鍵を握っているのは国民世論! 「戦争法案」ほどアジアと世界に危険なことはない――日本共産党・志位和夫委員長が外国人記者に説いた安倍政権と法案の異常な危険性 2015.6.23

記事公開日:2015.6.24取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

特集 集団的自衛権|特集 憲法改正

※6月24日テキストを追加しました!

 国会での安全保障関連法の審議がスタートしてから間もなく1ヶ月が経とうとしている。これまで国会では2度の党首討論も行なわれ、政府・与党と野党間で激しい論戦が繰り広げられてきた。この間、国民は国会の動きをどう評価してきたのか。

 6月20、21両日に朝日新聞社が実施した世論調査によれば、法案について「丁寧に説明する」とした安倍総理の説明を「丁寧ではない」と回答した人が69%で、「丁寧だ」と答えた12%を大きく上回った。そして、安保法案への賛否も「反対」が53%と、「賛成」の29%と差が開いた。さらに、安倍内閣の支持率は法案審議前の45%から39%に下落した。

 政府・与党の暴言も目立っている。

 衆院の特別委員会では6月19日、公明党の浜地雅一議員が民主党の辻元清美議員に「バカか」と暴言を吐いた。それ以前にも、審議がスタートして間もない5月末、安倍総理も「早く質問しろよ」と辻元議員にヤジを飛ばし、審議がストップしたケースもあった。

 そんな中、「この人が質疑に立つと議場が静まり返る」と言われているのが、日本共産党の志位和夫委員長だ。志位委員長は、安倍総理の「ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない」という発言を引き出したり、米国主導による過去の戦争を無批判に受け入れてきた日本政府が、今後、米国が違法な武力行使を行なった場合、支援を断ることができるかと問いただすなど、するどい質問で安倍総理に詰め寄り、「戦争法案」の危険性を具体的にあぶりだしてきた。

 6月23日、志位委員長は日本外国特派員協会で記者会見を開き、安倍政権と安保法制の異常性と危険性という観点からスピーチ。その後、共産党が考える安全保障について問われると、志位委員長は「北東アジア平和協力構想」を提唱。その他にも、「共産党は反米ではありません」というセリフも飛び出すなど、外国人記者らから相次いだ質問に答えた。

記事目次

■ハイライト

共産党が指摘する3つの「憲法違反」

※以下、発言の要旨を掲載します。

日本共産党・志位和夫委員長(以下、志位・敬称略)「安倍政権が『平和安全法制』の名で11本の法案を国会に提出しているが、憲法9条を全面的に破壊する『戦争法案』が、その正体だと、この間、追及してきた。

 今日は世界から見た『戦争法案』の異常と危険と題して、冒頭、スピーチしたい。

 戦後、日本の自衛隊は半世紀に渡って、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出してこなかった。ここには憲法9条の偉大な力が働き、その元で、政府が戦後一貫して、海外の武力行使は許されないという憲法解釈を取ってきたことも重要な要因として働いている。『戦争法案』は、この国の在り方を根底から覆すもの。それは、海外で戦争をする国づくり。殺し、殺される国づくりを進めようというものに他ならない。

 私は安倍首相との国会での論戦で、憲法に反する3つの大問題を追及してきた。

 第一は、米国が世界のどこであれ、自衛隊が戦闘地域とされてきた地域にまで行って弾薬の補給、武器の輸送などの、いわゆる後方支援、兵站を行なうことになるということ。戦闘地域での兵站は相手方から攻撃目標とされ、武力行使に道を開くことになる。

 第二に、PKO(国連平和維持活動)法の改定が大変なくせ者。PKOとは関係のない活動への、新たな仕掛けが盛り込まれている。形式上は停戦合意が続いているが、なお戦乱が続いているようなところに自衛隊を派兵し、治安維持活動をさせる枠組みが、新たに持ち込まれようとしている。

 安倍首相は私の質問に対し、アフガンに展開し3500人もの戦死者を出しているISAF(国際支援治安部隊)のような活動への参加を否定しませんでした。戦乱が続いている地域での治安活動は容易に、武力行使に転化します。

 第三は、日本がどこからも攻撃されていなくても集団的自衛権を発動し、米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外での武力行使に乗り出すということです。

 これは一内閣の専断で、従来の憲法解釈を180度転換する立憲主義の破壊であり、憲法9条の破壊であると厳しく批判してきた。以上の点から、この法案の違憲性は明らかだと確信している」

「戦争法案」とその推進勢力の「異常性」と「危険性」

志位「その上で今日は、世界から見ると今日本で起こっていることがどれだけ異常で危険なのかという、その角度から少し話をしたい。世界から見ると、『戦争法案』とその推進勢力には3つの異常と危険がある。

 第一は『非国際性』。すなわち、地球の裏側まで自衛隊の派兵を目論みながら、世界で通用しない理屈で、それを合理化しようとしている。

 例えば、戦闘地域での兵站について。戦闘部隊に対する補給、輸送部隊の兵站が、武力の行使と一体不可分であり、戦闘行為の不可欠な一部であることは、世界の常識であり軍事の常識。しかし、それを正面から認めてしまうと、途端に憲法違反になってしまう。そこで日本政府はそれをごまかすために、世界のどこにも通用しない概念、議論を使っている。端的に話すと、日本政府が使っている言葉で英語に翻訳できない、概念がない3つのことがある。

 一つは『後方支援』。

 これは、日本政府だけの造語です。ご承知のように、英語ではlogistics、兵站となります。政府は決して、兵站という言葉を使おうとしない。兵站には(そもそも)前方、後方という概念は含んでいない。日本の自衛隊がやるのはあくまで『後方支援』で前には行かないというごまかし」

「武器の使用は武力の行使にあたらない」世界に通用しない安倍総理の屁理屈

志位「二つ目の言葉は『武器の使用』という概念。

 武器の使用はするが、武力の行使にはあたらないと。安倍首相は、戦闘地域で自衛隊が兵站を行なう際、攻撃されたら『武器の使用はする』、これは認めた。しかし、『武力の行使ではない』と頑にいいはるんです。

 外務省に『武器の使用』という国際法上の概念があるのか、と尋ねた。外務省から返ってきた答えは、『国際法上は、武器の使用という概念そのものがございません』ということだった。

 武器の使用はするが、武力の行使には当たらないというのは、世界のどこでも通用しない議論だ。

 三つ目は『武力行使との一体化』という言葉。

 政府は、武力行使と一体ではない『後方支援』は、武力の行使に当たらないと言っている。先日の党首討論で安倍首相に聞いた。『国際法上、武力の行使と一体化という概念そのものがあるんですか』と。首相は『一体化という概念そのものがございません』と答弁した。

 ちなみに、昨年(2014年)7月の日本政府の集団的自衛権行使容認の閣議決定における日本政府による英訳は、武力行使との一体化をどう訳しているのかを政府の公式文書で見てみると、『ittaika with the use of force』とローマ字を当てていた。一体化という概念を訳すことは誰にもできないんです」

憲法解釈を変更した根拠が根底から崩れている

志位「世界で通用しないという点では、集団的自衛権の行使についての政府見解も同様だ。

 政府は集団的自衛権の発動の要件として、『日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃によって、日本が存立危機事態に陥ること』をあげている。そして、憲法解釈の変更をやった唯一最大の理由として、『国際情勢の根本的変容が起こった』からだと説明している。

 そこで、私たちは国会で聞いた。

 『国際情勢の根本的変容というが、そうした根本的変容のもとで、他国に対する武力攻撃によって、存立危機事態なるものに陥った国が世界に一つでもあるか』と。

 外務大臣が『実例を挙げるのは困難です』と答弁した。一つも実例が挙げられない。すなわち、憲法解釈を変更した根拠が、根底から崩れたというのがこの間の論戦です。憲法9条のもとでは、もともと自衛隊の海外派兵は不可能。

 それを取り繕おうとするから、世界のどこにもない架空の概念を作り出すという矛盾に陥っている。自衛隊の世界的規模での派兵を企てながら、世界のどこにも通用しない詭弁で合理化することは許されるものではない」

世界から見た異常「米国に無批判な日本」

志位「世界から見た異常に、『対米従属性』を挙げたい。この法案を推進している勢力が、異常なアメリカ追随を特徴としているという問題。

 政府は、集団的自衛権の発動の要件として、我が国と密接な関係にある他国への武力攻撃の発生を挙げている。この場合、他国への武力攻撃がいかにして発生したか、ここから問題にしなければならないと考えている。他国が先制攻撃を行なって、そういう状態が生まれた場合は、その他国は『侵略国』となります。

 それとも他国に対する武力攻撃から戦争が開始された場合は、その他国は『犠牲国』になる。ここに追及すべき大問題があると国会で質疑を行なってきた。

 そこで、安倍首相に聞きました。

 『米国が先制攻撃の戦争を行なった場合でも、集団的自衛権を発動するんですか』と。首相は違法な武力行使をした国を、日本が自衛権が発動して支援することはないと答弁した。

 問題は、日本政府が米国の違法な行使を違法と批判できるのかどうかにある。戦後、米国はベトナム戦争、イラク戦争を始め、数多くの先制攻撃を実行してきた。しかし、日本政府は戦後、ただの一度も米国の武力行使に反対したことがない。

 例えば1983年のグレナダ侵略に対しては、日本以外の同盟国のほとんどが反対をした。国連総会でも非難決議が出された。しかし、日本政府は理解の意思表示をした。このような異常な、アメリカ追随の国というのは、私は主要国の中で他に例を見ないと思います。

 このような政府が、そのような行為に反省のない政府が、違法な武力行使をした国を支援することはないと言って、誰が信用できるでしょうか。異常なアメリカいいなりの国が、集団的自衛権を行使する危険は極めて深刻だ」

過去の戦争への反省のない安倍政権は世界にとって危険

志位「最後の問題として、『歴史的逆行性』を挙げたい。

 すなわち、過去の日本の戦争を間違った戦争と言えない安倍政権が、戦争法案を推進する危険性ということ。今年(2015年)は戦後70年。節目の年に、日本が過去の戦争にどういう基本姿勢を取るかは、極めて重大な問題だ。

 5月20日の党首討論で、私は安倍首相に対して、1945年8月に受諾したポツダム宣言を引用し、過去の日本の戦争は間違った戦争との認識はあるかと質問た。

 安倍首相は頑に、間違った戦争だと認めることを拒み続けた。加えて、党首討論の中で、ポツダム宣言をまだ、つまびらかに読んでいないと答弁したことが内外に衝撃を与えた。安倍政権はこの問題については、『首相は当然、ポツダム宣言を読んでいる』とする閣議決定の答弁書を決定した。

 読んでいると言うんだったら、あの時の答弁は何だったのかということになる。

 戦後の国際秩序は、日本とドイツとイタリアが行なった戦争は侵略戦争だったという反省の上に成り立っている。ところが、安倍首相は侵略戦争はおろか、間違った戦争とも認めることをしない。

 過去の戦争への反省のない勢力が憲法9条を壊し、海外で戦争する国への道を暴走するというのは、これほどアジアと世界にとって危険なことはない。

 昨日(6月22日)、与党は、国家の会期を95日間、史上最長の延長をすることを強行した。この帰趨(きすう)がどうなるかを握っているのは、国民の世論だと考えている。文字通りの圧倒的多数の国民が、これに反対の意思表示をした場合には、いかに与党が国会で多数を持っていたとしても、強行することはできない」

志位委員長「共産党は反米主義ではない。対当で平等な関係を結びたい」

 志位委員長のスピーチ終了後、外国人記者らから質問が相次いた。

 「自衛隊員の自殺率が高いのはなぜか」「今後、安保法制をめぐり、共産党が野党を一つの勢力に束ねる用意があるか」「もし政権を取ったら最初にどの国を訪問するか」「領土をめぐる紛争問題をどう解決するのか」など、志位委員長に向けられた質問はさまざま。志位委員長からは、「共産党は反米ではない」という発言が飛び出すなど、回答の内容も多岐に渡った。 

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    鍵を握っているのは国民世論! 「戦争法案」ほどアジアと世界に危険なことはない――日本共産党・志位和夫委員長が外国人記者に説いた安倍政権と法案の異常な危険性 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/250289 … @iwakamiyasumi
    世界から見た異常「米国に無批判な日本」
    https://twitter.com/55kurosuke/status/613826611217960960

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