスでは夏に2週間、冬に2週間の休みを取るのが平均的のようだ。日本のように、「お盆に一斉にみんなで休む」というのとは違って、職場の人と調整して7月と8月のどこかで自分で決めて休暇を取る。つまり、大学も銀行も市役所も、順番でいつも誰かが休暇で不在だが、夏の間もずっと運営している。

 そして、多くの人は家族で旅行に行く。それも多くが海外に、だ。日本ではパスポート保有率は25%以下。4人に1人しか持っていないという。ビザなしで入国できる国が150以上もある最強のパスポートの一つなのに、これはもったいない話だ。経済的に余裕がないこともあるだろうが、思考が内向きになっているのも理由ではないか、と少々気になる。

 一方、イギリスでは約8割の人がパスポートをもっているということだ。つまり、人々はそれだけあっちこっちでかけていく。特に夏は、スペイン、フランス、イタリア、ポルトガル、クロアチア、ギリシャなどに太陽を求めてホリデー、というのは定番だ。

 樺太よりも北に位置するイギリスでは、夏でも海水浴ができるほど気温が上がることはあまりない。数年前には7月でも寒くて暖房を使ったことがある。そして、天気もよくない。だからみんな、夏らしい休みを楽しむために欧州の南に行くのだ。家族連れも多い。そしてこれらの国にとっても、イギリスからの旅行者は大事な収入源だ。

▲フランス・ニースの海岸(Wikipedia)

▲クロアチアの世界遺産ドゥブロヴニク旧市街(Wikipedia)

ロックダウンした英国や欧州各国は7月から国境を開き、バカンスへ!!

 周知のように欧州各国ではコロナのために春からロックダウンが続いた。3か月間、どこの空港もほぼ休止状態だった。そして、今年の観光業はどうなるか、ホリデーはどうなるか、ということは早くからニュースでも話題になっていた。

 そんなとき、ギリシャ政府の「イギリスからの観光客をお待ちしています」というメッセージがニュースで紹介された。ギリシャは早くから国境を封鎖して、感染率も低く抑えていた。そして、夏には国境を開けて、バカンス客を迎える、という方針を明らかにした。

 そして7月にはイギリスも含め、感染のピークを乗り越えた多くの欧州の国は国境を開き始めた。そしてフライトが少しずつ再開され、人々は本当にホリデーのために渡航を始めた。

 イギリスからの最初の観光客がギリシャについた時、「ギリシャ人はイギリスからの観光客が戻ってきてくれて本当にうれしいです。イギリスからの私たちの友達がきてくれることを、いつもよろこんでいます」とギリシャの観光省大臣が喜びを伝えたのが報道された。ギリシャだけでなく、だんだんに人々は海外でのホリデーを開始し始めた。

▲ギリシャのパルテノン神殿(Wikipedia)

「帰国後2週間隔離」免除国から、ポルトガル、スペインが続々外される!

 感染状況で「イギリスに帰国したら2週間の隔離」が課される国と、免除される国がある。当然人々は免除される国を選ぶので、免除リストから外された国の観光業者は打撃を受ける。

 最初、ほとんどの欧州の国が免除リストにあった。しかし、ポルトガルはその感染率から判断して外されたため、イギリスからの観光客を当てにしていたポルトガルのホテル営業者が嘆いていた。

▲ポルトガル・リスボン市街(Wikipedia)

 しばらくして、スペインのバルセロナ周辺の感染率が上がり、スペイン全土からの帰国者が2週間の隔離対象になった。「国の一部だけが問題なのに全土に適応するのはおかしい」という声も多かったが、細分化はされない。

▲スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア教会(Wikipedia)

フランスからの集団脱出! 同国が免除から外れる朝、英仏海峡トンネルは長蛇の列!

 次に、フランスが怪しくなってきた。ロックダウンを緩和してからどの国も感染者数が上がってきたが、フランスはその増加率が激しかった。そして案の定、免除リストから外されることになった。

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