2014年9月3日(水)10時30分から、2014年度第22回原子力規制委員会が開催された。2015年度予算の概算要求で、地方モニタリング拠点の増加、福島第一原発現地検査官の増強、プラントシミュレーターの整備等で対前年度比120億円増額の計878億円で要求することを了承した。
2014年9月3日(水)10時30分から、2014年度第22回原子力規制委員会が開催された。2015年度予算の概算要求で、地方モニタリング拠点の増加、福島第一原発現地検査官の増強、プラントシミュレーターの整備等で対前年度比120億円増額の計878億円で要求することを了承した。
記事目次
弟10回規制委員会(6月4日)で提案されたマネジメント規程について、事務局が案をまとめ委員会で議論するもの。今年10月からマネジメントシステムを施行したいと提案があり、特に意見なく了承された。
平成26年度の訓練計画について、内閣総理大臣から訓練計画案とともに意見を求められ、それに対する返答(案)を委員会で議論するもの。原子力災害対策措置法により、このような訓練の計画にあたって、規制委員会に意見を求められることになっている。
内閣総理大臣より、東日本大震災以後2回目になる今年の訓練は、11月上旬に志賀原子力発電所(北陸電力)を対象に行う計画案が示された。関係機関の連携、病院等の避難要領の検証に加え、UPZ内住民の屋内退避、安定ヨウ素剤の配布指示といった実践的な訓練を実施することがポイントとなっている。
中村佳代子委員は「訓練の実施までにまだ議論することが多くある」が、実施する11月上旬までに、ぶれない指針のもとでぶれない計画を建てるよう指示。
田中俊一委員長は、「避難計画は住民の安心の問題」だと考え、どんなところに心配があるのか、住民の意見もくみだすように要請した。
規制委としては、昨年の訓練の反省点を踏まえ、PAZでは原則屋内退避、要介護者の避難、モニタリングの結果に基づく避難といった意見を考慮することを了承した。
8月1日に実施された審査会の状況を報告するもの。
対象期間(5月3日~7月1日)に事務方にて情報を収集し、1次スクリーニングした情報22件について、2次スクリーニング後、継続検討するものが3件あった。以前から継続調査している情報で、今後も調査が必要な情報が2件、対応を検討するものが1件となった。対応を検討する1件については、次の議題4で議論する。
更田豊志委員は、以前から継続調査している情報について、「どういうスピード感で調査しているのか」を質問。「当該国の規制当局も調査しているのなら、さっさと聞けばすむ話。情報収集とかドキュメント調査などはなるべく効率的に進めてほしい」とコメントした。
中村委員は、「”水平展開”は業界用語だ」と述べ、「事業者間、関係省庁間で情報共有することを、こういう言葉を使って書くことはよくない」と意見した。
原子力施設の安全のために必要な技術情報を事務型で収集・調査し、要対応とされた情報について炉安心・燃安審合同審議会で審査した後、結果を報告するもの。
原子力施設に使われているスプリンクラーについて、通常の配管内を空にしておく型のスプリンクラ―は、動作点検時に使用した水の乾燥が不充分で、配管が腐食する事案が海外で発生している。国内の対応を検討するため、スプリンクラー設置状況の実態を調査した。
その結果、放射性物質を保管する建屋に、当該型のスプリンクラーは設置されていなかった。ただし、今後のことを考え、情報提供等を行うものとされた。
田中俊一委員長は、「スプリンクラーなら消防庁のほうが関係があるかも」とコメント。佐藤暁・原子力規制企画課長はすでに情報提供済だと返答した。
更田委員から、ボイラー室(放射性物質はない)に当該型のスプリンクラーがあるが、「形式変更しないのか」とコメントがあり、佐藤暁・原子力規制企画課長は「変更しない」と回答。
事務局案のとおり、承認された。
平成27年度の概算要求について、「原子力規制の継続的改善」「原子力防災対策、放射線モニタリング体制の充実・強化」「原子力規制人材育成の強化」「国際連携・協力、保障措置の着実な実施」の4本の柱で計878億円(対前年度比+120億円)の予算要求を提案、委員会で承認された。
今年度の概算要求では、自治体への交付金枠が倍増して236.7億円、地方のモニタリングを現在の6カ所体制から10カ所へ増やすことに13.2億円、規制庁での職員の訓練用に独自のプラントシミュレーターを数カ年かけて整備する事業に16.7億円、IAEA拠出金3.5億円、OECD/NEA拠出金0.5億円、国連大学拠出金0.7億円などを要求している。
これら事務方案に対して、更田委員は「放射線モニタリング体制の項目部分の中で、地方への交付金が約70%と大部分を占めているが、重要な項目だから確実な予算を確保」するよう指示。「プラントシミュレーターを整備しても、現場とかけ離れた訓練を行っても意味がない。事業者の知見や協力関係を活用するように」とコメントした。
大島賢三委員が、「『人材育成に予算が足りないからできません』ということはないと、自信を持って言えるか?」と念押しすると、松浦克己参事官は「はい」と答えた。
また、定員要求について、東京電力福島第一原子力発電所について、現地の施設検査官、保安検査官の増員、火山影響評価のため火山研究者を2名増員する等、合計11名の増員を要求している。
田中委員長は、「(予算要求は)火山影響評価も増額になっているので、島崎委員進めてくださいね」とコメントし、「こういうことで要求していこう」ということで了解された。
原子力規制委員会の人材育成の進め方について、事務方から方針と、施策、項目毎のプランが提示された。「2015年の春頃を目処にレビューしたい」と展望についての説明があり、委員会で議論され、承認された。
大島委員から、検査官の資格付与をできるだけ早く積極的に進めるよう要望があった。海外では、検査官の独立性、専門性が高い。規制官の力量が事業者より劣っていたため、国会事故報告書で”規制の虜”と指摘される事態を招いたと大島委員は指摘。専門性と広い視野を同時にもち、インセンティブを付けるよう意見した。さらに、東日本大震災から若い人が原子力の分野に来なくなったことを取り上げ、外部の意見をアドバイスとして取り入れ、日本全体の原子力の人材育成に責任を持って進めるよう意見した。
更田委員は、JNESとの統合で人材育成がかえって難しくなったと意見。JNESは工学的判断をする専門家、規制庁は規制行政に必要な判断をする人材を育成してきた。全ての人に両者を同時に求めるのは現実的でないという。現在庁舎となっている六本木のファーストビルでは、プラントも実験装置もなく、直ぐに実験ができる環境ではない。研究機関への派遣など、思い切ったやりかたを求めた。
続けて、検査官個人の能力の問題ではなく、人数の問題だと指摘。例えば米国NRCは人員に余裕があり、ゆったりした仕事環境、高待遇で人気の職場といった認識から、日本の規制庁のように、「人員少なく個人の力量をつけろ」というのでは、現場が切れると指摘した。
田中委員長は、「日本の行政機関の問題かもしれないが、徹夜して働くのが当たり前になっているのはおかしい。トップマネジメント側の問題かもしれないが、このような現状で、今日の資料で提案された施策が本当にできるのか疑問だ」とコメントした。
JNESと統合したことで、研究職は学術的な研究としてだけでなく、行政組織の研究もあり、分けて考えてはどうかと提案があった。出された案の細かい所は「大変結構」という評価で了承された。
■jaikoman氏によるツイート