「ホルムズ海峡に、どの国が機雷を仕掛けるの?」 新安保法制シンポで佐藤優氏が指摘──「安倍首相にとって『集団的自衛権』は言霊信仰」 2015.4.3

記事公開日:2015.4.10取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集 集団的自衛権
※4月10日テキストを追加しました!

 「安倍首相にとっては『集団的自衛権』という言葉が重要。これは言霊信仰にほかならない」──。元外交官の佐藤優氏は、安倍首相が集団的自衛権に固執する理由を心情面に見出せる、とした。

 新外交イニシアティブ(ND)は、2015年4月3日、東京・永田町の衆議院第1議員会館で、「安保関連法を考える」と題してシンポジウムを開き、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏とND理事で元内閣官房副長官補の柳澤協二氏がゲストとして登壇した。

 佐藤氏は、集団的自衛権の行使容認など、安全保障法制を新しくする議論の中では、「起こり得ない事態がでっち上げられ、自衛隊の海外活動枠拡大の必要性が叫ばれている」とし、安倍政権が、中東・ホルムズ海峡での機雷掃海で、イランを無理に敵対視していることを、皮肉を込めて批判した。

 「一体、どこの国が機雷を仕掛けるのか。『イスラム国』は海軍を持っていない。『イランが…』という声が聞こえてきそうだが、米国は先頃、核の問題でイランと合意できたと大喜びしたではないか。米国は『イスラム国』対策で、イランの力を頼っているのが実情だ。そんな中で、イランを敵視する議論を繰り広げるのは、まさに、神秘の国ニッポンだ」

 柳澤氏は、「2015年3月20日に自民、公明の両党が合意した新安全法制の方針には無理がある」と口調を強め、活動枠を広げる5つの分野についても、それぞれの問題点を挙げた。

 新安保法制での公明党の役割については、佐藤氏と柳澤氏の見解は大きく異なるものだった。佐藤氏は、集団的自衛権をめぐる閣議決定において、「公明党が、集団的自衛権の行使のハードルを引き上げた」と評価する。一方、柳澤氏は、「公明党は、安倍政権のやろうとしていることに妥協しているに過ぎない。『自分たちがいれば、本当の戦争はさせない』という公明党の主張は、不真面目だと思う」と断じた。

記事目次

■ハイライト

  • 登壇者 佐藤優氏(作家、元外務省主任分析官)/柳澤協二氏(ND理事、元内閣官房副長官補)
  • 司会・コーディネーター 猿田佐世氏(ND事務局長、弁護士)
  • 日時 2015年4月3日(金)18:00~19:45
  • 場所 衆議院第一議員会館(東京・永田町)
  • 主催 新外交イニシアティブ (ND)(詳細

柳澤氏「後方支援は、間接的な敵対行為」

 最初に登壇した柳澤氏は、新たな安保法制の関連法案の骨格で、各法案に反映させる、1. 国際法上の正当性、2. 国会関与などの民主的統制、3. 自衛隊の安全確保、の3つの方針について、「どれも実現不可能」と一蹴した。

 その理由を、「米国の支配力の大きさを背景に、国際法がガタガタになっている中で、国際法の正当性など、どうやって保障していくのか」と述べ、米軍の作戦は秘中の秘であり、事前承認による国会の関与は形骸化せざるを得ないことも指摘。「自衛隊は、銃を使う仕事をやろうとしている。その中で、安全性をどう確保していくのか」と疑問を呈した。

 この3方針の下で拡大する、自衛隊の海外活動の5分野にも懸念が表明された。まず、自衛隊法の改正が必要とされている、平時ではないが有事には至っていない、いわゆるグレーゾーン事態への対応について、柳澤氏は、「米軍など他国軍の武器の防護を命じられた自衛隊の判断で、事態が展開する場面が生じる。つまり、米軍と某国軍の戦闘状態に自衛隊が入っていくことに、いかに歯止めをかけるかが大きな課題になる」と説明した。

 周辺事態法の改正で、朝鮮半島有事といった、従来の地理的制約が見直されることについては、「言うまでもなく、自衛隊の活動範囲は広がるわけだが、問題は、周辺事態法の改正で登場する『重要影響事態』という新たな概念が、どんな意味を持つかだ」とし、次のように述べた。

 「中東から日本につながるシーレーンの防衛を、自衛隊が各国の海軍と協力して行う時に、その海軍が交戦状態に入ったら自衛隊が後方支援する、という意味があると思う。だが、日本による後方支援は、交戦の相手国からすれば、日本は敵対行為をしていることになり、その国に、日本への攻撃を正当化する理由を与えることを意味する」

政府に「自由裁量」を与えていいのか

 他国軍の前線部隊への弾薬輸送が可能になることについては、「相手国は、輸送中のトラックを攻撃するに違いない」と、柳澤氏は自衛隊のリスクが高まることを強調。活動の場を従来の非戦闘地域限定から、将来的に戦闘現場になり得る場所にまで広げることも、新たなリスク要因に挙げた。

 最大の焦点である、自衛隊法と武力攻撃事態法の改正による「集団的自衛権」については、昨年2014年7月の閣議決定で決まった「日本の存立が脅かされる明白な危険」などの武力行使の新3要件が、「まったく具体化されていない」と厳しく批判した。

 柳澤氏は、「国の存立が脅かされると判断する時に、何を基準にするのか」と言い重ね、閣議決定から9ヵ月が経っても、その基準が示されない現実を、「そもそも、具体化が不可能な、無理筋の議論をしているからだ」と解説。「つまり、その時々の政府の自由裁量になることを意味しているわけだが、本当にそれでいいのか。そこを考えることが一番大事だ」と主張した。

(…会員ページにつづく)

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