「日本が戦争を始めれば、日本の良いイメージは忘れ去られる」イラン生まれのクルド人監督が警告~岩上安身によるインタビュー 第548回 ゲスト『サイの季節』バフマン・ゴバディ監督 2015.6.3

記事公開日:2015.6.5取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根)

特集 中東|特集 中東有志連合構想

※6月9日テキストを追加しました!

 「人間は、野蛮な戦争が好きな生き物。国のトップが権力を得ると目立ちたくなる。戦争を持ち出すと、必ず世界のニュースになって話題にされるから。そのために戦争を語っているのです」──。

 幼少時にイラン革命を体験した映画監督のバフマン・ゴバディ氏の言葉に、岩上安身は「安倍首相にぴったり当てはまる」と応じた。

 2015年6月3日、東京都内で、最新作『サイの季節』の日本公開を7月に控えた映画監督、バフマン・ゴバディ氏に、岩上安身がインタビューを行った。

 1969年にイランに生まれたゴバディ氏は、イラン史上初のクルド映画『酔っぱらった馬の時間』(2000年)でカンヌ映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を受賞。2009年、テヘランのインディ・ミュージックシーンをゲリラ撮影したセミ・ドキュメンタリー映画『ペルシャ猫を誰も知らない』の完成以降、イランで活動できなくなり、現在まで国外亡命を続けている。

 「私たちの日本に対するイメージは、文化的に豊かで技術も優秀、きれいなイメージばかりです。しかし、いったん戦争になり、それが数年も続くと、きっと日本の良いイメージは塗り替えられてしまうでしょう」とゴバディ氏は警告する。

 イランでは革命以降、戦争や人権問題の報道ばかりになり、芸術や文化のニュースは消えてしまったという。「今、世界では政治的な問題、紛争ばかりが話題になっているので、今回の映画ではあえてそれを避け、文化的な面や心の美しい部分を打ち出した」とゴバディ氏は語った。

記事目次

■イントロ

  • 日時 2015年6月3日(水) 13:00~
  • 場所 シネマート六本木3F 会議室(東京都港区)

戦争になると、尊敬する日本のイメージが一変してしまう

岩上安身(以下、岩上)「トルコとイラクのクルド地域で製作された多国籍的な映画『サイの季節』の監督、バフマン・ゴバディ氏にお話をうかがいます。今、日本は梅雨の時期に入ります。もう2週間早ければ、もっと爽やかだったのですが」

バフマン・ゴバディ監督(以下、ゴバディ・敬称略)「太陽の強い国から来ているので、逆に雨が好きで、雪も探したいくらいです。これからの地球はもっと雨が少なく、暑くなります。われわれは雨の一滴でも大事にした方がいいです」

岩上「『サイの季節』には水のシーンがたくさん出てきますね。曇った空、雪、雨、水責めの拷問。ラストシーンは水没です。なぜ、こんなに水にあふれているのでしょうか。そして、多くの日本人は、イランについて石油とイラン革命以外のことは、よく知りません。イスラムの国=砂漠の国というイメージも強い。だから、この映画の水に満ちた感じ、湿った印象に驚きました」

ゴバディ「(この映画は(クルド系イラン人の詩人)サデッグ・キャマンガール氏の詩がベースになっていて、彼は水のモチーフを多用しているからです。また、私は秋と冬が好きなのです。イランは半分が砂漠、残りは森や野原で緑も多く、四季もある。クルディスタン(クルド地域)は豪雪地帯でとても寒いのですが。

 また、ペルシャ絨毯のような工芸品があるように、芸術や音楽、文学の面でも豊かな国なのです。外からはわかりにくいが、イランの家の中には何でもあり、見えないのは石油ぐらい。広い地域にいろんな民族が仲良く暮らしています。

 そして、私たちの日本に対するイメージは、文化的に豊かで技術も優秀、きれいなイメージばかりです。しかし、いったん戦争になり、それが数年も続くと、きっと日本の良いイメージは塗り替えられてしまうでしょう。イランでは革命以降、戦争や人権問題の報道ばかりが発信されて、芸術や文化のニュースは消えてしまいましたから」

国民がパワーを持てば世界は平和になる

岩上「今、日本人もその境目に立っています。今回のインタビューの目的は、映画や監督を紹介するのと同時に、イランの豊かな文化、そこに住む人々の生活も伝えたいと思ったからです」

ゴバディ「同じアジアでも、西側の中近東はいつも争いが起きている。私たちは、東アジアがいつも平和なことに希望を抱いています。東側でも戦争が起こったら、私たちはどこに希望を持てばいいのか不安になります。それを日本人以上に恐れています。

 権力は常に政府が握り、権力を持つとそれを使いたがる。国民がパワーを持てば世界は平和になります。だから、アジアの東側の人たちはもっとパワーを持って、政府を批判して平和を築いてほしいのです」

岩上「しかし現在、日本では安保法制の審議でホルムズ海峡(の機雷)の件ばかりが語られています」

生まれてから5~6年だけが平和だった自分の人生

岩上「さて、この映画は1979年のイラン革命から始まります。主人公の詩人は豊かな生活を享受していたが、革命で投獄されてしまう。そして30年あまり幽閉され、妻とも生き別れになるストーリーです。イラン革命とは、映画で描かれていたように抑圧的なものだったのでしょうか? 監督自身の体験なども含めて、お話しください」

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「「日本が戦争を始めれば、日本の良いイメージは忘れ去られる」イラン生まれのクルド人監督が警告~岩上安身によるインタビュー 第548回 ゲスト『サイの季節』バフマン・ゴバディ監督」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「日本が戦争を始めれば、日本の良いイメージは忘れ去られる」イラン生まれのクルド人監督が警告~岩上安身による『サイの季節』バフマン・ゴバディ監督インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/247698 … @iwakamiyasumi
    悪い政府は悪い国民が作り、善い国は善い国民が作る
    https://twitter.com/55kurosuke/status/608372598968360960

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