「伝えなければいけないことがあるんです」――ISによる殺害から1年、教会仲間が語るジャーナリスト・後藤健二さんの「志」!憲法改正「前夜」、我々は後藤さんの死を忘れてはならない! 2016.2.1

記事公開日:2016.2.2取材地: テキスト動画
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(取材・写真・記事 原佑介)

※2月2日テキストを追加しました!

 「伝えなきゃいけないことがあるんです。伝えるためには、そこにいかないとダメなんですよ」――。IS(イスラム国)に殺害されたジャーナリスト・後藤健二さんは、同じキリスト教会に通う仲間にこう話していたという。

 後藤さんを人質にとったISが、後藤さんの殺害映像を流したのは、日本時間の2015年2月1日、早朝5時頃だった。最悪の結末を迎えてからちょうど1年経った2016年2月1日、東京・JR四ツ谷駅前で「憎しみの連鎖を断ち切ろう!後藤健二さんの死を忘れない2・1サイレントアクション」(主催・解釈で憲法9条を壊すな! 実行委員会)が開催された。

 直に雨も降ろうかという灰色の寒空の下、約120名の参加者(主催者発表)はキャンドルに火を灯し、静かに後藤さんを追悼した。参加者の中には、キリスト教徒だった後藤さんが通っていた教会の仲間たちの姿もあった。

▲横断幕を掲げ、平和を訴える「平和を実現するキリスト者ネット」

■ハイライト

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後藤さんを追悼する言葉「後藤さんの死を忘れない」「憎しみの連鎖を断ち切ろう」「平和のために行動しよう」

 キャンドルを包む紙コップには、「後藤さんの死を忘れない」「憎しみの連鎖を断ち切ろう」「平和のために行動しよう」などとメッセージが書かれていた。また、「I AM KENJI」「敵を作らない外交こそが日本人を守る」といったプラカードも掲げられた。

▲「平和のために行動しよう」「武力で平和作れない」

▲思い思いのプラカードを持ち寄って後藤さんを追悼する参加者

▲後藤さんが生前に残したコラムの一節を紹介したプラカード

高田健さん「日本政府は今の方針を改め、貧困、差別、戦争をなくす方向へ」

 「後藤さんが殺害されて1年経った今も、状況が変わっていない」――。

 「解釈で憲法9条を壊すな! 実行委員会」の高田健さんはIWJのインタビューに応じ、この日の集会を呼びかけた理由について、「もしかしたら今も日本のジャーナリストが捕まっている可能性すらある状態で、このまま黙っていることはできないと思った」と語った。

 捕まっている可能性があるというのは、フリージャーナリストの安田純平さんのことだ。安田さんは内戦取材のために昨年6月下旬にシリア北西部イドリブ県に入ったとみられているが、ほどなく音信が途絶えている。

 高田さんは、「特に日本政府はこの間、(対ISの)有志国を応援してきましたが、報復戦争ではテロは解決しません」と訴え、「日本政府は今の方針を改めて、貧困、差別、戦争をなくす方向にいってもらいたいが、安倍総理は、次の参院選で3分の2をとったら改憲すると言っている。より一層、戦争する方向に日本を進めようとしているんです」と懸念を示した。

菱山南帆子さん「同じ悲劇を繰り返さないためにも、後藤さんの意志を引き継ぎ、徹底した平和外交を」

▲「解釈で憲法9条を壊すな! 実行委員会」菱山南帆子さん

 同じく主催の菱山南帆子さんはIWJのインタビューに、「後藤さんの死を忘れず、同じ悲劇を繰り返さないためにも、後藤さんの意志を引き継ぎ、徹底した平和外交をしなければなりません」と訴え、「戦争、貧困、差別をなくさない限り、テロはなくならない」と主張。安倍政権こそが「戦争、貧困、差別」を助長していると批判した。

 その安倍政権に歯止めをかけるには、今夏の参院選がひとつの転機となる。1月24日投開票の八王子市長選では、五十嵐仁候補(社民・共産支援)の応援に尽力した菱山さん。結果は現職の石森孝志市長(自民・公明推薦)が再選を果たしたが、菱山さんは「票を分析すると、自民党候補は票を落としているんです」と分析した。

 「まず、投票率を上げなければいけない。そのためには『権利意識』を上げなければいけない。私たちには投票する権利も声を上げる権利もあるが、権利意識を持たないと、権力に奪われてしまう。自民、公明の(固定)票は限られているので、それを上回るほどの『選挙に行かなかった層』が動けば、絶対に世の中は変わる。野党共闘は必要ですが、一人ひとりが投票に行き、立ち上がることで、野党にもプレッシャーがかかると思います」

後藤さんが通った教会の牧師「キリスト教もイスラム教も仏教も、これからの時代は協力して、平和のためにできることがある」

▲後藤健二さんが通った「代々木上原教会」の牧師

 集会には、「平和を実現するキリスト者ネット」も参加。後藤健二さんが礼拝に通った「代々木上原教会」の牧師の姿もあった。「平和のために行動しよう」との文字が浮かび上がったキャンドルを手に、静かに立っていた。

 「後藤さんは本を何冊も出しているので、教会で、みんなで読みました。後藤さんの本で多くの色んなことを知りました。教会で講演会もしてもらったこともあります」

 IWJのインタビューに、牧師は「後藤さんは色んな地域に行っていましたので、どこで何を見た、というお話はいつも聞いていました。『現地の子どものために学校を作ろう』などとも言っていました。彼の志は『平和の構築』です」と語った。

 また、「武装地域に入るからといって『武力』と結びつけられることもありますが、それはまったく違う」と指摘し、「論調として、『危険なところになぜ出かけていたのか』というものがありますが、そんな論調で済まされては困る」と憤る。

 「危険な地域の現場に入らないとわからないことがあります。大手メディアは、危険なところに飛び込んだ人から記事を買って、報道しているわけですから。危険な取材をさせておきながら、(死後に)誹謗するのはおかしいと思います」

 牧師はさらに、イスラム教に対する誤解が広がっていることにも懸念を示した。

 「僕の教会のすぐ近くに東京ジャーミイ(モスク)があります。そこの皆さんと行き来して、交わりを持っているんですね。『イスラム教』という言い方で、全部くくるのは悲しい。何も知らない方は、(いわゆる過激派を見て)『イスラム教は怖い』となってしまうが、決してそうではない。キリスト教もイスラム教も、仏教も、これからの時代は協力して、何か平和のためにできることがあると思っています」

思い出す後藤さんの言葉「伝えなきゃいけないことがあるんです。伝えるためには、そこにいかないとダメなんですよ」

▲後藤健二さんと同じ教会に礼拝で通ったという、西東京市在住の女性

 後藤健二さんと同じ「代々木上原教会」に通っていたという西東京市在住の女性は、後藤さんについて、「穏やかな人でした」と振り返る。

 「でも、私たちとしては、危険地帯に行くのが心配だから『気をつけてね、気をつけてね』と、繰り返し伝えていました。後藤さんは、『伝えなきゃいけないことがあるんです。伝えるためには、そこにいかないとダメなんですよ』と、はっきり、強くおっしゃっていたのを覚えています」

 女性は続けて、「一番印象に残っているのは、後藤さんがルワンダのお話をしてくださったことです」と回想した。

 「ルワンダの内戦で、近所に住む人に自分の夫を殺されたという女性がいたそうです。その女性は今、平和のために国会議員として働いているのですが、『許す』ということがとても難しい、と言っているんだそうです。でも、『許さずに報復にしてしまえばまた同じことの繰り返しだから、我慢して生きている』と。後藤さんがそう話してくださったのが、すごく印象的でした」

 数々の戦場を取材した後藤さんは、ルワンダも取材し、『ルワンダの祈り―内戦を生きのびた家族の物語』(汐文社)を著している。

目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。それは祈りに近い――4万リツイートを超え、今なおリツイートされ続ける後藤さんのツイート

 女性はさらに後藤さんの思い出を振り返る。

 「私が『他の集会でも話してくださる? お礼があまり出せないんだけど』と聞くと、後藤さんは、『お礼なんかいいですよ、聞いてくれる人がいれば、いつでも行きますよ』とおっしゃってくれて。実際に10数人の小さな会にきてくださいました。『いい人だったなぁ』と思いますよね」

 ISによる人質事件発生の報を受け、女性は「信じられない」と思ったが、赤い囚人服を着てカメラを見つめている姿を見て、すぐに後藤さんだと確信したという。

 「昨年2月1日の早朝、胸騒ぎがしてテレビをつけたら…。本当に辛かったですね。殺されるというのは、人が死ぬのとは全然違う。殺すというのは、生きている人の命を断つということだから」

 そのうえで、「テロでも戦争でも大勢が殺されています。日本政府は、(後藤さんのように)捕われた人を助けることもある、と言って『戦争法』を作りました。そうした動きに抵抗していかなければいけないと思って、今日はここにきました」と胸中を語った。

 ルワンダの女性議員の話は、後藤健二さんの有名なツイートを思い起こさせる。

 「目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。それは祈りに近い。憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。-そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」――後藤さんのこのツイートは、1年間のあいだに4万リツイートを超え、今もリツイートされ続けている。

 日本は今、平和憲法を破壊する改憲「前夜」の危機にあり、後藤さんが志した「平和の構築」とは真逆の道を突き進もうとしている。我々は、平和を願った後藤さんの死を忘れてはならない。

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