2020年5月1日(金)午前9時30分より、千代田区永田町の厚生労働省会見室にて、加藤勝信厚生労働大臣が定例記者会見を開いた。加藤厚労大臣より6件の報告があった。
まず昨日、令和2年の補正予算が成立し、厚生労働省補正予算は一般会計7270億円、労働保険特別会計9101億円の計1兆6371億円の追加額であることが報告された。続いて、妊娠中の女性労働者が就労しつつ安心して子どもを産み育てることができる環境を整備する目的の「母性健康管理措置」の指針改正に関する説明がなされた。この改正は現在の新型コロナ感染拡大の状況下で、妊娠中および出産後1年を経過しない女性労働者が感染の可能性の低い、あるいはその不安を感じることが少ない態勢に移りうることを考慮しているという。
3つ目に雇用調整助成金相談・申請窓口が5月2日から6日の連休中も全国434か所のハローワークなどで電話相談を受け付けていることが伝達され、その次に、医療従事者(医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師など)が今日の状況においてタクシーの乗車拒否やその子女が保育園の通園を断られるなどの偏見と差別にさらされていることに対し、正しい理解と行動を啓発するポスター、チラシを作成したとの告知があった。
また、妊婦さん向け布マスクの汚損や異物混入についての説明もなされた。報告されている不良品について専門家が調査中であり、判明している事実では、黄ばみは生地本来の色であって害はないこと、カビの疑いに関しては培養をして精査しているため検査にまだ時間がかかることが報告された。これまで妊婦さん用マスクは47万枚が発送され、不良品の報告(先述の黄ばみも含む)は4万6934件あったという。現在このマスクのほとんどは市町村でとどめられているが、これは国に返送され、改めて5月中旬から新しいマスクが配布される予定であるという。
最後に、患者と医療従事者双方の感染防止と、受診者の利便性を考慮した初診からのオンライン診療について、厚労省ホームページで4月24日より全国の実施医療機関を公表している旨の報告がなされた。電話やオンラインでの診療を実施している医療機関は4月30日の時点で1万1739か所、そのうち4904か所では初診から電話・オンライン診療を行っているとのことである。
そののち四件の質疑応答があった。記者の、「昨日首相が緊急事態宣言を延長する方針を表明したが、行動制限に対する評価や延長の必要性についてどう考えるか」との問いに対し加藤大臣は、「昨日の会見や国会でのやりとりの中で総理は専門家の皆さんにデータの見極めをいただいて最終的に判断するということを言われたと承知している。私もこれから行われる専門家会議で行動変容がどうなっているのか、今後どのような対応を取っていけばよいのか、その意見をいただけることになっている」と答えた。
また、布マスクにこのような不良品があったことについて尋ねられると、「大変残念なこと。今後こうしたことがないよう、私どもにおいても納入の企業においても、厳格な検品と製品管理で妊婦の方々はじめ皆さんが安心して布マスクを使っていただけるよう努力する」と述べた。そのほか、高齢者施設での集団感染が発生し、その地域で連鎖的に訪問介護やデイサービスが休止するような事態に関して現状認識と対策を問われ、加藤厚労大臣は、「重症化しやすい高齢者、基礎疾患を持つ方々への感染防止は重要。予算措置において、介護施設の個室化、消毒経費、簡易陰圧装置や換気設備などへの補助も今回の補正予算からの交付で対応していく」などと回答した。
今回の加藤厚労大臣会見は遅れて始まり、報告も多く、直後に専門家会議が控えているとのことで質疑応答が短く切り上げ気味で、IWJ記者には質問する機会がなかった。
IWJでは、「昨日の参院本会議で安倍総理が感染者数を把握していなかったことが明らかになりましたが、行政府の長、内閣の首長がこのような状態で大丈夫でしょうか」「加藤厚労大臣は昨日の参院予算委員会での答弁で『PCR検査は1日2万件やる能力はありますが、検査をするとは言っていない』とおっしゃいましたが、4月6日の対策本部会議の席上、安倍総理は「1日2万件の検査を行う」と言明しました。これは閣内不一致ではないでしょうか。それとも安倍総理が虚偽を述べているのか、誤っているのか、これらのことについてお考えを伺いたい」などの質問を用意していたが、加藤厚労大臣に直接問うことが出来なかったのは残念であった。