安倍政権の国家戦略特区制度を使って、2018年4月、国内で52年ぶりに新設された加計学園の岡山理科大学獣医学部。不自然なほどスムーズに開学できた背景には、安倍晋三総理と加計学園理事長・加計孝太郎氏の強い結びつきや、周囲の人間による思惑や忖度などが浮かび上がる。行政のあり方が強く問われる問題であり、国民の疑念はいまだに払拭されていない。
その加計学園の拠点である岡山の地方新聞が山陽新聞だ。岡山県内でのシェアは約6割で影響力も大きいが、「加計問題での報道姿勢がおかしい」と指摘されている。他紙と比較して、加計問題の記事の扱いが小さく、報道を批判しようとする「圧力」あるいは自発的な何らかの「配慮」があるのではないか、というのだ。
2019年2月8日、日本新聞労働組合連合(新聞労連)と山陽新聞労働組合(山陽労組)が主催するフォーラム「前川喜平さんと考えるメディアのあり方 ~これでいいの?山陽新聞」が、岡山市勤労者福祉センター(岡山市北区)で開催された。元文部科学省事務次官の前川喜平氏が、加計学園の獣医学部新設問題について講演し、後半は、山陽新聞の加計学園問題に対する報道姿勢などについて、ジャーナリストの三宅勝久氏らを加えたパネルディスカッションを行った。
前川氏は一連の加計問題を、メディアとの関わりという視点で振り返り、「加計問題は忘れてはいけない。安倍政権は『国民は愚か者』だという認識で、問題を長期戦でうやむやにする。国民はいずれ忘れると思っているのだ。しかし、権力者が国民を裏切った大きな事件を、私たちは忘れちゃいけない」と呼びかけた。
山陽新聞の記者であった三宅氏は、山陽新聞会長の越宗(こしむね)孝昌氏と同じ名前が、加計学園のホームページに理事として掲載されていることを発見した。山陽新聞に問い合わせたところ、「わかりかねる」と電話を切られたという。その後、労使交渉の場で「加計問題への報道姿勢が抑制的な理由は、越宗さんか?」と問うと、経営側が「会長が加計学園の理事を務めていることは関係ない」と答えたため、同一人物だと確信。「これは、日本のジャーナリズムの歴史の汚点になるのではないか」と口調を強めた。
前川氏は、「越宗氏が加計学園の理事なら利益相反になる。加計を追及すべき人が、加計の内部の人間とは大問題。理事を辞めるべき。山陽新聞の公平性が問われる」と断じた。
前川氏には岩上安身が3回にわたりインタビューを行っている。ぜひ、こちらもあわせてご覧いただきたい。
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