物理学者で科学史家の藤田祐幸氏は、「水俣病の時、漁民農民の側に立つ科学者がひとりもいなかった。それを見て、原子力ムラと闘っていこうと決めた」と語る。石橋克彦・神戸大学名誉教授の『原発震災』(2012年2月、七つ森書館)を読み、勉強を始めたという。
日本が地震活動期に入るということと、食料危機も考慮していた藤田氏は、農村を探して5年前に長崎県に移住した。「このあたりはプレート境界から最も離れている。日本では、稚内とここくらいだ」と、移住と脱原発に至った経緯を語った。
藤田氏は、チェルノブイリ事故の際、現地に行って調査した経験も語った。「その時わかったのが、旧体制側と改革側で意見が真っ二つに割れていたこと。日本政府の調査グループは、旧体制側としか接触していないので、紋切り型の安全なデータしかない。今、日本の医学会にはペレストロイカが必要。福島の原発事故も、当時のソ連と同じ状態だ」と、日本の政府と有識者に疑問を呈した。
2012年6月10日、岩上安身による藤田祐幸氏のインタビューが、長崎県西海市の藤田氏の自宅にて行なわれた。スリーマイル事故をきっかけに、脱原発を主張し続けている藤田氏は、「日本は、原発がなくても十分に電力は賄える」と訴える。
「原発は電力のためではない。佐藤栄作は核武装論者で、将来、アメリカと再び仲たがいをすることを考えていた。だから、たくさんの原発を日本の海岸線に作った」と述べ、原発の本当の役割、日本政府の原子力政策、エネルギー問題、放射能汚染などについて語った。
- 日時 2012年6月10日(日)
- 場所 藤田邸(長崎県西海市)
原発再稼働は意識の低さと創造力の欠如
岩上安身が「2日前、野田首相が大飯原発の再稼働を発表した。原発の安全性が確立したわけでもないのに、なぜ、再稼働決定を強行したのか」と、再稼働問題から尋ねた。
これに対して藤田氏は、「震災前までは、大きな原発事故が起きない限り、原発は止められないと思っていたが、事故が起きても再稼動するという。あまりにも意識の低い、創造力の欠如で残念だ」と政府の対応を批判した。
その上で、「原発の危険性を感じたのは、1979年のスリーマイル島原発事故だ。公表されたその事故のデータを見ると、危険度は計り知れない。当時、日本では2つの原発訴訟が起きていた。ひとつは四国の伊方原発訴訟、もうひとつは茨城の東海第二の訴訟だった」と振り返った。
まったく情報開示のない今の日本は戒厳令国家
岩上安身は藤田氏に、物理学者としての福島原発事故について意見を訊いた。
藤田氏は、「チェルノブイリは制御不能に陥る核暴走事故で、メルトダウンした。スリーマイルは炉心溶融事故だ。しかし、福島は核爆発と言えるが、まったく情報がないので、何も言えないのが現状だ」と述べ、次のように主張した。
「1号機について言えば、津波による電源喪失が原因。すべてを津波のせいにしようとする。地震で非常事態が起きていた可能性もあるが、真相が解明されていない。2号機、4号機の爆発も同様、いまだ明らかになっていない。スリーマイルやチェルノブイリ事故でも、まだ、日本より情報開示がされている。旧日本軍ですら、学童疎開をさせている。今の日本は、それもしない戒厳令国家だ」
生産コストが高ければ高いほど電力会社の利益は増える
続いて、エネルギー問題に話題は移った。藤田氏は、「石油も枯渇する、とさかんに言われているが、それは可採年数のこと。鉱業関係者は20年くらいの生産ストックを常に持って経営する。つまり、20年で枯渇すると言うのは、自分たちのストックがなくなるという意味だ」と業界の実態を話した。
続けて、「電力生産だけに限って言うと、今は、石炭と天然ガスが主流。原子力はエネルギー効率が30%強、天然ガスは今、コンバインド型ガスタービンなどは50~60%と効率性がいい。それに1年あまりで新設できて、生産コストも安い。安全なので場所も選ばない。今、天然ガスはアメリカの6倍のコストで購入している。それは、電気代が総括原価方式なので、生産コストが高ければ高いほど、電力会社の利益が増えるからだ」と説明した。
佐藤栄作と中曽根康弘は「核武装論者」
「日本の医学会にはペレストロイカが必要」――チェルノブイリ原発事故より情報が開示されない日本の現実を指摘~物理学者・藤田祐幸氏に岩上安身が聞く http://iwj.co.jp/wj/open/archives/19465 … @iwakamiyasumi
今の日本は戒厳令国家だ。国民の生命など何も考えていない。
https://twitter.com/55kurosuke/status/608915907830611968