「教え子を一人たりとも戦場に送らない」──都内の教師たち「TOLDs(トールズ)」が決起! 不戦の誓い新たに「戦争の芽を摘み取り、これからも教室に平和の種を蒔いていく」 2015.8.20

記事公開日:2015.8.21取材地: テキスト動画
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(ぎぎまき)

 「『70年安保』には間に合わなかったが、『2015年安保』に真っ正面から向き合う時代が巡ってきた」

 東京都の小・中・高の教員ら295人が賛同し、名を連ねる学校教職員有志「TOLDs(トールズ)」の呼びかけ人5人が、2015年8月20日、東京都庁で安全保障関連法案に反対する記者会見を開いた。

 「Tokyo Liberal DemocraticなSenseiたち」略して「TOLDs」は、安保法案に反対する学生ら「SEALDs(シールズ)」や中高年で構成される「OLDs(オールズ)」、「MIDDLEs(ミドルズ)」などに触発されて立ち上がった。

■ハイライト

  • 取り組みの経緯と状況について/声明文/呼びかけ人より発言 東京の教職員有志(岡田明氏(東京都立野津田高校)、加藤誠氏(東京都立六郷工科高校)、井黒豊氏(東京都立足立工業高校)
  • 日時 2015年8月20日(木) 15:00~
  • 場所 東京都庁記者クラブ(東京都新宿区)
  • 主催 東京の教職員有志(TOLDs

「政治的中立」にびくびくする現場

 「なぜこれまで、学校の先生が黙っていたのか。それは教育公務員の『政治的中立』という規定を意識し、リスクがあるのではないかという自粛があった」

 教員たちは現行の教育基本法において政治的行為を制限されているが、違反しても罰則はない。しかし、選挙権年齢が18歳以上に引き下げになることをうけ、与党内からは高校教員が「政治的中立」から逸脱した場合、罰則を科す案が浮上している。会見に出席した足立工業高校の井黒豊氏は、「『政治的中立』にびくびくしている現場がある」と戸惑う教員たちの心情を代弁した。

 しかし、自民党の武藤貴也議員が戦後教育を「利己的」と批判したことや、8月末にも安保法案を強行採決しかねない国会内の動きに、「いてもたってもいられなくなった」とし、8月初旬にTOLDsを立ち上げたという。

 「学校教育法、地方公務員法、(教育公務員)特例法、人事院規則などの運用方針の文案をつぶさに見て、これには当てはまらないから大丈夫、これも大丈夫だと、『政治的中立』について調べてみました。

 とにかく法の精神に則って、憲法違反である『戦争法案』はだめなんだということ。中立どころかこれが真ん中で、右でも左でもなくまっすぐストライクであることを確信して、文句を言われる筋合いのものではないだろうということで今日を迎えました」

 井黒氏は、公務員には現憲法にある「平和主義、人権尊重、民主主義」を尊重する義務が憲法99条で課せられていると話し、一国民としても「不断の努力」によって憲法の精神を保持する義務がある以上、「びくびくする必要はない」ことを再確認したという。

50代のしらけ世代が「2015年安保」に向き合う時代

 会見に出席した都立野津田高校の岡田明氏、都立六郷工科高校の加藤誠氏、井黒氏らは全員50代。岡田氏によれば、50代は「しらけ世代」だという。

 「70年安保の時は小学生で『闘争』というものをよく分かっていなかった。(職場の)上の世代はいわゆる「団塊の世代」で、うるさいくらい元気で、議論好き。教育活動にも熱心に取り組んでいました。私たち世代から下は、その方々についていけばいいとお任せしていた点がある。しかし、団塊の世代はほとんど退職しています。

 『70年安保』には間に合いませんでしたが、『2015年安保』に真っ正面から向き合う時代に巡りあうことになった。日本国憲法の下で営まれてきた平和で民主的な教育を守り、人権感覚に満ちた教育が進むよう、私たちは逃げずに教育に向き合っていきたいと思います」

「戦争を知らない教員からのメッセージ」

 岡田氏は続けて、TOLDsによる安保法制に反対するメッセージを読み上げた。

 「戦争を知らない教員からのメッセージ」と題されたメッセージでは、戦時下、教員が戦争に加担したという反省に立ち、「教え子を一人たりとも戦場に送らない」という決意を表明。「この後も過去の戦争について常に学び直し、国内外の人々に今も残る痛みを伝え続けます」と宣言。

 また、グローバル化の中で拡大する格差や貧困、民族間の対立が蔓延していることに対し、武力行使や威嚇によらず、対話によって解決していくことを目指す人を世界に送り出すことこそが、真の「積極的平和主義」とうたった。

 さらに、安倍政権の解釈改憲に対し、権力の暴走に鎖をかける「立憲主義」を廃棄していると批判。学者らによる「憲法違反」の指摘や全国で展開している反対運動を無視して行なった強行採決に深い憤りと危惧を抱いているとし、最後にこう結んだ。

 「敗戦から70年。私たちは不戦の誓いを新たにし、戦争の芽を摘み取り、これからも教室に平和の種を蒔いていく決意をする者たちであることをみなさんにお伝えします」

教育現場に広がる「平和教育」アレルギー

 会見に同席した都立淵江高校の菅原益見氏は、学校では美術を教えているが、10年以上修学旅行担当を努めている。沖縄は広島、長崎へ生徒を引率し、戦争体験者は被曝者の話を生徒たちに聞かせてきた。菅原氏はIWJのインタビューの中で、安保法制の動きについて「止められない力のなさが悔しいです」と言葉に詰まった。

(…会員ページにつづく)

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