日米および東アジア各国における外交・政治に新たな視点を見出し、恒久的平和構築をめざすシンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」が、設立一周年を迎えた。これに合わせ、初の編著となる『虚像の抑止力―沖縄・東京・ワシントン発安全保障政策の新機軸―』(ND編・旬報社、2014年8月)の執筆者4人をパネリストに迎え、11月13日、衆議院第一議員会館で出版記念シンポジウムを開催した。
(取材・記事:IWJ・松井信篤、記事構成:IWJ・安斎さや香)
日米および東アジア各国における外交・政治に新たな視点を見出し、恒久的平和構築をめざすシンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」が、設立一周年を迎えた。これに合わせ、初の編著となる『虚像の抑止力―沖縄・東京・ワシントン発安全保障政策の新機軸―』(ND編・旬報社、2014年8月)の執筆者4人をパネリストに迎え、11月13日、衆議院第一議員会館で出版記念シンポジウムを開催した。
記事目次
■ハイライト
ND理事であり、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏は、「抑止力とは相手が攻めてきた場合、もっと酷い目に合わせるという脅しの本質である」と断言。使う気がないものは抑止力にはならないと説明し、仮に尖閣諸島で有事が起きた場合、米国が海兵隊を使う意思は全くないと分析した。
他方で、今年2014年7月、防衛省は辺野古基地ができるまでの数年間、米軍オスプレイの訓練移転を佐賀県知事に要請。その後、一部報道では、移転がオスプレイの配備だけにとどまらず、海兵隊の移駐や、米軍機訓練の長期化をも計画していると報じられている。
これについて柳澤氏は、安倍政権がこれまで、抑止力を維持するためと言い沖縄配備の必要性を主張してきたことに言及し、「数年間、沖縄にいなくて、どうして抑止力が担保できるのか」と、安倍政権が抑止力を突き詰めていない姿勢であるにもかかわらず、抑止力の向上を説明することに異を唱えた。
また、安倍政権は集団的自衛権行使のリスクについて全く言及せず、抑止力が上がると思い込んで思考停止していると厳しく批判した。
ND理事でジョージ・ワシントン大学教授のマイク・モチヅキ氏は、米軍海兵隊の駐留、基地建設を正当化している抑止力の使い方が、抽象的で本質から論点をずらすと指摘。自身がこれまで検証してきた、実際の抑止力が関係するシナリオによる、韓国、台湾、自衛隊の状況について解説した。
日本において、沖縄の海兵隊は決して必要不可欠な存在ではないとモチヅキ氏は考える。その根拠として、米国政府がみせている反応から、米国が考えるシナリオをこう予測した。
モチヅキ氏によれば、沖縄県知事選以降、米政府は、沖縄が基地負担軽減を望んでいるなら、一刻も早く普天間を閉鎖し、辺野古への移設が必要だと考えているという。それが実現すれば、約8000人の海兵隊を沖縄からグアムへ移転でき、基地負担軽減が実現できると予測されるからだ。
しかし、モチヅキ氏はこの米国の予測には同意しないという。それは、政治的理由のみならず、技術的な面から見ても、辺野古基地を完成させることが非常に難しいと考えているからだ。
他方、日米両政府は1996年の段階で、普天間基地を5年ないし7年以内に返還することで合意しているが、いまだに返還は実現していない。普天間基地の返還は2023年頃だと予想されているが、その頃になっても辺野古基地は完成していないだろうとモチヅキ氏は見ている。
一方で安倍首相は、仲井真弘多知事に5年以内の普天間閉鎖を約束している。これについてモチヅキ氏は、日本政府がオバマ大統領に「普天間基地縮小へ向けて柔軟な姿勢を見せてくれないでしょうか」と提案すれば、知日派で米国の防衛や安全保障に携わる人々から、これを支援する人も出てくるのではと主張した。
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