「村山首相談話を継承し発展させる会」は3月2日、参議院議員会館で記者会見を行なった。中国共産党幹部らとの会談のため、来週3月9日から13日の日程で訪中する。訪中団は、団長に同会共同代表の鎌倉孝夫・埼玉大学名誉教授、副団長に元外務省中国課長で元広島平和研究所長の浅井基文氏。元外務省レバノン特命全権大使の天木直人氏や西山太吉・元毎日新聞政治部記者らも同行する。
これまで政府は、過去の植民地支配、戦争責任などのいわゆる歴史認識について、村山談話、河野談話を政府の公式的見解と位置づけてきた。
今年2015年、戦後70年を迎えるにあたって、安倍首相は、日本政府がこれまで踏襲してきた村山談話、河野談話から、新たに安倍談話を公表するための作業を始めた。先月2月25日には、この安倍談話の中身を議論する、16名の有識者で構成される「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」(21世紀構想懇談会)も発足した。
この問題については、2015年に入ってから、村山富市元首相への取材依頼が殺到しており、国内のメディアにとどまらず、海外からも取材依頼があるという。
- 出席者 天木直人氏(元日本国レバノン特命全権大使、村山首相談話の会・共同代表)、浅井基文氏(元外務省中国課長、元東京大学教授、元広島平和研究所長、村山首相談話の会・共同代表)、鎌倉孝夫氏(埼玉大学名誉教授、村山首相談話の会・共同代表)、高嶋伸欣氏(琉球大学名誉教授、村山首相談話の会・共同代表)
- 日時 2015年3月2日(月) 14:30~
- 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
- 主催 村山首相談話を継承し発展させる会
元外務省OB・天木氏、日中関係の改善は「焦眉の急」
元外務省OBの天木氏は、近年の日中関係に危機感を表し、日中双方にとって好ましいとはいえないと語った。
「日中関係の改善はお互いの国にとっての焦眉の急(しょうびのきゅう)である。残念ながら、安倍首相は何を言っても聞く耳を持たない。最近では、報道でも明らかなように、村山談話を否定するとはっきり言っている」
天木氏はさらに、「8月15日に、このままいけば、安倍首相は実質的に村山談話を否定する談話を出す。ほぼ間違いないでしょう」と、安倍談話が必ず公表されると断言。「歴代の日本の政権が踏襲してきた精神は、過去の軍国主義の侵略を認めて謝罪する。小泉さんも引き継いだ談話」だと話し、これを安倍首相が覆そうとしていることに危機感を示した。
また、同会の今回の訪中について、「悪く行けば全て安倍政権の責任。うまくいけばこのミッションの功績。こう思って行ってまいりたいと思います」と、意気込みを語った。
天木氏「安倍談話が出たあとに、いくら言っても意味がない」
安倍談話が出されるような状況をどう阻止できるのか、との中国メディアからの質問に、天木氏は、「私は中国の方に、中国もはっきり言えと。8月15日に談話が出たあとで、いくら言っても意味がない。その前にもっと強く言わないのか。ということを伝えたい」と主張。
この間の安倍政権の外交姿勢を問う質問には、「私は外務省の責任は極めて大きいと思っている。おそらく外務省の大方の人間はそう思っている。自分たちはこれでいいのかと。だけど、残念ながら、上の方が、安倍首相の人事によって、籠絡されちゃっている」と、外務省内の事情を推察した。
元外務省中国課長・浅井氏、安倍談話は「最終的に米国が何か言うかどうか」